彼女と出会ったのは、丁度一年前の今日。 僕が18歳の頃、コンピュータの専門学校に入り、初めての国家試験に望んだ時だった。
その時の僕は、大学受験に失敗し、なんとなく専門に入り、あまりやる気がなく、夏休みの間に、彼女が他に好きな人ができフラれたての時だった。
正直あの時には何に対してもやる気がなく、無気力なままやりたい事を見つけられないまま、ただただ、年を重ねる毎日だった。
時間は無情にすぎ、そのたびに後悔に苛まれていく、そんな生活を送っていた。
そんなやる気のない僕に、学校で唯一仲のいい女性の先生がいた。 傷つきやすい癖に、周りのために一心になり自分の信じたことを身体が警告サインを出してまでもしてしまう。 そんな人だった。
そんな先生だからこそ学校では男子女子に関らず、人気の高い先生だった。
余にもやる気を出さない僕に、先生がある条件を出した。 「もしお前が試験に合格したら、女の子を紹介したる」 この言葉がすべての始まりで眞夢と僕の物語の始まりをつげる言葉だった。
結局、その条件を受けたわりには頑張ろうとせず、ただ先生の前だけではやる気を見せていた。 結果、僕は試験を落し、だけどやる気(先生の前だけ)は見て取れたので女の子を紹介してもらうことになった。
運命の出会いは、いきなり交差点でぶつかるような、不自然としか思えない運命のいたずらから導き出される出来事。 そんな風に思っていた。
だけど、そんなものは、ドラマの見過ぎで本当の運命の出会いは、まるで魚が海を泳いでいるように、鳥が空を飛んでいるようにごく自然に日常の生活の一つの流れにあると思う。
僕はまだその時は運命の人に出会えた事をこのさき自分の人生のもっとも大きな大事な部分をもつことに気づいていなかった。 それは眞夢も先生も僕も同じことだったと今は思う。
紹介してもらった女の子は一つ年上で、名前を眞夢といい、医者の娘さんで、両親は海外におり、今は実質、眞夢の両親変わりには、兄弟の歳の離れたお兄さんがしていた。
先生はお兄さんとも仲がよく、昔はよくお兄さんの家に遊びに行っていたことがあり、 そこで眞夢とも、仲良くなったのだと言う。
眞夢は今どきめずらしい子で携帯も持ったことがなく、日々親の決められていたエリートコースを歩かされていた。
眞夢はパソコンで僕は携帯と言う手段を使いメールで2人の出会いが始まった。
眞夢は初めての経験で、僕にとっても今まであったことのない人とのやり取りで、今だに言葉が思いつかないけど、すごく新鮮で言葉一つ一つで相手の事を必死に感じ取ろうと言う意志が二人にはあった。
日本語と言う、世界の一握りの言語で、数少ない言葉をできるだけこまかく相手に伝わるように、活字だけという狭い空間の中で、精一杯に、お互いを伝えた。
勉強していない時やご飯を食べていない時、すべてのあり余る時間を二人を近づける作業に費やしていた。
それはすごいゆっくりだったけど。 だけど、僕と眞夢にとってその瞬間が何よりも魅力的で何よりも愛おしい行為だったと思う。 そのころの僕は運命なんてまったく信用していなかったけど、今なら言える。 出会い方はロマンチックとは異なる。 けれど、これから僕は生きていく中でただ一人の運命の人に出会ったんだと今は胸を張って言える。
そんな2人の甘い何か。 言葉では到底表現しきれない気持ち。 相手の連絡を待つ時間でさえ、いとおしく感じていた。
そんな中、日々は狂った様に進んでいった。 僕はもっと眞夢を知りたくなり眞夢ももっと僕を知りたくなっていった。
その課程は、普通だったと思う。 「これからなんて呼べばいい?」 「友達からは下北さんって呼ばれているんですけど、なんだか他人行儀で嫌なんです」 「じゃあ、下の名前で眞夢って呼ぶよ?」 「はい。じゃあ私はなんて呼べばいいですか?みんなからはなんて呼ばれているですか?」 「みんなからは群とか呼ばれてるけど…」 「じゃあ、群さんて呼んでいいですか?」 「うん。いいよ。でも眞夢から群さんて呼ばれるなんて想像どおりだな」 「どうしてですか?」 「だって、眞夢なんだか硬い感じだから。敬語使っちゃってるし。」 「そうですか?じゃあ、敬語も使わないようにしていきますね?」
みたいな感じだった。段階を踏みながらお互いを知っていった。 結局眞夢が僕に対して敬語を使わなくなったのには二ヶ月ぐらいかかったけど… そしてキミはどんな容姿をしているの? と言う問いかけにいたるまでそう時間はかからなかった その時にはすでに一ケ月ぐらい過ぎていたと思う。
僕は自分の写真を送り、眞夢も自分の写真をお兄さんに教わりながらパソコンで送ってきた。
この時僕は自分のした愚かな行為に何一つ気づいていなかった。
お互いの容姿も知り、 この顔の人が群さん。 この人の顔が眞夢。 と言う風に、お互いをまた一つ知っていった。
そのころにはもう眞夢には初めての、僕にとっては、ほかの人とは違う何か特別な感情。 愛しています。が身体全体を認識していった。
本人の知らないところで悪いことは成長していく。
僕は毎日と同じように眞夢からの連絡を待ちながら学校の授業を受けていた。
そこはいつもと変らない。 そう思っていた。 突然先生から呼び出しをくらい、お昼休み先生に逢いに行った。
そしたらいきなり 「眞夢ちゃんに写真送ったやろ?」と険悪な顔で言われ、素直に僕は送ったと言った。 「その写真お兄さんが見て激怒しているらしい」と先生が言った。 「なんで?」と答える僕。 理由はなんとなくわかっていた。 だけど、しまったと思った感情と、もしかしたら違う事なのかもしれないと思う期待感が この言葉を口から出していた。 「髪の毛染てるのが、その辺にいるチャラいやつに見えたらしくて、そんな子とメールしているなんいて知らなかった。と言って激怒している」と言われた。
そのあとも、いろいろ言われていたけど、頭の中が真っ白で何を言っているのか理解できず、否定だけを残し、僕は授業に戻っていった。
その後も、普通に眞夢からメールは着ていてお互いを知る作業をしていた。 たぶんこの時は眞夢は知らなかったと思う。 2人の事をお兄さんが否定し始めていること。
僕はその中で眞夢のために自分のために戦って行く事を誓った。 そんななかで不思議だったのが、そんな僕を否定しているお兄さんがなんで僕と眞夢との連絡をとるのを許してくれていたのかだった。
ある日眞夢といつもと同じようにメールをしていた。 不思議と2人のメールは長文だったのに話が途切れることも、話すことを考えることもなかった。 むしろ、早くこのことを伝えたい。もっと知ってほしいと言う気持ちの方が強かった。 そんな中、眞夢からお兄さんと先生は昔付き合っていて、結婚まで考えていたらしかった。 眞夢からの話によると、お兄さんはまだ先生のことが好きらしかった。
なるほどな。と僕は思った。 先生との復縁かもしれないチャンスを使っているんだなと思った。
次の日から、髪の毛の色を黒に染め、前から計画立てていた、眞夢に逢うということを実行しようとしていた。
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