気楽そうで、お金が自由に使えて、優雅に暮らしていると誰しも思うだろう。 私も虚栄心に邪魔されて、外に向けては決して弱みを見せなかった。 悠々自適の暮らしぶりの裏にある、悶々と過ごす私の姿など誰にも見えない。
毎晩お酒を飲んで、泣く事が多くなった。 何でここまで放ったらかしにされなきゃいけないんだと自問自答した。 黙って始めた事とは言え、どんなふうに商売をしているのか、儲けはどれくらいなのか順調なのか、何にも知らない私はカヤの外だった。
私の歩み寄りが足りない? 私の協力は必要としている? 私の努力不足?
こういう商売は、ロシア人だけが相手ではない。 どういう訳かヤクザのような人間からの電話が、夜な夜なかかってくるようになった。
最初は丁寧な応対をしていた私も、何度も同じような内容の電話にキレて、相手のドスの利いた声に対して、私も負けずにドスを利かせて巻き舌で応戦した。 ある時など、飲んだ勢いも手伝って
「私が誰か分かって掛けて来てんのやろなぁ? おっさんが何をしたのか知らんけど、ここに電話しても無駄や! あんまりしつこいと、出るとこ出てやるわ!」
「オクサン、旦那の居所知ってるんやろ? 今そこの二階に居るんやろ? 居留守使うのは止めぇや!」
「知らん! 旦那がおかしな事してるなら、勝手に警察に突き出せば!」
いざとなったら私、気の強い女で動じる事はない。 でも家の周りで見張ってるのか、二階を見てるのか? 不気味ではあった。
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