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作品名:ロミオとジュリエット 作者:800

第4回   4
その日から、眞夢との隠れた電話は少ない回数だったけど続いた。
先生が、眞夢の家に遊びに行くときに、隠れて眞夢に電話を渡し、電話をしていた。

それ以外にも、メールをしているのに二人の会話が途切れることはなかった。
今考えると、このときが一番幸せだったのかもしれない。

そんな毎日の中いきなり眞夢からの連絡が途絶えた。

僕は一気に絶望まで達していた。

先生からその理由を聞き出そうとも思ったが、先生も忙しくなかなか眞夢に会いに行く時間も、お兄さんと連絡をとる時間もなかった。

そして一週間が過ぎたぐらいに先生からいきなり連絡が来た。

その連絡によると眞夢は親の都合でいきなり東京に連れていかれてしまっていたらしく
そのうえパソコンが壊れてしまっていてメールができなくなっていたらしい。
眞夢はパソコンが壊れたことに気が付かず、僕がもうメールを送ってないと勘違いをし、ショックで毎日泣き、毎日ご飯を少ししか食べられなくなっていた。

眞夢のお兄ちゃんが心配をして先生に連絡をとったらしい。

僕は一気に心配になってなんとか眞夢と連絡が取れないかを先生に問いかけた。
なんとか考えて見る、と答えた先生の電話をきったあと僕は気が気じゃなかった。
何時間たっただろう?時計を見て見るとまだ何時間もたっていない。たかが三十分しか時間がたっていなかった。僕は待つ時間は嫌いな方ではなかったが、僕の心は明かに時間が進まないことにイライラしていた。
心では平常心を保て。と脳が心に命令する。
だけれども、それとは裏腹に僕の思考回路は、次々に悪いことばかり考えていた。
今まで僕はそんな経験をしたことがなかった。
誰と付き合っていても、これだけ焦り、これだけ人を心配したことはなかった。

いらぬイメージが心に溢れ返りそうになったとき、僕の携帯が激しいマナー音で僕を現実に引き戻した。
画面には先生と言う文字。
僕は高鳴る期待と不安な気持で携帯をとった。
明かに焦っている先生が分かったのは、たぶん携帯から聞こえる空気音だけではなく、雰囲気みたいなものも一緒に届けていたのかもしれない。
一呼吸おいた先生が「眞夢ちゃんと電話ができるよ。ただしお兄ちゃんにばれないように電話するから非通知でかかってくるからとってやって」と言われた。僕は一瞬でこんな状態になってまでも、メール以上のことを許してはくれないぐらい、僕は嫌われているっと思ったけど、僕にはそんなことよりも眞夢と電話できるのと、眞夢が今どういう精神状態なのか?と言うことと純粋に眞夢を心配する心がそんな不安を打ち消した。
僕は、「うんわかった」と答えて先生の電話を切って眞夢からの電話を待った。
今度は、すぐに非通知の着信が僕の携帯に鳴り響いた。
僕はいろいろな感情を押し殺し深呼吸をして携帯の通話ボタンを押した。
一声目から聞こえたのは、眞夢の子供のようなヒックヒックというしゃくり上げるような本気で泣いている時の泣き声だった。
僕は、胸が苦しくなったが、彼女に「大丈夫?眞夢?」と話しかけた。
自分でもびっくりするぐらい訊いたことのないすごく優しい声で彼女に聞いた。
眞夢はしゃくりあげながら、「眞夢は…悪いことをしているの?」っと、泣きながら感情が泣くことに必死で彼女の言葉が途切れ途切れにしか話せない本気の泣き声だった。
初めて耳にした眞夢の声。
いまだに忘れてはいない。
いまだに思い出せば聞こえてくるあの声。
まるで、子供が母親に怒られて泣いて謝る声に近かった。おまけに彼女は鼻声だったのでそのせいで、より彼女の声は子供っぽく聞き取れた。
「なんでそう思うの?」子供の声の眞夢に優しい声で聞いてみた。
相変わらず初めて聞いた自分の声だった。
だって、と彼女は続けた。「眞夢がしたいことは、全部眞夢は子供だからお兄様の言うことを聞いていたらいいんだ。って言われるし何をするのも全部否定されちゃう。眞夢はそんなに悪いことをしているの?」
眞夢のか弱い幼い声。
僕は胸が苦しくなり、呼吸をするのもやっとだった。
「眞夢はなにも悪いことはしてないよ。ただ少し周りが見えてないだけだよ?わかるよね?眞夢がしたいことをたくさん言うのは成長していってる証なんだよ?だけど今回の件は、少し感情を抑えきれなくて、周りの人を心配かけさしちゃったやろ?それのせいでみんな心配したんだよ?お兄さんも、先生も、群さんだってすごい心配したよ?お兄さんだって眞夢がこんなに群さんの事を好きなのを知らないし。何も言わないで眞夢の気持ちは伝わらないよ」
眞夢は泣きながら理解してくれたみたいで「お兄様にちゃんと気持ち伝えてくる。本当は連絡が取れなくなって群さんに嫌われたかと思いました」

僕はなぜだか胸が苦しくなって口から突然言葉が漏れた。
「群さんはまだ眞夢に逢ったことはないけどすごく眞夢のこと大好きだからそんなことを不安にならなくてもいいんだよ」

眞夢は泣きながらわかったと僕に伝えお兄様に話をしてくるっと言って、2人は電話を切った
今でも忘れない二人が初めて声をかわした瞬間だった。
甘く切なく、そして二人がお互いを実感した日でもあったし、僕にとっては乗り越えなければいけない壁が、予想以上に大きいのだと実感し、眞夢を一生愛していくのだと決心を決めた日でもあった。

それからの話は先生から聞いた。
眞夢はそのあとお兄さんに大好きな人ができて早く大阪にかえりたいと。
だけどお兄さんは曖昧な返事をしてとりあえず大阪に帰ってきたと言う。

とりあえず帰ってきたものの、二人が逢えない理由があり、それでも2人の愛は確実に色濃くなっていた。


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