この商売はライバルも多い。 それにおっさんは、この商売仲間では中心人物になっていたらしく、統制の取りにくいこのエリアでの仕事を取りまとめていて、一目置かれる立場にあった。 ここでもまた顔を広めていた。 港湾内での車の運転は許可されていたらしく、船へ積み込む際には運転していた。 それを、ほんの少し外れた道路での逮捕。 公道にかかるかどうかの際どい場所で捕まった。 同業者のタレ込みで警官はその場で待機していたのだ。 無免許なのは事実だから、仕方が無かった。
シャバに出て来たおっさんは、タクシーを自分の足代わりに使い出した。 朝 出掛ける時も、仕事であちこち回る時も、夜中や朝方に帰って来る時も、遠方以外は常にタクシーだった。 3ヵ月後に裁判が決まり、判決が言い渡される。 弁護士さんの助言で、毎日とは言わないまでも、家に帰って普通に生活するようにと言われ、裁判の日までは寝るだけに帰って来ていた。
逮捕された事を私に詫びるでもなく、何事も無かった顔のおっさんが憎かった。 裁判の事も、間近になってから始めて細かな段取りを知らされた。 弁護士さんは家族も全員が法廷で傍聴するようにと言われた。 印象を良くするために家族愛を出すらしい。 家族のまとまりを良く見せる事が大事だと言われた。 まとまっていないのはおっさんだけだよ。おかしな話だわ。
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