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作品名:もう・・笑うしかない 作者:ののはな

第28回   そのU
 裁判があと2日後にせまってから、私の言うべき事を教えられた。
嘘っぽくなく

「毎晩タクシーで家に帰って来ていました。誰かに送ってもらった日もありました。朝もタクシーで出掛けていました。○○タクシーを利用していました」

これが私の言うべき事だった。

腹立たしさでいっぱいだった。
よくもよくも私にこんな証言を!
家へ帰って来るときは、飲んで自分で運転して帰って来たじゃないか!
私のプライドがどうしても許さなかった。
なんでこんなヤツのために。
私にどんな仕打ちをすれば気が済むのか。
私には後にも先にも詫びられた記憶が無い。

本番の日が来た。
これで裁判官の印象が悪ければ、そしてうまく弁護してもらえなかったら…
もうひとつ、私の証言が正しくないと分かったら、おっさんは交通刑務所に行く事になる。
私も偽証罪になるのだ。

「奥さん、ご主人を刑務所に行かせたくなかったら、うまく証言してくださいね。単純に交通違反の裁判だと思わないように、紙一重ですからね…」

私はおっさんの事など、どうでも良かった。
ただ世間体を気にしただけである。

法廷はドラマで見るそれと、まったく同じだった。
しかし意外と狭く感じた。裁判官が正面壁の奥から出てくるのもドラマと同じ。
木槌みたいなのをコンコンと叩くのも同じ。
傍聴席には娘、娘婿、息子、おっさんの仕事関係の人。
小じんまりと行われた。


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