お嫁さんの産前産後は私がお世話する事になっていた。 出産を8日後に控えたある日の夜中、私の分身のようなゴールデンのランが急逝した。 夏バテかなと思いつつも、その日はバタバタと忙しくて、横たわっている姿を見ていながら、寝ているのもだと思い込んでいた。 夜中に突然起き上がり水を大量に飲んだ後、その場に倒れ失禁した後、激しい呼吸をしたまま息絶えてしまった。
私がランを死なせてしまった…… 急な事で心の整理がつかないまま、他人事のようにぼんやりしたまま葬った。
出産を控えたお嫁さんの身体を気遣い、出来るだけ泣かないようにして過ごした。 無事女の子を出産し親子で3ヶ月間、我が家に滞在して賑やかで忙しい毎日だったが充実していた。 母子で息子の所へ戻って行ってから一度に寂しくなり、我慢していたランへの思いが一気に吹き出した。
それからは泣き暮らした。 昼間からワインを飲んでは泣いた。何日も泣いた。 ペットロスから逃げるため、何にもしないで 毎日昼夜を問わず、浴びる様に飲んだ。 しっかり者の私がこんなに壊れたのは誰も見た事ないだろうなぁ……
こんな姿をおっさんには見せたくない。 夜までには正気を取り戻すようにしていた。 私はいつの間にか、おっさんに弱みを見せる事をタブーにしていた。 意地でも泣き姿や弱い姿は見せたくない。
私の心は硬くて丈夫な鋼鉄で覆われている。 でなきゃ、これまで生きて来れなかった。
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