コイツやっぱりライオンや。 棚を見たら、ずらりといろいろな物が並んでいた。 あんな化粧品使ってたのかぁ……愛人宅での生活ぶりが垣間見えた。 このやり取りを側で見ていたおっさんは、黙って痛みをこらえてた。 言葉も出ない様子。 あくまでも強くて引く事をしない女の態度に、並みの女じゃないなと感じた。 次にこの女は、自分が持って来て並べた棚の物を、片手に大きな袋を持ち片手でかき込むようにしてバラバラと袋に入れ、怒って帰って行った。
この病室の斜め向かいが、看護師詰め所になっていて、耳を済ませてこの様子を聞いているのが分かった。 ドアが開いているのも気付かずに恥ずかしい事だった。 深夜に愛人と本妻が言い合いしていたなんて、いい話のネタになった事だろう。 タイミングを見計らった様に、医師が静かに私の元へ歩み寄って来た。
「奥様ですか? てっきりあの方が奥様だと思って、病状の説明をしかけたら、ご主人が奥様に連絡してくれと言われて、違うと分かったんです。事情は分かりませんが身内の方でないと病状の事は言えませんので……」
「お恥ずかしい事ですが、あの女の人が付いて来たんですね」
「あの方の家で倒れられて、救急車を呼んで一緒に来られたんですよ」
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