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作品名:潮風のセレナーデPARTUバトル編 作者:HAPPYソフィア

第19回   なぎり始めた海
「レミちゃん、今日は悪かったね、付き合わせちゃって・・お蔭で僕は助かったけれどね」
テファは満面の笑顔で言った。

「いいえ、どう致しまして!結構、暇で時間を持て余してたから、兄貴から連絡があって
めちゃくちゃ嬉しかったの。・・・ところでそのコアラのぬいぐるみは誰に上げるの?」
っと悪戯っぽい目つきでレミはテファに聴いた。

 「え?あぁ・・甥っ子のジェファのGFに頼まれたんだ。」と答えるとレミは「なんだぁ、
つまんないの・・・」と言いながらびょんぴょんと跳ねながらお店のウインドウを眺め
ながら「口止め料とか貰おうかなって思ったんだけど…残念」と言った。

テファは「口止め料ではないけれど、付き合ってくれたお礼に何かレミちゃんにプレゼント
するよ」と言うとレミの顔はますます明るくなり「じゃあ、あそこのお店のサンダルが欲
しいの。買って下さる?」と言った。

テファは「勿論、カジャ(行こう)、早くしないとシャッターが下りちゃうゾ」と言って
店を目指した。
片手には大きなコアラのぬいぐるみが抱きかかえられていたが、そのコアラがとても可愛
いく、テファは心の中で、カノンみたいだ・・・っと呟いていた。

ピットイットモールはシドニーの中では最大級のショッピングストリートではあるが、
店によってはすぐに閉まってしまう。土日祝日は平日よりも店じまいが早いので
5時、6時になるとシャッターが直ぐに下りてしまい、寂しいゴーストタウンのような
雰囲気になってしまう。
韓国の明洞や東京の渋谷や新宿など24時間眠らない町のような場所は、豪州では
考えられないことかもしれない。
季節は南半球なので韓国とは逆で「冬」ではあるが、昼間は爽やかな秋のような気候で
Tシャツでもいいくらいな服装で過ごせる。流石に朝晩は肌寒くセーターやはおるものが
あるといい・・・時差も殆どないと言ってよいし食べ物も美味しい、平和で陽気なこの
国はアジア人にはこよなく愛される国であり場所だった。

テファはシドニーが好きだったのは街並みが美しく芸術的な雰囲気がしたのもあるし、
気候が温暖で、冬の寒さも厳しくはないし、四季があるのもいいなと思った。
言葉も日本語や韓国語、中国語とアジアの言語を早くから学校教育に取り入れている
部分も気に入っていた。片言でも日本語や韓国語が通じるからだ。
甥っ子のジェファも言葉に抵抗なくすんなり生活に馴染めたからだった。
カノンは、横浜出身なので海や港が好きだということを聞いていたので、シドニーは
横浜に似ている部分が多くさらには冬もそんなに厳しくないので、もし住むとしたら
シドニーかもしれないな・・・と、テファはそう思うようになってきたのだった。


レミは店じまいしたそうな店主を余所に、マイペースでサンダルを選んでいた。
「梨花大学の学生ってかなりお洒落で、プライド高いのよ。それにお金持ちも
多いから、見栄を張るのが大変なの。これじゃあ、安っぽいよね?」などど
独り言を言いながら履いてみては気に入らないとポイポイとサンダルを投げた。
テファは、お店の人に「すみません」と謝りながらサンダルを片付けていく中で
可愛い花が沢山ついているサンダルを見つけた。
これ、カノンに買って行こうかなと思ったが、サイズはどうなんだろう?昔と
変わりなければ21cmだったようだけど・・・ミュールだから多少大きくても
構わないか・・・と思いながら21.5cmのを買うことにした。
レミは「テファさん、私はそんな小さなの履けないし可愛いらし過ぎるわ。」と
言って来た。
「・・いや、これは・・・うん、そのぉ・・姉さんのなんだ。姉さんにお土産なの
さ。姉さんもまだまだ若いし可愛いトコ見せて欲しいしね。」とシドロモドロにな
りながら「これ、包んでください。早くしてください」と真っ赤になりながら
言った。
レミは、変なのとは思ったが、自分のサンダル選びに夢中でそれどころでは
なかった。結局、店じまいしますで、仕方なく決めたものになってしまった。
マリンブルーのミュールをテファに買ってもらったのだった。

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カノンもシオンも当面はベルリンで仕事に行っているソンジェが帰って来ない
ことにホットしていた。

カノンは生活に必要なものやもうこの家に戻らなくても良いように荷物を
まとめた。
たぶん、夏が終わったら自分の生活もシオンの人生も変わってしまう・・・
これから母娘二人でどうやって暮らして生きてゆこうか・・・
どこでどうやって暮らそうかとも考えてみた。
両親にも兄や弟にも心配や迷惑をかけたくない。
だが韓国では直ぐにソンジェに連れ戻されてしまうだろう。
日本で暮らそう・・田舎よりも都会の方が探すのが難しい・・・
東京ではない都会にしよう・・・大阪・・・ううん、ダメだ、
大阪だとソンジェは音楽の仕事で大阪や京都によく来るし・・・・
「福岡・・福岡にしよう!」誰も知らないところであはあるし、まさか福岡
にいるとは誰も考えがつかないかもしれない。
仕事はどうしようか・・・何ができる?何をしよう・・
当面は、貯金で何とかして・・・
世の中はそんなに甘くはない・・・きっと厳しい・・・
でももう後戻りはしないし出来ない・・・
だから私は強く前に一歩を踏み出そう・・・シオンの為ならなんだってしよう。

カノンはこれからの不安よりも、何故かなんでも自分でやってゆこう、やって
みようと言う気持ちの方が大きくてワクワクしてきたのだった。
きっと、大丈夫だ・・・それよりももう直ぐにこの家から離れられるように
しなければと思い、スーツケースに荷物をどんどんと入れていった。
シオンも何かを感じたのか一緒に自分の大切な荷物や洋服などを詰め込んでと
持ってきたのだった。
カノンは「シオン、もうここのお家に戻らない・・・と言うか戻れないと思う
・・・オンマのせいでゴメンね。」と謝ったがシオンは首を何度も横に振り
「シオンはオンマと一緒なら幸せだから、オンマ泣かないで。」と言った。
「オンマもシオンと一緒なら幸せだし、シオンがいれば何もいらない。」と
カノンは言いながら「じゃあ、直ぐにでも出られるように支度しようね。」と
言った。

カノンは思い出したように、カイトのことを心配した。
どうしたらいいだろうか・・・とても恐ろしいことになっているような感じが
してならなかった。
カノンは受話器を上げダイヤルした。

「あら、誰かと思ったらカノンじゃない。昨日のことなら謝らないわよ」っと
相変わらず強気なサヤカの第一声だった。

カノンはカイトと夏休み、一緒に旅行する約束をしたことを思い出したので
それでカイトをひと夏、うちに預けてはくれないかとサヤカに伝えた。
サヤカは「おあいにく様、うちも家族旅行でギリシャに行くのよ。
だからひと夏は無理よ。」と言い放った。

カノン:「いつ頃、ギリシャへ行くの?」
サヤカ:「8/15〜27日位までよ。10泊12日の旅なの。」
カノン:「凄いね〜、豪華だね〜。じゃあ、よかったら8/14までカイト君を
うちで預からせてくれたら嬉しいなぁ。何よりシオンが喜ぶのよ。
ダメかしら?」と言ってみたところ、アッサリとOKが出た。

カノン:「では、善は急げでこれからカイト君を迎えに行くね。家に泊
まって貰って、一緒に済州島へ行こうと思ってるんで・・ソウルには11日か
12日は戻って、14日にサヤカちゃんの家に戻るようにするから。」と
咄嗟に嘘の予定を伝えた。

サヤカ:「分かったわ。今、私はソラミとショッピングに出てしまっているの。
家にはハウスキーパ−とカイトがいて、カイトはこれから多分、バイオリンの
レッスンが家であるのよ。それが終わったら連れて行っていいわよ。
あっ、カイトにかかった費用は倍額でお支払いするから請求して頂戴。
いいわね。」

カノン:「そんな・・・お金なんていいのに・・・」
サヤカ:「いいえ、恩ぎせがましくされるのも嫌だし・・・10万、
20万くらいのお金でソラミが苛められるのも嫌だしね。いいわね、必ず
請求してよ。それが条件よ。」
と、高圧的な言葉でサヤカは言ってきたので、カノンは「分かった」として
サヤカの言葉を受け入れた。そうでもしないとカイトを手元によこして貰え
ないからだった。

電話が終わってカノンはカイトにメールを送った。
カイトはそれを読んで、やっぱりカノンおばちゃんは僕のことも心配して
くれる優しいおばちゃんだとと思った。
そして何より自分のことを信用してくれていることが嬉しかった。
カイトはやはり荷造りを始めた。

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