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作品名:もう・・笑うしかない 作者:ののはな

第22回   差し入れから釈放まで・そのT
 一人ではとても警察などへ 差し入れには行けなかったと思う。
娘が居てくれて良かった!
10日間の留置と聞いていたので、差し入れについては娘と悩みぬいた。

「放っておけばいいわ! 着替えなんて必要ないし、あんなヤツのために私は何にもしたくないわ! 私の冷たい態度で思い知らせてやる!」

私がそう言うと娘は

「でもなぁ ちょっとどんなもんか社会見学のつもりで行ってみる? 話のネタにもなるし、それに一回も顔を見せん訳にはいかんわ」

と笑っていた。

「着替えの下着だけ持って行こうか、面会はどうする? どんな所か分からんけど、見たくないなぁ、あぁ 行くの嫌」

警察へ面会に行くなんて気遅れがする。

しぶしぶ、下着の入った紙袋を持って警察へ行った。
長椅子の置いてある待合には、3〜4人の人が座っていた。
あの人達は何だろう交通課に用のある人だろうか・・・
知ってる顔が居ないか、恐るおそる見渡した。

胸の高さまである やけに高いカウンター越しに

「あのぉ… 差し入れを持って来たんですけど、こちらでいいですか?」

警官の、それはそれは大きな声で はっきりと隅々にまで行き渡るような声だった。

「差し入れ? ええっと誰? 名前は?」

私は、極力小さな声で

「○○ですがぁ…」

「あぁ、ハイハイ! 袋の中身は?」

と警官。

やめてぇ〜と叫びたくなる様な恥ずかしい光景が目の前で…
下着の一枚一枚を袋から取り出して、それもご丁寧に広げて

「白いシャツが2枚、パンツ2枚、ステテコ2枚…」

決まり事なのか、全部を広げて確認し書き込みをする警官に

「やめてくれぇ〜!」

心の中で叫んでしまった。
長椅子に座っている人達の視線が、こっちに向いているのが目の端に入って来た。
娘も私も顔を見合わせて、吹き出しそうだった。
恥を越えて滑稽だった。

「面会はされますか? 会えますよ」

「いえ会いません、それを渡して下さい」

きっぱり! 早くこの場を去りたかった。
帰りの車の中で、メラメラと燃えた。

「差し入れってあんな事されるんや! 恥やなぁ」

「パンツ2枚やってぇ、ステテコやってぇ〜 ひとつひとつ広げる事ないやんね!」

「犯罪者の家族かい? 私達は… 面会なんてとんでもない! もう二度と行くもんか!」


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