正確な事は分からない。
もう商売は、いつの間にか終わっていたのだ。 娘達が我が家のヤドカリ生活を終えて、新築の借家を見つけて引っ越した。 車で5分程度離れた距離なので お互いに持ちつ持たれつの生活が始まった。 婿の勤め先も決まり、何とかやって行かないと私達が助けることは出来ない。 孫が小さい間は苦しくても共働きはさせないと言ってある。 精神的に助け合う生活だ。
いつの間にか終わっていた、と言うのは後になって分かった事である。 毎月のお手当ては貰っていたので商売が行き詰っている事に気がつかなかった。 おっさんは、私に気付かれないように まだ商売をしている振りをしていたのだ。 何もかも黙ったままで、私には何にも言わない。 これを男の生き様とでも思っているのか? とてもとても信じられない。
ある年の夏、いつまでもお金をくれないおっさんを、おかしいとは思ったけれど 私もあえて 口に出しては言わなかった。 私に回すお金さえ無くなって窮地に立たされているのに、それでも何も言わない。 私はいよいよこれで我が家のバブルは弾けたと察した。
おかしな夫婦ではあったが、向こうが向こうならこっちも黙っていてやろうと、商売の事もお金の事もいっさい口にせずに何ヶ月も過ごした。 おっさんへの情けなど無かったけれど、お金を催促したところで貰えるとは思わなかった事と、追い込みたくないと言う気持ちがそうさせた。 おっさんの窮地は必ずお金がついて回る。 サラリーマンを辞めた時もそうだった。
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