おっさんの商売はもうピークを過ぎたと思われる。 商売の事でギラギラしていたおっさんが 少し柔らかくなった気がする。 商売も下り坂状態になってから、娘婿が商売を覚えたい、とおっさんに弟子入りを志願して来た。 どうしてもやりたいと言う。
「こんな商売は波がある、ええとは思えん、考え直せ」
と話し、安定した今の仕事をする様にと説得したけど聞き入れなかった。 おっさんを憧れの目で見ていたらしい。 婿には自分の父親がいないゆえの憧れかも知れない。 そう簡単に商売が出来るなんて思われては困る。 婿には娘と孫を守る義務がある。 面白いように儲かっている時代はもう終わった。 私から見てもおっさんから見てもまだまだ頼りない。 結婚さえ危なっかしいと思ったけれど、私達の昔を思えば似たようなものと許した。 今の会社を辞めて帰って来ると言って聞かない。 男はみんな頑固者だ。
おっさんには扶養家族が増えたようなものだけど、ちょうど免許無しで毎日タクシーを利用しているので、運転手が出来たと思えばそれもいいか……
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