「チクショー! 何でこんな癌になったんじゃ! わしの命は無いんか?」
「5年間何事も無かったらそれで無罪放免やって、医者に言われたやろ。そやから生きてることに感謝してまだやれる事をやらんとあかんと言う事やん。あんたは何にもせんし、身体も労わってないし不摂生してる。それに私に対してきちんとしておいてやろうって、責任が感じられんわ」
おっさんは、手術以来始めて自分の命が刻まれている事に気がついたのだ。 始めは脅しのつもりだった。酷なような気がしたが、これ程までにのん気とは思わなかった。自分の癌を理解していないのだ。のん気な性格だから、癌もおとなしくしていると思っていたけれど、遊ぶばかりの無駄な人生を送って欲しくない。
生き延びたらラッキーな訳だし、私だってなんだかんだと悪態もつかないでしょ。 自分を労わり前向きで仕事してる人間を殺したいなんて思わんでしょ。 おっさんはもしかしたら、自分の癌にヤケを起こしているのかもと思ったりした。 あまりにも自暴自棄に見えるから…
「わしは アホになったんじゃ!自分が良かったらそれでよい、考える事が出来ん頭になったんじゃ、アホなんじゃ!」と繰り返した。
飲みかけのビールを捨てて、私の前から姿を消すほどショックを受けたのだ。 気の小さな男のくせに強がってばかりで、寄らば大樹の陰とばかり私の陰で遠吠えしてる気の小さな男なのだ。 そうしてショックを受けたかと思いきや、もう次の日からは 忘れてケロッとしている。なんら、今までと変わりない。
怖いと思ったのは、ほんの一瞬かい! こいつにはいったいどんな血が流れ、どんな神経が通っているんだ? つき合わされてる私の身にもなってみろよ!
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