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作品名:もう・・笑うしかない 作者:ののはな

第50回   そのU
 私は娘と孫が近くに住んでくれるだけで単純に嬉しかった。
果たして給料が出せるのか私の知ったこっちゃない。
愛人と手を切ればいいじゃないか。
娘婿が仕事に加わる事で何が変わるのか、新しい風が吹くのだろうか。
婿の手前、さすが愛人宅には行けなくなった様で、ほとんど同時に帰ってくる。

 まだ娘達の住む家が探せていないので、しばらくはこの家に居候をしていた。
おっさんにしてみれば、この家に帰って来るいいきっかけになったかも知れない。
そのうち、こんな規則正しい生活に飽きるとは思うけど。

 毎晩毎晩お酒を飲んでいるおっさんは、また同じ急性膵炎で入院した。
まさか今度は、愛人は関係ないと思っていたが、デジャブのような感覚に襲われた。
娘と病院に行った時、ついに ついにバッタリと顔を合わせてしまった。
当たり前だけど、挨拶するでもなく なんとなく見つめてそれからお互いに顔を反らせた。
愛人はすぐに帰って行った。
娘は始めて見る父親の愛人をどんな思いで見たのか。

「ライオンやない! あれはどう見ても『カバゴリラ』やわ、悪趣味やなぁ」

と、ケラケラ笑った。

「カバとゴリラが合体して、それってどんな顔? ちょっとひどいやないのぉ」

二人して声を殺して大笑いした。
二週間の入院で『カバゴリラ』と顔を合わせたのは一回きりだった。


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