すっかり、じぃさまに成り下がってしまった。 今までの あの偉そうなおっさんの面影はない。 男はバリバリ働いてこそ男というもの。 働かなくなった男の姿ほど惨めなものは無い。 こんなおっさんの姿を見るのは嫌悪さえ感じる。
今思えば何年間も無収入でよくやって来たもんだわ。 私に任せておけば 何とでもしてくれるとでも思っているのだろうか。 放っておいてもこいつは何とかやって行くと思ってるなら許せない。
こんな時になって、またムクムクと離婚したい病に襲われるようになった。 一緒に居るのが苦痛でたまらない。 この家から追い出したいと真剣に考えたりした。
「今度こそ離婚しようと思う、もう我慢の限界やわ」
「あかん、今まで我慢したんやし今離婚したら損するわ。その内向こうが早く死ぬから」
と、娘が言う。
「そんな簡単に死んだりせん、もうホントに限界やし」
「遺族年金がもらえるまで我慢しいや。悠々自適で暮らせる日が来る、辛抱し」
娘とこんな会話をしながら、いつも冗談ぽくなだめられる始末…… 私がおっさんを憎いと思い嫌悪を感じても、娘も同じように憎んだり嫌悪を抱くことは無い。 これが不思議でしょうがない。 私の言う事に耳を貸しながら、理解は示しながらも、どちらの肩を持つ訳でもない。
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