それに高校生の時に、父親が亡くなって進学を諦めた時に遡って言うならば 父親は世の中の不景気の渦に巻き込まれ職を失い、その上に建てたばかりの家のローンが払えなくなった時、自殺をしたのだ。
おっさんの頭にはその事がずっとあったと思う。 それを知っている私は、おっさんのしでかしたお金の不始末を責めることが出来ず 以前の借金騒動の時も、責めることが怖かった。 同じ様に自殺されては困ると思い、さすがの口悪女も言葉を選んだし、きつく言えなかった。
商売の失敗と言うより、続けていてもどうしようもないと分かった時におっさんは見切りを付けたのだ。 しかしその時すでに多額の借金もあった。 おっさんがこの商売に見切りを付けた時、まだ数人の業者は細々と続けていた。 もし、おっさんの嫁が私じゃなかったら、とっくに見放しているだろうし離婚されていても仕方がなかっただろうと思う。
何がそうさせたのか、私には見放す事が出来なかった。 この時も「だから言わんこっちゃ無い!」と、どれだけ責め暴言を吐きたかった事か。 何ヶ月も……いや今になって言えば6年間も無収入で暮らして来た。
回想するのはなんと簡単な事だろうか…… その時々は先が見えない恐怖にさいなまれたし、おっさんを追い込まないようにと いつも相反する心が二つあった気がする。
でも普通なら悲惨なはずが、実は私はそうでもなかったのだ 。
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