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作品名:もう・・笑うしかない 作者:ののはな

第13回   そのU
 この時期の私は精神を病んでいたかも知れない。
帰らない原因は薄々気がついていた。

夜中に出窓から眺める習慣がついた。
出窓の遠くに薄っすらと道路が見え隠れする景色。
そこを走る車のライトを見ていた。
あの角を曲がれば家への道、真っ直ぐ行けば違う。
きっと今日は帰ってくる……
明け方までそうやって眺めながら帰らぬおっさんを待った。
時には好きなワインを飲みながら、涙しながら……

この時は2匹の犬が居た。柴犬は息子の代わり、ゴールデンレトリーバは娘の代わり。
ゴールデンを買う時、当時まだ人気上昇前で24万円ぐらいした。
おっさんはこれをポンと出してくれた。

この2匹には癒され助けられた。
ガーデニングと散歩に開け暮れた日々。
いかにも優雅で楽しそうに見えた私の暮らしは、人には分からない心の闇があった。
子供達が時々帰省する時には、ごく普通におっさんは帰ってくる。
そして美味しい物をいっぱい食べさせて、商売の話などして何てことない家族になる。
私も普通に接しているので、誰が見ても一家団欒の幸せ家族だった。

給料として貰っていたお金も、徐々に金額が多くなってきた。
儲かってるんだなと安心した。

一人で家具屋に行き、高級なアンティークの家具をセットで購入してみた。
100万円近くした。

「家具買ったし支払いして来てくれる?」

と電話で伝えたらあっさりと払ってくれた。
なるほどね〜こんな高いものが簡単に買えるんだと、ほくそ笑んだ。

これから徐々に私は強く、したたかなおばさんになる。
バブルは私にもオイシイ訳だし、開き直って人生を楽しんだらいいじゃん!


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