一人ではとても警察などへ 差し入れには行けなかったと思う。 娘が居てくれて良かった! 10日間の留置と聞いていたので、差し入れについては娘と悩みぬいた。
「放っておけばいいわ! 着替えなんて必要ないし、あんなヤツのために私は何にもしたくないわ! 私の冷たい態度で思い知らせてやる!」
私がそう言うと娘は
「でもなぁ ちょっとどんなもんか社会見学のつもりで行ってみる? 話のネタにもなるし、それに一回も顔を見せん訳にはいかんわ」
と笑っていた。
「着替えの下着だけ持って行こうか、面会はどうする? どんな所か分からんけど、見たくないなぁ、あぁ 行くの嫌」
警察へ面会に行くなんて気遅れがする。
しぶしぶ、下着の入った紙袋を持って警察へ行った。 長椅子の置いてある待合には、3〜4人の人が座っていた。 あの人達は何だろう交通課に用のある人だろうか・・・ 知ってる顔が居ないか、恐るおそる見渡した。
胸の高さまである やけに高いカウンター越しに
「あのぉ… 差し入れを持って来たんですけど、こちらでいいですか?」
警官の、それはそれは大きな声で はっきりと隅々にまで行き渡るような声だった。
「差し入れ? ええっと誰? 名前は?」
私は、極力小さな声で
「○○ですがぁ…」
「あぁ、ハイハイ! 袋の中身は?」
と警官。
やめてぇ〜と叫びたくなる様な恥ずかしい光景が目の前で… 下着の一枚一枚を袋から取り出して、それもご丁寧に広げて
「白いシャツが2枚、パンツ2枚、ステテコ2枚…」
決まり事なのか、全部を広げて確認し書き込みをする警官に
「やめてくれぇ〜!」
心の中で叫んでしまった。 長椅子に座っている人達の視線が、こっちに向いているのが目の端に入って来た。 娘も私も顔を見合わせて、吹き出しそうだった。 恥を越えて滑稽だった。
「面会はされますか? 会えますよ」
「いえ会いません、それを渡して下さい」
きっぱり! 早くこの場を去りたかった。 帰りの車の中で、メラメラと燃えた。
「差し入れってあんな事されるんや! 恥やなぁ」
「パンツ2枚やってぇ、ステテコやってぇ〜 ひとつひとつ広げる事ないやんね!」
「犯罪者の家族かい? 私達は… 面会なんてとんでもない! もう二度と行くもんか!」
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