20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:もう・・笑うしかない 作者:ののはな

第32回   そのV
 ある時、お金を持って帰って来て私に渡した後、すぐに出て行こうとするのを引き止めた事があった。
帰って来て欲しいと訴えた。もうプライドも何もない。
泣きすがる私の姿をもう一人の私が見ていた。

「無駄な事はやめな、分かるヤツじゃないよ、みっともないから泣くな!」

と言ってる。
おっさんは一言も言葉を発しなかった。
帰って来て欲しいと頼む事はもう二度としなかった。
開き直ってお金だけ貰ってたらいいじゃん……
今までも 何度も何度も開き直ったのに……
悠々自適、一人暮らしを楽しんだらいいと思うようにした。面倒な食事作りもないし、時間を好きなように使って好きにして暮らそう。
またパチンコに通うようになった。
 
 ある日私がパチンコをしている最中、台のガラスに映るおっさんの姿を見て驚いた。
私の背中に立って何やら言っていたけど、聞こえなくて台を離れた。

「何? こんな所まで来て」と言ったら

「今日は結婚記念日やし、何か食べに行こか……」

「何が結婚記念日? 一緒に生活もしてないのにアホらしい!」

ムッと ふくれっ面をした。
おっさんはすごすごと店を出て行った。
まだ私を疑ってる?それとも罪滅ぼし?
やり方が下手くそだよ。
二面性のおっさんの一面は蛇に睨まれた蛙。
もう一面はカマキリが両足を上に上げ威嚇する姿。

 数日後、夜も遅い時間になって救急病院から
電話がかかってきた。
何かがまたよからぬ方向に動き出していた。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 22232