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作品名:潮風のセレナーデPARTUバトル編 作者:HAPPYソフィア

第18回   18
ジェファだった。


 「シオンちゃんは1度だって威張ったり、誰かを苛めたりなんて
  したことは無いです。シオンちゃんのママだって意地悪なこと
  を言ったりもしてないです。おじさん、ソラミさんやソラミ
  さんのお母さんの方が嘘つきで意地悪なんです。」

   ・・・とジェファはソンジェに向かって言った。

ソンジェは「煩い。・・誰に向かって意見をする?子供のくせに
      生意気だな。やっぱりヂョンテファの親戚の子供だな?
      生意気なところがソックリだ。いつも正義ぶっていけ
      すかないところもソックリだ。親の顔が見てみたいな」

 
   「あら?親ならここにいるわよ」と言って出て来たのは
    ジェファの母親のヂョンアミンだった。

    10年前から呉ジナのファンでコンサートの度に聴きに
    来ていたのであった。たまたまテファが豪州に行って仕事を
    していたので、その留守番も兼ねて韓国に戻って来ていた
    のであった。

 アミンは「うちの息子は海外生活が長いので紳士的な感覚の
      持ち主なのよ。正義ぶってる訳じゃないの、息子が
      正義なの!自分の奥さんや子供を守らないで他人の
      言う事を信じるなんて、李さんも大したことない男ね。
      ガッカリしたわ。ジェファ、帰りましょう。
      不愉快だわ。」

     そう言ってアミンとジェファはピアノ演奏も聴かずに
     帰ってしまったのだった。

  シオンもカノンも二人を追うように「私たちも何だか気分が
  悪いから帰ります。」と言って席を立った。



  ソンジェ:「カノン、、シオン、、いいから席に就きなさい。」
        と、言ったがその声も空しく、カノン達も去って
        いった。




  シオンは「オンマ、オンマ、アッパが戻れって言ってるよ」と
       心配そうに繋いだ手を揺らした。

  カノンはハッとして立ち止まり「・・シオン、ごめんね。
  オンマ、もうアッパーと仲良くなれない・・・ごめんね。」
  カノンは泣きながら立ちすくんだ。


  シオン;「・・シオンも・・もうアッパー嫌い、嫌いなの。」

   シオンは言った。カノンはビックリして「え?」と云った。

  シオン:「アッパー、嫌い・嫌いなの。シオンのアッパー
       じゃないみたい。前みたいにいつも笑わないし
       怒ってばっかりだし、いつもガッカリしたり誰か
       と比べたり・・・オンマを泣かしたり困らせたり
       するから・・・今日のこのお洋服はジ−ジとバーバ
       が買ってくれたものなのに、、日本人のこともバカに
       してたから・・・」


  カノンは「シオン、ごめんね、大好きなアッパーが嫌いに
       なっちゃったのはオンマのせいだね?ごめんね。」

  シオンは首を大きく横に振って
   「ううん、オンマのせいじゃないよ。シオンはアッパーが
    怖いし、アッパーが凄く変わっちゃったから嫌い・嫌い
    なの。アッパーにシオン、心の中でバイバイってしたの。」
    と云った。



  カノンは「え?バイバイって?」

   シオンは「うーんとうんとね、何だかわからないけど、
        バイバイって思ったの。・・・
           でも全然悲しくなかったよ。」
             シオンは無邪気に言った。

   カノンはシオンの無意識な言葉にビックリしながら
   シオンの顔を見つめた。



  「カノンさん」っと声がし、クラクションが鳴った。

   振り返るとヂョンアミンだった。



  「乗って行きませんか?近所だし、送りますよ。
   ジェファが貴女達を見つけて・・・ジェファも
   シオンちゃんと一緒に帰りたいみたいだし・・・」
   と言って車に乗るように促した。

  シオンは「オンマ、オンマ、車で帰る」と言って
  いた。


   カノンはお言葉に甘えるとして乗る事にした。



  カノン;「済みません。本当に済みません。」
       とペコペコした。

  アミン:「そんなにペコペコしないで下さい、カノン
       さんのことは弟からいつも聞いて・・・
       いや聞かされてます。日本からの付き合いで
       もう10年位になるのかしら?
       今度は子供たちの世代で巡り会うなんて
       不思議な縁よね?」

  カノンは「・・はい、そうですね」と言って笑った。

  「ママン、お腹減った、アニマルズあるから行きたい。」
   と後ろからジェファが言った。
   シオンも「アニマルズ、アニマルズ」と言って指差した。


 アミン:「子供たちもあぁ言ってるから、カノンさん、ご飯
      食べましょうよ。」と言った。

 断る理由も無く、子供たちもお腹がペコペコの様子だったので
 アニマルズに行く事にした。


シオンは高級ホテルの食事よりもアニマルズのファミレスでの食事の方が嬉しかったので
大喜びしていた。


シオン:「オンマ、シオンね、トキのコースがイイナ。」っと云った。
カノンは微笑みながら「兎さんね・・じゃあ、それにしようか?オンマは・・・たぬきさんに
しようかな?それともリスさんにしようかな?」っと言って迷っていた。
その顔つきが余りにも可愛いのでアミンは笑い出してしまった。

 やはり姉弟だからか笑った顔がテファに似ていた。
 
アミン:「カノンさんて、幾つになっても可愛い方なのね?」と云った。

カノンは「え?」っと思いきょろきょろとした。

アミン:「弟が良くカノンさんの話をしていて兎に角、めっちゃ可愛いんだとか良く云って
    たの。私は外見の事かな?って思ったけれど、内面も可愛い方なんだって、
    そう思ったのよ。そんなカノンさんの娘さんもやっぱり可愛いなって・・
    シオンちゃん、とっても可愛いし園児らしくて良い子だし、ジェファが好きになる
    だけあるわね。」

   ジェファは真っ赤になりながら「ママン!!」っとストップをかけた。


アミンはクスクスと笑いながら「ジェファはいつものライオンコースでいいのかな?」と
言った。ジェファは「今日は新しい動物に挑戦したいのでイーグル(鷲)にすると言った。
アミンは「じゃあ、ママンはタイガーコースにしようかな?」と言ってボタンを押した。

アミンは、今はNYに居てキャスターの仕事をしてはいるがそんなにガツガツは働いては
いないと言った。駆け出しの頃の失敗談を面白・可笑しく話をしてくれた。
しかも幼稚園児にも分かるように、退屈させないように話をしてくれた。
 そして時々、カノンの為にか?テファの話をしてくれた。


 テファは小さい頃は、シャイで本ばかり読むガリ勉だったとか、、、
 大きな黒縁めがねをかけて、無口で、いつも目立たないようにしていたとか・・・
 特にアミンが高校の時にスカウトされて芸能界に入ってからは益々、目立たない
 地味な小学校・中学時代を送っていたとか・・・
 ところが、江南でも有名な進学高校に進学してから、テファは才能にしても
 華やかな舞台へと進んだ・・・特に1年生の時に学園祭で行われた喉自慢大会で
 テファはいきなり優勝してしまった・・・
 眼鏡を止め、コンタクトにしたり、髪形を変えたりしたことから華やかな顔立ちが
 人目を惹く様になり、他校の女子高生たちも電車の中で騒ぐようになってきたり
 勿論、芸能人の弟と云う事もあって益々人気が出て来たりもしたのよ。
 最初っから人気者で、華やかな子ではなかったし、性格も割りとクールで綺麗な
 ものが好きだったし、、、自信が出来て来ると白黒ハッキリさせるのも好きだったのよ。
 みるみるうちにホンデのスターになってたわね。

  軍隊に行って戻ってから直ぐに日本にワーキングホリディに行ってしまい、戻って
  からは何となく感じが・・・そう!凄く柔らかくなったの。
  優しいと云うか・・・唯強いって言う尖ってる感じでは無くて、、、上手く云え
  ないけど、優しくて、強くて、格好いいのよ。
  外見も、日本の東京でお洒落に磨きがかかっただろうし・・・
  ホンデに復学してから、もっともっと人気が高まったの。
  でも本人は、軍隊やワーホリで何かを学んだのか?勉強もよくするようになったし
  言葉にしても行動にしても凄く深みがあると云うか良い感じになったのよ。


 カノン:「日本に居た時も、色々なことを私に話してくれたり、教えてくれました。
      例えば、自分の周りで変な事や嫌な事が起こるのは悲しい事じゃない、
      寧ろ楽しいことなんだから、面白・可笑しく進めば良いんだよとか。
      韓国と日本の関係が悪い時も、過去は戻せないけど、未来は作れる
      ・・・だから僕らのように仲良くできるはずだって・・・
      自分は周囲からホンデのスターだとか綺麗だとか格好良いとか言われる
      けど、それはずっと続くわけじゃない、やがては滅んだり衰えるって・・・
      でもそれは悪い事でも何でもなくて当たり前のことだって・・・」

  アミンは「へぇ〜、テファってそんな事言ったの?ナルシストだわ〜」
       と、ウインナーをポイっと頬張りながらアミンは言った。

 
    カノンはナルシストと云う言葉を聴いて噴き出してしまった。

 アミン:「・・可笑しい???だって、本当にナルシストなんだもの。
      いつも自分は格好いいみたいな・・・」


     カノンは益々面白くなり声をあげて笑ってしまった。

 ジェファ:「サムチョンは、何をしてもイケ面だと思うし、格好良いよね」とフォロー
      したが、アミンは「えぇ?そうかな〜、何か格好つけてるだけのアジョシ
      じゃない?やっぱ、20代前半の男の子の方が若くて可愛いし良いわよ、
      でもアメリカだと40代からが深みが出来て格好良いとされていてモテル
      のよね?日本はどうなの?」

カノン:「そうですね、日本は10代とか若いアイドル系が人気があるし、後は
     20代でも若くて可愛い感じがモテるかな?
     私は、歌が上手かったり、演技が上手な人とかが好きですね。」と云った。

アミン:「え?そうなの?カノンさんも、アイドル系が好きだと思ったけど・・」

カノン:「・・いいえ、、、そう言えば・・・」と言って、ジェファと出会って初めてお互いの
    写(真)メ(ール)交換した時の事を思い出し、アミンに話をしていた。




       初めてオッパであるテファの写真を見て、アイドルスターの写真を
       送って来たかのように思えた事を話した時に、
  

 「そう言えば、テファも、カノンさんの写真を見た時に、お姫さまだって言ってたわ。」
 とアミンが言った。

   お姫様の言葉にシオンは反応し、「オンマとサムチョンはスマイル国の王子様と
   お姫様なの。」と云った、
   ジェファも「そうだよ、サムチョンもシオンちゃんのママも恋人同士だったんだよね?」
   と云った。

   アミン:「・・・だそうです。子供たちって凄く鋭いし、正直だわね?
         弟は・・・テファは、今でもカノンさんが好きです。
         出来たら、もう一度、やり直しをしたいって思ってると思うの。

                 カノンさん・・・

          カノンさんは、どんな気持ちですか?今が幸せで満ち足りているなら
          こんな話はしないけど・・・
          さっきのホテルでのことといい、、、何だかカノンさんは幸せじゃない感じ
          がしたのよ。」



          カノン:「・・・おっしゃる通りです。
                  ソンジェとの仲はもう覆水盆に返らずで元には
                  戻らないと思います。
               夫であるソンジェは何かにとり付かれた様に豹変し・・・
               でもこれが本来のソンジェの姿なんだと思いました。
               ナルシストならソンジェの方がもっとナルシストです。
               更にとても冷酷です。1度は許すけれど、実は許してない、
               2度目は無い。ずっと根に持って必ず復讐にも似たことを
               するのです。
               自分より優れている人が何か大切なものを手に入れると
               奪い取らずにはいられない性格・・・
                奪い取ってしまえばもうどうでもいい・・・
               上手く云えないのですが、、、ソンジェとテファさんは似ている
               のは華やかなところや天才的なところ・・でもソンジェみたい
               に冷酷ではないし、いつも優しい。
               勝ち負けの人生をソンジェは好むけど、テファさんはちゃんと
               負けを認めたり、目先の事ではなく先々のことを考えている
                ・・・・・凄く深く、優しい・・・自分の事だけしか考えない
               見栄っ張りのソンジェと違い、テファさんは周囲のことも考えて
               くれる・・・
                私はテファさんが今でも大好きです。
               でもこの言葉が、テファさんを傷つけたり大変な思いをさせ
               るのなら、困らせたりしたくないので、テファさんの前から姿を
               消します。勿論、ソンジェの前からも・・・」

  アミン:「え?・・・ソンジェさんと別れるの?」

  カノン:「・・・はい、そう思ってます。」

  アミン:「じゃあ、テファと?」

  カノン:「・・それもおそらく無理だと思ってます。」と言ってこぼれそうになった涙が
      流れないように天井を見つめた。

  アミン:「いいえ、テファと、テファとやり直しなさい。応援するから。」

  カノン:「え?・・・でも私は・・」

  アミン:「結婚しているから?  子供がいるから?  ・・・そんなの関係ないわ。
      テファは、ずっとずっとカノンさんに会った時からカノンさんだけを思い続け
      ていたんだから・・・それに私だけではなく二人の可愛い応援者もいるじゃ
      ない?ねっ、二人とも、そうよね?」と言ってジェファとシオンを見た。



     二人は急に話しかけられたが、「ネェ(=うん)」と言って笑った。


  アミンは「さぁ、泣くのは止めて、元気に笑顔で行きましょうよ。」と言って鞄から
   携帯電話を取りだすと電話をかけた。

   何コール目かで「ヨボセヨ」と懐かしい声携帯から漏れて来た。
  


                   テファだった。


 アミンはカノンに携帯を渡すと、テファは「姉さん?姉さんだろう?」と云った。

 カノン:「もしもし、、、カノンです。」と言ってみると、それでもテファは信じられず
 「姉さん、冗談はやめてくれよ。カノンがいる訳ないじゃないか。」と言ったが、

  「テファオッパ、カノンイムニダ」とカノンは言った。

   今度はテファも半信半疑で「え?カ・ノ・ン??カノンなの?」と言ってみた。

    「ネェ、カノンエヨ」とカノンは再度言ってみた。

 テファは「カノンなら、質問します。僕の好きな食べ物は何?」

    カノンは即答で「プデチゲ」と答えた。

   (正解だ!!っと心の中で思いながら・・姉さんも好物は知ってるからな・・)

 テファ:「じゃあ、もう1問、これはカノンと僕しか知らない事だよ、おまじないの言葉
     を言ってみて。僕がカノンの事を思い出す、おまじないの言葉だよ。」

   カノンは「ソテジ・テジコギ・ソーセージ」と云った。

   テファ:「カノン?カノンなんだね?どうしたの?何で姉さんの携帯から電話して
       いるの?」と云った。

  アミンは、カノンから携帯を受け取り事の次第を韓国語で伝えた。
  聴いている内にテファは、姉の喋り方が軽快で歯切れが良いので可笑しくて
  笑い出してしまった。

 アミン:「笑い事じゃないつーの!テファ、聴いてるの?」

 テファ:「ハハハ、聴いているよ。姉さん、何か話し方が面白くて・・・
      カノンは元気がない感じがしたんだけれど?
      僕は意外に早く韓国に戻れそうなんだ。
      実は今週末には帰るかもしれないし・・・姉さんは何時頃まで韓国に
      いられるの?」

 アミン:「そうね、ジェファを連れて、西海岸にでも行って夏休みを楽しもうかな?
      って思ってるの。でもジェファはシオンちゃんと遊びたいみたいだし、韓国で
      過ごしたいみたいよ。私よりもサムチョンといる方が楽しいらしいわ。
      テファが戻ったら、NYに帰るわ。じゃあ、週末に会いましょう。」
      と言って、カノンに携帯を渡した。

 テファはその気配に気が付いて「やあ、カノン、元気そうだね?今、どこにいるの?
                   大方、何か食べてるんだろう?姉さんはお金持ち
                   だからうんと美味しい物をご馳走して貰うといいよ。
                   間違ってもアニマルズとかファミレスじゃダメだよ。
                   折角のチャンスだし、そうだな江南のロッテワールド
                   ホテルのレストランとかだったら、子供たちも喜ぶし
                   結構、美味いしいいかもね?ロッテワールドの
                   アフター18(18時以降の入園)を利用すれば
                    夜景とかパレードも見る事が出来るし、乗り物
                   だって乗れるし・・それにカノンの出番もあるしね・・」

   カノン:「え?カノンの出番?」
   テファ:「あぁ、そうさ、ロッティ君とローリィちゃんのパレードさ。カノンは狸だろう?
       ロッテワールドのメインキャラクターじゃないか?ハハハ。」

    カノンは、クスクスと笑い出してしまった。

テファ:「シオンアガシに借りた兎の人形のお陰で寂しくなく愉快に過ごせたんだけど、
     やっと今週末に帰国するよ。お礼に何かお土産を買ってゆくと伝えてくれるかな?」

カノン:「シオンもジェファちゃんも近くにいます、代わりましょうか?」と云うと「あっ、そうなんだ
    、じゃあ代わってくれるかな?カノン、またね。クムドマンナヨ(夢で会いましょう)」と
     言ってくれた。

                クムドマンナヨ・・・この言葉も懐かしい言葉だった。


     日本にジェファがいた時、良く電話の最後はこの言葉で終わっていたからだった。
     さっき会ったばかりなのにまた会いたい、今、話したばかりなのに、また声が聴きたい
     そういう時はいつもこの言葉を言っていた。


「シオンアガシ、アンニョン、アガシのお陰で毎日楽しかったよ。兎のうーちゃんが、
 アガシに会いたいって言うから、サムチョンは韓国に帰ります。」と云うとシオンも
 ゲラゲラと笑った。そして「お土産はコアラちゃんのぬいぐるみ」と云っていたのを
 カノンは聴いて慌てて「我儘言わないの」とたしなめた。



アミン:「よかった・・電話架けてよかったわ。皆、笑顔になったから・・・テファって
     皆を笑顔にさせる天才よね?」と云った。

    カノンもそう思った。テファといると言葉を交わさなくても凄く楽しく
    元気になるからだった。


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 一方ソンジェ達は、高級ホテルでの会食を呉ジナの演奏を聴きながら
 楽しんでいた。

 サヤカもソラミも美しい身のこなしや品格に、改めて生まれ育った環境
 と云うか教育の大切さをソンジェは感じ、反省していた。

  このホテルでの会食は一人50万W=5万円のもので韓国ではかなり
  高級なものだった。しかし、呉ジナの演奏も聴けてのこの値段は、破格
  であり直ぐに完売したものだった。
  ソンジェはジナに前々から頼んでおいたのでコネクションでのものだった。



  演奏が終わってからデザートタイムの時、ジナがソンジェのテーブルに
  やって来た。

  ソラミ(=マヤ)の心はドキドキと高鳴った。
  自分の母親はサヤカのように愚かな女ではない、きっと私が呉マヤで
  あることを見抜いてしまうだろうと・・・



  ソンジェ:「ジナ、こちらが権サヤカさん、うちの親戚だ、そして今日、
        どうしても君に紹介したかったサヤカさんのお嬢さんで
        ある権ソラミちゃんだ、君の娘のマヤさんと同い年で
        ソラミちゃん、マヤさん、そして私の娘のシオンは同じ
        リラ幼稚園で同じクラスなんだ。凄い縁を感じるよ。
        唯、ソラミちゃんも君のマヤさんと同じくらい、素晴らしい
        ピアノ演奏をするんだ。才能を感じるんだ。それを是非、
        君に見て・・・いや聴いて貰いたいんだ。」

  ジナはソラミ(=マヤ)をチラリと見て頬笑み「あら、そうなの」と一言
  いった。

   そしてサヤカやソラミ(=マヤ)には目もくれず、ソンジェの話をまるで
   乙女のようにうっとりと聞いていた。

  ジナ:「ソンジェ、最近、別な意味で人気が急上昇しているわよ。」

  ソンジェ:「え?別な意味?」

  ジナ:「今迄、貴方の音楽は柔らかい春の日差しみたいなものだった
      けれど、今はギラギラした夏の太陽のような、、、鋭い矢みたいな
      、、、強くて力がみなぎってる感じよ。天使から悪魔になった
      みたいな猛烈なパワーを感じるの。」

  ソンジェ:「へぇ〜、そうなんだ。自分ではこれっぽっちも変わったとは
        思わないけど・・・ただ、力強いって云うのは嬉しい言葉だ。
        今迄は繊細だとか清らかだとか言われていたから・・・
        本来の僕の音楽の姿が出来あがって来たんだと思うな。」

   ジナ:「ええ、私もそう思ったわ。大学時代、私と付き合っていた時の
      ソンジェの音楽を思い出したの。私は前の繊細な音楽も好き
      だけれど、今の音楽も好きよ。」
  
  ソンジェ:「有難う。ところで、ソラミちゃんの演奏、聴いて貰いたいんだが
        ・・・時間はあるかい?」

  ジナ:「ええ、あるわ。この会食が終わったら、会場に残っていて・・・
      その時に、聴かせて頂くわ。」
      ジナはまた微笑んで、一旦、会場から去っていった。


  サヤカ:「素敵な方ね?」

  ソンジェ:「そうですね、、、今や韓国ではジナの右に出るピアニストは
        いないと思います。彼女は素晴らしいピアニストですよ。」

  サヤカ:「呉ジナさんとはお付き合いされてたんですよね?」

  ソンジェ:「・・・ええ、もう遠い昔・・・大学生の時ですよ。
         今は、かなり差をつけられてしまったかな?と思います。



シオンの教育に関しては全てカノンに任せっきりだった事・・・
元々、カノンは勉強に対してとか競争に対してとか無頓着で熱心ではなかった。
 それがいけなかったのかもしれない、シオンは唯の園児としては園児らしいし、
可愛いが、それ以上にはなれない。
 リラ幼稚園に入ってからは、周囲の園児達・・・特にサヤカの子供のソラミや
ジナの子供のマヤはメキメキ力や才能を発揮している・・・
 リラ幼稚園は、音楽に関してはかなり高い評価を持っている幼稚園で、
 音楽と芸術の2つの選択肢で音楽を取らないと不合格であると言われる
 くらいの難関幼稚園だった。

 シオンが芸術を選択しても合格できたのは僕が有名な音楽家だったからだ。
 シオンの実力ではない。
 更に梅花幼稚園も、ソンジェが作詞・作曲・編曲した校歌などを提供する
 ことで大きなコネクションとなり、合格は絶対に大丈夫と言われた幼稚園だった。

  そんな裏事情も知らないで、カノンはシオンが実力で入ったと思っているし
  本当に、お気楽な主婦だと、益々ガッカリしてしまった。

 サヤカもジナも光輝く様に美しく、主婦でありながらも家庭の匂いが全くしない
 美しい女性だった。
 子供たちを見る限りでは、シオンが1番可愛い容姿であることは分かった。
 
 ただ時々、違和感があった。
   シオンは可愛い娘だがソンジェには1つも似ていなかった。
  また才能さえも引き継いではいない感じがした。
  カノンには似てはいるが・・・・

  いや、考え過ぎだろう?音感は良いし、ピアノも弾けない訳ではない。
  歌も上手い・・ダンスも上手だ。
  絵も上手だし、自分の意見も真っ直ぐに言える・・・
  
  では何だろう?このモヤモヤするものは・・・最近は特にシオンを見ている
  とイライラする・・・何で言う事をきかないんだとか、何でピアノの練習を
  嫌がるんだとか・・・
  音楽家の娘としての自覚が全くない。
  あの真っ直ぐにキラキラと見詰める瞳は・・・どこかで・・・見た事がある。


      どこかで?
            どこだ?

                誰かに似ている・・・・




                       ヂョン・・テファ

           テファだ、テファに似ている・・・
 
                いや考え過ぎだ。

                  シオンは確かに自分と花音との子供だ。


          だが、もしシオンがテファの子供なら

                 合点がゆく。

       歌や踊りが上手い・・・音感は抜群だ。
              テファはホンデでは、バンドのボーカルだった。


         絵画も上手で、色の選び方などが温かく優しい色使いだ。
                      テファはグラフィックデザイナーだ・・・・


     考え方もシッカリしている部分があり、オンマが大好きで
     最近はサムチョン、サムチョンと言っている・・・・

     そうしたらカノンは、ずっと僕を騙していたと云う事なのだろうか?

        


        いや、考え過ぎだ・・・そんな事、あり得ないな。

       シオンは僕の娘だ。カノンは僕の妻だ。

         僕がきちんと二人を管理し、教育しなかったから
          こんなになってしまったのかもしれない。


      ベルリンから帰ったら、きちんと建てなおそう・・・
            

           ソンジェは心の中で何度もそう思った。






       ソラミ(=マヤ)は自分の母親が、全く自分がマヤで
       あることも気づかず、自分の演奏を聴いているのが
       不思議と云うか、悲しかった。
       しかもジナは「幼稚園児でこれだけ弾ければ大したもの、
       将来が楽しみだわ。うちのマヤも同じくらいの実力かと
       思うの。ソンジェさん、喜んでこの夏、ソンジェさんがいない
       間、ソラミちゃんの指導をお引き受けするわ。・・・ところで
       ソンジェさん、貴方の娘さんはどうなさったの?
       確か一緒に指導って聞いているけれど?」と言って辺りを
       見まわした。

   ソンジェは「いや・・・うちの娘はソラミちゃんほど上手ではないし、
         ピアノの才能もないんだ。だから、指導はソラミちゃん
         だけでいいんだ。帰国したら、今度は僕が、ソラミ
         ちゃんとマヤさんを指導する。そして自分の娘のシオンも
         特訓するつもりだ。何とか二人に追いつけるようにしたいと
         思っている・・・音楽家の娘として恥ずかしくないようにしたい
         と思っているんだ。」と力強く云った。


  ジナ:「羨ましいわ・・・カノンさんもシオンちゃんも・・こんな立派で素敵な
      旦那様居て・・・私はいつも一人・・・一人ぼっちよ。
      娘のマヤだって、私を嫌ってるし・・・・」と云った。

   マヤは耳を疑った。大好きなお母様が、そんな言葉を言うとは
   思えなかったからだ。


   サヤカ:「あたくしも・・・羨ましいわ。ソンジェさんは今や押しも押されぬ
        天才音楽家・・・しかも美しい容姿・・・
        娘のシオンちゃんも可愛い女の子、きっと音楽家としての
        才能の開花も近いと思うの。蛙の子は蛙だし・・・」と云った。


  ソンジェはサヤカの言葉で、みるみる自信を取り戻してきた。
  そうだ、シオンは僕の娘だ、きっと才能が開花するのが遅いだけだ。
  カノンがまだいいとして邪魔をしていただけだ・・・
  やっぱりカノンの教育の仕方に問題があったのだと・・・




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  テファは、カノンと久し振りに話せて嬉しくなった。

   鼻歌まじりに帰国の準備を始めた。

  そこへルームシェアをしている同僚のカンスが部屋に入ってきた。

  「何か、良い事があったのか?歌なんか歌っちゃってさ。」と
  からかった。

 テファ:「ん?あぁ、もう直ぐ帰国だしね、やっぱり長年住んだ故郷は
     いいよな。早く帰りたいよ。」と云った。
 

 カンス:「えぇ?珍しいな・・・テファは余り韓国が好きじゃないと思ってた
      んだけどな?もう韓国には未来は無いみたいな言い方もして
      いたし、だから豪州や東南アジアに拠点を置いて仕事している
      だろう?」
 テファ:「あぁ、そうだったんだが、最近、趣向が変わったのか?
      韓国もいいなと思うようになったんだ。自分の国だしな。」

 カンス:「今度はいつ豪州に戻る?」

 テファ:「いや、早いと思うな・・もしかしたら9月早々に戻るかもしれない。
      ・・・・9月の初めだろうか??」

  カンス:「9月!!そりゃまた早い戻りだな・・・」

  テファ:「ハハハ。まぁ、宜しく頼むよ。」と云った。


  テファ:「・・あっ、カンス、君の妹のレミを明日の昼間、借りたいんだけど?」
  
   カンス:「あぁ、いいよ、あいつは暇だ暇だって叫んでたからな。韓国の梨花
        大学に入れて初めての夏休みだっちゅーに、兄を訪ねて豪州、
        しかも英語を勉強に来たとか言っていて笑っちゃうよな。
        韓国はまだまだ学歴主義だし、大学出ても尚勉強させて、一体
        韓国って言う国はどこへ向かっているんだろうな?」

   テファ:「日本・・・日本を追いかけているのかもしれないな・・・」

   カンス:「え?日本だって?大風邪をひいた老人大国の日本に未来なんて
        ないじゃないか?目指すなら中国じゃないのか?」

   テファ:「・・・いや、日本だと僕は思う。どんなに大変な状況に置かれても
        国が一丸となって頑張ろうとする姿が凄いと僕は思う。
        平和で、穏やかで、美しいことが一杯残っている、学力だって
        恐らく日本の方が上だし、韓国は日本には勝てないと思うよ。
        どんなに頑張っても、日本の方が上さ。日本人は何もない
        ところから立ちあがり、そして復興したり創り上げたりしてゆくだろう?
        凄いと思うよ。僕は日本にワーキングホリディに行って感じた事が
        沢山あって日本の良さとか凄さも感じたんだ。
        すると益々、韓国が嫌いに・・・と云うか嫌気がさしてきたりもしたんだ
         けれど、そのワーホリの時に仲良くなった日本人の子に、韓国の良さ
        とかを沢山聞いた・・・その子は日本も大好き、韓国も大好きだと
        云ったんだ。それを聴いて僕も、少しだけ韓国・・自分の国が好きに
        なったんだ・」

   カンス:「・・・でもさ、時代は中国だと思うぜ。GNPだって日本にとって代わり、
        今じゃアメリカを追い抜く勢いじゃないか?」

   テファ:「・・まぁ、そうだけど、でもな・・・中国に行って生活してみない事には
        良さは見えてこないのかもしれないな・・・行ってみようかとも
        思うけれど、、、でも僕は、中国よりも日本の方が良いかな?」

       と言って笑った。
     カンス:「じゃあ、レミを明日11時にここに来させるよ。レミが役立てば
          いいけど?」

  テファ:「大いに役立つさ。小さな女の子のお土産を選んで欲しいんだ。
       コアラの人形らしい。僕が一人で行くのはちょっと恥ずかしいんでね。」

      カンス:「なるほど・・・了解。じゃあな」と言って出かけて行った。





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老婆(=スンミ):「ホホホ、マヤ、だから言ったじゃない・・
           貴女のお母様のジナは貴女を恐れているし、貴女がジナを
           嫌っているのではなくて、ジナがマヤ、貴女を嫌っているのよ。
           でも良かったんじゃないかしら?
           李ソンジェの家庭は亀裂が走っていてもう駄目だと思うわ。
           貴女の大好きな母親のジナとよりを戻すわ。きっと・・・
           もしくは、ソラミの母親とくっつくかだわ・・・
           どちらに転がっても、貴女の父親に李ソンジェがなるのだから
           いいじゃない?違う?全て、計画通りじゃない・・・」
 
     っと、マヤからの電話で高々に笑いながら老婆はペラペラと話をしていた。

       「え?、本当のソラミ?ソラミはどうしているかって?・・・・
       帰りたい、帰りたいっていつも言ってるわ。
       母親のサヤカなんて、貴女・・マヤに夢中だって云うのに・・・
       父親だって仕事にかまけてるし、兄のカイトに何が出来るわけでもない
       しね・・・マヤ、せいぜい上手くやってどの家庭も滅茶苦茶にしておし
       まいなさい!!いいわね?」っと老婆は言った。


   ソラミ(=マヤ)は「・・・分かったわ。頑張るわ。」と言って携帯を切った。




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