この時期の私は精神を病んでいたかも知れない。 帰らない原因は薄々気がついていた。
夜中に出窓から眺める習慣がついた。 出窓の遠くに薄っすらと道路が見え隠れする景色。 そこを走る車のライトを見ていた。 あの角を曲がれば家への道、真っ直ぐ行けば違う。 きっと今日は帰ってくる…… 明け方までそうやって眺めながら帰らぬおっさんを待った。 時には好きなワインを飲みながら、涙しながら……
この時は2匹の犬が居た。柴犬は息子の代わり、ゴールデンレトリーバは娘の代わり。 ゴールデンを買う時、当時まだ人気上昇前で24万円ぐらいした。 おっさんはこれをポンと出してくれた。
この2匹には癒され助けられた。 ガーデニングと散歩に開け暮れた日々。 いかにも優雅で楽しそうに見えた私の暮らしは、人には分からない心の闇があった。 子供達が時々帰省する時には、ごく普通におっさんは帰ってくる。 そして美味しい物をいっぱい食べさせて、商売の話などして何てことない家族になる。 私も普通に接しているので、誰が見ても一家団欒の幸せ家族だった。
給料として貰っていたお金も、徐々に金額が多くなってきた。 儲かってるんだなと安心した。
一人で家具屋に行き、高級なアンティークの家具をセットで購入してみた。 100万円近くした。
「家具買ったし支払いして来てくれる?」
と電話で伝えたらあっさりと払ってくれた。 なるほどね〜こんな高いものが簡単に買えるんだと、ほくそ笑んだ。
これから徐々に私は強く、したたかなおばさんになる。 バブルは私にもオイシイ訳だし、開き直って人生を楽しんだらいいじゃん!
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