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作品名:もう・・笑うしかない 作者:ののはな

第19回   そのU
 ロシア人相手の商売がいつまでも続くとは思えない。
この不安感と退職金のない商売の先行きを心配した。
いつ何が起きてもいいように、そして私自身を守るためにと蓄え始めた。

銀行の利息が徐々に下がりだした頃、銀行や信金の預金はフリーズしておいた。
郵便局に新たな口座を設けて、これをメインにして私の策略が動き出した。
結果から言えば、5年の間に1,000万円の枠いっぱい迄の簡易保険に入ったのだ。
(証書の数が最高時には8冊。ここで細かく説明するのはちょっと…)
保障目的ではなく、貯蓄目的の保険なので、解約以外は引き出すことは出来ない。
この簡易保険が後々、私を助けてくれる事になる。

商売が絶好調になれば、当然税務署からも厳しい目が向けられる訳で、申告漏れを指摘されたり、脱税の疑いをかけられたりする。
経理に関わっていない私は、知る由もない事で…

ある日突然、慌てた様子で電話が掛ってきた。

「税務署のもんが今からそっちに行く! お前の通帳は全部隠せ!」

と言われても…
何? 税務署? 私の通帳まで見せる必要がある?
隠せと言われたからナイロン袋に入れて植木鉢の土の中に隠したけど…
こんな作業は何と嫌なものか。
すました顔して、花の手入れなどしていたら、今日のところは免れたと言って、税理士さんを連れて帰って来た。
あれま…隠す必要なかったのに。
税理士さんは、私のものまで必要ないと言われた。

また土の中から掘り出して、数冊の通帳を額に当て

「ありがとう、私の守り宝だしね…」

後で分かったことだけど、私はおっさんの事業所の社員になっていたのだ。
私へのお手当ては、給料という名目だった。
それも貰っていた金額より少なめに……


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