「裁判を受けたり、証言台に立たされたり、それ以前に警察のお世話になったり、これってどこにでもある事やないよねぇ。あんた私に何か言う事あるでしょ。一言詫びてもいいと思うけど……」
と言う私に、開き直って逆切れしたおっさん。
「こんなもん どこにでもある事や! なんで謝らなあかん? 嫁さんなら誰でも協力するやろ! 自分だけ特別な事したと思うな!」
とぬかした。言語道断だ。何がおっさんをここまで冷たい人間にしたのか。
「嫌な思いをさせて悪かったな」
の一言で救われるし、人としてそれは当然の事でしょ。 好きなように生きて来て、好きな事をして、ずっと振り回されて、お金には代えられない大事なものが崩れていくのを、砂を噛む思いで味わっていた。
相変わらず帰らない日々が続いた。 新築当時はおっさんと同室だったけど、空き部屋があったので、私の部屋を作った。 ベッドや家具を買って私専用の部屋にした。 抜け殻になった寝室のおっさんのベッドを、腹立ち紛れにひっくり返し、マットも布団もバラバラに部屋に散らかした。 突然帰宅しても寝られない状態にしたのだ。 出来る抵抗は何にも無かったが、無駄な抵抗を試みては発散するのが精一杯だった。
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