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作品名:もう・・笑うしかない 作者:ののはな

第57回   そのV
 お嫁さんの産前産後は私がお世話する事になっていた。
出産を8日後に控えたある日の夜中、私の分身のようなゴールデンのランが急逝した。
夏バテかなと思いつつも、その日はバタバタと忙しくて、横たわっている姿を見ていながら、寝ているのもだと思い込んでいた。
夜中に突然起き上がり水を大量に飲んだ後、その場に倒れ失禁した後、激しい呼吸をしたまま息絶えてしまった。

 私がランを死なせてしまった……
急な事で心の整理がつかないまま、他人事のようにぼんやりしたまま葬った。

 出産を控えたお嫁さんの身体を気遣い、出来るだけ泣かないようにして過ごした。
無事女の子を出産し親子で3ヶ月間、我が家に滞在して賑やかで忙しい毎日だったが充実していた。
母子で息子の所へ戻って行ってから一度に寂しくなり、我慢していたランへの思いが一気に吹き出した。

 それからは泣き暮らした。
昼間からワインを飲んでは泣いた。何日も泣いた。
ペットロスから逃げるため、何にもしないで 毎日昼夜を問わず、浴びる様に飲んだ。
しっかり者の私がこんなに壊れたのは誰も見た事ないだろうなぁ……

 こんな姿をおっさんには見せたくない。
夜までには正気を取り戻すようにしていた。
私はいつの間にか、おっさんに弱みを見せる事をタブーにしていた。
意地でも泣き姿や弱い姿は見せたくない。

 私の心は硬くて丈夫な鋼鉄で覆われている。
でなきゃ、これまで生きて来れなかった。


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