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作品名:潮風のセレナーデPARTUバトル編 作者:HAPPYソフィア

第16回   小さな嘘と大きな偽り
    シオンを昨夜、寝かしつけそのまま眠ってしまったカノンが目を覚ましたのは

シオンの部屋の窓のカーテンの隙間から朝の日差しが差し込んで来た時だった。

     「あっ!」

  カノンは飛び起きた、そして慌ててキッチンへ行くと既にソンジェは

  音楽事務所に出かけた後だった。

  テーブルの上には、走り書きのメモが残されていた。

*******************************

カノン あんにょん


  打ち合わせが午前早めにあるので行きます。

  昨夜は帰りが遅かったみたいだけどどこに行っていたのか帰宅したら

  ゆっくり聞かせて貰うよ。

                       ソンジェより

*******************************

 

 カノンは、ぎくりとして、目が覚めた・・・もしかしたらテファと会っていた事が

 バレテしまったのか?とも思えるようなメモだった。

 テファが言っていた言葉をまた思い出した・・・

ソンジェは自分に対して裏切ったり、自分を傷つけたりする相手を1度は許すが

2度目、3度目は決して許さないと・・・

それならば最初から素直に言ってしまった方がいいとも・・・

カノンも、そうだソンジェはそういう男だと思った・・・

知り合ってから付き合い、結婚して家族になって、今もソンジェは変わらない

・・・・

ソンジェだけでなく、自分も、オッパも・・人はそんなに直ぐに変わるものではないし

変われるものでもない・・・よっぽどのことがなければ・・・

カノンはふと何かを思いついてシオンの幼稚園の連絡帳を取りだして電話をかけた。



  2〜3回のコールの後、

      「ヨボセヨ・・」 

           っと相手が出てくれた。



 「おはようございます、朝早くから、しかも日曜のお休みのところ済みません。

 ユリ先生ですか?

 シオンの母親の李カノンです。」



ユリ:「・・あっ、シオンちゃんのお母さんのカノンさん?

      ・・・おはようございます・・・

               どうしましたか?

                       シオンちゃんに何かありましたか?」



 カノン:「あっ、いえ、、、いつもシオンがお世話になり有難うございます。

       今日は、シオンの事ではなく、私の事でお話を聞いて貰いたい

       んです・・・」

 ユリ:「え?・・・カノンさんの事で?」

 カノン:「はい・・・電話ではちょっとお伝えにくいんですが・・・」

 ユリ:「あ、じゃあ私、イテウオンに今日は行くのでそこのカフェで

     お会いしませんか?カノンさんのお住まいはイテウオンですよね?」

 カノン:「・・ええ、そうです。イテウオンです。」



 ユリ:「実は、私、語学ボランティアの会に所属していて今日はその集まり

    があるんです。イテウオンは日本で言うと東京の福生の様な街・・

    外国人がとても多く住む場所でしょう?

    イテウオンに住む外国人の人達に韓国語や韓国の生活の

    お手伝いをしているんです。私の担当は日本人で日本語なんですよ。」

カノン:「ええ、凄いですね。そしてとっても素敵なことですね。私もそんな会が
     済州島にあったら直ぐに参加したのになぁ・・・そしたら韓国語ももっと
     上手になれたかも???えへへ。でも、済州島はのんびりしていて
      とっても住みやすいところで良かったです。・・・あっ、済みません・・
     えっと・・・時間は??どこで待ち合わせましょうか?」

ユリ:「ボランティアは午後4時からなんでティータイムってことで13時位に・・

    ブラックスワンと云うお店はどうでしょう?

    そこはどのテーブルも仕切りがあって個室みたいだし声とか音も

    漏れないし、静かですよ。

    正し凄く人気があるのでいつも大変な混雑と順番待ちなんですが

    会員登録すれば直ぐに予約が取れるの。

    私は勿論、会員で、よくそのお店で日本人に個人レッスンをして

    いるの。今日はたまたま13時の人が急用が入ってしまい、これからキャンセルの

    連絡をお店にしようと思ってたトコなんです。でも丁度、良かった・・

    15時半位までたっぷり使えます。そこで会いませんか?


            でも・・カノンさん、場所分かりますか?」

 カノン:「あ〜、分かります、駅の方向に向かってゆくマルマルパン屋さんの

     近くの細い道に進んだ・・・お店の周りを小川で囲んで湖みたいに

     なっているお店ですよね?」

 ユリ:「そうそう、そこ・・・雰囲気も良いし、ブラック料理が美味しいの」

 カノン:「ブラック料理???」

 ユリ:「・・まぁ、兎に角、楽しみにしながら来てね。」

 カノン:「あっ、シオンも一緒で構わないですか?」

 ユリ:「ええ、勿論です。」





  カノンは、10年前の真相を、当事者のユリに聞いてみたかったのだった。

 きちんと確かめなければ、何も前に進まない・・・そんな気持ちだった。

 カノンは、ヨシ!っと大きなかけ声を自分にかけて立ちあがり

 シオンを起こし朝食を済ませながら家事を手早く済ませてブラックスワンに

 向かおうと思った。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





    シオンはTVを見ながら朝食のトーストを食べていた。

 カノンは洗濯機を回しながら掃除機をかけていた、色々な家庭の音が

 一杯のシオンの家の中で、李家の日曜の朝の音だった。  

カノン:「シオン、食べ終わったらお皿をキッチンの流しに置いてね・・・

     顔を洗って歯をミガミガして好きなお洋服に着替えてね・・・

     今日はママの友達に会うからね・・」

シオンはTVに夢中だったが、、「え?綾ちゃん?ヒロミちゃん?」と言った。

カノンはブッブー外れと云って笑った・・・

   シオンは少し考えて「久美ちゃん?緑ちゃん?」と言ったが

    それも外れだと言われた。

 うーん、誰だろうと思っていた時に、インターフォンの音が鳴った。

カノンはシオン、悪いけれど出てと言って掃除機をかけていた。 

シオンが出るとそこには、親戚のカイトが立って居たので、シオンは、あぁ、

友達ってサヤカおばちゃんかと思った。

  カイト:「シオンちゃん、こんにちは・・・シオンちゃん一人?」

      っと聞いた。

 シオンはちょっとだけ考えながら「ううん、カイト君、、、 カイト君は一人?
   ソラミちゃんやサヤカ叔母ちゃんは?」

っとキョロキョロ見渡して言った。

カイト:「うん、、、今日は僕・・・一人で来たんだ。

     カノン叔母ちゃまに用があって来たんだけど・・・叔母ちゃまいる?」


シオンはちょっと応えを考えながら、まごついていた、いつものカイトの感じと違うから
だった。


   そこへなかなかシオンが玄関から戻って来ないので心配しながら

    カノンが「シオン、シオンちゃん、どうしたの?どちら様だったの?」

   とやって来た。

        シオンとカイトの姿を見て

           「あら、カイト君、こんにちは」とカノンは笑顔で言った。



カイト:「カノン叔母ちゃま、こんにちは・・・あのぉ・・」

   シオンはカノンのエプロンの裾をきゅっと引っ張って

   「カイト君、一人で来たんだって・・・オンマに会いに来たんだって・・

   お友達ってカイト君のこと?」っと云った。

  カノンは違うと言いたかったがただならぬ雰囲気のカイトを見て

 言葉が出なかった。きっと何かあったのだ・・小さな子供が一人で自分に

 会いに来るなんて・・・

   カノンは優しく微笑みながら「カイト君、良く来たわね、いらっしゃい・・

   上がって、上がって・・・朝ご飯食べた?」とたずれるやいなや

カイト:「僕、知っているところが、幼稚園と叔母ちゃまの家しか無くて・・・  

    突然来ちゃってごめんなさい・・・僕・・僕・・・」と

   言ってわんわんと泣きだした。



カノンもシオンもビックリして、兎に角、上がってとして、リビングの部屋に通した。



   カノンは家事の手を止めて、冷たいお菓子と温かい飲み物を

   テーブルに置き、カイトに勧めた。

  カイトは飲み物を飲んで大分落ち着いた・・・



 そして今迄の話をカノンにしだした。

ソラミの幼稚園の友達であるマヤにそそのかされてその家に行った事で

ソラミが家には戻っては来たが、実は本物のソラミではなくマヤだと云った。



カノンは「え?」っと蒼くなった。丸で10年前の事が又子供の世代で

起こっているかのようだった。

でも幼稚園児にここまで出来るのだろうか?と思ったし、誰か後ろに

 この事の重要人物がいる・・・と思った。




      暫く沈黙が続いた・・・


カノン:「カイト君、おばちゃん、よくわかったし、カイト君を信じる。」

カイト:「え?本当?本当に信じてくれるの?」

   カイトの顔は明るくなった。

 カノン:「ええ、信じるわ。カイト君が嘘言うわけないもの・・・

     だからおばちゃんに教えに来てくれたんでしょう?遠いのに

     有難うね、辛かったね、大変だったね・・・

     叔母ちゃんね、何とか考えてソラミちゃんがお家に帰れる様

     にして上げるからね。一緒に考えようね。」と言って笑った。

 カイトは子供ながらも、やっぱりカノンに相談に来て良かったと

 思った。サヤカの様に子供の言う事を最初から遮り信じない親も

 いればカノンの様に即「信じる」と言って話を聞いてくれて考えて

 くれる親も居て、シオンがとても羨ましくなった。

 カノンは「カイト君、良かったらこれから叔母ちゃん達と一緒に

     凄い近所なんだけど、おばちゃんのお友達に会いにいかない?」

     っと云った。

 時計を見るともう11時40分位だった。

カイトは自分は黙って家を飛び出してきた事を告げた。

カノン:「そうか、じゃあ、叔母ちゃんが今、お家に電話するから・・」と

    言って電話をし始めた・・・

  カイトは大丈夫かとドキドキした。

     カノンはニコニコ笑いながら叔母ちゃんに任せてと云った顔を

   して何度もながら電話を架けた。

   7回目のコールでやっとお手伝いの女性が出た。

 ハウスキーパー:「ハウスキーパーの徐です。え?おぼっちゃまは確か

           お部屋だと思いましたが?

          奥様はお嬢様と母子でミュージカル観劇にリラ幼稚

         園の皆さまとお出かけになりましたのよ。

         ご主人様はフライトでイタリアです。」っと事務的に

         伝えていた。

 カノン:「では、サヤカが帰りましたら、カイトは親戚の李カノンの家に

     居て遅くならない内に帰宅させます。勿論、送って行くので

     心配しないでくださいと伝えて下さい。こちらの住所と連絡先は

    ・・・・・・・・・・・」と伝えて電話を切った。



  カノンはカイトのに目線を合わせてしゃがみこみ、「大丈夫だったよ、

  さあて、お出かけ、お出かけ♪」と言って笑った。



  シオンも、「カイト君も一緒で嬉しいな」と言って万歳を何回もした。

  カイトは何だかやはり嬉しくなって涙があふれて来た。

 来て良かった、叔母ちゃまに話して良かったと思った。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー







  「いらっしゃいませ」

    13時ちょっと前にカノン達は到着し、店の者に出迎えられた。

  外はお天気も良く、夏の香りが感じられる草木の緑と太陽の眩しい

 1日になっていた。店の周りを何重にもなって順番を待って居る人達

 が沢山いてビックリしたし、その人気の凄さを実感した。

 会員になるには、半年待ちで、条件も厳しかった。

 ここ3年はソウルから引っ越さないで在住していることとか、年会費が

 120万W(=12万円)位した。正し、TDLみたいに年間パスポート

 になっていていつでも直ぐに入れてオーダーが出来るシステムで、

 飲み物代金はいつでも無料で一緒に来た人4名まで無料だった。

 1回3時間まで個室のような部屋を使えるので考えたらお得かも

 しれなかった。

 既にユリが来ていて手招きをした。

 ユリ:「カノンさん、こっちこっち」と慣れた感じで呼び寄せ、

 パーテーションのある席へと招いた。

 日本のお洒落な居酒屋・・・いや雰囲気の良いカラオケボックスみたい

 な感じでソファにしろテーブルにしろ高級感と落ち着きのあるお店だった。

 「ブラックスワン=黒鳥」をイメージしてか黒を基本にモノトーンの色使い

 だった。

 カノンは初めてこの店に来たのに何となく日本人好みのお店な感じが

 した。

 ユリ:「カノンさん、いらっしゃい、そしてシオンちゃんと・・・お友達?

     BFかな?」と云った。

 シオンは「・・カイト君、シオンの親戚のお兄ちゃん、あ!ソラミちゃんの

      お兄ちゃんです。ユリ先生が、オンマに会う今日のお友達

      だったんだあ。」と言って笑った。

 ユリはビックリして、「あはは、そうか、ソラミちゃんのお兄さんか。そう

            言えばお顔が似ているし、どちらかと云うとお父さん

           の権海仁さんに似てますね?カイト君、こんにちは、

          妹のソラミちゃんの先生をしてます、仲良くして下さい。」

    と云った・・・

 ユリは先ずは飲み物として「私たちは大人用のブラックジュース、そして

                子供たちにも子供用のブラックジュースを」と

                 言って注文した。

大人用のブラックジュースはクランベリーのコーラ割のような?そんなジュース

で、子供たちのはチョコレートのジュースだった。   

カノン:「ユリ先生、ごめんなさい、突然に呼び出してしまいまして・・・

    でもどうしても聞きたい事があったので・・・」と云った。

 ユリ:「ユリ先生だなんて水臭いわ・・・私も幼稚園以外でカノンさんと

    こうして会ってお話とかしてみたかったの・・・

   あれから・・もう10年ですものね・・・時の流れって早いですね・・・

   まさかカノンさんがソンジェさんと結婚されて韓国に居たなんて・・

   でもお幸せそうでなによりです。」

               っと言って笑った。

 カノン:「そうですね、この10年、順風満帆と言ったわけではなかったけれ

     ど、幸せだったかと聞かれたら直ぐに、はい、幸せですと答えられ

     るかもしれないですが・・・」

 ユリは「・・・フフフ、10年前の事が丸で昨日の事みたいね?」

 カノン:「・・実は今日はその10年前の事でお聞きしたい事があって・・・

     もしかしたら辛いお話かもしれません・・・ですがどうしてもお聞き

     したいんです。」

 ユリはカノンの真っ直ぐな目を反らせなかった。

 ユリ:「・・カノンさん、何かあったんですか?・・・」



   カノンは深く深呼吸をしてこれからお話しする話を先ず全部聞いて

   貰えるかと聞き、その確認を取った後で話し始めた。



  帰国してからのこの10年までの話を・・・



 ユリは聞き終わってビックリした、「え?ひまわり組の天才少年の

 ジェファ君の叔父さんがテファオッパで、テファオッパは何度かリラ幼稚園

 にも来ていたの・・・そしてカノンさんにもソンジェさんにも遭遇した・・・

 ソンジェさんも呉ジナさんにも会っているし・・・この私にも・・・

 何だかとても運命的な物を感じるわね・・・・

      それよりも・・・

         もっと恐ろしいのはマヤちゃんね、その話が恐らく

   真実だと思うけれど、スンミさんの事を思い出すわ。」







     スンミ・・・

               スンミとやはり繋がっているのかもしれない。



   ユリもカノンも顔を見合わせた。



ユリは「カイト君、あのね、マヤちゃんのお家に行った時、大人の人は

    お手伝いさんと、誰かいたの?」と優しく聞いてみた。

 カイトはよく考えて「・・・ううん、あのね、50歳位のお婆さんみたいな

            女の人がいたよ、マヤちゃんと仲良しだったよ。」

 50歳位のお婆さん・・・

    スンミはユリやカノン達と同い年ぐらいの筈なので28歳・・・

ユリ:「薬や整形手術の影響で老婆になっちゃったのかしら?

   それとも逃亡の為に用心を重ねてワザと老婆になっているのかしら?」

カノン:「・・・考えられるかもしれないですね・・・」

ユリ:「・・・・恐ろしい事がまた起こってしまったわね・・・」

カノン:「ええ、どうしたらいいのか・・・私では上手く考えられなくて・・・」

ユリ:「・・・分かるわ・・・でもソンジェさんはこのこと知ってるし、ソンジェさんに

   任せておけばいいんじゃないかしら?」

 カノンは「・・いいえ、ソンジェはまだマヤちゃんとソラミちゃんが入れ替わって

      いることを知らないし、きっと話しても信じて貰えないと思います。

      自分の義理妹が1枚かんでいる事も、何となくは分かっているけど、

      信じてない・・・信じたくないって感じです。

      かなりのナルシストですし、自分以外は信じない冷たいところと頑固

      なところがあります。私の話も信じると云うものの、実は信じてない・・

      だから先回りをしたり出来るんです・・・」

 ユリ:「・・・そうなの・・・」

    ユリは黙って聞いて頷くように言葉を発した・・・・



   カノンは「・・・ユリさん、教えて欲しいの・・10年前の帰国間際のこと・・・

        ユリさんにとっては辛いだろうしもう思い出したくもないかもしれない

        けれど・・・アバイ村の旅行の最終日、私たちを追いかけてホテルまで

       来たところから帰国まで・・・私はテファさんに言われるがままソンジェと

       直ぐにソウルに戻り荷物をまとめてかくまってくれる崔雅子さんの家に

       行って帰国前日まで過ごしたの。仁川の空港に近い国際ホテルに

       最後の晩は、学生たちやホストファミリーは集められてパーティをして

        次の日はお見送りで空港へ行く・・・・フェアレルパーティのあった

        前夜、その日に大きな事件があったって後で聞いたの・・・

        テファオッパも、ユリさんもホテルに来ていたんでしょう?」



   ユリはカノンには嘘はもう止めようと思った。

    そして微笑みながら「ええ・・・あの日、、、帰国の前の日、私は金子瞳さんの

    最初のホストファミリーだったから、せめてお別れを云いに行きたかったの。

    良い友達が出来たって思ったの・・・

    オッパもその日、カノンさんに会いに来ていたのは本当よ。

    今となっては過去の事だけど・・オッパは、カノンさんを守るため、ソンジェさんと

    約束をしていたの。旅行の最後の日になるだろうと云う日、ソンジェさんは

    オッパと皆がいるホテルに行って話をしたの。

    私は醜い格好だったから次の朝、皆に会いたくなかったけど、オッパに

    会いたかったから、ソンジェさんに頼んで物陰に隠れてオッパを見ていたの。

    話の内容も全部聞いているわ。あっ、でもソンジェさんにはその時、唯一目だけ
    
    オッパを見たら車に戻って待ってるってして嘘をついたの。ずっと見ていたかった

     から・・・話の一部始終は聴いたつもり・・・

    次の朝、ソンジェさんたちは皆で、このホテルに押し寄せて、オッパを

    奪い取り、カノンを叩きのめすって・・・私の醜い姿も見せつけて、

    笑い物にするって・・・・・ソンジェさんは私が変わり果てた姿を

    見た時、おい、嘘だろう?これは偽の姿で直ぐに美しい前の

    姿になれるんだろうって・・・言ったのが忘れられないわ・・・

     オッパに姜IT企業は李企業に・・いや妹に簡単に潰された・・・
    
    姜ユリも化け物になって君はきっとユリを見たら気持ちがもっと離れるはずだし

    倒産もし、地位も財力も名誉も失った姜一家は君には負担だと思う・・・
    
    1番の解決策はオッパがソンジェさんの妹と結婚して韓国経済を支える企業人に
  
    なることだって・・・

   カノンは記憶もとうとう戻らなかったし、親戚のサヤカさんから二人の事を聴いて、
   
   カノンは幸せにはなれないと確信した。

   カノンを解放してやって欲しいって・・・


    カノンさん、ソンジェさんは実は本当は物凄く冷たい人なんじゃ

    ないかしら?それは呉ジナさんと別れた事が原因と言われている

    けれど・・・私は育った環境だと思う・・・

    自分に対して完璧主義者だし・・・自分より優れたり、自分が

    欲しい物を手に入れなければ気が済まない性格・・・

    とても頭のいい人だし、、、、

    全てが計算しつくされた感じの・・・上手く云えないわ・・・

    周囲にはとても良い子ちゃんで実はその均整を保つために

    別なところで冷酷さを出すと云うか・・・・

    オッパは次の朝、変わり果てた醜い私を見ても変わらず

    笑顔で「やあ、ユリ」って真っ直ぐに私を見つめて話しかけて

    くれたの・・・オッパは裏表は無いし本当に素敵な人よ。

    ・・・それでオッパはカノンさんを帰国まで無事に過ごさせて

    やって欲しいって、その約束のかわりに帰国するまでもう

カノンと接触しないで欲しいってソンジェさんは言ったわ。

   学校で会っても他人のフリをするようにって・・・

   更に今後はカノンと別れて欲しいとも言ったんだけど、、、、

    記憶が恐らく戻ってないからそのまま帰国させるなら、

    もうカノンを混乱させないで欲しい、今後は僕である

    ソンジェさんがカノンさんを守るし、守りきるからって・・・

    オッパは条件を呑んだけどカノンは物ではないし、

   カノンの気持ち次第ですよね?っと言って笑ったの・・・

   ソンジェさんは、そうだって言ってやっぱり笑ったんだけど

   凄く冷たい笑いだったのを覚えているの・・・・

  帰りの車の中でも、ソンジェさんは、私に同意を求めたわ、

  カノンは僕が幸せにする・・・記憶は戻らないままだし、

  カノンはテファといたら不幸になるし、周りの人達も不幸に

   にしてしまう、ユリさんだってそう思うだろう?

  ジナの二の舞はもう踏みたくない、もうカノンなしでは僕の

 人生は考えられない。カノンだけは諦めない。・・・って。

 それから、サヤカさんとも帰国の3日前かしら?ソンジェさんは

  カフェで会っていたの。

  たまたま瞳さんがそのカフェにお友達といたの。

  そしたらテファを約束通りおびき寄せたとか何とか言っていた

  そうなの・・・でもこの話は帰国した後で分かった話なの。

  私は私の事を良く思ってないホンデの学生につかまってしまい

  犬のように首輪をハメラレテ、四つん這いになってホテル中を

 歩かされたの・・・各部屋に回って、今迄済みませんでしたって

 ・・・この化け物は姜ユリです、哀れな私に整形手術代金を

  恵んでくださいって言われながら・・・・」

 カノン:「・・ひどい・・・酷過ぎる・・」

ユリ:「いいえ、私が今迄してきた意地悪に比べたら・・・

     そんな光景を聞きつけてオッパは私を庇いに来て

     くれたんだけど、人数が多すぎたのと、オッパは薬を

    嗅がされてぐったりして倒れてしまったの・・・」

   背後からオッパを襲ったのは呉ジナさんだったわ。

  薬は多分、サヤカさんかもしれないわ。お家がお医者様だと

   ソンジェさんが言ってたから・・・

  私も同じ薬を嗅がされそうになって直ぐにきいたフリを

  して倒れたの。それでも少し意識がもうろうとしてたんだけ

  ど、そこにはソンジェさんとサヤカさんがいて二人で相談を

  していたの・・・これでカノンは、テファが最後迄来ないことに

  失望するだろうって・・・・

   薬は飛行機が離陸した後だし当然、空港にも行けない

  だろうって・・・

  僕は直ぐにカノンを追って日本に行きます。

  日本の大学院に行きます。

  万が一、テファが日本に来ても、僕がシッカリとカノンをガード

  すれば、テファはカノンには会わないでしょう、例え会いに

  来ても先回りして会わせたりはしません。・・・

  って言ってたの」

  カノン;「・・・やっぱり、オッパは、会いに来てくれてたんですね」

 ユリ:「ええ、勿論よ。オッパはね、カノンさんが大好きだったのよ。

    カノンさんの為だったら何だってするわ。

    全世界を敵にしても良いってくらいだったもの。

    記憶が戻っても戻らなくても関係ないって言ってたしね。」

 カノンは涙がポロポロこぼれた・・・・

 カノン:「偶然にも、神様はまた接点を持たせてくれて、オッパと

     再会出来ました。ユリさんもてっきり知っていたと思いました」

 ユリ:「オッパは大学を卒業してから日本の企業を狙っていたんだけど

    どうなったのか?分からないままだったけど・・・

    幼馴染みだったし、近所に住んでたんだけど、姜IT企業が

    倒産してからは私たちは引越ししたり自分達の事で精一杯で

    ・・・気かついたら、オッパの音信が分からなくなっていたの・・・

   お姉さんは芸能人だからTVでとかネットで今はどうしているかは

   何となくわかるけど・・・

   韓国にオッパは戻っていたのね?

   オッパに会いたいな〜、懐かしいわ。」

 カノン:「益々、イケ面になってました。ホンデの華麗なるスターの

     まんまでした。オッパは今も心がピカピカで優しかったです」

 ユリ:「そうなんだ〜、カノンさん、なんでオッパを諦めちゃったの?」

 カノン:「・・・・うん、凄く難しい・・・質問なんですが・・・

      いえ・・・単純化もしれない・・・私は私の中でオッパを

      諦めちゃった・・・と云うか手を離してしまったのかもしれない

      です・・・オッパは凄く自分にとって素敵過ぎる人で、強くて

      優しくて、これからも沢山の人に愛されたり頼りにされたり

     皆の王子様って感じで・・・自分がいなくても、私なんか

     一人いなくなっても大丈夫な人なのかも?って思ってしまった

    ・・・・これが理由かもしれないです。

     帰国の日、何故か?オッパが来ない気がしたんです。

     ホテルにも空港にも・・・ソンジェにこれからオッパに

     会わせてくれると言われた浜辺にも、オッパは来ないって

     ・・・・だから悲しくは無かったんです。それよりもソンジェ

     の温かい気持ちが嬉しかったのと、ここでまたソンジェを

     裏切ってオッパの元に走って行ってしまったら?と考えた

     時、ソンジェに残された物っていったい何があるだろうって

     思ったんです。家族も、地位も名誉も何もかも失って

     恋人も遠の昔に去ってしまって・・・もし自分が去ってしまった

     らソンジェはこれから先も寂しい悲しい音楽しか奏でる事が

    出来なくなるんじゃないかって思ったの・・・それは私の同情

    と云うか・・・偽善だった・・・綺麗な言葉で言うなら情愛

     だと思う・・・でも本当の家族になった時から、ソンジェが

    なんか自分の思い込みと云うか傲慢な気持ちでした・・・

    ソンジェはとても繊細で寂しい人なんだと思い込んでいたん

    ですね、だから私は自分がいつも元気で頑張って明るくして

    いなければならなかったし、、、ソンジェの前では泣く事が

    出来なくなりました。オッパの前では素直に泣いたり笑ったり

    出来るのに・・・

    後はソンジェの前では嘘偽りなく話すと言いながら、結構、

    本心を言わない事が多かったです。それがどんどんどんどん

    歯車をかみ合わせなくなってしまい、今では・・・・」



ユリ:「え?今では?」

カノン:「ええ、もう大きな溝が出来てしまっています。」



ユリ:「え???ちょっと待って、どうして?あんなに幸せそうな家族

   だったのに・・・どうして?」

カノン;「私は、ソンジェが信じられないし、今はとても怖いのです。」

ユリ:「え?暴力をふるうとか、怒鳴るとか?」

カノン:「いいえ、それは無いです。でも、さっきもそうですが、10年前の

    話を聞けて確信しました。ソンジェは、何かスイッチが入ってしまった

    のかもしれないです、テファオッパをライバルだと思ったのかもしれ

    ないし、、、自分に対して完璧主義者でかなりのナルシストだった

    んです。だから光輝く何でも手に入るオッパを眩しくも、疎ましくも

    思ったのかもしれないです、光は1つでいいのです、私は当時、

    テファオッパを太陽だと思い、ソンジェを月だと例えました。

   それもソンジェは気に入らなかったのかもしれないです。

   音楽に関しても、テファオッパはバンドのボーカルで歌も踊りも上手で

   人気者でした。容姿も光輝く感じだったし・・・

   ソンジェはオッパに劣らず美しいけれど・・・歌よりも演奏だし、作詞・

   作曲とか・・・裏方の部分で華やかさはない・・・本人はそれで良いと

   私は思っていましたが、結婚してからは考えが変わりました。

   常に注目を浴び、常に1番を取らないと気が済まない性格でした。

    特に音楽に関しては少しの妥協も許さないし、寝る時間を

   惜しんで完璧に仕上げます。

   口では優しいい事を私やシオンに言いますが、実は物凄く相手に

   対しても期待しプレッシャーをかけて来る話し方をする、、、、

   それが分かると云うか・・・違和感でなりませんでした。

  オッパに再会してから、私の心の鍵が開いてしまったんです。

  10年前に、いえ、出合ったころに戻ってしまったみたいです。

  人の道に外れているかもしれませんが・・・」



ユリ:「・・・オッパと会ってしまったからなのね」と云った時、

  「いいえ、オッパに会わなくてもきっと同じ気持ちに遅かれ早かれ

   気が付いていたんだと思います。わざと気がつかないフリをして

   いたのかも・・・・」とカノンは言った。



ユリ:「・・・でもソンジェさんは業界でも有名な愛妻家でいるし、有名な

    音楽家であり成功者だと思います。そんなに簡単にカノンさんや

    シオンちゃんを手放すとは思えないわ・・・」



カノンはフトユリに「ねぇ、ユリさん、ユリさんは今もオッパの事、、、」と

 言いかけた時に「失礼します」と日本語で言われて顔を出した

 男性が居た。どうやら店のオーナーで日本人だった。

「料理はお口にあいませんでしたか?私はブラックスワンのオーナーの

 堺祐樹(サカイ ユウキ)です。」と挨拶した。

気が付けばお喋りに夢中で、料理は殆ど手をつけていなかった。

 子供たちは子供料理をちゃんと平らげていた。

カノンは「済みません、お喋りに夢中で・・・」

ユリはクスクス笑いながら「ねぇ、ユウ、これお土産になる?」と親しげに

 話しかけた。

ユウキ:「OK、いいよ」と云った。

 カノンはきょとんとしているとユリはケラケラ笑いだして

「実は、私達付き合っているの・・・」とユリが言うと

ユウキは「ユリとはユリが日本に留学に来た時に知り会って、僕が未だ

 料理学科の専門学生でいつも夜秘密の特訓を調理場でやってた

 時に、ユリは夜間の保育専門学科の生徒で熱心に通ってたんだよな?

その授業が終わるとユリはまだ残って勉強したりしていて、僕が良かったら

味見とかして欲しいって言ったんだ、それから話を良くするようになって・・

ユリは凄く醜い容姿で韓国では誰も友達がいなかったんだって言ってた

っけ、でも日本に醜いまま来たけど、日本人は全く気にせず付き合って

くれたり沢山友達が出来て楽しんでたよな?

ユリは人気者だったよな?」と言って笑った。

ユリ:「え?そうだった?でも美人でお高くとまっていたホンデの時の

私よりも私は幸せだったし、本当の友達もたくさん出来たから・・・

昼間は学費や生活費の為に働いて夜学校に通ったのよね。」

ユウキ:「凄い忙しそうで、それに年中腹をすかせてたっけ・・

     ハハハ、僕の作るものを何でも上手い、上手いって・・

    帰国することになって僕が別れるのは嫌だってことで

    思い切って韓国でお店開くってなって色々なアイディア

    とかユリと相談して今に至ったんだよね。

    両親の仕事も持ち直して来たり、結構頑張ってユリは

    バイトしてたからお金が貯まって両親や周りの薦めで

    整形して元に戻ったとと云うか・・・違った顔にはなっ

   ちゃったけど美しい女性になったんだよね・・・

   綺麗になってもならなくても僕はユリが好きだけど・・・」

    ユリは嬉しそうに笑った・・・とても幸せそうな笑顔だった。



    カノンは急に自分のことばかりで周囲が見えなかった

    ことが恥ずかしくなった・・・



  カノン:「ユリさん、ごめんね、私ばっかり話してしまって・・・

       ユリさんが幸せそうで私も嬉しいです。

       この10年がユリさんにとって良かったことだと私は

       思いました。変なドタバタ話に付きあわせてしまい

       ごめんなさい。」

ユリ:「ううん、いいのよ。ここまで頑張れたのはあの時の事が

   あったからだもの。感謝しているし、私で出来る事が

   あったら何でも言ってね。私はいつでもカノンさんと

   オッパの味方よ。オッパはこの事、知ってるの?」

カノン:「詳しくは話してないです。でも再会して私はとても

    嬉しくて幸せです。」



   ユリ:「・・・そういえば・・・」

カノン:「え?」

   ユリは言おうとしたが「ううん、何でもないわ・・・

       何を言おうとしたか忘れちゃった。」と

       ごまかした。



ユウキがお土産を包んで持って来てくれ

「ユリ、もう時間だよ、良いのか?」と云った。



携帯電話の時計を見るともう15時45分だった。

ユリ:「いっけなーい。カノンさん、また近いうちにね。」

   と言ってお会計はもう済ませてあるで

   飛び出して行った。

カノンはユウキに「お幾らですか?」と聞いたが

「いや、友達価格だし、企業秘密で・・・いいんですよ

 ・・・ユリが韓国で初めて連れて来た日本人の友達

 だから・・・僕も嬉しいですよ。仲良くしてやって

 下さい。」と言って笑った。

素敵なカップルだとカノンは思った。

更に幸せになって欲しいとも思った。





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カノンはカイトを家まで送ることにしてシオンを連れて

新村へと電車で向かった。そこからタクシーでカイトの

家まで向かった。

帰りの電車やバスの中でカイトに分かり易くこれからの

事をカノンは話した。

お家では誰も信じてくれないなら、これ以上、カイトが

騒いでも無駄だし、もっとサヤカを怒らせる事になるから

暫くは大人しくした方が良いと云った。必ずカノンが、

ソラミを助けると約束し、又元の楽しい権家になるように

することを伝えた。

更にカイトの幼稚園はイテオンなので、もし怖い事や危険だ

と思ったらいつでもうちに来るようにとも言って鍵とお金を

渡した。カイトはお金なら持っていると言ったが幾らあっても

邪魔にはならないし、何かの時に役立つかもしれないから

と言って渡した。

カイトはたった一人でも大人が自分の言葉を信じてくれて

助けてくれると言ってくれて救われる気持ちになった。

もしカノンも信じてくれなかったら自分が一人でソラミを助けに

行くしかないと思っていたからだった。

権家に到着すると既にサヤカとソラミ(マヤ)は戻っていた。

サヤカ:「カノン、悪かったわね、お守をさせちゃって・・・

     カイトは最近情緒不安定で・・・男の子は何を

     考えているか全く分からないわ。反抗期なの

     かしら?それに引き換え、ソラミはとっても良い子

     なのに・・・最近ではピアノもお勉強も運動も

     何でも1番みたい。そうでしょう?シオン・・

     シオンはお父様が有名な音楽家なのにピアノは

     下手くそだし、お父様はガッカリなんじゃなくて?」

と言って高らかに笑った。カイトは煩いとくってかかろうとしたが

カノンが止めて「ソラミちゃんは凄いね、頑張り屋さんだものね。」

と言って笑った。

   ギラリとした目が光ったのをカノンは感じた・・・

    マヤの鋭いまなざしに違いなかった・・・

    この子はやっぱりソラミではい・・・カノンは直ぐに分かった。



シオンも何となく気が付いている感じがした。

「カイト君、またね」としてそそくさと帰る事にしたところサヤカが

「あっ、ソンジェさんが迎えに来るそうなの、我が家で夕食を

一緒にしましょうってなって・・・だからおあがりになって・・・」

っとサヤカが言った。

  ソンジェと余り接触もしたくなかったが、観念して

お邪魔しますとした。

 相変わらず美しい調度品のあるセンスのいい家だった。

リビングに通されると大きな新しいグランドピアノが置かれて

いた。

サヤカは得意になって「あぁ、これはソラミの為にウイーンから

特注したの。日本の実父はね、日本のピアノの方がいいんじゃ

ないかって言ったけど・・・やっぱりね・・・最近はピアノの先生も

絶賛する位、ソラミのピアノは凄いし、将来はピアニストになれる

って云うのよ。ホホホ。それで一度プロのソンジェさんにソラミの

演奏を聴いて貰おうと思って電話したの・・・それにあなたたちが

カイトの送りで来るって伝えたら、じゃあついでだって感じになって

ね。ソンジェさんならソラミの才能を見いだしてくれるかもしれない

しね・・・」と・・・・



カノンは良い機会かもとも思った。プロのソンジェが聞けば、きっと

ソラミの演奏ではなくマヤの演奏だと分かるはずだからだ。



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ユリは、カノン達と別れた後、国際交流ボランティアの集まりもそぞろな気持ちで

いた。

仲間の金シネがペンでユリの腕をつついた。

シネ:「どうしたの?ユリ、元気ないじゃない?」

ユリは:「え?あっ、、ううん何でもない。」と言ってプリントを読むふりをしたが

シネに逆さまだよとからかわれてバッさっとプリントを机から落として注目されてしまった。



ユリは済みませんと会釈しながらプリントを拾いながら、最後にカノンに言おうと

した言葉があった。

 それはシオンのことだった。

 シオンが少しもソンジェに顔立ちも器量も似てないからだった。

 どちらかと云うと、テファオッパに顔が似ていたし、更に楽器はソンジェのように

 天才的な才能はなかった。どちらかと云うと、幼児らしい、歌は上手いし、

  愛らしい、お絵かきも割りと上手、意見はハッキリ言えて優しい心根がある

  ところはテファに似ているのだった。

       でもカノンさんにシオンちゃんは強く似ちゃったのかも?

        考えすぎよね?と言って笑った・・・





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       ソンジェは「悪い悪い、遅くなりました」と言って権家にやって来た

       のは、19時を回ってからの事だった。

       カノンは、料理の手伝いと云うより、メインになって食事を作っていた。



       ソラミ(マヤ)はお洒落した格好で丸でリサイタルを開きそうな感じで現れた。

 ソンジェ:「やぁ、ソラミちゃん、こんばんは。」と言って優しく微笑みながらあいさつした。

 ソラミは「叔父ちゃま、こんばんは、今日はソラミの為にようこそ」と言ってドレスのすそを

   少し上げてレディのように振舞って挨拶した。

 

 ソンジェはたち振る舞いといい、しっかりしたソラミにビックリした。

 サヤカは嬉しそうに「リラ幼稚園に通うようになってかなりシッカリして来たし、才能も開花

            して来ましたの。やっと頑張って来た苦労が報われるわ。」と云った。

ソンジェは笑いながら「じゃあ、ソラミちゃん、今日は何を叔父さん達に披露してくれるの

             かな?」と云うとソラミは自分がマヤの子供とバレナイようにしないと

             いけないと思った。

   母親のジナがマヤの得意はショパンやブラームス、ワーグナーが得意でそればかり

   好んで弾いていると云った。余り好きではないのがモーツファルトとも電話で言っていた

   ので、敢えてモーツファルトの曲で行こうと思った。

 ソラミ:「じゃあ、ソラミの好きなモーツファルトのピアノ協奏曲第9番ジュノムにするわ」と

     言ってピアノに向かった。

    そしてシオンを見つめ心の中で、シオン、見てらっしゃい、あなたのお父様が

    あなたが娘でガッカリする瞬間を!と思いながら

     弾き始めた。

   それは素晴らしい幼児と思えない弾きっぷりだった。

    シオンはソラミの演奏を聴きながら、息をのんだ・・・

     凄いな・・・ソラミちゃん、いつの間にこんなにピアノが上手になったのかなと

     思うと同時に、でも自分も少しは変だと思っていたけど今朝のカイト君の

     お話もそうだけど、もしここにいるのがソラミちゃんじゃなくてマヤちゃんだったら

     ピアノが上手いのは分かる気がするなっと・・・混乱していた。



   カノンは、やっぱりこの子はジナの子供、マヤだと思った。

   ソラミはいつもピアノを弾く時、癖で左足を引きずって椅子に座るのだった。

   それが今日はなかったし自信に充ち溢れていた。心の無い機械的な弾き方は

   技術的には上手いかもしれないが少しも響いてはこなかった。

   きっとソンジェもソラミでないと分かるはずだと思っていた・・・・





   ところが、ソンジェは立ちあがり大きな拍手をしていたのだった。



   ソンジェ:「いや〜、凄いな。上手いな〜、ここまで弾ければ大したもんだ。

         将来はピアニストになれるよ。おじちゃんが保証するよ。

         サヤカさん、素敵な娘さんに成長しましたね。

         幼稚園児が弾いたとは思えないほど、素晴らしい。」



    夢中で絶賛していた。

    カノンはソンジェは物の本質が見抜けない人だった事に少々ショックと

    失望をしていた・・・

    更にソンジェはチラリとシオンを見て、がっかりした顔つきを見せた。

    実際にソンジェの心は、がっかりしていた。

    急にシオンが色褪せた唯の平凡な子供に見えた。

    ピアノは下手くそだし、余り興味も示したりしない、どちらかと云うと

    演奏よりも歌を歌ったり踊ったりする方が好きだったり、絵を描いたり

    野山を駆け回ったりする方が好きだった。

    子供らしいと言えば子供らしいが、天才音楽家の自分の娘が平凡で

    色褪せてしまうのが何故か空しかった。

シオンもリラ幼稚園に入ったのに・・・何故、こんなに差がつくのだろうか?

シオンにももっと英才教育が必要なのだろうか?などなど・・・・

それよりもソラミが余りにも素晴らしい演奏をしたので、きっとこの子は底知れない

才能があるとソンジェは思った。



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帰りの車の中で、シオンはもうぐっすり後ろの席で寝ていた。

カノンもシオンと同じ後ろの席に座って、眠そうなフリをしていた。

するとソンジェが、一方的に話をして来た。

それが余りにも勝手で我儘な言葉だった。

ソンジェ:「いや、驚いたと云うよりもショックだったよ。

      ソラミちゃんがあんなにも才能があるなんて・・・・

      正直、シオンがなんでソラミちゃんが出来て出来ないんだろうって

      思ったよ。やっぱり塾や家庭教師、習い事をさせた方が良いのかも

     しれないと思ったよ。唯の可愛いだけの平凡な娘だと李ソンジェの

     子供ではいられないからな・・・せめてスンミちゃんよりは出来ないと・・」



       とか「カノンはサヤカさんとは親戚同士なのに、余りにも差を感じ

         たよ。いつもいつ行ってもサヤカさんは綺麗だし上品だし・・・・

         いつどんなパーティに行っても恥ずかしくないしね・・・

         言葉だって、英語は勿論、韓国語やフランス語など完璧だろう

         ?いつも磨かれていて素晴らしい淑女だな。」

                 等など・・・・

見栄っ張りで格好つけたがり・・・そんなソンジェの悪い部分が最近ではたくさん

出て来てカノンはウンザリしていた。



            「ところで、カノン、昨日はどうして帰りが遅かったの?」

           とソンジェが聞いてきた。



      カノンは思い切り寝たふりをして応えなかった。



   「なんだ、カノンも寝ていたんだ・・・」そう思いながらソンジェは左にハンドルを

   大きく切った。








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 サヤカは得意満面だった・・・

 初めてカノンに勝ったって思った気分だったからだ・

 鏡台の前に座り先ほどソラミが弾いたモーツファルトの曲を鼻歌交じりにしながら

 髪をとかしていた。

 ソンジェさんは、あの時、自分の娘であるシオンをガッカリとした表情で見ていたなっと・・・

 それをカノンが見たのをサヤカは見てとったのだった。

 ソラミがリラ幼稚園に入って最初は劣等生もイイトコだったけど、やっとやっと私の苦労が

 実を結んで花を咲かせたんだわ。

 ソンジェさんは後悔している筈よ、私を選ばず、カノンを選んだ事を・・・

 ソンジェさんと私は同じ匂いがする同種なのよ・・・

 常に1番で無いと気が済まない・・・
 
 自分もパートナーも・・・・

 唯あの時は、ホンデのアイドル、テファが夢中になる女がカノンだったから、どうしても

 カノンを手に入れたかった・・・そんなトコかしら???

 シオンは確かに可愛いけれど、父親であるソンジェさんの音楽的なDNAは1つも受け継いで

 ない・・・フフフ、それもそうよ、全てが仕組まれたことなんだから・・・・

 ソンジェさんがこの事を知ったら・・・おそらくショックを受けるだろうし、きっと私の元に来て

 ひざまずくと思うわ。私をあの時、選ばなかった事を後悔させてやるわ。




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   カイトは久し振りにぐっすり眠る事が出来た。
 
   今日はカノンに会いに行き、きちんと思っていた事を話せて良かったし、カノンが

   自分の話を信じると言ってくれた事がとても嬉しかった。

   大人は・・特に自分達の親みたいに子供の言う事なんて信じてはくれないものだと
  
   思っていたし、嘘つきで、いつも周りの体裁を取り繕ってみたり見栄を張ったりする

   ものだって・・・

   そのせいで自分の子供さえも見分けがつかずにいる母親のサヤカに深く嫌悪感を
  
   カイトは覚えていた。もうママは、昔のママじゃない。

  ソラミ、お兄ちゃんが必ず助けに行くからな・・・

  カイトは何度も強く唱えながら眠りに入って行った。





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