細やかな心の内は娘にしか通じなかった。 唯一娘だけが私の愚痴を聞き、理解者になり力になってくれた。 身も心も暴走しそうになる私を押さえ、理性を取り戻させてくれたのは娘である。 娘がそばに居なかったら、何をしていたか分からない程、理不尽なおっさんへの反逆を企てていた私である。
とうとう、最後の砦であったおっさんの実家を売る羽目になってしまった。 実家を売ることに抵抗を感じ、手続きまでには相当の日数がかかった。 親に申し訳ないと言う気持ちがブレーキを掛けていたのである。
「息子の代になってから、息子が自由にしたらいい」
と、言った。そんな逃げ方はないだろ。 狭い土地の小さな実家。借家として人に貸していたので家賃収入が無くなる。 変わりに税金が免れる。 家を売り払っても借金は払いきれずに、なおかつ私の懐にも入らない。 どんな商売をしていたんだか、アホタレなおっさんに怒鳴る言葉もない。
すっかりしょげて、覇気の無くなった姿は もはや生ける屍状態だわ。 アハハ…あの成金様はどこへ行った? 家庭ってありがたいだろ! 家族っていいだろ! 嫁さんて大事にしてこそだろ! ふた言目には「わしは 働いて食わして来た」って言い続けて来たけど、男なら誰だって働くわ……
あんただけが働き者だと勘違いしてたんでしょうが。
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