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作品名:もう・・笑うしかない 作者:ののはな

第53回   そのU
 ある年のお正月の事、息子が彼女を連れて食事会に参加した。
以前に紹介されていたので違和感も無く家族同然な感じだった。
今どきの女性にしては、控えめで礼儀正しいところが良い。
いずれは結婚するのだろうと思ってはいたけれど「お金が無い」を言い続けて来た。

 突然に「結婚しまぁ〜す!」と宣言した。

「で・・お腹に赤ちゃんが入ってまぁす」

と、これもまた驚きの発言。

「なに?ダブルやないのぉ、そっかぁおめでとう!」

家族全員集合のお正月のご馳走の前で、歓声と拍手が起きた。
が、おっさんは知らん顔をしていた。
息子は、式や披露宴は産んだ後で落ち着いてからすると言った。
順番は前後してもいいけど、私は女性の立場から見て、これはちょっと……
彼女のご両親にも申し訳が立たないと思い、せめてウエディングドレスだけでも着せてあげたいと提案した。
 
 この後、式を先にするかしないかで息子と何度も衝突した。
おっさんは自分にお金の権限が無いのを逃げ道に相談にも乗ってくれない。
すべて私任せだった。
面倒な事を避けて通りたい人間など相手にするもんか。

 この街で、レストランと貸衣装屋がタイアップして披露宴をさせてくれる所があるというのを探して検討してみた。
息子達を祝ってやろうという友達なら、会費制の参加型でもいいじゃないかと、聞き入れない息子を何度も説得し続けた。
女性が一番輝いている時に着てこそのウエディングドレスだ。
産んだ後で式を挙げる事は何年先になるか分からない。

 私は、娘と一緒にすべてをお膳立てして息子の返事を待った。
難攻不落の息子の心が動いた。ようやく息子達が招待状を出すまでに至った。
それからは早くに事が進んだ。
急な招待にもかかわらず、40名くらいの友達の参加者があり、両親族も一番近しい者だけを含めて、全部で50名近くになった。

 彼女をドレスの試着に連れて行った時、嬉しそうだったし「良かった…」としみじみ言った。

「お母さんに見てもらえる…」


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