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作品名:潮風のセレナーデPARTUバトル編 作者:HAPPYソフィア

第7回   春の嵐・・それぞれの確執
「あっ、カノン・・ママ、」
    
   っと思い出したかのように、ソンジェはカノンに
   話しかけた。
    カノンはギクリとして、恐る恐る

      「何?オッパちゃん・・・?」と言った。


    暫く沈黙が続いた・・・

  カノンは、きっと今日、帰りの迎えに行かなかった
  事がバレタと思って、ヒヤヒヤして来たのだった。


    すると
ソンジェはニヤニヤしながら


       「今日の僕のお弁当も大人気だったよ。
        可愛いキティちゃんのお弁当を、
         有難う!うまかったよ」

      カノンは力が抜けた・・・

    そうだ、今朝、シオンのお弁当とお揃いで
    ソンジェにも同じお弁当を作って悪戯した
    のを思い出した。


   シオンも「オンマのお弁当がクラスで1番
         可愛いし美味しそうだって言わ
         れてて、人気があったよ」と
         言った。

   カノン:「ええ?本当?」
   シオン:「本当だよ、だって皆、いいな、
        いいなって・・どこで売ってるの?
        って聞かれたけど、シオンのオンマ
        が作ったものだからお店に売って無い
        って言ったよ。ユリ先生も、凄く美味
       しそうって言ったよ。オンマのお弁当や
       オンマのご飯は全部、美味しいから、
       シオン、全部、食べたよ。アッパは?」
  ソンジェ:「もちろん、アッパも、全部食べたよ。     
        ほら!!」
        そう言って、空っぽのお弁当箱を見
        せた。

  カノンは、凄く嬉しいやら、愉快な気持ちやらで
  満面の笑顔になった。

  ソンジェ:「お昼になって、お弁当箱開けたら、
        可愛いキティちゃんが表れてビックリ
        してたら、楽団の女の子達が、可愛い
        可愛いって言って来て、皆が羨ましが
        ってね、それに美味そうだって男ども
        も言って、皆がつまみ食いしそうだっ
        たから、取られないよう大変だったん
        だ。カノンのお弁当は最高だよ。
        ご馳走様・・・明日も宜しく。」と云
        って笑った。




    朝は、ジェファと二人で、幼稚園に行くことの
    了解を得たが、帰りは、カノンがお迎えに暫く
    は行く事になった。

 カノン:「行きはヨイヨイ、帰りは怖いって言う奴
      っスね?」とオドケテ聞いた。
 ソンジェ:「朝は、会社に向かうビジネスマンとか
       OLが多いから、、、まぁ、朝っぱら
       から人攫いってない感じがするしね。
       帰りの方が危ない感じがするんだけど?
       だから、暫くはカノンがお迎えに行って
       欲しいな。・・僕も仕事が早く終わる
       時は迎えに行くから・・」

 カノン:「アハハ・・・オッパちゃん、面白い推理
      だね?犯罪は朝には起きないって言うの
      が笑えるね〜、了解しました、では、夕
      方はカノンがお迎えに行きます。なので
      心配しないで下さい。」
      と云って、夕方のお迎えにソンジェは不
      要とした。
      無論、カノンは帰りも、ジェファとシオ
      ンの二人で帰らそうと思っていたからだ。


 センガック駅から4号線で1本で行ける場所に
 リラ幼稚園はあるので、そんなに難しくはないし、
 ジェファが一緒なら、安心だと思った。
  それに早くから自立を覚えさせれば、この先、
 ハプニングがあっても、自分の力で考え、そして
 家まで帰って来れる・・そう言った自信をつけさせ
 たかった。
  
 
 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 次の朝、カノンは、駅までジェファとシオンと一緒に
 行き、定期を買ってシオンに持たせた。
 ジェファは既に昨日からも持っていた。
 
 カノン:「シオン、いい?この定期をパンパンって
      当てると、入れるの。ずっと使う物だから
      無くしたり、落とさないようにね?
      あとね、急にお金が必要になったら、
       幼稚園のバッグの中にある、オンマが
      作ったキティちゃんの入れ物にお金が入
      っているからね、これで切符とか買いな
      さい。・・ジェファちゃん、シオンを
      宜しくお願いします。いつも有難うね。」

 ジェファ:「いいえ、僕、こんな可愛い妹が出来て
       凄く嬉しいです。シオンちゃん、じゃあ、
       行こうか?」そう言って、シオンの手を
       取り、「シオンちゃんのママ、行って来
       ます」と言った。

 カノン:「ジェファちゃんはお弁当は持っているの?」
      と聞くと「ハイ、サムチョンがサンドイッ
      チを豪州風に作ってくれました。
      サムチョンが居る日はサムチョンが作って
      くれます」とジェあファは云って笑った。

 カノン:「そう、もしよかったら、おばちゃん、
      明日から、ジェファちゃんのお弁当も作る
      よ。一人作るのも、二人作るのも一緒だから」
 ジェファ:「え!本当ですか?凄く、嬉しいです。
       お願いします。僕、シオンちゃんのママの
       作るお料理、大好きです。じゃあ、行って
       来ます。」
 シオン:「オンマ、行って来ます。」

 カノン:「行ってらっしゃい。気をつけてね〜」


      カノンは二人が見えなくなるまで
      手を振り続け、見守った。


  ああ、今日も青空が広がっているな・・
   お洗濯をガンガンしよう!その前にお布団も
   干そうかな?カノンは空に背伸びをしながら、
   家路に向かった・・・



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



  シオンとジェファは、今日もちゃんと電車に
  乗って、明洞駅に着き、地上に出て、バスに
  乗ろうとした時、

    「ジェファ君」

  とジェファを呼ぶ女の人の声がした。


  ジェファとシオンが振り向くと、そこには
  ベンツに乗った、サヤカと娘のソラミが居た。


  車の窓が開いてサヤカは「リラに行くので
  しょう?送って行くわ、乗って頂戴」と言っ
  た。

  シオンは「サヤおばちゃん、ソラミちゃん、
       お早うございます」と元気よく
      挨拶をしたが、サヤカもソラミも
      シオンを無視した。

  ジェファにとっては、サヤカは二度目の人だが
  良く知らなかったし、ソラミは全くの初対面?
  だと思ったので「済みません、僕もシオンちゃ
  んもバスがあるから、結構です。」と言って、
  シオンと手を繋いで、バスに乗り込んでしま
  った。
  
  シオンは、親戚の仲良しだったソラミや、
  サヤおばちゃんが、自分の事を無視したことが
  悲しくてならなかった。

  シオン:「ソラミちゃんは、昨日もシオンが声
       をかけても、ツンツンしていたの。
       シオン、何かソラミちゃんに悪いこと
       しちゃったのかな??」と云って泣き
       そうになった。

  ジェファは微笑みながら「違うよ、きっとシオン
     ちゃんが、小さいのに、車なしでちゃんと
     幼稚園に通っているからだよ。
     ・・・それに、シオンちゃんが、同じ親戚
     の女の子なのに、メチャイケてるからだよ。
     サムチョンも言ってただろう?シオンちゃん
     、イケてるねって・・」
  シオンはその言葉を聞いて楽しくて笑ってしまった。


    本当さ、こんなに可愛い女の子、どこにも
    いないよ。ジェファは心の中で何度もそう
    呟いた。それにしても、あのソラミと言う
    女の子や、ソラミの母親は、凄く威張って
    たし、怖かったなと思ったのだった。。

   
  
       

   一方、車の中では・・・

 ソラミ:「お母様〜、お母様ぁ、ジェファお兄
      ちゃんが、召使いのシオンに取られ
      ちゃった。」と言って泣きわめいた。

 サヤカ:「ソラミ、うるさいわよ!静かになさい。
      召使いはしょせん、召使なの!だから
      きっとお姫様のソラミのところに帰っ
      てくるんだから、みっともなく泣かな
      いの!」と言って怒鳴った。

 ソラミ:「でもでも・・きっと今日も、ムグン
      ファの皆が、シオンをお姫様って言う
      もん、きっとシオンが1番可愛いって
      ・・・」
 サヤカ:「何を馬鹿な事を言ってるの?ソラミ、
      あなたは、お母様の子供よ。お母様は
      いつだって1番で、ずっとお姫様だっ
      たのよ。その私の子供はお姫様なのよ。
      シオンに負ける筈なんてないじゃない。
      もっと自信を持ちなさい。いいわね?」

 ソラミ:「でもでもでもぉ〜」

 サヤカ:「うるさい!ちゃんと返事をなさい。
      ソラミ、分かった?え?」


 ソラミ:「・・はい、お母様」

  余りのサヤカの剣幕にハイとは答えたソラミだが
  きっと今日もシオンが人気を独り占めするだろう
  と思った・・・
  子供心にも、シオンは、群を抜いて可愛いかった
  し、人気があるのも分かったのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





 案の定、教室に行くと、シオンの周りは、沢山の
 園児で囲まれ、笑いが絶えなかった。

 ヨンス:「シオンちゃん、お早う、その鞄、可愛い
      ね」

 シオン:「この鞄、オンマが作ってくれたの・・
      兎ちゃんのマスコットもオンマが作って
      くれたの」

 ヨンス:「シオンちゃんのママは何でも出来るんだね?」

 クミョン:「いいな〜、うちのオンマは何も出来ないよ。
       だからいつもデパートで買ってくるの。」

 シオン:「デパートでお買い物なんて凄くセレブで
      恰好いいね?クミョンちゃんのママも
      素敵だね?」と言った。

 クミョン;「そうかな?」とは言いながらも褒められて
       悪い気はしなかった。

 シオン:「そうだ、良かったら、今度、うちに遊びに
      来て・・そしたら、オンマが美味しいお菓
      子を焼いてくれるし、マスコット人形も、
       言えば作ってくれるよ」

 クミョン&ヨンス「ええ!良いの?」

 シオン;「うん・・それにね、アッパもオンマも、
      お家に沢山、お友達が来てくれると喜ぶよ。
      一緒に遊んでくれるよ。アッパは、音楽の
      お仕事をしてるんだけど、ピアノも上手だ
      から、色々な歌を弾いてくれて面白いよ。」

  クミョン:「シオンちゃんのパパは、有名な音楽家
        だって、お母さんが言ってたよ。」
  ヨンス;「私も、テレビで、シオンちゃんのパパを
       何度も見ているよ。凄く恰好良いってママ
       が言ってたよ」
 
  シオン:「えへへ。アッパは優しいよ。心が綺麗綺麗
       だよ。・・・」っと話している時に・・・、
 

  チョルス:「シオンちゃん、お早う、これシオンちゃん
       に上げる」と言って、可愛いマスコット人形
       をくれた。
 
  シオン:「どうも有難う、わぁ、可愛い、これどうし
      たの?」
 

  チョルスはチョット照れながら「うん、昨日、お母さん
      と妹が迎えに来て幼稚園の帰りに、
      お店で見つけたんだ。妹が欲しがってたのと
      同じ物・・シオンちゃんも可愛いのが好きか
      なって思って、買ってもらったんだ。」
 
  シオンはもう一度、有難うと言って、カノンが作って
 くれた布袋のチャックの部分にマスコットを付けた。

 そして、カノンは、「チョルス君にこれ上げる」と言っ
 て、お返しとして、この春、済州島に行った時に、買っ
 たトラハルバンの可愛いキーホルダーを上げた。

 ジョンフン:「あっ、チェヂュの石だ、僕もお家に
        あるよ。去年の夏休みに済州島に
        家族で旅行にいったんだ。」と言った。

 シオン:「え?本当?私は、ずっと済州島に住んでた
      の。去年の秋に、イテオンに来たの。それ
      でね、春休みに、、、ちょっと前に、済州
      島にオンマと遊びに行ったの。」

 チョルス:「ふうん、済州島に住んでいたんだ。」

 シオン:「うん、海とか山とか一杯あってね、凄く
      綺麗綺麗なところ・・・シオンのお家は、
      海の近くだったよ」


  そんな会話の中に「なによ、済州島なんて凄く
   田舎で、貧乏人の住むところだったって、
   お母様は言ってたわ。シオンはだから、お姫
   様じゃないの」っとソラミは得意げに言って来た
   が、誰も相手にしなかった。

 ソラミが、凄く意地悪な女の子だと皆は感じ取っていた。
 ソラミは、朝から全く面白くなかった。
  

 1時間目は、音楽の授業だった。
 
 リラには、音楽と図工の専門の教師がおり、ユリは
 補助教諭としてその時間はお手伝いをする事になって
 いた。

 ピアノ演奏にそって、皆が歌を歌うのだが、専門教師
 が弾くピアノ演奏が気に入らないマヤは、「下手くそ」
 と聴こえるように言った。
 音楽室は一瞬、しんと静まり返った・・・

 ヒジョン音楽教師:「誰です?今、言ったのは?」

 マヤはクククッと笑いながら「あたくしです。」と
 言って睨んだ・・・園児とは思えない位の自信に満ちた
 冷やかな目つきと言葉だった。

 マヤ;「下手だから、下手と言いました」と言い、
     園児の前で、しかも園児に恥をかかされた
     ため、、、どうして良いか分からず・・
     真っ赤になっているヒジョンを横に、
     マヤは自信満々の笑みを浮かべ、ピアノ
     の前に立ち、今、ヒジョンが弾いた物を
     弾き始めた。しかも完璧に、素晴らしい腕前
     で・・・・

 ヒジョンはガックリと項垂れた。
 
 マヤ:「ね?だから下手くそだって言ったでしょう?」

    ヒジョンは居場所をなくし、教室から出て行

    こうとしたところ、

    自分のスカートを引っ張る小さな手があった。

  シオンだった。シオンは、「先生はピアノが凄く
   上手だし、マヤちゃんよりも上手だよ。
   下手じゃない。先生、お歌のお勉強を教えて
   下さい。だからピアノを弾いて下さい」と言った。


   シオンの言葉に
   音楽室は、今度はざわついた・・・

  ヒジョンは「ううん、、、先生のピアノは下手
        くそよ。マヤさんはとっても上手、
        シオンちゃん、有難うね」と言って
        大粒の涙をボロリと零した。

  シオンは「違うよ、シオン、分かるもん、
       マヤちゃんのピアノには心が無い。
       先生のピアノには春の温かさの心が
       あるもん。先生は笑顔でピアノを
       弾いていたもん、アッパと同じだもん。
       人を泣かせるピアノは下手だもん。
       人を楽しませるピアノはそれだけで
       上手だもん」と言いきった。

  シオンは、マヤに向かって「ここの教室の、
  ピアノやお歌や音楽の先生は、ヒジョン先生
  だし、マヤちゃんじゃないよね?だから、マヤ
  ちゃんは、自分のお席に座ってお勉強しようよ。
  今、いるお席はヒジョン先生のお席だもん。
  マヤちゃんは、ピアノが上手だけど、ヒジョン
  先生の方がもっと上手だとシオンは思うよ。」
  と言った。  

  助手をしていたユリはアッパレと思い拍手した。
  子供たちも「そうだよ、マヤちゃん、意地悪よ
  そうよ」「先生の音楽の授業なのに、先生を
  やっつけたら、可哀想だよ」「先生、ピアノ
  弾いて下さい」等など・・・・


  ヒジョンは、気持ちを取りなおして「ようし、
  じゃあ、今度も下手かもしれないけれど、先生、
  楽しく演奏するね?マヤちゃん、ご免ね、ピアノ
  弾いても良いかな?」と言って演奏が始まった。

  マヤはキリキリト唇を噛みしめた。
  李シオン・・私の最大のライバル・・
  そして私の未来のお父様の子供・・・
  私のピアノに心が無い?
  私はピアノの天才なのよ!何をふざけた事を
  言うのかしら?
  許せない・・本当に許せない・・・



  その授業の光景をモニターで見ていたリラ園長も
  「流石、音楽家、李ソンジェの娘だわ。
   音楽の本質、物の真価を園児でありながら知
   っているわ。ムグンファ組、、面白くなりそ
   うだわ。」っと・・・





 授業が終わって、職員室に戻りながら、ヒジョンは
 ユリに「ユリ先生、私、今日ほど教師をやっていて
 良かったと思った事はありませんでした。私は一応
 、韓国では一流の音大出身ですが、物凄くピアノが
 上手ではなかったのですが、それでも下手だとは思
 ってませんでした。しかし、下手くそと言われ、園
 児であるマヤさんが見事に弾いてしまい、立つ瀬が
 なかった・・恥ずかしくて、逃げ出そうとした時、
 あの可愛いシオンちゃんが、一生懸命、私を励まし
 て助けてくれた・・そして、私のピアノや音楽の
 授業を褒めてくれた・・・
 シオンちゃんのお父様は、有名な音楽家・・李ソ
 ンジェ氏ですよね?素晴らしい音楽家であることは
 聞いてましたが、子供に対する教育も、素晴らしい
 事が伺えました。李シオンちゃんは、天使ですね。
 皆を幸せにしてくれる、そんな気分にしてくれる
 可愛い園児です。

 ユリ:「そうでしょう?私は、シオンちゃんのお
     父様やお母様とはちょっとした知り合い
     なんです。素敵な両親ですよ。」
 ヒジョン:「へえ、そうなんですか?・・私、もっと
       もっと勉強したりピアノの腕を上げて、
       素敵な先生になりたいです。」
 ユリ:「私もリラでは新米教師ですが、頑張って
     いい先生になりたいです。お互い頑張りま
     しょう!」

   二人は、笑顔で教員室に入って行った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 2時間目は算数だった。
 分数の問題が出された。
 「ここに、15個の白菜があります。
  さあ、今日は、キムチ作りです。4人で白菜を
  分けることにしました。皆、同じ数だけ、同じ
  分だけにすると、どうなりますか?」と言う
  問題だった。

  「分かる人?」と言った時、手をあげたのは、
  マヤとシオンだけだった。
  マヤは、「こんなの簡単すぎて・・」と云って
  馬鹿にしていた。
  ソラミも、割り切れない数だったので、どう
  したら良いのか分からなかった。

 ユリ:「じゃあ、ちょっと早く手をあげたマヤさん
     、どうしますか?」
 マヤは:「15÷4=4 余り1、だから一人4個」
     と答えると、ソラミが「ズルイ、私だって
     それ位答えられるもん」と言った。

 ユリ:「シオンちゃんも同じ答え?」と聞いてみ
     るとシオンは首を横に振って、
      「一人4個と4分の1」と言った。
 

   ユリは「大正解!」と言った。

    1個余るけれど、この1個も4つに割って
    1個づつにすれば、分けられる事をシオンは
    黒板に絵を描きながら皆に話しをした。

 またしてもマヤはキリキリと唇を噛みしめた。

 ソラミも、いつの間に、そんな事をシオンが
 勉強したのかと悔しくてならなかった。

  


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 英会話の授業の時も、シオンはカナダ人のクラーク
 先生にも、ずっと褒められていた。
 シオンは英語や英会話は全く分からなかったが、
 それでも、先生の発音や言葉を何回も真似して
 いた。遊び感覚でシオンは覚えていたのだった。
 スポンジの様に英単語を直ぐに覚えてしまうシオン
 に、ソラミもマヤも焦って来た。
 益々、シオンはクラスの人気者となった。

 クラーク先生:「わぁ、シオン、とっても発音が
         綺麗ですね」と絶賛していた。

 シオンはいつもえくぼを作りながら笑っていた。
 出来ない園児にも「シオンなんて、英語全然分か
 らないよ、習うの初めてだもん。だからビョン君
 の方が凄いよ」と云って、尊敬したり、褒めていた。


  今日のお弁当の時間も同じだった。
 

  今日こそはと思って、ソラミは一流のホテルシェ
 フにドラえもんのキャラクター弁当を作って貰った
 。素材はキャビアやトリフなど高級素材を使って
 いた3段重ねのお弁当だった。

 マヤも負けじと、金粉を混ぜた老舗の折詰弁当だ
 った。
 一方、シオンのお弁当は、今日はキャラ弁ではなく
 お花畑のような混ぜご飯のお弁当と、おかずも彩り
 よくお肉やお魚、野菜などが美味しそうに詰まって
 いた。
 
 皆は、「シオンちゃんのお弁当いいな」と言っ
 ていた。

  キャラ弁の惨敗に終わったソラミは、
    何もかも面白くなかった・・・

 マヤもすっかりクラスの嫌われ者になりつつあった。
 マヤは嫌われ者は慣れているので、寧ろ一匹狼は、
 嫌いではなかったが、自分がこれではシオンの影
 ・・引き立て役になっているのが、無性に腹が立って
 しまうことが、嫌だった。


 ソラミも、自分がお姫様になれない事を、日に日に
 感じて行くのが、怖かったし、嫌だった。
 焦れば焦るほど、度ツボにハマり、惨めな気持ちに
 なって行くのが分かった・・・・




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 そんなこんなで、シオンは毎日、元気に、楽しく
 幼稚園に通うようになった。


   今日は午後からクラスの父兄会があり、
   役員決めがあるとの事だった。


 リラの役員をしておけば、有名私立小学校の推薦権
 をいち早く手にできると言われていたし、今後、リ
 ラにおいて、強力な意見を云ったり押し通せるとも
 言われていたので、立候補で、ものの数分で決まる
 とも聞いていたので、カノンは安心して出席した。
 カノンは鼻から役員になるつもりはなかったし、
 なりたいとも思わなかった。それに人の前に立つのが
 苦手だからだ。
  恐らく役員は、サヤカだろう・・・そう思った。





    ユリ:「ご父兄の皆さん、こんにちは、
        本日はお忙しい中、お集まり下さい
        まして有難うございます。
        リラ幼稚園での先ずは1年目、この
        ムグンファ組の役員を決めて行きたい
        と思います。役員は、黒板にかかれた
        もので、代表、副代表、書記、監査、
        広報、衛生、風紀、企画の8名です。
        代表を抜かしてその他の役員を立候
        補で決めて行きたいと思います。
        代表だけは推薦になります、これは
        長年のリラの方針の決め方です。」
        と言った。

  少し、考える時間をおいてから、早速、7名の
  役員の立候補を募った。
  案の定、瞬く間に立候補で役員は決まってしま
  った。
   次はいよいよ、代表決めだった。

   サヤカは根回しをしていたのか、自分の取り巻き
  の一人の父兄に、自分を推薦するように目配せを
  していた。

    すると、違う方向から「あのぁ〜」と声が
    上がった。

 「チョンヨンスの母親ののチョンですが、うちの
  娘が毎日、幼稚園から帰って来るとずっとシ
  オンちゃんの話ばかりをするんです。
  シオンちゃんと仲良くして貰うのが嬉しいみたい
  で、幼稚園も楽しいって・・うちの娘は、運動が
  全然ダメで、この前も、鉄棒が出来ないので、
  下を向いていたら、シオンちゃんが、出来る
  ように教えてくれたって・・逆上がりが出来る
  ようになったって大喜びでした。」

 「私は韓チョルスの母ですが、うちの息子は
  シオンちゃんに一目惚れみたいで、、、
  いつも可愛い物を見つけると、シオンちゃんに
  上げたい、上げたいって・・」

  「徐ガンフの母親です、何でもムグンファ組の
   音楽の授業で、問題が起こった時、シオン
    ちゃんが凄く素敵な言葉を云って、その場
   が収まったと聞きました。音楽家の李ソン
   ジェさんの娘だと聞いて納得しました。
   私・・いえ、きっとここにいらっしゃるご
   父兄の皆さんの殆どは、代表はシオンちゃ
   んのお母様を望んでいると思います」と言った。


   カノンは、ビックリして、え?!と
   目をパチクリさせた。


 拍手が沸いた・・・しかし、カノンは自分が
 代表になりたいとも全く思っていなかったし、
 望んではいなかった・・・なので困惑した顔に
 なってしまった。


 ざわついた教室で「オホン」と咳ばらいがあった。
 サヤカだった。
 すると取り巻きがハッとして「ハイ、先生」
 と手を挙げた。

 「金ヤツハの母、金です。私は、権サヤカさんを
  推薦いたします。品格にしろ、リーダーシップ
  にしろ、サヤカさんは抜群です。サヤカさんが
  代表になると思って、私たちは、役員に立候補
  致しましたのよ。サヤカさんも、代表になるつ
  もりで、他の役員に立候補なさらなかったので
  すから・・・もし、李カノンさんが代表になる
  なら、私たち、立候補を取りやめます」と言っ
  た。

 ユリは、それでも良いと思っていたが、
 カノンが手を挙げた。
 「李シオンの母親の李カノンです、折角、ご推薦
  頂いたのですが、私には荷が重過ぎますし、
  役員は避けて通りたい事です。
  権サヤカさんを私も推薦します。彼女とは親戚
  関係ですが、幼い頃から、いつもリーダーシッ
  プを取り、手腕をみせていました。彼女が代表
  なら安心です。貴品もあるし頭も良いし、私は
  尊敬してます。」と言った。

 ユリは、「では、皆さん、如何致しましょうか?」
    と云って、もはや誰も、何も言葉はなかっ
    た。

    結局、代表はサヤカに決まった。



  リラ幼稚園、ムグンファ組の役員はこれで
  決まった。




 しかし、サヤカはシックリいかなかったし、面白く
 なかった。もっとアッサリ決まる筈・・当然の
 代表の役だったのに・・
  カノンが何で浮上してくるのかが面白くなか
  った。
  

  一方、カノンの方は、代表なんて自分には向かない
  し、サヤカになって良かったと思って、喜んでいた。

  シオンは結構、クラスで人気者だったんだと思うと
  少しだけ誇らしくもなった。
   よし!オッパちゃんに、報告しようっと!!
  今夜は、御馳走を作ろうと、一人でニヤニヤして
  しまった。

 


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 呉マヤの母、ジナは、講演会の為、欠席だった。
 それに極力、ジナはマヤに関しては、無関心で
 いたかった。
  自分の娘が怖かったのだった。

 大人顔負けの言葉や考えをもっていて、
 母親であるジナの心を見透かしている感じが
 したからだった。


 なので、マヤはいつも幼稚園の送迎は、お手伝い
 さんだったし、一人で過ごす事が多かった。

 
 音楽の教師をやりこめようとしたが、逆にシオ
 ンのせいで、惨敗し、自分のピアノは下手くそ
 だと屈辱的な言葉を言われた事を、マヤは悔し
 がってジナに話したが、ジナは、少し嬉しかっ
 た。ソンジェの子供が素直に優しく育っている
 事や、そのソンジェの娘が、マヤにピシャリと
 意見してくれたからだった。

  「人を泣かせるピアノは下手だもん。
     人を楽しませるピアノはそれだけで
       上手だもん」と言いきったと聞
   いて「ソンジェの言いそうな言葉ね・・
      そう、音楽は音を楽しむ物・・
      だから、マヤの矢の様なピアノは
      技術的には物凄い才能かもしれな
      いけれど・・音楽の本質を貫いて
      いない・・・」ジナは、フフフと
 笑いながら、益々、ソンジェに魅かれて行った。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





ソンジェは、音楽事務所の片隅でアコーステックを
  手にして
  
  バフェルベルの「カノン」と言う曲を
  ギターで、アレンジを加えながら演奏した。

  誰もがその美しい演奏に、耳を傾け、うっとりした。

  演奏が終わるころには、沢山の人だかりができ、
  拍手喝さいになった。

  ソンジェは少し照れながら

      「僕はこのカノンの曲が大好きで、何か
       自分が音楽で壁にぶち当たった時、この
       曲を弾くと、心が穏やかになるし、元気
       になるし、音楽がまた好きになるんだ」
        と、言った。

 ギルダ:「李ソンジェ氏の楽器演奏は本当に素晴ら
      しいですね、アルトサックスが1番と
      聞いてますが、やっぱりギターもピアノ
      も上手ですよね。久し振りに良い演奏を
      聴かせて頂きました。僕は専門がギター   
      ですが、何だか恥ずかしいですよ。」
  ソンジェ:「ギルダさんの演奏に比べたら、僕の
        演奏は足元にも及びませんよ。
        唯、僕は、このカノンの曲はギターが
        一番良いかな?って思っているんです
        。僕の妻も、僕がこのカノンの曲を
        ギターで弾くと、喜びます。僕の妻の
       名前がカノンですしね・・」

 周囲は「御馳走様」っと口々に言った。
 愛妻家でソンジェは通っているし、また愛娘のシオン
 も物凄く可愛がっている事も有名だった。

  ウンミ:「ソンジェさん、そうしたら、今、何か
       行き詰まっているんですか?」

  ソンジェ:「ああ・・まぁ・・そんなところなんだ
        ・・・でも、今、このカノンの曲を
        弾いていたらふっきれたよ。ハハハ」
       と云って、笑った。


  実は、ソンジェに仕事のオファが来ていて、
  どうしようかと迷っていた。
  クライアントは呉ジナの音楽事務所で、一緒に
  ジャズの演奏会をやって欲しいと云う依頼だった。
  ジナはピアノ演奏と歌を歌う、ソンジェはアルト
  サックスを担当して欲しいと云うのだった・・・
  更に、ジナの娘のマヤも連弾でピアノを弾くらしい。

  受けるべきか・・・やめるべきか・・・迷っていた。
  TV放映をされるもので、ギャランティはかなりの
  ものだった・・・
  お金の事はさておいて、ソンジェはアルトサックス
  が1番の得意楽器だったので、アルトサックスを
  思い切り吹いてみたいと思っていたのだった。
   唯、相手が呉ジナであることが、躊躇する事がら
   だった・・・・

  カノンはきっとソンジェのやりたいようにやればいい
  と賛成してくれるだろうと、思ったが、、、
  やはり気分がのらないので、断ろうと思ったのだった。  




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



  呉ジナ:「え?何ですって?」

 ジナのマネージャーのスヒョン:「申し訳ありません、
   李様から、先ほど、お断りの電話がありました。」


  呉ジナ:「そんな・・・そんなの、困るわ!
       ソンジェのアルトサックスがなければ
       今回のジャズ演奏会は台なしよ・・・
       スヒョン、何とかして頂戴!」

  スヒョン:「・・・そう言われましても・・」

     スヒョンは困ってしまった・・・


  ジナは暫く考え込んでから、「いいわ、直接、
    私が頼んでみるわ、ソンジェはまだ事務所ね?
    車を出して頂戴!」っとスヒョンに怒鳴った。




  きっと、出させてみせるわ・・・
     私のジャズピアノにはソンジェの
       アルトサックスが一番合うもの・・・




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



スターゲートコーポレーションの事務所に着くや否や
  ジナは受付に「李ソンジェに面会したい」と告げた。

  受付嬢は、有名人 呉ジナが直々にやって来て、
  ソンジェに面会と言うので、ビックリした。
  ソンジェのいる演奏室の内線電話が鳴った。


   丁度、レコーディングの最中で、ソンジェは
   ミキサーを操作しながら、打合せをしていた。


 シニャン:「ソンジェ、電話だ・・受付から」

 ソンジェは、忙しいのになっと思いながらシニャ
 ンから受話器を受け取った。

  ソンジェ;「代りました、なんですか?」

  受付嬢:「あの〜、ソンジェ先生に面会の方が
       今、ロビーにいらしてます。」

  ソンジェ:「え?面会?家族ですか?」

  受付嬢;「いいえ、呉ジナさんですが?」


  ソンジェは、「呉ジナ?・・」とは思ったが、
  恐らくマネージャーを通して、例のジナから
  依頼された仕事を断ったので、納得できずに
  直談判にきたのだろうと思った。
  きっと、自分からハッキリ、断るまで、ジナ
  は帰らないだろうと思い、ソンジェは会う事
  にした。「5分位内に、応接室に行きます。
  お茶を出してお待ちいただいておいて下さい」
  と云って、「シニャン、悪いが、30分?
  休憩で良いか?」と云って、応接室に向かった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




  「お待たせしました、呉さん」と云って
   ソンジェが応接室に現れた。


  ジナは「いいえ、、ソンジェ、何で私との仕事を
      断ったの?・・・ああ、きっとカノン
      さんね?彼女が嫌がったのね?・・」
      等と、勝手な憶測で、一方的に話し出した。

  ソンジェは不愉快になって来た・・・

  ソンジェ:「・・いや、カノンは関係ないし、彼女
        には、まだ君との仕事が持ち上がって
        いることも知らない筈だ・・

        呉さん、相変わらずですね?そう言う
        勝手な考え方、僕は嫌いだし、今回は
        僕が、僕の意思でお断りしたんです。」

  ジナ:「ソンジェ、ソンジェの専門はアルトサッ
      クスでしょう?学生の頃からの夢は、
      ジャズ演奏会で、思いっきりアルトサッ
      クスを吹く事でしょう?
      私のピアノは、貴方のアルトサックスで
      より輝けるの。私にとっても貴方にとって
      もチャンスなのよ。あのジャズ界の巨匠
      ハンク氏が手掛ける演奏会なのよ。」


   ソンジェ:「ああ、知っているよ、ハンク氏と
         いつか一緒に演奏会が出来たら良
         いなとは思っているけれど・・
        でも、僕は君とはもうペアを組み
        たくないんだ。君のピアノは素晴ら
        しいと思う、もっと別の相手を探し
        て頑張って欲しい。僕はアルトサッ
        クスが1番得意ではあるけど、、、
        最近はサックスだけではなく、音楽
        自体が、もっともっと好きになって
        いるんだ。君のピアノの様に専門性
        を磨くのもいいと思うけど・・・
        僕は、ピアノ、サックス、ギター、
        ドラム、、何でもやってみたいと
         思っているんだ・・」

    ジナ:「ソンジェ、あなた、変わったわね・・」

   ソンジェ:「・・そうかもしれない。
           君も変わったね・・
         もうお互いの事は大昔のことだと思い
          更には、同じ音楽家ではあるけれど
          全く違う道なんだと思った方が良い
          かもしれないな・・・
          ジナ、君は、今、幸せなの?」

    ジナ:「・・え?」

    ソンジェ:「・・とても寂しい目をしているし、
          ピアノ演奏も淋しい気持ちが伝わる
          んだ・・
          僕は、今、とても幸せだから・・
          可愛い妻と娘がいて、いつも笑いが
          絶えないんだ。
           音楽は「音」を「楽しむ」ものだ
           と云う事や、上手い下手なんて関
           係ないこと、音楽は人を幸せにす
           るものだと云う事を改めて知った
           んだ・・・だから凄く幸せだよ。
           これもカノンのお陰だと思ってい
           るんだ。
          君とは学生時代に付き合っていたけ
          れど、本当に僕は君を愛していたか
          さえも疑問に思えるよ。
          君も早く本当の愛や、音楽の楽しさ
          を見つけて幸せになって欲しいと思
          うんだ。そんな意味で、僕は君とは
          仕事はしたくない。僕と君とは、
          全く違う音楽の方向性だから・・」

    ジナの中で、何かが壊れてゆく気持ちになった。

    ジナは、ソンジェに、満たされない寂しい日々を
    見透かされてしまったのだった・・・
    ソンジェは、微笑みながら席を立ち、「仕事中
    なので・・」と云って戻って行った。



    一人残されて、ジナは悲しかったが、涙は
    何故か?流れなかった・・・
    



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


韓国では5/5は「オリニナル」と言って子供の日、
 ・・この日は、子供の大好きな場所に行って、
 楽しく過ごす日であり、子供たちが楽しみに待
 っている日にあたる。
 更に5/8は「オボイナル」で両親の日を表し、
 日本で言うと「母の日」なのだが、韓国では、
 母の日も父の日も合わせた両親の日になっていた。



 ユリ;「さて皆さん、5/5はオリニナルですが、
     毎年、どうやって過ごしてますか?・・
     去年はどうでしたか?」
     と云って、一人づつ、聞いて行った。

 ソラミは得意げに「あたくしは、お父様はお仕事
          で外国のフライトだったので、
          お母様とお兄様と三人で、シ
     ンガポールへ遊びに行きましたのよ。
     ラッフルズホテルに泊まって、とっても
     豪華で、お姫様になった気分でしたの。」

  ラッフルズホテルは、言わずとも知れた世界的に
  有名なホテルであり作家モームが愛したホテルで
  もあった。そのホテルでハイティを楽しむだけ
  でも優雅な気分に浸れるとも言われている・・・

  皆、それぞれに家族で海外旅行などを楽しんだ
  話をしていた。
   シオンの番になった時、シオンは済州島に
  住んでいて、家族で世界遺産になっている鍾乳
  洞に行った話をした。中は冷蔵庫みたいにヒン
  ヤリしていて、足元がゴツゴツしていて、
  滑り易かった話を楽しそうにした。
  往復1時間くらいかかった後、近所の公園で、
  お弁当を三人で食べたことも話した。
    ソラミは「なんだ、つまんない。子供の日
         じゃないじゃない」と言った。

    シオンはにっこり笑って「ううん、子供の
    日だったよ。シオンはずっと楽しくて笑っ
    ていたし、美味しい物も沢山、食べたから」
    と云ってソラミの嫌味を気にしてなかった。


  次はマヤの番だった。

   マヤはずっと下を向いていたが、いきなり
   自信たっぷりの話をしだした。

  マヤ:「私は天才ジャズピアニストのお母様
      と一緒に、パリに行きました。
      お母様がパリでの演奏会があったから
      ・・・そこで高級フランス料理を食
      べたり、フランスの最新ファッショ
      ンのお洋服をオーダーメイドで何着も
      作って頂いたの。夢の様な子供の日で
      したの・・」と・・・・

    流石にパリと言う言葉や、ピアノの演奏会
    などと言う言葉には、皆は一気に「負け組」
    になった気分になった・・(ただし、シオ
    ンは除外だが・・)

   マヤは嘘を言ったのだ・・・

   去年の5/5は、確かに母親のジナはパリに
   演奏会で、楽団を引き連れて演奏旅行に出かけ
   て行った。マヤは留守番であり、連れて行って
   は貰えなかった。
    マヤは一緒に行きたいとせがんだが、ジナが
   マヤを避けていると言うか、恐れている・・・
   そんな感じをマヤは子供心にも気がついていた。
   
   子供の日であるのに・・・マヤは寂しくお手
   伝いとベビーシッターと過ごしたのだった。


  ベビーシッターも、マヤが苦手なのか?
  何人も代った・・・

   自分の前の順番で答えたシオンが、幸せそうな
   顔をして子供の日を語るのが悔しくて、つい嘘
   をついてしまったのだった・・・
   しかし、嘘を語って、益々、惨めな寂しい気
   持ちになってゆくのが、マヤには分かった・・

  私は、この李シオンが苦手だ・・
  シオンにはいつも敗北する・・・
  マヤは、シオンに勝つためには、やはりシオン
  から、大切なもの、父親を奪う事しかないと、
  思ったのだった・・・





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





ユリ:「さて、皆さん、子供の日の次は、オボイナル
     の日ですね?リナ幼稚園では、皆さんのご両
     親をお呼びして、皆さんが劇やお歌を歌って
     楽しませて差し上げる事になっています。
     その後、クラスに別れてお食事会があり
     ます。各クラスで出し物をするのですが、
     劇お歌とダンスにしますか?それとも劇に
     しますか?」

   皆は思い思いに隣近所で話をしはじめた。


  シオンは、大好きなアッパとオンマが見に来て
  楽しんでくれるのはどっちかな?っと思った。
  

    マヤ:「あたくしは、音楽がいいわ。
        あたくしが、ピアノ演奏するので、
        それに合わせて、皆さんが歌を歌
        えば宜しくてよ。」

    ソラミ:「いやよ、そうしたらマヤさんだ
         けが目立つじゃない。あたくしは
         劇が良いわ。」


   マヤとソラミの一騎打ちとなった。
   

  シオンと仲良しのクミョンは、小さい頃から、
  バレエをやっているので、ダンスが希望だった
  が、二人のやりとりで気後れしてしまい、
  ダンスと言えないでいた。
  唯、もう一人のシオンと仲良しのヨンスは、
  運動が苦手で、ダンスも好きではない様子だ
  ったが、歌がとても上手だった。
   歌・ダンス・お芝居・・シオンは目を閉じて
   考えてみた・・・・


         あ!!

  シオン:「ユリ先生」っと言って手を挙げた。

 ユリ:「ハイ、シオンちゃん、なあに?」

 シオン:「ミュージカル、ミュージカルだったら、
      歌も踊りも、劇も出来るから・・
      それに英語が得意な子もいるから、、」


   ユリは、「なるほど!」っと頷き、
     「ねぇ、皆さん、どう?ミュージカルなら
      皆が得意な事が出来るから、皆のお父様も
      お母様も喜ぶんじゃないかしら?どう?」


     賛成!! 一斉に声が上がった・・・
 ヨンスもクミョンも嬉しそうだった・・・

   ユリは、黒板に「ムグンファ組は、
     ミュージカル」と大きく書いた。

  「じゃあ、先生が台本を作りますから、オボイナル
   の日まで、練習を頑張ってしましょう。」




       はあい

   


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


    ユリは職員室に戻ると、早速、先生方は
    オボイナルのクラスの出し物の話題で盛
    り上がっていた。

 
 
 どんなミュージカルにしようか?
 やっぱり動物ものが良いのか?可愛い動物を
 沢山出して、皆でダンスしたり、歌を歌ったり、
 楽器を演奏したりすれば良いのかな?等と、
 ユリは心と頭の中で、想像をはりめぐらせて
 いた。




  ソラミ:「ミュージカルの劇のお姫様は
       私がやるわ。皆は、召使いなの。
       そして王子様は、このクラスでは
       ユナク、あんたで良いわ。」

  ユナクは突然、自分の名前が振られたので
  ビックリして「ええ、僕、嫌だよ、ソラミ
  ちゃんの王子様なんて・・・シオンちゃんが
  お姫様だったらやるけど・・」
 
  ・・・と言うと、皆が一斉に笑った。

  シオンも、突然、自分の名前が浮上したので
  ビックリして「私は、お姫様じゃなくていい
  し、お姫様じゃないから、何でもいい・・
  アッパやオンマが楽しんでくれたらいいの」
  っと言って笑った。

  「ヨンスちゃんはお歌が上手だから、沢山、
   お歌が歌えると良いね?グミョンちゃんは
   ダンスが上手だから、きっとお母さんも、
   喜ぶと思うよ」っとシオンは言った。

  ヨンスもグミョンも、シオンは自分達の事を
  考えてミュージカルが良いと言ってくれたん
  だと思った。そしてシオンの優しさを子供な
  がらにも感じていた。
  シオンちゃんが、お姫様の役で、歌や踊り、
  ピアノを演奏すればいいんだと・・・
   心から主役になって欲しいと二人は思った。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



  いつものように、ジェファとスクールバスに
  乗って帰ろうとした時、車のクラクションが
  鳴った・・・
  
    「あ!!」
     二人はニコヤカニ、車に駆け寄った。


  サムチョンだった。

   「ジェファ君、そしてアガシのシオンちゃん
    お迎えに参りました・・・執事の鄭でござ
    います。どうぞ、お乗り下さいませ。」
    と、後ろの席に座るように言った。


 二人はクスクス笑いながら、ドアを開けて車に
 乗り、


   「出発おしんこ!!」とサムチョンが言う
    前に、言葉を発した。


 サムチョンは、ヤラレタ!っと言いながら車を
 発進させた。

 シオンは、直ぐに携帯を取り出して、カノンに
 電話した。リダイヤルで直ぐにかけられる親子
 携帯だった。
 あいにく、カノンはいない様子で留守番電話に
 なっていた。

 「オンマ、あのね、今日、サムチョンの車で
  帰るから、電車より遅いかも?」と吹きこんだ。


 サムチョンは「車は便利だけど、こう交通渋滞
 だと、電車より遅いよね。豪州やアメリカは、
 こんなには渋滞しないんだけどね?
 韓国も日本も車の渋滞が凄いから、、、」


 ジェファ:「サムチョン、NYのママはいつ
       帰るかな?オボイナルには帰って
       来れるかな?」

 サムチョン:「う〜ん、どうだろう?姉さんは
        忙しいからな・・スケジュールを
        聞いてみようか?でも何でだい?」

 ジェファ:「うん、オボイナルにリラ幼稚園で、
       イベントがあって、家族を呼んで、
       劇や歌を発表するんだ。」

 シオン:「シオンのアッパもオンマも来るよ、
      サムチョンも来る?」

 サムチョン:「う〜ン、サムチョンは、行ける
        かな?唯、5月は、サムチョンは
        仕事で豪州かもしれないんだ。
        ジェファやシオンちゃんはどんな
        出し物をするんだい?」

 ジェファ:「僕のクラスは年長組だから、高度な
       事をやろうって事で、韓国伝統舞踊
       とチャンギの演奏をするんだ。
       シオンちゃんは?」
 シオン:「うん、ミュージカルをやるの・・」


      「ミュージカル?!」

    サムチョンもジェファも声を揃えて
    驚きながら言った。

   しかしサムチョンは直ぐに「アガシ、
    ミュージカルはアガシの考えだね?」と
    言ってほほ笑んだ。

   ミュージカルは、歌も踊りも劇も一辺に出来て
   誰もが主役になれる場面が多いからだ。
   気持ちの優しいシオンが考え付きそうな事だと
   思ったからだった。

 シオンはサムチョンが何で、自分の考えだと分か
 ったのかが不思議だったが、、、


  「まだ、どんなミュージカルになるか、
   分からないけれど、ユリ先生が考えてくれるの」
   と云って笑った。

 サムチョン:「イケテル、アガシが主役だったら、
        サムチョンは、必ず観に行くよ」
    っと、言ったが、「多分、主役じゃないか
    ら、、、」とは言った物の、「主役じゃ
    なくてもサムチョンに来て欲しい」と言う
    と、サムチョンは、「どんな役でも、サ
    ムチョンにとっては、アガシは主役だから
    出来る限り、観に行くよ」と云って笑った。


  途中、サムチョンは、デザイン事務所に寄ると
  言って、寄り路をした。
  沢山の若者がいて、賑やかで楽しそうな街だった。


 シオン:「わぁ、一杯、一杯人がいますねぇ・・」

 ジェファ:「うん、ここはホンデって言う凄く
       お洒落な大学があって、東京の原宿
       みたいなところなんだよね?
       サムチョン?」
 サムチョン:「そうそう、原宿・・シオンちゃん
        知ってる?」

 シオン:「うん、お爺ちゃんとお婆ちゃんと行った
      ことがある・・・お洋服を沢山買って
      貰って、クレープ食べたよ。」

 サムチョン:「ハハハ・・ホンデにもワッフルと
      言う甘いお菓子があるから、食べる?」

   そう言ってワッフルを屋台で買って来てくれて
   事務所の待合室で、お茶を入れて

   「ちょっと、ここで食べながら待っててね。
    サムチョン、お仕事してくるから」と云って
    オフィスに入って行った。

 するとモデルさんのような綺麗な女性たちが、
 次々と入って来ては、待合室にいる二人を見て、
 「わあ、可愛い兄妹」と云っていた。

 朴:「お兄ちゃん、お嬢ちゃん、可愛いね?
    良かったら、写真撮らせて貰っても良いかな?」
    
 朴はこの事務所でカメラマンをしていた。
 特に婦人雑誌を担当していたので、二人が余りに
 可愛いので、モデルになって欲しいと思ったのだった。


 ジェファもシオンも、困っていると
 やっとサムチョンが、仕事を終えて戻って来た。

 「朴、何やってんだよ・・うちの坊主達が何か
  したのか?」と言うと

 朴:「ああ、鄭、お前の親戚の子供たちか?・・・
    うん、どうりで目元とか顔がお前に似ている
    な・・特にお嬢ちゃんなんて、お前にソッ
    クリだな・・美人になるぞ」


  その言葉を聴いて、サムチョンは、大笑いをした。
 サムチョン:「残念!この女の子は、親戚じゃ
        ないよ。坊主の方は姉の子なんで、
        親戚だけど?ハハハ。」と云って
        笑った。

  朴は、ええ?可笑しいな・・瞳のキラメキといい、
    凄く似ているんだが?隠し子って言っても
    良いくらいだけど?とはおもったものの、
    気のせいかな?と思い、苦笑いをした。



              
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


  シオン:「サムチョン、サムチョンを待ってた
       時に、綺麗な人達が一杯、一杯入って
       来たよ。」
  
  ジェファ;「サムチョンはグラフィックデザイ
        ナーって言って、雑誌とか建築とか
        なんか凄くお洒落な難しい仕事を
        コンピュータでしているんだよ・・」

  シオンは「ふうん」と云って笑った。

 サムチョン;「綺麗な人達はモデルさんでね、
        本とかの表紙に写真が載るんだよ。
        でも、サムチョンはシオンアガシの
        方が、綺麗だと思うけど?」
        と言った。

   シオンは、可笑しくてゲラゲラ笑ってしまった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 カノンは、家に携帯を置きっぱなしで、近所の
 スーパーで買い物をしていた。
 留守番電話を聞いたのは、家に戻って来てからの
 事であった。
 時計は16時52分だった・・・
 いつもなら17時には帰宅するが、車で帰ると
 メッセージがあったので、17時半かな?いや
 18時過ぎてしまうかも?と思いながら、
 カノンは夕飯の料理を作り始めた。

  今夜は韓国風すき焼き?・・プルコギを作る
  ことにした。更に、サラダや、小皿のおかずを
  沢山、手際良く作ろうと思った。



 そうこうしていると、ピンポーンとベルが鳴り
 シオンが『ただいま』と云って元気よく帰って
 来た。


 カノン:「お帰りなさい。思ったより
              早かったのね?」

 シオン:「うん、今日はそんなに混んでなか
      ったかも?えっとね、サムチョンの
      会社に寄り道したよ。ホンデって
      言う所にあったよ。きれいきれいな
      会社だったの。サムチョンの会社の
      人達は皆、イケ面とか綺麗な人ば
      っかりだった・・サムチョンがね、
      1番、イケ面だったよ。」


 カノンは、ケタケタと笑いながら、サムチョンの
 顔を想像したのだった・・・・






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー











  









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