20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:潮風のセレナーデPARTUバトル編 作者:HAPPYソフィア

第8回   オッパ、オレガンマニエヨ。
サヤカ:「・・・じゃあ、ソラミ、あなたのクラスの出し物は、
       ミュージカルなのね?」

  ソラミ:「 ええ・・お母様、先生がお話とか作ったりする
        って言ってたわ・・・ソラミ、お姫様がやりたい
        なぁ・・・でも、呉マヤがピアノを弾くみたい
        だし・・・主役はシオンになるかもしれない・・」

  サヤカ:「え?! シオン?シオンが何で主役なの?」

  ソラミ:「・・・クラスでは人気者だし、、お勉強も運動も
       凄く良く出来るの・・・それに・・それに・・」

  ソラミはとうとう耐えられずワンワンと泣きだしてしまった。

  サヤカは、益々、惨めな気持ちになってきた。
  いつだってサヤカは、カノンの上を歩いている筈なのに、
  サヤカの一番欲しい物は、カノンに奪われてしまう・・・
  (この惨めな気持ち・・この悔しさにも似た憎悪・・)
 
     母娘揃って同じ思いをしなければならないなんて!
     絶対に許せない・・耐えられない・・・

   サヤカは「ソラミ、泣くのはおよしなさい。
        あなたの気持ちは、分かったわ。
        お母様に任せておきなさい。」

   そう言って、サヤカは立ちあがり、電話をかけ始めた。



  カイトは、そんなサヤカを見て、自分の悩みなど、少しも
  聞いて貰えない事を悟り、おやつを黙って食べて、部屋に
  引きこもってしまった。

  カイトの幼稚園はイテオン国際教育幼稚園と云って、リラ
  幼稚園に次ぐ人気のある幼稚園で、レベルもかなり高かっ
  たし、国際と名がつくことから、欧米やアジアの先進国の
  ハイクラスの子供たちが通っている。
  公用語は英語であり、母国語は殆ど使ってはいなかった。
  カイトは物ごころついた頃から、英才教育で、英会話も
  習ってはいたが、やはり韓国で生まれ育った為、韓国語や
  母親の母国、日本の日本語が良かった。
  気持ちも父親の海仁に似たので、穏やかで大人しい男の子
  だった。故に、幼稚園の生活は、目立たない物静かな園児
  で、成績もパっとせず、友達もいなかった。
  専らの友達は、部屋で飼っている熱帯魚だった。
   水槽に手をあてながら、カイトは静かに泣きだした。
   幼稚園なんて行きたくない・・・
   毎日が、つまらない・・・
   お母様は嘘つきだ・・・
  リラに合格すれば、好きな事を幾らでもさせてくれるって
  言ったのに・・・
    僕はリラに合格したのに・・・
    ソラミは不合格だって塾の先生は言っていた・・・
    でもソラミがリラで、僕はイテオン・・・
    お母様はソラミ、ソラミ、ソラミばっかりなんだ・・


   サヤカは、のちに大きな時限爆弾になるカイトの事を
   まだ何も知らずにいた。
   それよりもリラで自分の娘のソラミが1番になり、更に
   自分自身が父兄の中でリラの女王になることを、
   目指していた。


   特に親戚の従姉妹であるカノンには、負けたくないと
   強く思っていたのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 韓国風すき焼きのプルコギのプレート鍋を囲んで、今夜も
 李家の食卓は、笑い声が絶えなかった。

 ソンジェ:「・・そっか、じゃあ、シオンがミュージカルが
       いいって言ったんだね?」

 シオン:「うん、あのね、皆が一杯出られるものを考えたの。
      お芝居も、音楽も、踊りも全部、出来るものを、
      一生懸命考えたの・・・そしたらね、この前、
      日本に行った時、アニーのミュージカルを見に
      行ったのを思い出したの・・・」

 カノン:「わぁ〜、シオン、凄いね〜、考えたのね?」

 シオン:「うん、だってね、皆、歌が上手な人、ピアノが
      上手な人、踊りや演技が上手い人とかたくさん
      たくさんなの・・だから・・・」

 ソンジェ:「凄く楽しみだね〜、アッパは、お仕事をお休み
       にして観に行くからね?」

 カノン;「オボニナレは丁度、5/9だから、オッパちゃんは、
      お仕事がオフみたい・・良かったねぇ〜」

 シオンは「やったあ!!」と言いながら、大きな口を開けて
 野菜に包んだプルコギを食べた。
 食べながら、少し不安になった・・

  シオン:「オンマ、アッパ・・あのね?」

     「ん?なあに?」とソンジェとカノンは言った。

  シオン:「シオンは、歌も楽器も、踊りも演技も
       下手くそだから・・・多分、主役じゃない
       し・・ちょっとしか出番がないと思うけどぉ
       ・・・」

  カノン:「ん?・・だから何?」

  シオン:「・・でも、観に来てくれるの?」

  ソンジェ:「当たり前じゃないか・・可愛いシオンが
        出るんだもの。どんな役だって、アッパや
        オンマはシオンが主役だよ。ハハハ。
        心配なんてしないでいいよ。アッパたちは
        シオンが元気に楽しく幼稚園に通っているだ
        けで幸せなんだから・・ねっ、ママもそう
        だろう?」
  
  カノン:「そうよ、シオン、シオンがいるだけで、幸せ
       なの・・ミュージカルで、もしね、1つも出番
       がなくても、ママもパパも平気・・
       心配しなくて良いからね。」
       
  シオンは二人の言葉に安心して、「プルコギ、美味しいね?」
  と云って、野菜の上に沢山のプルコギを入れて巻いて食べた。

   
 
 シオンは子供心にも、恐らく自分には分相応な事を感じ取って
 いるのかもしれないとカノンは思った。
 ソンジェもまた、リラ幼稚園は、韓国最高峰の幼稚園であり、
 才能に溢れた園児達の集まりなので、シオンは普通の幼稚園児
 であり、ちゃんとその事を子供ながらも分かっているんだなっと
 思った。
 
 世の中の不公平や、格差、才能、環境、、、諦めなければなら
 無い事、諦めては行けない事、我慢する事、譲る事、、、
 それらを1つ1つ経験して大人になって行くのだろうと、ソンジ
 ェもカノンも思い、二人は見つめあって笑った。


 
 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



  


  幼稚園では、各クラスの出し物のチェックを
  園長がして、許可を出す事になっていた。 
  一人一人のクラス担任が園長室に呼ばれて、
  面談があった。

  「ユリ先生、どうぞ、お入りなさい。」

   「失礼します」やや緊張して、ユリは園長室に
    入り、腰掛けるようにと言われ、ソファに腰
    掛けた。

  園長:「ムグンファ組は、ミュージカルね?台本を
      観ました・・ミュージカルは大いに賛成です。
      沢山の園児が沢山の出番が与えられ、歌や
      踊り、お芝居もあってご父兄たちも大満足
      だと思います・・」
  ユリは、少し嬉しくなった。「・・それじゃあ・・」
  と、言いかけた時に、

  園長:「ですが・・この台本はいただけませんわ・・」

  ユリ:「え??・・どうしてですか?」

  園長:「皆が知っているお話でないと・・・
      シンデレラとか、白雪姫とか・・どうかしら?」

  ユリ:「私の作ったお話ではダメなんでしょうか?」

  園長:「・・そうね、ダメね・・ご父兄は、やっぱり
       自分達も知っているお話が良いのよ・・・」

  ユリ:「でも、そうしたら、不公平感が生まれます。
      出番が殆ど無い子だっています・・」

  園長:「それでいいのです・・リラ幼稚園だからです」

  ユリ:「・・意味が分かりません・・」

  園長:「リラに集まる子供たちは、才能に溢れている
      素晴らしい子供達ばかりなの・・そんな素晴
      らしい子供たちでも、優劣はあるわ・・」
  
  ユリ;「それじゃあ・・差別ですわ。」

  園長は少し、眉間にシワを寄せて「・・ホホホ、これは
      差別ではなく、区別です。演劇が上手い子、
      歌や踊りが上手い子は当然、役に入れるけど、
      ダメな子は・・いえ決してダメなわけではない
      けれど、秀でた優秀さがなければ、役は掴み
      取れ無い事を知る事も大切なの。競争社会が
      激しい韓国では、幼稚園から・・いえ生まれた
      時から競争は始まっているの・・ユリ先生だって
      韓国に生まれ、育った韓国人でしょう?競争は
      当たり前ではないですか?それともあなたは、
      平等を行使して、つまらない三流芝居を子供た
      ちにさせますか?」

  ユリは、何と言葉を返して良いか分からなかった・・

  園長:「では、ムグンファはシンデレラでお願いします。
      主役のシンデレラは金ソラミ、王子は林ユナク、
      後の配役も私が決めました。これが配役の表です」

   ユリは、その表を見て「え?」っと思った。

   ユリ:「園長先生、シンデレラは李シオンが良いと
       思うのですが?」

  園長は首を横に振りながら「いいえ、シンデレラは金
  ソラミで行きましょう。李シオンは、庭の桜の木です。
  彼女に適任です。」と云って笑った。

  ユリ:「・・そんな、、そんな、、桜の木には台詞は
      あるんですか?」

  園長は冷やかに「・・そうねぇ、ないわねぇ、、でも
          皆で歌ったりする部分があるから良
          いじゃない?」
           と言った。

  そして園長は、台本、配役表をユリに渡して、次の
  チューリップ組の先生を呼んだ・・・

  有無を言わせず、ユリは園長室から追い出された。

  

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 音楽教師のヒジョンがユリを見つけて近づいて来た。

 ヒジョン:「ユリ先生、どうでした?OK貰えた?」

 ユリ:「・・ええ、一応、ミュージカルでOKが出た
     んだけど・・でもね、出し物や配役は、全部、
     園長先生がお決めになったの・・・」

 ヒジョン:「え?本当?」

 ユリ;「うちは・・シンデレラでね、配役がこれなの・・」
  
  ユリはヒジョンに台本と配役表を見せた。
  ヒジョンは、それらを見て、ワナワナと震えだした。

  「何これ?・・・シオンちゃんが桜の木?!」
   ヒジョンはビックリしながら言った。


 ユリ:「ええ、そうなの。台詞も殆どないし・・・
     私はシンデレラの役が良いと思ったのに・・」

 ヒジョン;「私もそう思うわ。何これ、酷いわ・・
       でも、園長先生には逆らえないものね・・」

 ユリは「・・ええ、、そうなのよ・・・これで行くしか
     ないわ・・私、切ないわ・・・」

   っと言って心がチクチクと痛みだしていた・・



 教室では、今か今かとユリが来て、出し物や配役の発表を
 待つムグンファ組の園児達がいる・・・

 ヒジョンは、「ユリ先生が言いづらいなら、私が代りに
        言いましょうか?」と云ったが、ユリは
  「大丈夫、自分のクラスだから、自分で言うわ・・」と
  言って、教室に入って行った。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 ユリ:「皆さん、お待たせしましたぁ、オボイナレの
     日の出し物の発表をします。
     先生も、幼稚園の先生や園長先生たちも皆で
     考えました。ムグンファ組は、ミュージカル
     シンデレラになりました。
     今から、配役を黒板に書きます。」

 生徒達は、わぁ!!っと言って、ドキドキした。

 「シンデレラ」と言う題名を見た時、皆が、シオンを
  見て、「シオンちゃんだ」と言った。
  シオンは、そんな事は無いよとは言いながらも、少
  しだけ期待をしていた。


  ユリは、シンデレラと王子様の役は最後の方にして、
  次々と配役を書いて行った。

  そしてシンデレラと王子の役を書いた。

   シンデレラ ー 「金 ソラミ」
   王子様 ー 「林 ユナク」
  

   そして最後に桜の木 − 「李 シオン」


  と書いた。


  教室は、シンとなった・・何でシオンちゃんが
  シンデレラじゃないの?
  何で桜の木なの?・・・

  ソラミだけが一人でハシャイデいた。
  やっぱり私がお姫様・・・シオンは唯の桜の木・・


  ユリ:「さあ、皆さん、役が決まりました。
      何か意見がありますか?」と云って、やや
      威圧するかの様に教室を見渡した。

  皆は何も言い返せなかった。シオンは、下を向いて
  いたが、やがて顔を上げ、うんと大きく頷いて笑顔
  になった。
  オンマもアッパもシオンがどんな役でも構わないと
  言ったし、1個も出番がなくても良いとも言ったの
  を思い出した。
  桜の木と言う役が貰えただけでもいいじゃないかと、
  シオンは思い、その役を一生懸命やろうと思った
  から笑顔になれたのだった。


 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 休み時間になってソラミは有頂天だった。
 わざとシオンの前に来て「やっぱり私はお姫様・・
 シオンは唯の木の役じゃない・・・凄く似合ってるわ。」
 と、言った。

 ヨンスはネズミ役、クミョンは踊りが上手いことから
 意地悪なお姉さんの一人になっていた。

 ヨンス:「シオンちゃん、桜の木で可哀相・・」

 クミョン:「シンデレラはやっぱりシオンちゃんだよ」

 クラスの皆も、そうだそうだと騒ぎだした。

 シオンは「ううん、いいの、これでいいの。桜の木の
      役で、シオンは良いの」と云って笑ったが、
      やはり少し悔しかったのか?涙がポロポロ
      こぼれていた。

  ソラミ:「そんなこといっても泣いてるじゃない?
       シオンはお姫様役なんて絶対出来ないよ」

  マヤも一緒になって「そうよ、生意気よ、何でも
            自分の思う通りになんてならない
            のよ!あんたは生意気だったから
            木の役がお似合いよ。ばぁか!」
  と云って、笑った。マヤはちなみに、舞踏会ではピアノ
  を弾く貴族の役と、ミュージカル中のピアノ演奏を任
  されていた。


  
 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−




 いつものように、ジェファとシオンは帰りのバスに乗り、
 地下鉄に乗り込もうとすると、クラクションが鳴った・・


    「サムチョンだ!!」

 二人は、サムチョンの車の方に走り寄った。

 サムチョン:「やぁ、イケ面ボーイジュニアとイケテル
        アガシ、今日も会いましたね?
        これから帰るけど、乗って行くかい?」

        と言った。シオンもジェファも顔を見合わ
        せて笑った。後部座席に二人でいつものよ
        うに乗った。

  
 車に乗ってから、直ぐにシオンは、話し始めた。

 「サムチョン、ジャファお兄ちゃん・・シオンね、
  ミュージカルでね、役を貰ったんだけど・・・
  えっとね・・そのお・・」となかなか言い出せない
  ハッキリしない言葉でモゴモゴしているシオンを、
  サムチョンは笑いだして、「可愛いアガシさん、一体
  どんな役なの?役があるだけ、凄いじゃないの?」と
  云って笑った。

 シオン:「二人とも笑わない?」

 二人:「笑わないよ・・」

 シオン:「シンデレラのミュージカルなんだけどね、
      、、シオンは桜の木なの・・」と小さな声で
      言った。

 ジェファは「え?」っとやや驚いて、何故、主役じゃない
 のかと思ったが、サムチョンは優しく微笑んで

  「わあ、アガシ、良い役だね〜」と言った。

  今度はシオンがビックリして「え?」っと言った。

 サムチョン:「桜の木は、恐らく舞台の最初から最後まで
        出ているから、1番、出番が多いし、お父
        さんもお母さんも嬉しいと思うよ。可愛い
        アガシの顔がずっと見る事が出来るしね。
        それにアガシのママは日本人だろう?
        日本人が1番好きな花はサクラなんだよ。
        桜には日本人には並々ならない思いがある
        んだよ。そのお花の木の役をやるなんて、
        凄いよね?」と云って笑った。

 シオンはサムチョンの言葉を聴いて、元気になった。
 そうか、桜の木の役は、ずっと舞台に立ってられるし、
 オンマもアッパも見ていてくれる良い役なんだと思い
 始めた。
 
 ジェファも「流石、サムチョン、良い事言うね?
       そう言われると、何だか、桜の木の役って
       結構、大変だし、重要なポジションかもしれ
       ないね?」と言った。



 シオン:「オンマもアッパも喜んでくれるかな?」

 サムチョン:「うん、きっと喜んでくれるさ。
         だって可愛いアガシの大好きなお父
        さんとお母さんだろう?元気一杯に言う
        と良いよ。」

  シオンは「うん」と元気よく言って、ニッコリ笑った。

  サムチョンはそうは言いながらも、何故?シンデレラの
  役になれなかったのか、不思議でならなかった。
  キラキラした大きな瞳、アイドルみたいな可愛い顔、
  話し方も声も可愛いし・・・
  スタイルもやや小柄ではあるが良いし、誰からも愛さ
  れる女の子だからだ・・・
  ジェファも、いつも可愛いと言っているし・・・
  韓国の幼稚園最高峰のリラ幼稚園では、こう言った
  女の子でも、上には上がいるのだろうか?

  「よし!じゃあ、サムチョンは、ジェファとシオン
   アガシの為に、オボイナレの日に観に行こうかな?」
   っと言って、二人を喜ばせた・・・



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 そうは言っても、シオンは、大好きなオンマの顔を
 見ると、「ただいま」は言えても、自分が桜の木に
 なった事が、言えないでいた・・・
  アッパが帰ってきたら、言おう!そう思って、
 後回しにしていた。

 
 カノン:「シオン、今日はアッパが早く帰って来る
      みたい。ご飯は手巻き寿司にしようか?
      自分で好きなものを巻き巻きして食べる
      の。どうかな?」と云って笑いかけたが
    シオンはカノンの笑顔が眩しくて、目のやり
    場に困りながら、「うん」と云ってTVを
    見ている振りをした。
     TVはシオンが大好きな日本のアニメだっ
    たが、見た気がしないくらい、シオンは気
    持ちが沈んでいた。
 

  何度も何度も頭の中で、どう話を切りだそうか?
  どうやって話をしようか?シオンの頭の中は、
  ぐるぐると考えや言葉が回っていたのだった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 一方、ソラミは満面の笑顔で「お母様、私、シン
 デレラのミュージカルでシンデレラ役になったの。
 お姫様で主役になれたの。凄く嬉しいわ。」っと
 帰りの車の中で言っていた。

 運転をしながら、母親のサヤカは、ふふんと、
 当然よと言った顔をしながら、嬉しそうに聞いて
 いた。
 サヤカ:「じゃあ、シオンは何をやることになっ
       たの?」

 ソラミ:「えっとね、木をやるの。」

 サヤカ:「え?」

 ソラミ:「木、唯の木なのよ。」

  サヤカは吹き出してしまった。
  「木ってお庭や、道にあるあの木?台詞とか何も
   なさそうな、ただ立ってるだけの木なの?」
   っと聞いてみると、ソラミは「うん、その木」
   と言った。サヤカは愉快でアハハハと笑いだ
   してしまった。
   園長先生に感謝だわ、こんな愉快な事ってない
   わ。シオンが唯の木・・でくの棒の木の役な
   んて・・愉快だわ〜カノンやソンジェさんは
   どう思うかしら?アハハ〜想像しただけでも
   愉快だわ・・・

  ソラミ:「お母様、シンデレラのお洋服が必要
       なの。素敵なドレスを作って欲しい
       の。」
  サヤカ:「ええ、ええ、何十着だって作って
       上げてよ。お姫様にふさわしい可愛い
       豪華なドレスをね・・靴も髪飾りも
       揃えないとね・・ホホホ 楽しみだわ」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 
 「ただいま〜」

 ドアを開けながら、楽器を玄関に入れ、
  ソンジェが帰って来た。

 いつもなら、可愛い娘のシオンが元気よく
   「アッパ、お帰りなさい」と飛び出してくるのに
    今日はそれがなかった。

  代りにカノンが「おかえりなさい」と満面の笑顔で
  迎えてくれた。

 ソンジェ:「あれ?シオンは?・・」

 カノン:「・・うん、何か元気がないの・・
       幼稚園で何かあったのかな?って思ってる
       んだけど・・余りシツコク聞くのも可哀相
       だと思って、話してくれるのを待ってる
       っていう状況の私です。えへへ」

 ソンジェ:「・・ふうん、そうなんだ・・じゃあ、僕も
       カノンと同じにしよう!普段通りで行こう」
       
         そう言って笑った。


 食卓を覗くと手巻きすし用の準備が万端だったのを見て
 ソンジェは「ああ、腹減った・・先にご飯がいいな・・
       ママ、ご飯、ご飯」と言った。

 カノンはいつもの様に「ハイハイ、分かりました。
            シオン、お箸とか並べるのを
            手伝ってくれますか?お願い
            します。」と言うと、シオンは
     うんと頷いて、お箸を並べ始めた。



  ソンジェは「シオン、ただいま、いつもお手伝いして
        偉いな・・」と言ったが、シオンは、黙
        ってお箸を並べ、それからお皿やお茶碗
        を運んだりした。

  明らかに、シオンの態度が違うので、ソンジェは
  首を傾げたが、普段通りにと言う言葉を何度も唱え、
  深くは問いたださなかった。



  「いただきます」の段階でも、シオンは大人しく
   小さな声で「いただきます」と云って、食欲が
   ない様子だった。
   カノンはそれでも知らんふりをしながら、今日
   あった出来事を、ソンジェに話しだした。

 カノン:「今日は、新世界百貨店でバーゲンがあ
      って、衝動買いをしてしまいました。
      可愛い布が一杯あったので、何枚か
      買いました。その布で、シオンの夏の
      ワンピースを作りたいと思います。
      オッパちゃんには、ネクタイを作ります。
      あとね、今日の食卓に並んでいるお魚の
      ネタも新世界百貨店の安売りタイムセー
      ルで買った物ばかりです。凄く安くて得
      しました!!」

  ソンジェ:「へえ・・買い物上手だね〜。うん、
        この鮪、美味いな・・」
  カノン:「・・でしょう?えへへ。80%引きだ
       ったんだ〜それとね、自信作のキン
       パブも食べてみて!」

  ソンジェはドレドレと云ってキンパブを頬張った。
  「うん、美味い!!カノンが作ったの?」
  ・・・・・・・・・・・・・
     ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

   今日の会話は、殆どがソンジェとカノンの二人の
   会話だった・・

      突然、シオンが、箸を止め、泣きだした。


   ソンジェもカノンもビックリして

  カノン:「シオン?どうしたの?お腹痛いの?」

  ソンジェ;「シオン、何かあったのかな?」

  シオン:「お腹痛くない・・何でも無い・・
        だけど・・悲しい・・」

  ソンジェは「何が悲しいの?」と優しく聞いて
   みた。

  シオンはもうダメだと思い、正直にミュージカルの
  配役の事を話した。

 するとソンジェもカノンも笑いだした。
 
 ソンジェ:「何だ、そんな事か・・」
 カノン:「パパ、シオンに取ったら凄く悲しい事な
      のよ!そんな事とは失礼よ!」
 シオン:「・・アッパ、オンマ、、御免なさい」

 カノン:「シオン、何で謝るの?シオンは悪い事な
      んてしてないし、シオンは、とっても良
      い役を頂いたんだから、もっと堂々とし
      てなさい。」
 シオン:「え?桜の木の役って、良い役なの?」

 ソンジェ:「ああ、とっても良い役だとアッパも思
       うよ。どんな役だって大切だし、シン
       デレラのお話はシンデレラが主役かも
       しれないけれど、シンデレラだけでは
       お話が成り立たないよ。意地悪なお姉
       さんやお母さん、王子様、ネズミさん
       や、かぼちゃの馬車を引くお馬さんや
       ・・・沢山の人や動物やお花・木も
       出ていて・・それぞれが立派な役割な
       んだよ。シオンは桜の木と今、聞いて
       アッパは嬉しいよ。シオン、オンマの
       1番好きなお花は何?」
  シオンは、少し考えて「桜・・桜のお花!」
                  と言った。

  カノン:「ビンゴ!当たり!!ママは桜が1番
       好きなの。桜のお花が咲く頃、生ま
       れたのもあるけれど、桜のお花を唯
       見ているだけでも、幸せな気持ちに
       なるの・・桜ってね、日本人の心だ
       し・・日本人は桜のお花が大好きな
       の。嫌いって言う人は誰もいないっ
       て言われている位、国民に愛されて
       いるお花なの。シオンはそのお花の
       役をやってくれるんでしょう?凄い
       じゃない?それにね、リラ幼稚園は
       物凄い優秀な子供たちの集まりの幼
       稚園なんだよ〜その幼稚園に通える
       シオンは凄いんだよ、そしてちゃ
       んと役を貰えたなんて凄いよね。
       ママ、凄く嬉しいし、観に行くのが
       楽しみだな〜桜さんの可愛いお洋服を、
       ママが作るからね?楽しみにしてい
       てね。パパも楽しみでしょう?」

  ソンジェ:「ああ、楽しみだな。アッパは、どん
        な役でも、シオンが出ていたら、シ
        オンが主役だからね、楽しみにして
        いるよ。シオンはどの場面に出るの
        かな?」

  シオン:「うん・・あのね、最初から最後まで
       出るの」

  ソンジェ:「え?!最初から、最後まで?」

  シオン:「うん、だってね、桜の木だから、お外
       にあるって事で、ずっといるの・・」

  カノン:「ええ、じゃあ、パパもママも凄く嬉
       しいな・・だってシオン、最初から
       最後までずっと舞台にいてくれるから、
       ずっと見てられるね?主役のシンデレラ
       よりも一杯、出番があっていいじゃない?」

  シオンは「サムチョンも同じ事を言ってたよ。
       それに桜のお花は日本人が大好きだからっ
       てことも言ってたよ」と今度は嬉しそうに
       言って来た。
  ソンジェもカノンもシオンが元気になったので、良か
  ったと思い、「じゃあ、もうこれで解決だね?シオン、
  じゃあ、ご飯を沢山食べましょう!いいかい?」と
  ソンジェは言った。
  シオンも「ハイ」と云って元気よく、手巻き寿司を
  掌で作って食べ始めた。
   



 確かに、子供にとって、シンデレラの配役で唯の木の役
 は、可哀相かもしれない・・しかし、ソンジェもカノン
 も、どんな役でも、シオンが一生懸命やればいいのだと
 思っていたし、どんな役でも親にとっては自分の子供が
 主役だと思えるから、拘りはなかった。
 
 ふと、カノンはサムチョンも同じことを言っていたと
 言ったシオンの言葉を思い出し、そのサムチョンに
 感謝した・・サムチョンって一体、どんな人なんだろう?
 きっと心根の優しい人なんだろうな・・っと思い、フフフ
 っと笑ってしまった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


オボイナレの出し物などが決まり、シオンのムグンファ組も、
 来週から本格的なミュージカル「シンデレラ」の練習に取りかかる
 ことになった。

 衣装は各自、持ち前で用意となり、シオンは「オンマが、可愛い
 桜のお花の洋服を作ってくれるって・・」とヨンスやクミョンに
 嬉しそうに話しをしていた。


 ソラミは主役のシンデレラになったので、物凄く自慢げだったし、
 自分はこのクラスで1番でお姫様だと皆に認めさせたかった。

 ソラミ:「皆、来週から練習だけれど、良かったら明日の土曜日、
      私のお家で、劇の練習をしない?お母様が、皆さんを
      ご招待しなさいって言うし・・・シンデレラの衣装も
      お見せするわ。美味しいヨーロッパのお菓子も御馳走
      するわ。」と言った。
  皆は「わあ〜」と言って、興味を示した。
  シオン:「ソラミちゃんのお家は、お城みたいに綺麗で広くて
       凄く大きいの。素敵なお家なの。シオンも何度か、
       遊びに行ったけど、、、お姫様のお家みたいだった
       っけ・・・」と言うと、ヨンスもクミョンも
       「行ってもみたいわ、ソラミちゃん、行っても
        いいの?」と聞いた。

  ソラミ:「勿論よ、ここにいるクラス全員が来ても大丈夫よ。
       お父様は飛行機のパイロットだし、お母様は、
       昔は、キャビンアテンダントだったのよ。
       凄く美人でずっとお姫様だったのよ。
       頭も良いし、英語もフランス語もペラペラなの。
       日本のおじい様もお婆様もお医者様で大きな病院
       をやっているのよ。凄いんだから・・」と威張っ
       て言った。


       ムグンファのクラスの皆は、凄いな〜っと、
       ソラミを尊敬と羨ましい眼差しで見た。
       ソラミは更に続けて、      
 
  ソラミ:「では、今からお母様の名刺とかをお渡しするから
       ・・裏に住所も書いてあるから、11時までに
       いらして・・お昼もご用意するわ。」
      っと言って、母親の名刺を一人一人に渡して行った。

   シオンの前に来た時、シオンは笑顔で「私は、ソラミち
   ゃんのお家、知ってるから、貰わなくても大丈夫・・」
   っと言うと、、、ソラミは意地悪く
    「シオンは、唯の木の役だから、練習なんてしなくても
     平気でしょう?明日は、台詞が一杯ある人達で、
     練習するから、シオンは来なくていいの!」と云って
     向きを変えて、他の子に名刺を渡して行った。

  ヨンスもクミョンも、「え?何で?凄い意地悪・・」とは
  思ったが、ソラミの家に行ってみたい気持ちが優先してし
  まい、大きな声では言えなかった・・・

  シオンは、凄く悲しかったが、そうか、木の役はそんなに
  練習とかしなくっても平気なんだと思いなおし、更に、
  自分は何度もソラミの家に行っているから、行かなくても
  平気だと云い聞かせ、笑顔で「分かった・・大丈夫」と
  言って頷いた・・・



  
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



  次の日、ムグンファ組のほぼ全員が、ソラミの家に
  招待されている事を、カノンは、連絡網で知る事に
  なった。
  
  シオンの前の連絡網のお母さんが、間違えて?か、
  知らずに、シオンの家に電話をかけてしまったのだった。


 洪:「もしもし、今日の待ち合わせ場所が少し変ったので
    ・・何でも新村の地下鉄を降りた、K−ONE百貨
    店前の噴水のところで、待っていて下さいって・・
    バスを用意して下さるみたいなの。」

 カノン:「え?・・そうなんですか?・・・」
     カノンは、一人でお人形遊びをしているシオンの
     後姿を見ながら、、、何かあったのか?と思い
     ながらその場を、何となく「分かりました・・
     では、次の人に伝えますね?時間は・・そうで
     したね?11時ですね?分かりました。では・・」

     っと言って、次の連絡網のお家に、すばやく電
     話をかけて伝えた。

    電話が終わって、カノンは、普通に・・知らん顔
    して洗濯や掃除を始めた。
    シオンは、何も聞かないカノンに不思議そうな顔
    をした。
    カノンは、シオンが話したくないなら、話さなく
    ても良いと思ったし、何か幼稚園であったのかも
    しれないが、それでも子供の喧嘩にイチイチ首を
    突っ込んでも大人げないし・・凄い事になれば、
    クラス担任から連絡があるだろうと思った。
    ユリは昔のユリではなく、優しい幼稚園の先生だ
    から、安心して娘を預けられる・・きっとユリか
    ら話がある筈だ・・・今はそうっとしておこうと
    思った。


    シオンは時計とカノンの顔をチラチラ見ながら
    それでも、精一杯、我慢して、一人遊びをして
    いた。


    ピンポーン


    シオンはその音に驚いて、とび跳ねた・・・

    カノンはケラケラ笑いながら、「ハーイ」と
    言って出てみると、

    ジェファが遊びに誘いに来てくれたのだった。


   カノン:「あら、いらっしゃい・・どうぞ、
        上がって・・・丁度、シオンも退屈
        してたみたいだから・・・
         シオン、ジェファちゃんが遊びに
        来てくれたわよ〜」と言うと、

   シオンは瞳を輝かせて、飛び出して来た。
  
  ジェファ:「シオンちゃん、一緒に遊ぼうよ。
        カササギ幼稚園の時のキョンワと
        ジニも後から来るって・・
        あっ、シオンちゃんのママ、
        御免なさい。勝手に来てしまって。
        良かったら僕のお家でも構いません。」
  カノン:「何を言いますか・・うちはいつでも、
       ウエルカムよ、何人でもOKだしね。
       お昼も美味しい物を作るからね、何が
       良いかな?ピザがいい?パスタがいい?
       何でもいいわよ」
  ジェファ:「じゃあ、僕は冷麺が良いな〜韓国料理が
        やっぱり1番好きだから・・」
  カノン:「冷麺ですね?分かりました!!
       シオンはジャージャー麺の方が良いかな?」
       と云って、笑いかけた。
  シオンは「うん、ジャージャー麺と、チヂミが良い」
       と元気よく言った。

  カノン:「ラジャー!!」と云って敬礼をすると、
       シオンもジェファも笑い転げた。



  すると今度はまた電話が鳴った。

  カノンは電話に出ると、サヤカからだった。

 サヤカ:「カノン、御免なさいね、何でもソラミが、
      シオンをお招きするのを忘れちゃったみたいで・・
      これからでも良いから来れるかしら?」

 カノン:「え?何か、今日、サヤちゃんの家であるの?」

 サヤカ:「あら?聞いてないの?来週からシンデレラの
      劇の練習が本格的にあるので、今日は、クラスの
      皆で我が家で練習をする事になったの。
      子供同士でも何だから、親子でいらして頂いて、
      台本の詠み合わせやお歌の練習をするのよ。
      ・・・でもね、シオンは、唯の木の役だし、台詞
      もないから、特に練習するって事も必要ないかと
      思って、、、返って傷つけるんじゃ?と言うソラ
      ミの優しい気持ちから、お招きを拒んだらしいの。
      でもね、クラスの出し物だし・・シオンはソラミ
      の従姉妹だし・・どうかしら?来られる?」
  
  カノンは、やっと事情が呑み込めた・・・
  だが、「折角なんだけど、今、我が家にも可愛いお客様が
      来てくれていて、楽しく遊んでいるの。もう予定
      も入ってしまっているし・・・お招きして頂いて
      御免なさいね。確かに桜の木の役は、そんなに
      練習とか要らないし、逆に練習に誘って頂いても
      シオンは、ただ立ってるだけで、何となく退屈で
      疲れちゃうかもしれないし・・・悲しい気持ちに
      もなるかもしれないから・・・それよりも前の
      カササギ幼稚園のお友達と楽しく遊ぶ方が良い
      かも?わざわざ済みません。」と謝った。
  サヤカ:「あら?・・そうなの?(=何だ・・落ち込ん
       でいると思ったのに・・)お友達って、前、
       私がお邪魔した時の子供たち?鄭ジェファって
       言う男の子もいるの?」
  カノン:「・・ええ、その通り・・いるけれど?」

  サヤカはイライラしたが、ここは我慢して「じゃあ、悪い
  けれど、今回は、シオンはお休みってことで・・最終の
  練習も我が家でやるので、その時は参加して頂戴ね」
  と云って電話を切った・・・


  シオンは、また耐えきれなくなって、カノンに本当の
  事を言おうとしたが、カノンは笑って「さて、チヂミと
  ジャージャー麺と冷麺、それから韓国の美味しい物を
  一杯作ろうね?もう直ぐキョンワちゃんやジニちゃんも
  来るしね・・二人で遊んでいてね?」と云って笑った。


  
 ジェファとシオンは二人きりになった時、サヤカからの
 電話や、今日の話をシオンはジェファに話した。

 ジェファはそれを聞いて、ソラミは何て意地悪なんだろう
 と思った。
 だが、今日、ソラミの家に行ったところでも、もっとシ
 オンは悲しい気持ちになるだろうと思った。


  カノンは、何となくシオンが子供ながらにも一生懸命
  明るく振る舞おうとしている姿が意地らしかった。
  「桜の木・・木の役かあ〜!!」カノンは、何度も
   この言葉を唱えていた時、、、

       あ!!

          っと思い、楽しい気持ちになって来た。

   



   キョンワとジニも遊びに来てくれ、楽しく昼食を
   とった後、カノンは、皆に話をし始めた。

  カノン:「今から、おばちゃんが韓国のドラマの中で
       1番好きな物を、紹介します。
       おばちゃんはね、この秋の童話と言うドラマ
       が大好きなの。皆が生まれるずっとずっと前
       のお話で、日本に韓国ブームを巻き起こした
       ドラマの1つなの・・・」
  ジェファ:「あっ、僕、そのドラマ、知ってます。
        サムチョンも、大好きなドラマで、時々、
        OSTをPCで見てるよ。リラ幼稚園の
        音楽の試験の時、そのドラマで流れるショ
        パンの別れの曲を僕、ピアノで弾いたんだ。
        サムチョンが、教えてくれた曲なんだ。」

  カノン:「へえ、サムチョンて、男の人なのに、韓国
       ドラマが好きなのね?アジュンマみたいね?」
       と言うと、皆が一斉に笑った。

  ジェファ;「・・・うん、何かね、サムチョンはこの
        ドラマには韓国の昔の良い部分が一杯詰ま
        っているって・・・音楽も内容も、景色も
        全部、良いって言ってたよ。」
  
  カノンは嬉しくなって、益々、サムチョンに会ってみたく
  なった。

  カノン:「じゃあ、皆で1作目と2作目を見てみようか?
       その中でね、女の子が、凄く大切な言葉を言う
       の。内容はね、赤ちゃんの時に、入れ違いに
       なった女の子が二人いて、本当はお金持ちの家
       のお嬢様なのに、貧しくて大変なお家で育って
       しまい、心も曲がってしまった女の子と、本当
       は貧しい大変なお家の子なのに、お姫様の様に
       恵まれたお家で育った女の子がいて、実は、自
       分達は違う家の子同志だった事を知って、貧し
       い家の子は、お金持ちの家に帰りたいと言い、
       お金持ちの女の子は心が優しいから、貧しい
       お家に戻る決心をするの。それでね、その女
       の子には優しいお兄ちゃんがいたんだけど、
       そのお兄ちゃんに、今度、生まれ変わったら
       自分は 木 になりたいって言うの。」


       「木?!」皆は一斉に言った。
    
    カノンは頷いて笑った・・「そう、木=ナムになり
    たいって言うの。木はね、ずっとその土地に根付いて
    ずっとそこで皆を見守ったり、待っている・・だから
    木になりたいって・・・おばちゃんは、だから、木っ
    て凄いな・・木って何か素敵だなって思うようになっ
    たの。木は、決して動かないけど、夏の暑い日は、
    日陰を作ってくれたり、悲しい人の心を察してそよ
    風を送りこんでくれたり、黙って人の囁きや悲しみを
    聞いてくれたり、、鳥や動物さんたちのお休みの場所
    をくれたり・・特に桜の木は、沢山の綺麗なお花を咲
    かせてくれて、人の心を優しく楽しい気持ちにさせて
    くれるでしょう?だから、おばちゃんは、ナム=木も
    桜も大好きなの。」

  ジェファ:「へぇ〜、そうか、僕も木や桜が大好きだな・・
        サムチョンも桜とか好きだって言ってたよ」

  ジニ:「私も桜のお花が好きだよ・・キレイだし、優しい
      し・・」
  
  キョンワ:「春を伝える妖精さんが桜なんだよって、
        お母さんが言ってたよ。」

  カノン:「そうそう、キョンワちゃん、とっても素敵な
       言葉だね?桜は春の妖精さんなのかもね?
       シオン、ママは、そんな桜の木の役を一生懸命
       演じてくれると凄く嬉しいな・・
       ママはサクラや木が大好きだし、秋の童話の
       ドラマも大好きだから・・・」と言った。

  ジェファ:「シオンちゃんは、春の妖精さんの役を
        今度、幼稚園でやるんだよ、キョンワも
        ジニも応援して上げてよ」と言うと
  キョンワもジニも「わあ、シオンちゃん、凄いね?
            桜のお花の木の役をやるの?
            いいな〜」と言った。

  シオンの顔はみるみる元気になり、笑顔になった。

  シオン:「うん、シオン、頑張って桜の木の役を
       やるね?」と言った。



  そして秋の童話のドラマのOSTを2作見た。
  ところどころ、カノンが解説を分かり易くして伝えた。

  この「木」と言うキーワードは、最後までこのドラマで
  は重要なものだったからだ・・・

桜の木・・・本当に良い役に思えてくるカノンや
シオンだった・・・




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 10322