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作品名:潮風のセレナーデPARTUバトル編 作者:HAPPYソフィア

第14回   黒い渦の嵐・・・
10年前と同じ事が起こりつつあった・・・黒い渦は大きな嵐へと変わってゆくかの様だった。

韓国の整形手術の技術はやはり世界でも群を抜いていた。今や、ちょっとした整形は

ほんの数時間で終わり、顔全体を変えてしまう変身整形は日帰りで済む技術にまで

到達していた。

ソラミとマヤは完全に入れ替わったかの様に、完璧な整形となった。

絶対音感を持つマヤは、ソラミの声を真似するのは簡単だった。

ソラミは驚きを隠せずに言葉を失った。まるで自分がそのまま居て、鏡の内側と外側に

いるかの様だった。

マヤ:「いい?あんたは今日から暫くは呉ジナの娘、呉マヤよ。
    幸い、私のお母様は年中忙しいし、家にはいないの。それに私の事、何故か?
    恐れていて、一緒に会話したりもしないの・・・
    この事を知っているのはここにいる叔母様と、私とソラミ、あんただけよ。
    マスクして風邪気味だって言って、余り喋ったりしなければ、声が多少変でも
    誰も気がつかないわ。それに、我儘三昧好き勝手やっても誰も文句は
    言わないし、お手伝いやシッターは2日の内に一掃し入れ替えるから、あんたが
    ソラミだなんて全く分からないわ。」

ソラミ;「暫くってどれくらい?」

マヤ:「う〜ん、分からないわ。でもあんたの大好きなお母様の期待する娘に変身して、
    李シオンを叩き潰して、李ソンジェを私のお父様にするまでだから早くても
    1カ月はかかるわね?出来る?」

   ソラミは、何も手を下さずとも、マヤの言う通りにしていれば失敗は無いと思い、
   頷いた・・・「我慢できる・・・私は今日からマヤちゃんになるね。」と云った。

マヤ:「そうよ、その調子よ。あんたは、マヤって言う名前だけでいいのよ。勉強なんて
    出来なくても良いし、ピアノも弾かなくても構わないわ。呑気に暮らしてなさい
    よ。そしてシオンが今はリラのお姫様でも、叩きのめすから・・・シオンの持っている
    もの全部、奪い取ってやるから・・・あんたをリラのお姫様にしてやるから・・・
    どう?良い話でしょう?フフフ」と言って高らかに笑いだした。


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  スンミ:「アハハハ、面白くなって来たわ。これで私も長年の復讐が出来るわ。
      お義理兄様、そして憎らしいカノン、皆不幸になればいいのよ。
      私をよくも落としこめたわね。見ているが良いわ。」と言いながら花瓶の薔薇を
      一輪取り出しグシャッと花弁を握り潰した。


 スンミは脱院してから、呉ジナを頼って家に行ったが、その時、たまたまジナは
 演奏会でいなかった。仕方なくどこかに身を隠さなければと思い、戸惑っていた時に、
 マヤと庭で遭遇した。同じ獣の様な悪の匂いがし、お互いに意気投合したのだった。

  マヤは是非、家に滞在して欲しいとした。
  本当の母親よりもスンミの方が自分にとっては母親のような気がした。
  徐ジャンフ(=父親)が母親の重荷になっている話もマヤはスンミにすると、スンミは
  私に任せてとし、ジャンフを亡きものにしてくれたのだった。

   リラ幼稚園が始まって、自分はリラの女王に慣れないこと・・・初めての挫折を知ったと
   スンミに話し、特に李シオンと言う音楽家李ソンジェの娘がお姫様なのが気に入らない
   話をすると、実はそのソンジェは自分の義理の兄であり、自分をこんな惨めな姿に
   したのは李ソンジェとカノンであることをマヤに話した。スンミに取っても憎々しい家族で
   あることも話をした。父親のジャンフを始末してくれたお礼で、マヤは二人の宝である
   シオンをやっつけるし、出来たら二人を離婚させてソンジェをジナと結婚させ、自分の
   父親にさせたいとスンミに語った。スンミは二人を引き裂いてくれ、宝であるシオンが
   不幸になったら最高だとし、その為なら、何でも協力するとした。

   オボイナレの計画も全てスンミの差し金だったが、失敗に終わった事が悔しくて
   ならなかった。

   

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  まだ日が高い14時頃、カノンはシオンを迎えに来た。
  シオンは未だ遊び足りない様子だったが、帰る事になったが、ランチを食べ散らかしていた
  様子で、ちょっとなっと思い、片付けて帰る事にした。
  
 カノン:「ジェファ君、おばちゃん、お片付けして行っていい?」
     と云った。

 ジェファは「え?いいんですか?どうぞ、どうぞ」とした。

 子供たちの食べ散らかしは半端なかったので、カノンは可笑しくてクスクス笑った。
 そして片付け終わるまで、シオンはまだ遊んでて良いよとして、腕まくりをして
 片付け始めた。

  いざ片付け始めると色々なところが気になり始めた。
  洗濯ものが溜まっているとか、新聞や雑誌が無造作に散らかっていたり・・・
  カノンの家庭科の精神が燃えだした。

  洗濯ものを洗濯機で回しながらあちらこちらをテキパキと片付け始めたし、
  磨き始めた。見る見るうちにピカピカになり綺麗になって行った。
  
  時々、ジェファが飲み物を取りに台所に来て「わぁ、なんか違う家見たい」と
  言って驚いた。カノンは爆笑しながら「夕飯はどうするの?」と聞いた。

  ジェファ:「多分、サムチョンと外食だと思う」と云った。

  カノンは、冷蔵庫を見て何かひらめいたかのように、料理も始めた。

  それはテファの大好きなプデチゲを作っておこうと思ったのだった。

  スパムのソーセージも沢山入れて、美味しいプデチゲの匂いがしてきた。
  その時、カノンの携帯が鳴った。

  「もしもし・・」
      ソンジェだった。
       ソンジェは早朝に、海仁と一緒に子供たちを迎えに行き、そして
       カイトだけ帰宅し、ソラミはまだマヤの家に滞在する事になったこと
      などを伝え、長くても1週間の滞在で迎えに行く事になったことも
      カノンに話し、その足で、ソウルタワー近くの音楽事務所に寄って
      仕事の打ち合わせをして帰るから、帰る事が分かったらまた電話する
      としていたので、丁度帰る事になったと云う電話だった。


   「カノン、仕事の打ち合わせも一段落したんで、これから帰るけど、何か
   欲しい物とかある?買って帰るけど?」と云った。

   カノンはクスクスと笑いながら、何もないと云った。

   時計は既に16時半になろうとしていた。
   いけない!!もうこんな時間だった。
   
   テファが帰って来てしまうのではないかも心配だったので、シオンを呼んで
   帰る事にした。キョンワもジニも二人でバスで帰ることになり、玄関先で
   ジェファに皆はバイバイ、又ねと言って別れた。カノンはジニとキョンワを
   バス停まで連れて行き、バスが来るまで、皆でなぞなぞやしりとりをして
   待って居た。ジニが「シオンちゃんのママは綺麗で優しくてイイナってお昼
   食べてた時に言ってた」と云った。「えぇ?叔母ちゃんは綺麗じゃないよ〜
   それに優しいのはジニちゃんのママやキョンワちゃんのママも優しいから
   皆、同じだと思うよ」と云うとキョンワは首を横に振り「シオンちゃんのママは
   お姫様みたい。白雪姫みたい。」と云った。更にジニは「白雪姫の王子様は
   ジェファちゃんのサムチョンかな?」と云った。
   カノンはビックリして「えぇ?何でサムチョンなの?おばちゃんにはおじちゃん
   と云う旦那さんがいるからおじちゃんが王子様じゃないの?」と云った。
   するとシオンも「ううん、アッパは王子様じゃない。なんか違う、違うなの」と
   変な事を云った。
   ジニもキョンワも「サムチョンの方が王子様って感じがするよね」と云った。

   カノンは真っ赤になった。子供って鋭いなっと思ったのだ。
   大人の気持ちを見透かされているかの様だった。
   「ジェファちゃんのサムチョンは独身でイケ面だからきっと物凄く綺麗な
   お姫様が似合うと思うな・・・おばちゃんはもうアジュンマだからお姫様には
   なれないな・・・ジニちゃん、キョンワちゃん、そしてシオンがお姫様になれる
   と思うよ。羨ましいな〜」と言ってカノンは笑った。

   そうこうしている内にバスが来て、二人を乗せて帰して行った。

   帰りの道でシオンはまた変な事を云った。
   「あのね、オンマ、シオンはオンマが一番好きでね、アッパも好きだけど、時々
   アッパといると苦しい、苦しいなの。」と・・・

   「え?・・・どうして?」カノンはやはりビックリして聞いてみた。

   「うんとね・・・アッパは凄く心配性で、シオンの言う事を何でも聞いてくれて
    優しいけど、時々、シオンは苦しいなの・・・心がキューって痛いなの・・
    オボイナレで木の役ってなった時も、アッパはどんな役でもいいって
    云ったけど、シオンはアッパがガッカリするって知ってたから言えなかったの。
    後ね、お受験の時も、アッパは梅花幼稚園がシオンには良いよって何度も
    言ってて、梅花はね、シオンは行きたくなかったし、 嫌だったの。でもアッパが
    悲しそうな顔してるから・・・だから・・・梅花でもいいかなって思ったなの・・」
    シオンは一生懸命自分の言葉でアッパであるソンジェの事を話した。

       そして「でもね・・・サムチョンは何かね、シオンね、何でも話せるの。」

    カノン:「え?サムチョン??」
    シオン:「うん、、、木の役になったって事も一番最初に話したのはサムチョンでね
         、、、そしたらサムチョンは凄く良い役だし大切な役だって言ってくれたの。
         チルソクの事も、日本と韓国ではお話が違うけど、どっちも良い話だし
         ちゃんと分かり易くお話ししてくれたの。シオンが小さいのに、ちゃんと
         話を聞いてくれて、、、サムチョンはいつもシオンを元気にしてくれるの。
         イケ面で格好良いし、面白いし、心が軽くなって、楽しくなるの。
         サムチョンに会うまではシオンのアッパが1番だって思ったけど、今は
         サムチョンが1番だって・・・思うの・・・変かな???」と言ってカノンを
         見つめた。


   カノンはシオンて凄いと思ったのだった。カノンも同じ気持ちだったからだ。
   カノンはソンジェと居る時は滅多に泣かないし、いつも元気で笑っていないといけない
   そんな気持ちになるのであった。更に、なるべくソンジェには寂しい顔をさせてはいけない
   心配させたり迷惑をかけさせてはいけないと云う気持ちが出て、少しだけギクシャクする
   自分がいるのも感じていた。
    最近では特にそれが違和感として大きくなりつつあった。
   それは明らかにオッパであるテファとの再会が、キッカケであったのかもしれなかった。

       カノンもテファといると自然体でいられ、泣いたり笑ったり、時には喧嘩して
       怒ったりと・・・それでもオッパと一緒に居るだけで幸せで楽しくて、ずっとずっと
      このままでいたい・・・時間よ止まって!!と言いたくなるそんな気持ちになって
      しまうのだった。
      どんなに苦しくて辛いことでもオッパがいたら、何でも乗り越えられそうだし、
      世界中が敵になってもオッパさえいてくれたら、それで良いと思える・・・そんな存在の
      人だったからだった。

       ソンジェを愛していない訳ではないし、惰性で結婚した訳でもなく、愛があって
       そして結婚し、今日まで来たのだが、それでもカノンの中で封印していたオッパである
       テファの気持ちは、止められなかったのだった。


  カノンは努めて明るく「・・・そっか〜、シオンはアッパに時々心がキューって痛くなるんだ〜
                オンマと一緒だね?」

  シオン:「えぇ!!オンマも???」
 
  カノン:「うん、オンマも、キューって痛くなるよ。それはアッパが凄く有名で立派な人だからかな?
       オンマは自分でちゃんとしなくっちゃって緊張しちゃうの。それとね、アッパは実は何でも
       出来るし何でも凄いから、オンマは何も出来ないし何か役に立ってない感じもしたり
       ・・・・アッパがTVに出るとやっぱりアッパは恰好良いから、華やかな世界の人なんだな
       って思うの。お家でご飯を食べたりお家で遊ぶアッパと全然違うから・・・時々、どっちが
       本当のアッパかな?って・・・お仕事はとても忙しいからお家の中ではあんまり心配とか
       させちゃあいけないかな?って思ってオンマはいつもボケてて笑わせたりしているけど
       時々、疲れちゃうんだ。シオンと一緒だね?」
 
  シオンは「うん、シオンと一緒だね。良かった!」と言って笑った。

     

     大きな夕日がマンションの間から顔を出した。

     「わぁ、綺麗、きれいね?オンマ」とシオンは云った。

     「そうね、綺麗きれいね〜、オレンジ色で暖かい色ですね〜心も暖かくなりますね〜」と
     云った。

    シオンは「サムチョンみたい・・・」と呟きながら両手を夕日にかざした。


    サムチョンは、どちらかと言うと昼間の夏の太陽みたいな人のイメージだが、夜の月に
    役割をバトンタッチする前は夕日になるのだとカノンは、シオンに教えられた気持ちになった。

  
    オッパは帰宅して、プデチゲ食べてくれるかな?っと想像しながらシオンと手を繋いで
    自分のマンションの棟に入って行った。






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    テファが帰宅したのは19時半を回ってからだった。
   
 テファ:「悪い、悪い、すっかり遅くなったな、ジェファ、皆は?」

 ジェファ:「もうとっくの昔に帰ったよ。サムチョン、遅いよ〜お腹ぺこぺこだよ〜」

      と、少しふてくされた声で云った。

 テファは「じゃあ、支度して、何か美味い物でも食べに行こうや」と云ったところでジェファが

 「サムチョン、ご飯は出来てるよ。シオンちゃんのママが、シオンちゃんを迎えに来て、掃除洗濯
 は勿論、夕飯の支度までしてくれて帰ったんだよ。サムチョンの元カノってやっぱスゲーや!!」

   と云ったところでテファは「ストップ!!元カノなんて言うな。もう昔の事だし、忘れろって
   云っただろう?良いか?二度とそんな事、言うなよ!  お前もしかしてシオンちゃんにも
   そんな話を・・・」と言いかけたところで「してないよ!出来る訳ないじゃないか。」と云った。

  ホッとしながらテファは「おっ!プデチゲだ!!」と言って台所の鍋の蓋を開けた。

  カノンはテファがプデチゲが好きなのを覚えてくれていたんだと思うとテファは嬉しい気持ちになった。

   「温めて早く食おうぜ、凄い美味そうだ!!」と言って子供のように喜んで鍋を温め始めた。

   プデチゲの他にサラダやちょっとしたおかずも作ってくれており食卓が華やかになっていた。

   
 

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  「ただいま、今日は朝からだったから疲れたな〜」靴を脱ぎながら、ソンジェはため息をつきながら
  言葉を吐いた。

  カノンは普通を装い「お疲れさまでした。今日は従姉妹のさやちゃん達の為に奔走して下さって
   有難うございました。なんとか一件落着になりそうですね?」と言って笑った。

  ソンジェは「ならいいんだけど・・・何か引っかかるんだ・・・」と深刻に悩んでいる感じもして眉間に
  皺を寄せていた。カノンは明るくふるまい「なんかオッパちゃん、眉間に皺しわがあってジジイに
  なってるよ・・・ハラボジみたい・・・」と言ってからかった。ソンジェは「えぇ?」と言って皺をのばそうと
  指で伸ばした。


  カノンはケタケタと笑い「オッパちゃん、ご飯にしますか?お風呂にしますか?それとも一息つきますか?」
  と聞いた。

  ソンジェは「お風呂かな?・・・今夜のご飯は何?」と聞くとカノンは「カレーです!!」と云った。
  ソンジェの好きな物の1つだった。
  そういえば、カレーの良い香りがしていた・・・「おっ、いいねぇ〜楽しみだな」と言って、風呂場へと
  消えて行った。

  シオンは遊び疲れたのか、リビングのソファでうとうとしながらTVを見ていたがソンジェが帰って来たのが
  分かったので、ハッとして目を覚ました。
  カノンが、「アッパが帰って来たけど、アッパがお風呂先にするんだけどシオンも一緒に入る?」と聞いた。
  シオンは聞きたい事があったので、入ると言って慌ててお風呂場に行った。



   ソンジェ:「おっ、シオンも一緒に入るか?」
   シオン:「うん・・アッパ、あのね、アッパに質問があります。」
   ソンジェ:「え?何?何?何でも聞いて。」と言って笑った・・・
   シオン:「今日ね、ジェファちゃんのお家に遊びに行ったの。キョンワちゃんやジニちゃんも来ていたんだ
        けどね、皆がオンマの事、白雪姫みたいだって云うの。それでね、王子様は?って言ったら
        ・・・・皆はね・・・」
   ソンジェ:「アッパが王子様って云ったの?」と嬉しそうに言うと
   シオンは首を横に振り「ううん、ジェファちゃんのサムチョンが王子様って云ったの・・」

   ソンジェは「ええ〜!!アッパが王子様じゃないの?シオンはアッパって言ってくれなかったの?」
   シオンは「うん・・・だってサムチョンの方が王子様みたいなんだもん。目がキラキラしていて、綺麗だし
         凄く凄くイケ面なの。アッパよりも格好いいのなの。」
   ソンジェ:「ええ?だってオンマはアッパの奥さんだよ。だからアッパが王子様じゃないの?」

   シオン:「・・・うん・・・うんとね、サムチョンの方がお似合いなの。アッパも、今度サムチョンに会って
        みたら、分かると思うの。凄くイケ面なの。ジニちゃんもキョンワちゃんもサムチョンのお嫁さん
        になりたいって言ってたの。」
   ソンジェ:「ええ・・・ショックだな〜アッパはシオンだけはオンマの王子様はアッパだって言って貰いた
         かったな〜、そんなにサムチョンて凄いのか〜。アッパのライバルだね?」

   シオン:「アッパ、サムチョンには負けちゃうよ・・・だから会ったらもっとショックを受けちゃうかも?
         オンマにもその事(オンマが白雪姫で王子様がサムチョン)を言ったらオンマは
          何て云ったと思う?」とシオンは聞いてみた。

   ソンジェ:「う〜ん、分からないな・・・オンマの事だから、オンマは白雪姫じゃないって云ったん
        じゃないかな?」

   シオンは一発で当たってしまったのでビックリした。
   
  ソンジェ:「シオン、ビンゴ!!だろう?ハハハ。アッパはオンマの事なら何でも分かるよ。
        凄いだろう?」と言って笑った。


   ソンジェはそうは言っても内心、少し穏やかではなかった・・子供の話だし、、、
   何をムキになったり慌てているんだろうと思ったが、何か心の底からこみあげてくる不安があった。
   皆が云うサムチョンとは一体どんな男性なのだろうか?
   子供の心は悪意も邪心も無く素直だとソンジェは思っているし、その子供たちの心を鷲掴み
   しているサムチョンに会ってみたくなった。

  ソンジェ:「シオン、今度、シオンがお世話になっているからそのサムチョンにアッパからご挨拶したい
       から会わせてくれるかな?」と云うと「うん、良いよ。でもアッパ、ショックで死んじゃうかも?」
       と笑って云った。





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  カイトは熱にうなされながら目を開けると、いつも心配そうに自分を見つめる母親であるサヤカが
  いた。冷たい白い手を額に当てながら「まだ熱があるわね?カイト、お母様がいつでも傍にいる
  からね、心配しないで眠りなさい」と言って微笑んでいた。
  以前のお母様の頬笑みだった・・・
  カイトはまた安心して深い眠りに入った。

  早く良くなって、ソラミを救いに行かなければ・・・子供心にも危険を感じたマヤだった。
  更に叔母と称する薄気味悪い50歳後半位に見える老女がいてマヤに指令を出している様
  だった。(叔母はスンミであり、スンミはカノンと同年代でまだ20代だった)

  ソラミ、待って居ろよ。必ずお兄ちゃんがお母様やお父様と一緒に助けに行くからな・・・
  薄れて行く意識の中で、何度も何度も叫んでいた。



  サヤカは、海仁に暴力を振るわれて初めて我に返ったが、それでももう後戻りはできない
  状況に置かれている事を知った。

  確かに猛烈なお受験ママだったし、入園させてからも金にものをいわせ女王様でいた。
  カイトの事は放りっぱなしにした事は認め、反省したが、男の子がいない家系で育った
  為、どうしても放置してしまう部分があった。だが海仁の地位や財力がなければここまで
  贅沢な生活も出来ないし、皆に羨ましがられる事も無い・・・この生活は維持しなけれ
  ば・・・そう思ったら暫くは海仁の言葉の通りに従おうと思った。


  ソラミは帰りたくないならそれでも良いとさえサヤカは思っていた。
  専らサヤカのイライラの原因は不器用な不細工なソラミの存在だった。 
  マヤの家でマヤの天才的なピアノ演奏とかを少しでも伝授して貰えたらいいけれど、
  きっとソラミは不器用だから何も身につけずにボーっと過ごしてくるだけだろう・・・
  そう思った。
  あぁ、情けない・・・悔しい・・・惨めだわ・・・ソラミがシオンみたいな子供だったら、
  そうしたら直ぐにでもお姫様になれるのに・・・
  カノンは生まれながらのお姫様だったわ・・親戚中のアイドルだったし・・・
  皆が欲しがり頑張って手に入れようとしても手が届かなかったり、ダメだったりする
  ことも全て思うがままに簡単に手に入れてしまったり・・・

  私はカノンが手に入れられるものが欲しくて欲しくてたまらなかった・・・・
  テファさんもソンジェさんも皆がカノン、カノンと云い、友人たちもカノン、カノン・・・
  あの子には天性の魅力があるのかしら?と思えてしまう。
  誰もがカノンに笑顔や幸せを齎すし、大した努力もしないのに、お金や地位や
  考えが思い通りに動いてゆく・・・羨ましい限りだわ。

  ソンジェさんが私の夫だったら、子供はシオン以上に可愛い女の子だったろうし、
  頭だって芸術的な技量だってピカイチだったと思うわ。
  リラ幼稚園だって難なく合格だったろうし・・・・

  ソンジェさんの両親は他界しているから嫁姑の争いもないし・・・
  ソンジェさんは今や押しも押されぬ有名な音楽家だし・・・
  カノンは美味い事やったって思ったわ。

  でもカノンはそういう計算高い気持ちなんて無いだろうし、私みたいに打算的では
  ないから・・・それが返って私を苛立たせるのよ・・・
  カノンに1度で良いから勝ってみたいわ。でも、子供同士では部が悪いし・・・・

  私は韓国に嫁いでからドンドン嫌な女になって行くわ。あぁ、誰か助けて!!
  私を止めて!!本当に私は醜い嫌な女だわ・・・・


  サヤカの心の葛藤は、まだまだ長く続きそうだった・・・・



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      月曜日になった



 朝から雨が降っていて、傘をさしての登園となったジェファとシオンだったが、
 それもまた楽し・・・としてウキウキしながら幼稚園へ向かった。

  行きのバスの中でシオンは「ジェファちゃん、あのね、うちのアッパがね、
  サムチョンに会いたいって・・・いつもお世話になっているからご挨拶
  したいって・・・」と何の気なしに言ってきたが、ジェファは戸惑った。

 何故ならば、サムチョンとシオンのママは昔は恋人同士だったからだ。
 シオンちゃんのパパは、サムチョンの事を知っているのだろうか?
 いや、多分、知らないだろうし、だから会いたいと言っているのかもしれ
 ない・・・でも万が一、サムチョンとシオンちゃんパパが知り合いだったら・・

 ジェファは「ねぇ、シオンちゃんのパパはホンデって言う大学だったの?」
 と聞いてみると「ううん、違うよ。百済大学って言う音楽大学・・でも
 日本では東京芸術大学院だったよ・・」と云った。
 百済はソウルからかなり離れた大学だし、接点は無いとジェファは思った。

  シオンが目をマン丸にしてジェファの答えを待って居るのが分かったので
 「うん・・・分かった・・・機会があったら紹介するよ。」と言って笑った。

 シオンが「きっとアッパはサムチョン見たらショックで死んじゃうかも?」
 と言って笑った。「え?死んじゃうって?」とジェファが今度は聞くと
 「だって、サムチョンが凄くイケ面で面白くて人気が一杯いっぱい
 だし、オンマの王子様にピッタリだから。」と屈託なく云った。

 ジェファは、ビックリして、「いやだな・・・シオンちゃんのママの王子様は
 シオンちゃんのパパだよ。サムチョンじゃないよ。」と言って笑った。

 ジニちゃんもキョンワちゃんもバス待って居る時に、オンマが白雪姫なら
 王子様はサムチョンだって言ってて、シオンもそう思ったlと、
 ジェファに伝えると、ジェファは固くなった・・・
 
  そうさ、皆が云うように、カノンちゃんのママがお姫様なら王子様は
  僕のサムチョンさ・・・でもそうではあってはいけないんだ・・・
  言ってもいけないんだ・・・っと心の中で何度もジェファは叫んでいた。


 「あのさ、、、もしさ、、、カノンちゃんのママとうちのサムチョンが恋人
 同士で、、、そうお姫様と王子様だったらどうなんだろう?」

  ふいにジェファは口に出してしまった。

  シオンはちょっと考えて「凄くきれいきれいなお姫様と王子様だから
  きれいきれいな国になって皆が幸せに暮らせると思う・・・
  それにサムチョンはとっても楽しいから、皆がずっと笑ってる感じが
  する・・・オンマももっともっと笑ってて、、、」

  「じゃあさ、シオンちゃんのパパはどうなっちゃうの?」っと少し声が
  強張ってしまい、ジェファは声を大きくして聞いてみた・・・

 「・・・うんと、、うんとね。アッパは違う国の王子様なの。

  お姫様はね・・・何となくなんだけどね、、、オンマじゃなくてね、

  マヤちゃんのお母さんみたいな・・・そんな感じがするなの・・・

  音楽の国を二人で作っていつもいつも楽しい音楽が流れる国

  なの・・・だから幸せなの・・・」


  ジェファはシオンに鋭い感性を感じた・・・

            シオンちゃんて・・・何だか凄いや・・・


   「サムチョンは恋人とかお嫁さんにしたい人とかいないの?」と
   シオンは聞いた。


 ジェファは咄嗟に「う〜ん、知らない・・・でも好きな人はいるんじゃない
            かな?(シオンちゃんのママだけど・・)」とシドロ
           モドロで応えると「ふ〜ん、そうなんだ・・・」と言って
     やっとこの会話から解放されたのは、リラ幼稚園の前で
     バスが停まったからだった・・・・




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





  教室に入ると、マヤとソラミは既に登園しており、席に着いていた。

  皆が「おはよう」とか「アンニョン」と言いながら教室に入って来た。

  シオンもおはようと言いながら教室に入り、自分の席に着くと隣りの
  
  席のマヤにも「マヤちゃん、おはよう」と声をかけると、マヤはオドオド

  しながら「あぁ・・おはよう」と返事が返って来た。

  シオンはビックリした。何故なら、今迄1度も挨拶が返った事がなかった

  からだった。


 一方、ソラミの方は、挨拶しても返ってこないし・・・もっともっと高圧的で
意地悪になっていた。
だが、この日を境に、ソラミは何をやってもソツなくこなし、勉強も良く出来、
ピアノも上手になっていたし、英語も流暢に話し、何となくマヤみたいに
なっていた。でも幼い子供たちには、まさか二人が入れ替わり整形している
とは思わなかったので、疑ってはいなかった。
一方マヤは、体調がすぐれないと言っては体育を休み、大きなマスクをして
いたので、勉強にしてもなんにしても冴えなかった。

水曜の朝、ソラミはシオンに言って、家に帰りたいと云った。
シオンはカノンに連絡し、サヤカから迎えに着て貰う事にして貰った。

ソラミ(=マヤ)「いよいよ、作戦開始よ。いいわね?」
マヤ(=ソラミ)「うん・・分かった。」

何かあれば、携帯で連絡しあう事になっていた。しかもマヤが用意した
携帯でのやりとりだった。(=正確に言えば、スンミの差し金だった)




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サヤカはソラミが帰りたいと言ってきたことから表面上は喜んではいた物の
実は気分が乗らずに、迎えに行ったが、リラの先生たちの評価がかなり
上がっていた。
我儘な部分は変わりないが、勉強も運動も、音楽もかなり頑張って
いて才能が開花した様子だと言われて悪い気分がすっ飛んだのだった。

マヤはソラミになり変わり完璧に演じていた。
声も仕草も、そっくりだった・・・本当の親であるサヤカをも騙していた。
サヤカは「まぁ、どうしたの?ソラミ、先生方が皆、貴女の事を褒めて
びっくりしたわ。ピアノも頑張ってるって・・・」

ソラミ(=以降はマヤ)「ええ、お母様、私ね、マヤちゃんにピアノが上手に
    なる方法を聞いたの。それで丁寧に教えて貰えたから、何だか
    上手に弾けるような気がしてきたの。お勉強もマヤちゃんの
    家庭教師の先生に見て頂いたの。勉強もコツがあるって聞いて。
    私は今迄、お母様に甘えていたの。だからダメだって分かったの。
    自分を変えたくて、それでマヤちゃんの家に残ったの。」と言って
    笑った。

サヤカは嬉しくて「ソラミ、凄いわ。お母様、嬉しいわ。ソラミはお父様と
         お母様の子供だもの。お勉強だって何だって出来る子
         なのよ。だから分かってくれて嬉しいわ。」と言って
         ソラミを抱きしめた。

ソラミは追い打ちをかけるように「お母様、ソラミ、もっともっと頑張って
      シオンちゃんに勝ってみせるわ。だから楽しみにしていて。」
      と云った。
サヤカは「え?」っと思ったが、シオンに勝つ事が出来ればカノンに勝つと
同じことなので、サヤカはもっともっと喜んだのだった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

職員室でも、ソラミの事は噂になっていた。


鬼頭:「姜先生、なんかソラミちゃん、どうしたのって言うくらいハキハキして
    自信たっぷりで、変わったと思いませんか?」
姜ユリ:「ええ、何だかマヤちゃんが二人いるみたいな感じ・・・
     でもマヤちゃんの方が今度はパットしなくなった感じがしませんか?」
鬼頭:「ええ・・・でも風邪をひいているみたいでずっと大きなマスクをしてるし
    声も出ないみたいですよ」
姜:「医者の診断書も有、声が出せるのは1週間はかかるって・・・」
ヒジョン;「それにピアノも、弾けないくらい深爪してるみたいですよ。
     もっとも大人しくて気味が悪いわ。」


園長は3人の先生の話を聞いて「あらあら三人さん、自分達の可愛い生徒に
  向かって気味が悪いなんて酷い言葉・・・言ってはいけませんよ。
  それにソラミさんが良くお出来になるようになって、褒めてあげなくてどうする
  んです。幼児の能力の開花は早い子もいれば遅い子もいます。
  きっとソラミさんはここへきてようやく開花したんだと思いますわ。
  何て言っても権海仁氏と権サヤカ嬢の娘ですものね。出来ない筈はないし
  教育熱心だった甲斐が報われて良かったと喜んで差し上げないとね・・・」
  とぴしゃりと言って三人を睨みつけた・・・

  三人は「はぁい。」と言ってお辞儀をしてチリチリにわかれてそれぞれの教室に
  向かった。




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   カノンも水曜、その報告がありサヤカに知らせた後、気が気でなく
   シオンを迎えに行く口実でリラ幼稚園に行ってみた。

  サヤカは、いつものように着飾ってソラミを迎えに来ており、何だか嬉しそう
  だった。
  
   後から、ソラミの変身ぶりシオンから聞いて、恐らくサヤカは褒められて
   嬉しかったのだろうし、愛しい娘が帰って来てもっと嬉しかったのだろうと
   能天気に喜んでいた。


  ジェファとシオンを連れて、カノンは帰る事にし、坂道を下ったところで
  クラクションが鳴った。
  
       「あ!!サムチョン!!」

 テファ:「やあ、ジェファ君、イケてるアガシさんと大きなアガシさん(カノン)
      ご機嫌如何かな?良かったらお送りしましょうか?」とおどけて
      云った。カノンは可笑しくてケラケラと笑った。

  シオンも大喜びで「サムチョン、乗っていいの?」と喜んでいた。

  ジェファはサムチョンて大人だ・・どんな時も変わらずユーモアがあって
  優しくて・・・凄いやと思っていた。

  カノンは「じゃあ、送って貰おうか?」と言って車に乗り込もうとした時、
  
     「カノン」と言ってクラクションが別の所で鳴った・・・

    車を降りて、

    手を振りながら、こちらに向かってくる男性が居た・・・



        ソンジェだった・・・・

    しかしソンジェは中にいる運転手の顔を見た途端、

                ソンジェの顔はみるみる曇りがかった・・



     シオンは、無邪気に「アッパー、サムチョン、この人が
                 サムチョンだよ」と云った。


    え?サムチョン?・・・そこにはまぎれもなくかつてのカノンの
    恋人である

      鄭テファがいたのだった。

     テファは、気まずい空気を消し去るかのように

      「こんにちは。いつも甥っ子の鄭ジェファがお世話に
      なってます。たまたま今日、見かけたんでピックアップして
      送って行こうと思って・・・カノンさんが一緒だとは思いません
      でした。僕が無理やり、車で送りますよと誘っただけです。
      他意はありません。カノンさんは人妻ですし、もうどうのこう
      のなんて気持ちは全くないですよ。本当に済みません。」と
      云ったが、ソンジェは深く傷つき、更にカノンは自分をずっと
      騙しテファと密会をしていたんじゃないかと疑っていた。


  テファはカノンが困っているのが凄く良く分かり「その、何か誤解して
  ませんか?今だって、たまたま出くわしました。子供たちを送って
  帰るのは今日に始まった訳ではなく、僕の仕事場がこの近くなん
  です。たまたま見かけるとピックアップをして帰ったりしますし、
  シオンちゃんがカノンさんのお子さんだと知ったのは本当につい最近
  の事でした。今は懐かしい人であり、幸せそうなんでぼくも嬉しい
  ですよ。・・・それに僕には恋人がいますし・・・」と咄嗟の嘘をついた。
  恋人なんている訳は無いし、今もカノンが好きだけれど、この場の
  雰囲気を納める為には嘘をつくのが賢明だとテファは思った。

  「あっ、恋人がいるんです。お疑いなら、今度紹介しますよ。
   本当に・・何れは結婚して豪州で暮らそうと思ってるんですよ。
   事務所も豪州にありますしね。ですから、カノンさんを疑わないで
   欲しいし責めないで下さい。僕が悪いんですから。
   カノンさん、済ませんでした、無理やり送ろうとしちゃって。
   シオンアガシ、優しい大好きなアッパが迎えに来たよ。
   車を降りて乗り換えた方がいいよ。サムチョンはジェファと帰るから」
   と云った。

  シオンはちょっとがっかりして「うん、分かった」として車を降りた。

  無言のまま、ソンジェに背中を押されてカノンはテファの車を
  後にした。

  ソンジェの疑いは消えなかった。
  帰りの車は無言のままだった。カノンもどう言ってよいか分からず
  口をつぐんだ。
  シオンだけが状況がつかめず、二人の間に入って話しかけてはみた
  がソンジェに「静かにしなさい」と言われてしょんぼりしてしまった。


 食事の時も、何をするのも会話にはならず、ソンジェは怒っているのか
 無言だった。

 シオンを寝かしつけながらカノンは泣きたい気持ちだったが泣けなかった。
 
シオンが「オンマ、アッパー、どうして怒ってるの?」と心配そうに聞いた。

  カノンは「怒ってないのよ、きっと心配事があって悩んでたり困ってる
       だけなの。シオンの事じゃないから心配しないでね。
        ごめんね、シオン、お休みなさい。」と言って寝かしつけた。

リビングに戻ると、ソンジェが腕組みをしてカノンの顔を見て
睨んでいた。
云いたい事は分かっていた・・・カノンは素直に「黙っていて御免なさい」
と謝った。何度も言おうとした事も伝えた・・しかし言えなかったのは
余計な心配をかけたり、今後の幼稚園活動に支障が起きたらと思い
言えなかった事・・・ソンジェは真面目だし、親馬鹿だし近所に、
かつての恋人が住んでいるって事だけで、心穏やかになれないかも
しれないから、時期が来たらきちんと言おうと思った事も伝えた。

カノンの言葉に嘘は無かったしソンジェもカノンの言葉を信じてはいる
ものの、やはり穏やかではなかった。

自分とジナは納得して愛が薄れて別かれたが、カノンとテファの場合は
嫌いになって別れたのではなく思いを残して別れた・・・
運命か神様の悪戯で何度もこうして縁があり、このままだとやっと
築いたこの幸せを一瞬で切られてしまうのではと言う恐怖がソンジェ
にはあった。
 昼間云ったテファの「僕には恋人が居て何れは結婚して
              豪州に行く」と云った言葉も何故か心から
  ソンジェは信じることは出来なかった。

 テファと言う男はカノンの為だったらなんだってする男だからだ。
 カノンもテファの前では、テファしか見せない顔をするし、テファにしか
 見せない仕草や言動をする・・・テファの前では本当のカノンになる
 と云う事をカノンの友人やサヤカからも聞いていた。
 本当のカノンはソンジェの前に居るカノンではなくテファと一緒にいる
 カノンなのだと聞かされていたからだ・・・


  ソンジェ:「カノン、僕らはどんな事があっても家族だろう?
        だから隠し事はなしだ・・それで今迄、僕らは信頼し
        合ってやって来たと思っていた・・・今日はショックだった。
        カノンが、いやシオンまでも僕を裏切って騙していたんだと
        思ったよ。・・違うかい?」


  カノン:「・・・・そうだね、私は裏切ったか裏切ってないかと聞かれたら
      裏切ったと言えるし、騙してたんだと思う。でも後悔はしてない
      し、いつまでも隠しておける事ではなかったから、今日、バレ
      て良かったと思ってます。テファさんと再会したのは偶然です。
      シオンが云うサムチョンの話がとても気にかかり、、
      それもずっとどんな人なんだろうって興味はあったし・・・
      それがテファさんだと知って正直、嬉しかった・・・だって元気の
      ないシオンを元気にしてくれたり、笑顔を失ったシオンを笑顔に
      してくれたのもテファさんだった。心から親として感謝したから。
      テファさんは相変わらず格好良くて、キラキラしていて、私には
      眩しかった。これも正直な気持ちだし、いつも優しくて親切で
      楽しい事を言ってくれて、私も楽しくて笑っていた・・・これも
      正直な気持ちです。無理に嫌いになったり、無理に忘れる
      つもりもないし、大好きだった人だし、今も変わらず素敵な
      まんまで、嬉しかった・・・これも正直な気持ちです。

      好きか、嫌いかを聞かれたら、きっと即答で好きだって言えるし
      答えられる・・・これも正直な気持ちです。
      こんな事を言ったら、オッパちゃんが傷ついてしまうし、悩んで
      しまうから、云いたくなかったけど、どんな事があっても
      家族だし、隠し事はなしって云ったり決めたのは自分達だから
      私は正直な気持ちを言ってる・・・いえ、言わなくっちゃいけない
      って思ってるから言ってます。ごめんなさい。

      時間とか戻せるなら、テファさんと出会ったころにもう一度戻
      りたいって思った事はこれまでに何百回もあったし、今でも
      会うとドキドキするし、大好きだなって思います。
      でもこの気持ちを冷静に考えると、女子高生のような気分
      なんです。・・・」


      ソンジェ:「女子高生?女子高生って???」

   カノン:「うん・・多分、女子高生だと思う。女子高生がアイドルに
       憧れて大ファンになって追いかける心境・・・そんな気持ちです。
        手に届かない遠い存在です。それに、テファさんは恋人が
       いるって言ってたし、結婚も考えてるみたいだし、もうカノン
       みたいなアジュンマなんて眼中にないと思います。テファさんの
       苦手で嫌いな存在はアジュンマだから・・・豪州で暮らしたい
       って言うのも本当の事だと思います。テファさんは自分で云った
       言葉は責任を持つ人だから・・・私はそんなの分かってた、
       今更どうのこうのなる筈はないし、どうなることもないし、、、
       それにテファさんはかつてのホンデの華麗なるスターだったし、
       沢山の女の子たちの憧れの人だった・・・
       今も沢山の女性を魅了している感じもするし、きっと素敵な
       恋人がいるんだろうって思います。会ってみたいな〜
       なんてね・・・私が今、こんなに幸せなように、テファさんにも
       幸せになって欲しいし、いつでも笑顔でいて欲しいです。
       これも正直な気持ちです。」と言って大粒の涙をポロポロと
       こぼした。



  ソンジェは居た堪れなくてカノンを抱きしめ
  何度も何度も「カノン、ごめん、僕が悪かった。
            凄く不安だった・・・カノンもシオンも僕には
             見せた事のない満面の笑顔で彼と話をしていた
             から・・・僕は置き去りにされるんじゃないかとも思った。
           そうさ、無理やり忘れるなとか嫌いになるなと云ったのは
           僕だったね。ごめん、カノン・・・
           僕らはどんなことがあっても家族だった。
             本当にごめん」と言って強く抱きしめた。

カノンは抱きしめられながらも、心はオッパであるテファに向かっていた。
涙をこぼしたのも、恋人が居て結婚してしまう事を聞いて動揺し、
いつかは豪州に永住してしまうと云う寂しさからだった。
本当はいつまでも独身できままに過ごして欲しかったのだった。
オッパの恋人の存在を考えた時、悲しくて悲しくて涙が出て声をあげて
泣きたい心境だったが、ソンジェの前では何故か泣けなかった。
それが不思議だった・・・・
 ソンジェに対しては「愛情」なのだ・・・
      オッパに対しては「純愛」なのだと云う事を改めて感じていた・・・





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  一方、帰宅してからテファはカノンの事が心配で心配でならなかった。
 ずっとウロウロと歩きまわり、どうしたらいいのかを考えていた。

  ジェファはウロたえるサムションを初めて見てビックリしていた。
 サムチョンはいつも堂々としていて強くて男らしい存在だったからだ。


  そこへママンがいきなりニューヨークから帰って来たのだった。


「ハロハロー!マイハニージェファ、元気?OH、弟よ、テファ元気?」と
元気よくドアを開けたが、テファはそれどころではなく、ウロウロしていて
「ねえ、何があったの?」と不思議そうにジェファに姉でありママンである
アミンは聞いてきた。

  ママンはカノンちゃんのママの事は知っているのだろうか?フト、ジェファは
  思ったがストレートに聞いてみると「知ってるわよ、兎ちゃんみたいに
  小さくて可愛い女の子でしょう?後にも先にもテファが好きだと云った
  女の子はカノンさんしかいないわよ」と云った。

  ジェファは今迄の話をママンに分かる限り話をした。



  「ふ〜ん、大体わかったわ。きっと奴(=テファ)はかなり慌ててるわね?
  奴のウイークポイントは鈴木カノンさん、、あっ、今は李カノンさんね?
  その、シオンちゃんのママのことよ。テファはカノンさんにメロメロだったの。
  天下のホンデのスターも、あの兎ちゃんにかかったら滅茶弱くてね、
  カノンさんにだけ優しくてカノンさんだけ特別だったの。
   でもね、好きあってる男と女は距離と時間を作ってはダメなのよ。
   日本と韓国は近いとは言うけれど国や文化歴史、言葉、皆違う
   でしょ?更に会えない時間が長くなればなるほど人間と云うのは
   日々の忙しさで忘れて行くの・・・気持ちも薄れて行くものなのよ。
   手を最初にはなしたのは、多分、テファだと思う。韓国に帰国して
   から大学に戻って、韓国は今もだけど凄い学歴主義でしょ?
   勉強は大変だし、経済状態も不安定だし、就職だって厳しいしね。
   ましてやテファは日本で働きたいって言ってて、多分、カノンさんの事を
   考えていたと思うの・・・月日だけはどんどん経ってしまって、
   カノンさんも待って居たんだと思うけれど、、、次に手を離したのも
   多分、テファだと思うわ。カノンさんは疲れちゃったと言うか、諦め
   ちゃったのかもしれないわね。それで今に至ってるのよ。」

  アミンは息子に対等な会話をしてくれるのでジェファはそんなママンが
  大好きだった。

 ジェファ:「じゃあ、サムチョンは今もシオンちゃんママが好きなの?」
 アミン:「好きに決まってるじゃない・・・あの姿見ても分かるわ。アハハ」
           と言って笑い転げた。

 ジェファ:「でも、シオンちゃんのママは、シオンちゃんのパパやシオンちゃん
      が居てとても幸せそうだよ。仲のいい家族だよ。パパはあの
      有名な音楽家の・・・」と言いかけた時に

       「李ソンジェでしょう?」とアミンは先に云った。


   え?何で知ってるの?と不思議そうな顔をするジェファに

   「李ソンジェは、カノンさんに一目惚れでずっと一方的に思いを
    根気よく伝えてたんだと思うわ。今の音楽家として活躍出来
    るのはカノンさんのお陰よ。カノンさんがいなければ、今頃
    落ちぶれたピアノか何かの教室の先生か、或いは楽器屋
    かなんかでしょうよ・・・」とも云い、更にアミンの話は続いた。


「ママンのお爺ちゃまもお婆ちゃまももういないし、テファは誰と結婚
 しようが自由よ。それが人妻であっても、好きなら奪い取るぐらい
 すればいいのにね?カノンさんは相変わらずだったの?その、
可愛い人だった?」と聞いてきた。

 「うん、綺麗だし優しいし、いつもニコニコしていて、掃除も
  お洗濯もお料理も何でも得意で、僕のお弁当も良く作って
  くれるよ。毎日お昼が楽しみなんだ」と云った。

「じゃあ、ジェファはカノンさんとテファが結婚したらどう思う?」
と更に具体的な質問をしてみると意外にも

  「僕は大賛成だよ。サムチョンもシオンちゃんのママも
   二人とも凄く好きなんだって言うのが分かるよ。
   それに何か、二人ともいつも優しい顔で笑ってるし・・・
   今日も一生懸命、シオンちゃんのパパに言い訳して
   悪いのはサムチョンだって自分の事を悪く言ってたよ。
   後、僕には恋人が居て結婚して豪州に行くって・・」

 アミンはその光景を想像し可笑しくて笑い転げた・・・
 ジェファは笑い事じゃないってっとしまいには怒りだしたが、
 どうにもこうにも笑いが出て、ずっとツボにハマってしまった
 アミンだった。


 「やれやれ、じゃあ、お姉ちゃんとして一発喝を入れて
  やりますか?」と言って「テファ、テファ」とテファを
  呼びつけた。
 何度目かの呼びつけに気が付いて慌てて姉の所に
 来たテファだった。

 「遅い!!何度呼ばせればいいのよ。ったく、、、

  たかが女の事で、ヤキモキしなさんな!!テファは
  
  カノンさんの事、忘れずに今も好きなんでしょ?

   そうよね?顔に書いてあるもの!!」と言ってみる

  と姉には嘘は付けないと思い「・・・ああ、今でも
  
  好きさ、再会して改めて後悔したさ、何故あの時、
  
 手をはなしてしまったんだろうって・・・カノンは変わらず

 カノンで、可愛くて、、大好きさ。ずっとずっと一緒に

 いたいさ。そして笑っていたいさ。僕は・・・カノンを

 諦められない・・・女々しい男さ。可笑しいだろう?

 笑っても良いよ。本当に好きなんだ。今は人妻になり

 幸せそうで・・・それでも奪ってしまいたいくらい好きなんだ。」

涙をこらえて顔を真っ赤にしながらテファは云った。

 アミンは目を閉じていた瞼をパット開けて「じゃあ、

壊しちゃえばいいじゃない。奪い取り返せば?

カノンさんは物じゃないけど・・・でもね順番から言ったら

テファの方が先だったし、最初からテファのものだったのよ。

それを後だしじゃんけんで李ソンジェに奪われて・・・

鄭テファ、あんなtそれでも韓国男子?もっと堂々と、

そして自信持ちなさい!!カノンさんは正し、どう思ってるの

かしら?今の生活で良くて幸せなら壊す必要はないし、テファ

、貴方が諦めればいいのよ。例え1%の望みがあるなら、

返して貰いなさい。お姉ちゃんはね、貴方に後悔だけはして

欲しくない。カノンさんにもよ。未だ貴方が半分にしたペンダント

を大切につけていることも知っているし、カノンさんが好きな事も

知っているわ。いちかばちかよ、連れ去りなさいよ。」と言ってみた。


テファはみるみる元気になり「そうだね・・・姉さんの言う通りだ、

やらないでする後悔よりもやってみてダメな後悔の方が潔いし

さっぱりもするよね?僕は何を迷い、悩んでいたんだろう・・・

ただただカノンの事が心配だった。あの雰囲気は、きっと一波乱

が家庭に起こると思い、咄嗟に嘘をついてしまったけれど・・・

返って慎重派なソンジェ氏に疑いを深く持たせてしまったのかもと

心配になってしまったんだ。カノンを幸せにしたい。

カノンが好きな気持ちは、ソンジェ氏よりも強くて大きい。

姉さん有難う。勇気を貰ったよ。」そういった。

ジェファは何となく嬉しかった。

サムチョンはシオンちゃんママとお似合いだと思ったからだった。

きっとシオンちゃんのママもサムチョンが好きなんだと子供心に

思ったし感じていた。

「成功を祈る」とジェファはアミンと言ってウインクした。

テファは「有難う、最善を尽くすよ」と言って笑った。


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カノンは暫くは外出を控え、買い物はデリーバリーで届けてくれるネット
ショッピングをする事にした。

これはソンジェを安心させる懺悔の1つだった。幼稚園の送り迎えも
ソンジェがする事になり、なるべくジェファやテファとは接触しない事に
すると約束した。
シオンは、父親の送迎に猛烈に反発したが、結局は大好きな
オンマのお願いと云う事で渋々OKした。大好きなジェファと一緒に
通えなくなってしまったのが辛かったので嫌だいやだと泣き出した。
子供の涙に弱いソンジェは、仕方なく自分が送迎すると云う事で
ジェファとシオンを一緒に送る事にしたのだった。

幼稚園に到着し、ジェファは携帯で電話を母親のアミンにした。
「シオンちゃんのママは、外出禁止みたいだよ。サムチョンに伝えて」
っと云った。
ソンジェは繊細だし細かい・・・だから電話の履歴も見られるだろうし、
嘘もバレるだろう・・・どうしたらいい?テファは考えてみた。

そうだ、テファは有る所に電話をかけてみた。



      「ヨボセヨ、、、」



「大体のお話、分かりました。喜んで協力するわ。
 じゃあ、李カノンさんを11時に呼べばいいのね?
 了解よ。お部屋はわたくしの応接室を使うと良いわ。
 何時間でもいいわよ。わたくしたちは、違う部屋にいますから
 心おきなく喋って頂戴。」

 っと言って、電話を切ったのはかつてのカササギ幼稚園の園長である
 金だった。
 今は引退し、残りの余生を自由気ままに過ごしていたのだった。
 金はカノンの家に電話し、リラ幼稚園でのシオンちゃんの様子が
 聞きたいと呼び出しをしてくれたのであった。
 更に外出禁止と云う言葉をカノンから聞きだし、では私からご主人に
 連絡してみますと云った。
 ソンジェはリハーサル中だったが、金の電話に出て快く外出を許可した。
 丁度、退屈だったし、シオンちゃんの事が気になって仕方なかった話も
 うまくしながら外出許可を貰ったのだった。

 正し、家まではタクシーで行く事とした。テファに出くわさないためだった。
 帰りもタクシーにしてねとソンジェに釘をさされた。

  カノンは了解したと言って出かける準備をしたのだった。

 タクシーに乗る事、僅か5分程度で目的地の金の家に到着した。

 既にテファは応接室で待って居た。

 カノンはテファの姿に驚いて帰ろうとしたが、それを制したのは金だった。

 あなた達の事、大体は伺ってるわ・・・最後だと思ってゆっくり話をして

 欲しいの。お願い、帰らないで話をして頂戴と言って早々に席をはずした。


広い応接室に二人だけが残された。

沈黙が続き、テファが照れ隠しでゴホンと咳ばらいをし、「ゴホンと言ったら、
龍角サンだったっけ?」と古いCMを言ってみるとたちまちカノンは笑いだした。

「カノン、あれから気まずい感じで、それぞれ帰っちゃったけど、大丈夫だった?」
っと心配そうにテファが聞くと

カノンはにっこり笑って「ハイ、大丈夫でした。心配させちゃってこちらこそ、
            済みませんでした。」と言ってぺこりと頭を下げた。

「本当に良かったよ・・・ソンジェ氏が凄い強張った顔をしていたから・・・
 咄嗟に嘘をついたんだ・・・」
カノン:「え?・・・嘘??」きょとんとしてカノンは聞き返した。
テファ:「あぁ、、嘘も嘘、大ウソさ。恋人が居て結婚して豪州に行くって言う
    話・・・あれは嘘なんだ。僕はしがないチョンガーさ。彼女いない歴もう
    10年かな?ハハハ。」
 カノンにとっては嬉しいような嘘だった。

 カノン:「え?本当に嘘なんですか?」

 テファ:「ウン・・嘘だよ。あぁでも云わないとソンジェさんはカノンの事ずっと
     疑うだろう?僕はソンジェさんの考えが良く分かるよ。10年前の
     あの時の事件の事、思い出してね・・・カノンは、ソンジェさんの
     前では決して泣かないし、ソンジェさんの時と、僕の時では丸で
     別人になっていた・・・もしかしたら今でもそうじゃないのかな?
     って思った・・・・それにソンジェさんはああ見えてとても細かいし
     慎重派だ・・・それは呉ジナとの別れから始まった事なのだろう
     けれど自分が深く傷つかないように防衛線を張ろうとする・・・
     何ていうかな・・・実はとても弱そうに見えて本当はとても強いし
     一人でも大丈夫な人なんだ。僕はそう思ったよ。
     例えば月と太陽ならば、ソンジェさんは太陽なんだ。
     情熱的で強くて、一人でも生き抜いて行けるエネルギッシュな
     人なんだ。僕は、反対に実は月みたいな存在で、常に月の周
     りにひっついて回っていたり、人間が上陸して観測できる余裕の
     ある孤独な感じ・・・上手く云えないけど・・・でも誰かがいないと
     孤独で蒼く寂しく光る・・月だと思う。」

 カノンはビックリして「え?オッパは太陽だと思ったし、月はソンジェだと
            思った・・・だから私は、太陽に近づくと焼け焦
            げちゃう丸焦げの間抜けな狸になっちゃうのが
            嫌で、月なら兎さんや狸さんが喜ぶからって思って
            あのぉ・・・そのぉ・・・私は10年前の語学旅行が
            終わって帰国する時、オッパにバイバイを告げちゃ
           ったの。オッパが空港にもフェアエルパーティにも来て
           なかったことが分かったから・・・オッパとは縁がなか
           ったんだって思って・・・私は、こうして又オッパに
            会えて凄く嬉しかったし、心臓がドキドキして
            苦しかった。オッパは相変わらず格好良くて
            心がピカピカでなんだか女子高生になった気分
           だった・・私は女子高生でアイドルスターに憧れて
           追っかけやってる気分だったの。もう良い年した
           アジュンマなのに、、、可笑しいでしょう?えへへ。
           オッパに再会してから時々、偶然かもしれない
           けれどオッパに会えて凄く嬉しくて、楽しくて・・
オッパがサムチョンだったって事を知るまでは、サムチョンてどんな人
なんだろうっていつも思ってた・・・シオンをいつも元気にさせてくれたり
笑顔にしてくれたり・・・そしたらサムチョンはオッパだった・・・凄く凄く
ビックリしたけれど嬉しかった。私の中では今も大好きなオッパだから
・・」

テファ:「・・・え?それ、、本当?今も好きで居てくれるの?」

カノン:「・・・うん・・・でも、もう遅いよね・・・後悔が有るとしたら
    何であの時、諦めちゃったのかな?とか、あの時、手を
    離しちゃったんだろうって思った。時間が戻せるなら、
    もう一度、出合ったころに戻りたいって・・今も強く
    思ってる・・・ソンジェの事は勿論好きだけど・・
    好きの意味合いが違う・・・ソンジェの場合は「愛情」
    なんだけど・・・オッパに対しては・・・恥ずかしいしていの
    いい言葉なんだけど「純愛」なんだと思う。私は、こんな
    になっても、正直な心はオッパが大好きで、やっぱり
   オッパを諦めたくない。この前、日本から友達が来て
   ミサンガを記念で買って各々、願い事をしながら結び
   っこしたの・・・私は悪い妻で母親だけど・・・願ったことは
   またオッパと二人で束草に行ってナムを見に行きたいって
   願っていたの・・何て身勝手で我儘で酷い考えだろう
   って、、涙が出てきちゃった」カノンはポロポロと涙を流し
   声をあげて泣き出した。

テファはおろおろしながら「カノン、泣かないで、、僕はカノンに
    今でも弱いし、泣かれると泣かせた奴に腹がたつんだ
    ・・・唯、今回は原因は僕だね・・ごめん、ごめんよ。
    カノン、僕も今日は一大決心で来たんだ。
    カノンが人妻でも子供が居ても構わない。
    僕とこれから先、ずっと一緒に居て欲しい。
    もしかしたら、ソンジェ氏と居る方が、平穏で幸せで
    カノンに取ったらいいのかもしれない。でも僕は、カノン
    を諦められない・・・僕は10年前から気持ちは変
    わらないし、ずっとずっとカノンを思っていた。
    カノン、僕は君とずっと歩いてゆきたい。
    苦労させたり、泣かせる事も怒らせる事もあるかもしれ
    ない。でも僕はカノンさえいてくれたらそれで良いよ。
    それとシオンも自分の娘みたいに可愛いんだ。
    最初に会った時から、可愛いアガシだなっと思い、更に
    友人たちから親子ですかとからかわれるくらい、似ている
    と言われるんだ。・・・特に目元がソックリだって・・・・」と

    言ってキラキラした瞳をカノンに見せた。


  テファ:「お互いの気持ちが分かって良かった・・・
      カノン、僕を信じて欲しい。これから先、何があっても・・
      もしかしたら全世界の人達から批判され敵に回される
      かもしれないけれど・・・それでもついて来てくれる?」

 カノン:「・・・オッパが辛いのを見るのは嫌だから・・・
      その時は、いつでも手を離してね?
     カノンはオッパが大好きだから・・・オッパが笑顔で幸せなら
     どんなことでもするし、オッパにバイバイされても良いから」
     と云った・・・

テファは優しく微笑んで「そんなことするわけないないよ。僕は
             カノンと一緒に居る事が幸せなんだ。勿論、
             シオンも一緒さ。ソンジェはきっと別れないと
             言うだろうし、シオンを盾にして来ると思う。
        万が一、そうなったら・・・カノン、君は君の思うがま
       まに進めば良いよ。反対に僕の手を離せばいいんだ。
       いいかい?」と云った。
カノン:「ううん、絶対に、離したくない。だってなんかここで離したら
     もう二度と会えない感じがするから・・・シオンは頭の良い
     感性の鋭い子・・・きっとついて来てくれると思う。
     アッパであるソンジェよりも、サムチョンであるオッパが良いと
     言っていたくらいだから。シオンは私と同じで、ソンジェに
     対して緊張する・・・と言うか常にちゃんとして元気でい
     なくてはいけないとか、ソンジェには弱いところやガッカリ
     させるところを見せてはいけないみたいなところがあって
     自然で居られないと云うか・・・私も何故か、ソンジェ
     の前では元気いっぱいで自信満々みたいな虚勢を
     張ってるところがって・・・涙はでるけれど声を出して
     泣けないの・・・シオンも、アッパをガッカリさせたくない
     からオボイナレの役が木だとなかなか伝えられない
     でいたり・・・お受験の時も音楽家の娘だから失敗
     したらアッパが恥をかくと思って絵画の方を選んで
     ピアノ演奏を止めたりしたの。天才音楽家の娘って
     事で、注目されて本人にとってはかなりプレッシャー
     だったと思うし、お受験も梅花をソンジェは勧めた
     んだけれど、本人は乗り気ではなかったの。でもアッパ
     が悲しむって事で嫌だけど受けたってこの前聞いて・・
     子供に気を使わせてるんだって思ったら可哀想に
     なってしまったの・・・私もシオンの事は云えず、やっぱ
     りソンジェの前では背伸びをし、お姉さんぶったり、
     強くて元気な部分しか見せてないし・・・段々とスト
     レスになっていたの。勿論、今の生活は悪くは無いし
     幸せかと聞かれたら幸せだし、十分以上の生活が
     難なく出来るし楽しいけれど・・・そして時々、
     ソンジェは伴侶の選択を間違えたと思うようになったの。」


テファ:「伴侶の選択?」
カノン:「やっぱりソンジェには同じ音楽家である呉ジナさんとが
     お似合いだと思ったの・・・ジナさんもソンジェの事、今も
     好きだし、出来たらずっと一緒に居て同じ音楽の道を
     歩んで行きたいと思っているんじゃないかと・・・」
テファ:「じゃあ、皆で人生の軌道修正をしようか?皆が成功して
    笑顔になれるといいんだけれど??カノン、どんなことが
    あってももう二度と手を離したくない。カノン、サランへ、
    やっと又出会えた・・・」
カノンは、とても幸せだった・・・10年経ってやっとまた巡り合って
お互いの気持ちが分かって、変わらず好きでいて・・・
今度は絶対、何があっても手を離したら行けないとカノンは
テファの手を見つめながら思った。

テファは気持ちを取り直して、「カノン、10年前を思い出すね?
                 秘密ちゃん大作戦と行こうか?」
と言って笑った。カノンもつられて笑った。
そうだ、オッパと居る時の自分が1番自分らしく自然なんだ。
自分はきっと人妻のくせにとか世間に後ろ指を指されるかもしれない。
それでももう後戻りせず、オッパを信じて前に進もうと思った。
         


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