面白い商売に乗っかったものだ。 しかし常に不安が付きまとっていた。
おっさんは生き生きとして、一人では抱えきれないほど忙しかった。 中古車の買い付けに京阪神まで出掛けたり、少々遠くても情報を仕入れては買い付けに走り回っていた。 手伝いをしてくれる人を雇ったりして、フル回転だった。
私はと言ったら… 一切手伝いはしなかった。 サラリーマンを退職する時、事前に相談もしてもらえなかった。 今度の商売も話し合うことなく、すでに始めていて事後承諾だった。
「お前には迷惑はかけん」…
こんな言葉だけで始めた事を、なんで手伝える? おっさんの都合だけで振り回されるもんかぁって、かたくなになった。 私には私の意地がある。 とにかく大事な事を何一つ話してくれず 隠し事ばかり。 ベールの下の本当のおっさんの姿をまだ知らない自分がいた。
おっさんの好きにしたらいい。 私は自分の好きな事をして暮らして行く。 生活費さえ貰っていればそれでいいと、自分を納得させようとした。 あくまでも受身で、責任転嫁かも知れない。 けれどせっかく建てたこの家に住む者もなく帰って来る者もいない。 寂しい、侘しい、空虚感、これは想定外だった。
おっさんは、時々しか帰って来なくなった。 私は好きなガーデニングに没頭し、一人で庭造りに励んだ。
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