5年の交際は長かった。
中距離恋愛のもどかしさと、たまに逢っても決まりきった男と女のパターン化したものが 意味のない事のように思えてきた。 と言うより女としてこんな事続けてていいのだろうかと自分が嫌になってきた。 渡辺淳一の世界はあくまでも小説であって、現実と小説の狭間で主人公になった気分で楽しんでいる自分が見える。
私は仕事を辞める事にした。 ハードな仕事をしていたため、身体にも故障が出始めた。
アクションを起こさねば… まったくの独断で強行突破をはかる。
押しかけたのである、おっさんの元へ…
1年数ヶ月間の同棲生活は、親姉弟には知られないように細心の注意を払いながら、結婚へのプロローグとして楽しんだ。 今は当たり前に同棲する時代だけど、当時の私達には大冒険だった。 結婚の約束は漠然としていた。 お互いに暗黙の了解みたいなものがあっただけ。 頼りない事だけど、先ずはお金が必要だった。 私は結婚資金として蓄えていたので、ある程度の預金はあったけど、おっさんはまるでお金には無頓着で、預金などというものはまったく無かった。
結婚するにあたって、おっさんは母親から(父親はすでに他界)全てのお金を出してもらったと 後で知った。
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