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作品名:もう・・笑うしかない 作者:ののはな

第104回   よし! 決めた・そのT
 もう、愚痴るのはよそう。過去に固執するのはよそう。
分厚い壁にぶつけた言葉は、ただ跳ね返るだけ、言った分だけ空しさが残る。
愚痴っても何の変化もないし、文句の数だけ嫌な思いが残る後味の悪さったらない。
これっていったい何? 私は弱い者イジメをしているだけ?

 よく、相手が変わらないなら自分を変えてみろって言う。
自分が変わったら相手も変わる。昔、これを実践した事があった。
愛人の所へ入り浸っている時、言葉に出して帰って来て欲しいと言ったのは一回だけ。
 帰って来ないおっさんに、なんとか家に帰ってくるようにと努力した事は自分を変えることだった。おっさんへの憎しみと、冷たい態度を少し和らげてみようと思った。
かなり勇気の要る事だし、自分の弱さを出し認める事になる気がした。

 あの頃は、たま〜に帰って来ていたので、そのたまの偶然に掛けてみた事があった。
冬は、おっさんの寝室に一晩中暖房を入れて、いつ帰って来ても暖かい部屋にしておいた。無駄と知りつつも、毎晩タイマーをかけて暖かくした。
ふらりと夜中に帰って来て黙って寝ている事もあった。お互いに何も言わずに、当然のように振舞った。私はあえて何も言わなかった。

 気ままと思えるたまの帰宅にも、グッと我慢していつでも食事が出来るようにしておいた。食材を捨ててもいい、無駄でもいい。影の人間を相手にしてまるで茶番劇だった。拒否して、抵抗して、文句を言っても何も解決しないと思った。
胸の内には憎しみと苛立ちが溢れ出していたのに、表面は普通を装っていた。


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