サラリーマン生活25年目のある日。 某メーカーの、車のセールスマンのおっさんが突然
「会社辞めた!」
と、私に電話してきた。寝耳に水と言うか、晴天の霹靂と言うか…
何かがジリジリとよからぬ方向に動き出した。
この「会社辞めた」宣言の前に遡る事約一年。 当時営業所の所長を任されていたおっさんは、営業成績を上げるために日夜邁進していた。
帰宅は毎日夜中や明け方。接待やなにやかやで毎晩飲んでいた典型的な営業マンだ。 ぺいぺいの営業マン時代、車の契約台数トップで表彰された回数も数えきれなかった。 やり手で通っていたし、ライバルメーカーにも知れ渡っていた。
この営業所時代に、突然身体を壊して入院する羽目になる。 アルコール性肝炎で肝臓がひどくやられていて、3ヶ月の入院加療が必要と診断され仕方なく入院。
ところが、のん気に入院してる場合じゃない事態に追い込まれ、おっさんは何回か病院を抜けて家に帰り、書類などを持ち出したりして、慌てている様子が見られるようになった。
しまいには我が家の通帳の残高まで気にし出した。
「通帳と印鑑を出してくれ」
ははぁん 何かしでかしたな。
おっさんは何も語らずで私には訳が分からなかった。 後で同僚から聞かされた話に耳を塞ぎたくなった。
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