看護師として仕事をしていた娘が、結婚相手を紹介したいと帰宅した。 この時、おっさんは
「会ってもしょうがない、お前が見て良かったらそれでええ…」
と、家に帰ることをしぶっていた。 娘がぜひ会って欲しいと説得したら、一時間ほどだけ戻って来た。 もう結婚を決めてるなら会う事もないという不機嫌な態度だった。 正式な申し込みをしないと先へ進めないので、省く訳にはいかなかった。
娘は結婚の準備のために、一旦医院のお勤めを辞めて帰省して来た。 三ヶ月間をこの家で過ごす事になる。 この期間は私との思い出作りだと言った。 娘がこの新しい家に住むのは初めてだし、私も嬉しかった。 娘の高校時代は、何かしらギクシャクして、小さな対立は少なからずあった。 でも3〜4年の社会人生活ですっかり角が取れ、話もよく合う仲良し母娘になった。 結婚後に住むのは元の医院がある近くなので、また別の病院に勤め共働きをする。 この準備期間にいろんな所へ遊びに行ったり、新生活の買い物をしたりして楽しく過ごした。
娘のお陰で私は生き返った。 とりあえず今が良ければそれで良い。 おっさんもこの時は毎日ではないけれど、家には帰って来ていた。 娘の手前、取り繕っているのだろう。 私は娘に、これまでのもろもろの事情はすべて話して聞かせておいた。
この地で式を挙げないので、車で2時間程の所を何度も行き来して、式の段取りは全部自分達でやってくれた。 相談を受けながら、私の意見も取り入れてくれた。 嫁ぐ娘のために忙しく過ごす毎日が、母としてどれだけの充実感で満たされていたことか。
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