裁判があと2日後にせまってから、私の言うべき事を教えられた。 嘘っぽくなく
「毎晩タクシーで家に帰って来ていました。誰かに送ってもらった日もありました。朝もタクシーで出掛けていました。○○タクシーを利用していました」
これが私の言うべき事だった。
腹立たしさでいっぱいだった。 よくもよくも私にこんな証言を! 家へ帰って来るときは、飲んで自分で運転して帰って来たじゃないか! 私のプライドがどうしても許さなかった。 なんでこんなヤツのために。 私にどんな仕打ちをすれば気が済むのか。 私には後にも先にも詫びられた記憶が無い。
本番の日が来た。 これで裁判官の印象が悪ければ、そしてうまく弁護してもらえなかったら… もうひとつ、私の証言が正しくないと分かったら、おっさんは交通刑務所に行く事になる。 私も偽証罪になるのだ。
「奥さん、ご主人を刑務所に行かせたくなかったら、うまく証言してくださいね。単純に交通違反の裁判だと思わないように、紙一重ですからね…」
私はおっさんの事など、どうでも良かった。 ただ世間体を気にしただけである。
法廷はドラマで見るそれと、まったく同じだった。 しかし意外と狭く感じた。裁判官が正面壁の奥から出てくるのもドラマと同じ。 木槌みたいなのをコンコンと叩くのも同じ。 傍聴席には娘、娘婿、息子、おっさんの仕事関係の人。 小じんまりと行われた。
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