娘が結婚準備で家を出る日が近づいて来た。 一足先に新居で準備に取り掛かる。
後で分かった事だけど、弁護士さんが式に間に合うように取り計らってくれたとか。 ギリギリセーフで 式には間に合った。 まったく人騒がせで、父親失格だ。 こんなハプニングあり得ない。 ひたすら隠し通さねばならない事件だった。
ところで 留置されてる人間が釈放されるには保釈金が必要になる。 これからまた話が盛り上がるのだ。 100万円の保釈金を誰が都合したのか… 保釈金は裁判が終わると返却される性質のものなので、誰が出してもいい訳だけど…
この事件の後、はっきりしたのは愛人が経理のすべてを取り仕切っていると言う事実。 中古車事情にも精通しているらしい。 愛人が用意した保釈金100万円。 もちろんおっさんの口座から引き出したものだ。
そして…… 留置中におっさんからの根回しで、別の人を経由して私にまとまったお金が届けられた。 結婚の準備金や娘のハワイへの旅費などである。 旅費は娘たちが準備し、国内旅行へ行くつもりだった。 それを 急きょ、おっさんがハワイへ行けと言い、父親らしい事をしたつもりだった。 これも愛人がおっさんの口座から引き出して、他の人に託したものだった。 私が預かり管理して当然のものを愛人に預けている神経に 言いようの無い怒りが湧いて来た。
ぶち切れ!…… 私は否定されたと思った。 仕事の手伝いをしないから、この仕打ちを受けるのか。
とりあえず、娘の結婚式は無事に終わった。 有名な景勝地にある素敵なチャペルで、大勢のお友達に祝福されて… おっさんは、何事もなかったような顔をして私の隣に座っていた。
痛みの分かる分身の様な娘が私の元から居なくなった。 なにやら 靄の向こうに手強い相手との戦いが待っている気がした。
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