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作品名:潮風のセレナーデPARTUバトル編 作者:HAPPYソフィア

第12回   恐ろしい罠・・・
久し振りの日本からの友人二人を相手に



カノンはとても楽しい時間を過ごしていた。



野菜のジュースやケーキを少しずつ分け合って飲んだり・食べたり



しながら学生時代の昔話に花を咲かせていた。





それから3人は、新村の街並みを買い物を楽しんだりして過ごした。



夏を感じさせる心地よい風が吹き、緑の木々が眩しかった。



ソウルはチェヂュ島とは違い、人もビルも多いが、最近では自然保護にも力を入れ



緑の草木やお花が道のあちこちに植えられていた。





  特にホンデや新村辺りはお洒落で美しい街並みだった。



  ホンデ辺りはやはりファッションと若者の街は



昔と変わらずで日本の原宿や渋谷に似ており



    新村は、銀座・・・有楽町に似ていた。



  そして明洞は、新宿に良く似ており、ソウルに来る日本人は、何となく



  新宿の東側のアルタがあるところを想像するようだった。



   また、日本の東京に来た韓国留学生や韓国人観光客は、新宿を見ると明洞の



  様で、故郷を思い出すようだった・・・・



 新宿を北へ向かって歩くと、直ぐそこにはコリアンタウンが広がる新大久保に繋がっている・・・






      



     久美:「カノンはすっかりママになったね〜」





     緑:「本当、あの甘えん坊のカノンが国際結婚して



             韓国に住んでお母さんだもの・・

   

             凄く不思議と言うか・・・



              誰がこの展開を予想したんだろうね?」





カノンはクスクスと笑いながら



          「自分自身でも、そう思ってるの・・



               しかも大学2年の時に行った韓国の



           短期語学留学で、綾やヒロミ、そして私の三人が



           その時、出合った韓国の男の人と結婚して



              韓国に住んでいるんだもの・・・・」





              っと言っていた矢先・・・











        「あれ?」っと







カノンは言いながら急いで鞄から眼鏡を取りだした。









      久美も緑もどうしたの?っと言ってカノンが眼鏡で見る方向を見た。











   カノンは時計をチラリと見ながら



       「うん・・あのね、サヤカも結婚して今は、ソウルに居るでしょう?





        そのサヤカの双子の子供が・・・



                ホラ、あそこにいるの?」と言って指差した。

















            久美も緑も「ふ〜ん」と言いながら双子の子供を見た。









    大きめのリュックと両手には手提げ袋が一杯に膨らんだ状態でぶら下がっていた。



       二人の脇には水筒もポシェットの様に斜めがけされていた。







         まるでニ・三泊するお泊まり会にでも行くかのような格好だった。 







         すると1台の黒いベンツが止まり、二人は中に入った。



  





          中から小さな子どもが手招きをしているのも見えた。



   







                     「あ!!」









                カノンはビックリした・・・







           あの娘は確か・・・



                      そう・・・確かに・・・



   





               呉ジナの一人娘の





                      マヤ?



  



                   どうしてマヤがいるんだろう?



       ソラミが仲良しなのは、同じ幼稚園だから分かるが?

          



          いつの間にカイトも仲良くなったのだろうか?



久美子:「あの二人、凄い荷物ね?どこか旅行に行くのかしら?



    シオンちゃんは行かないの?そんな話とか、出てなかった?」



カノン:「・・うん、何も・・・それにシオンは、あの車の女の子とも



     ソラミちゃんたちとも仲良しではないの・・・」



久美子;「え?なんで?親戚同士なのに?」



カノン:「えへへ、子供たちには子供たちの何かがあるみたいでね・・

  

     親である私も、サヤカとは疎遠になっている部分もあるんだ・・」



 緑:「え!そうなの?」



カノン;「うん、サヤカはいつも光り輝いていて華やかでゴージャスでしょう?



     元々、お金持ちのお嬢様で、頭も良いし美人だし、外国語もペラペラ



     就職氷河期も何のそので、なりたかったCAにもなって順風満帆な



     毎日を送っているの。もう住む世界がかなり違いすぎてね、



    壁が物凄く高くて厚いの・・・昔みたいに親しくする事が出来なく



    なっちゃった感じがする・・・でもうちはこの通りの感じだし、



    気どっても、背伸びしてもしょうがないかな?って思ってる・・・



    家族皆が元気で笑顔ならそれでいいかななんてね?えへへ」と笑った。







    久美子も緑も何となくサヤカとカノンの確執を想像出来たし、



    大方、カノンにどうしても勝てないサヤカがヤッカミでカノンを



    ツマハジキニしているのだろうと思った。



    学生時代から、カノンにサヤカは最初から負けていたのだ・・・



    容姿にしろ、性格にしろ、、、サヤカがどうしても欲しい物は



    常にカノンの手中にあったからだった。



    どんなに欲しくても、どんなにお金を積んでも、コネクションを



    利かせても、手には入らなかったからだ・・・・



    今のカノンのご主人であるソンジェも、、、そして学生時代に



    付き合っていたホンデのスター「テファ」も、サヤカには目も



    くれなかったからだ。





   今は、子供同士の対決になっているのかもしれないと、二人は



   思った。同じリラ幼稚園だし、きっとサヤカは子供同士を競わせて



   優位に立ちたいと思っているのではないかと・・・



   だが、どうみても、カノンに軍配が上がりそうだった。



  カノンは最初から競争を放棄しているし、マイペースで、



   いつも楽しんで過ごしている様子だった。



     カノンはいつ見ても幸せそうでイイナっと二人は思った。





緑は、フト、カノンの子供のシオンは、今日は大丈夫なのか?と心配になった。



幼稚園の送り迎えとか、独りで留守番ではないのか?とか・・・







          緑:「カノン、シオンちゃんは今日は大丈夫なの?



        家にいないといけないんじゃないの?」







         と云うと「うん、今日は大丈夫なの・・・





               ソンジェが幼稚園の近くのスタジオで仕事していて



               早く終わるから、車で迎えに行ってくれて、その



               まま家で仕事するみたいだから・・・



               仕事仲間の人も後からうちに来るみたいだし・・・」





           とカノンは答えながら





               車が人と道に飲み込まれてゆくのを見た。







              一抹の不安を覚えたカノンはちょっと失礼と言って



                 家に電話をかけた。





                 5コール目で



                 シオンが電話口に出た。

              





            シオン:「ヨボセヨ(もしもし)リイムニダ(李です)



                 ヌグセヨ(誰ですか)?」







            シオンの可愛い声を聞いて、カノンはホットした。







                    シオンは帰宅している・・・良かったと・・・







         シオンはそんなことも知らずに無邪気に「オンマ、



                 今、カササギ幼稚園の時のジニちゃんと



            キョンワちゃんが遊びに来てくれていて



                    お人形さん遊びしているの。・・・









          アッパ?



             アッパは、、、、





               えっと〜・・・お仕事をお部屋で



          いつもの会社のおじさん達としているよ・・・



              オンマ、ペゴッパ(お腹すいた)」







                  っと言ってクスクスと笑った。









              カノン:「そうか〜、じゃあ、おやつは冷蔵庫に



                     オンマが焼いたアップルパイと



                       オレンジジュースもあるから食べてね?



             食べる前にはちゃんと手を洗ってね?

        

          アップルパイはちょっとだけレンジでチンすると美味しいよ。





          夕飯までには帰るけれど、そうだ!ジニちゃんたちも良かったら





         一緒に夕飯を食べましょうね。」



                と云って、待たせている緑達に悪いなと思い、

                              

                              早々に電話を切った。











       「二人とも、ごめんね?シオンは、幼稚園から帰っていてお友達と遊んで

 



            いたんで、ちょっと安心したわ。



                 ソンジェも家にいるらしいし・・」

                



                       と言って笑った。







       緑も久美子も「本当にカノンはお母さんになったね?」と言って笑った。











     コンサートの時間が近づいて来たので、地下鉄の分かりやすい駅までカノンは

 



       二人を送って行った。







            「88」・・・つまり88年に造られたオリンピック競技場は







      ロッテワールドのある蚕室駅の近くにあるので、乗り換えなしで行かれる





     2号線沿いの駅へとカノンは二人を連れて行った。









         途中の露天商で記念にと、カノンは可愛いミサンガを3本買った。





     電車を待っている間、



          カノンは二人に1本ずつ腕につけて上げる事にした。









            緑:「え?いいの?カノン、有難う」





        久美子:「いい思い出になるわ。カノン、嬉しいわ。有難う。」





二人は折角だから何か願い事をしながらカノンに結んで貰うとし、目を閉じて





願い事を心の中でした。







二人はカノンに結んで上げるとし、カノンも願い事をしてっと言った。









      カノンは急に願い事と言われてもパットは思い付かなかった・・・









     電車が到着するアナウンスが流れ、



            二人は慌てて「カノン、結ぶよ」と言って





            カノンの腕を取り、結び始めた。



 









              カノンはその時、どういう訳か?



 













          またいつかこのナム(=木)に





               会いに行きたい・・・っと願った。

 









       このナムとは、10年前に韓国へ語学留学した時、



          大好きだったオッパと二人で逃避行した束草の・・







            ドラマ「秋の童話」の舞台になった・・・







       そう、主人公の女の子が生まれ変わったらナムになりたいと

  



      言って、そのウンソのナムの木をもう一度、見に行きたいと願った

   



      のだった。

 

  









      「カノン、はい結んだよ。電車も丁度来たし、、、



           今日は本当に有難うね、





           会えて嬉しかったし、会いに来てくれて嬉しかった。

   





           カノン、またね?元気でね?」っと二人は言った。

 











   我に返って、カノンは「こちらこそ、韓国に来てくれて有難う。

  





           楽しかった〜そして嬉しかった〜、





                 またね?絶対、又会おうね?元気でね?





                 メールするからね?」

         



                         っと言った。









          そして電車が見えなくなるまで



                   カノンは駅のホームから二人を見送った。











       電車はコンサート会場に行く若者たちと、



                帰りのラッシュでかなり混雑していた。





    





       緑も久美子もカノンに会えてよかったねと言い、



              そして気持ちを切り替えて



                気合満々でコンサートへ向かったのだった。

























シオンはソンジェがリラ幼稚園の近くのスタジオでの仕事だったので、



今日はソンジェの車のお迎えで帰った。





幼稚園から戻るとキョンワとジニが家の前でシオンの帰るのを待って居て、



遊ぼうと言って駆け寄って来た。





シオンは、嬉しくなって、今日は家で遊ぼうと言って家の中に招いた。



ソンジェもその方が安心で賛成だった。







事務所から貰ったお菓子が沢山あるのでそれを皆で仲良く食べなさいとして



シオンに渡した。



そしてマシュマロの入った甘くて美味しいココアを三人に入れて上げて、



自分はこれから仕事をするから、何かあったらドアをトントンしてねと



言いながら仕事部屋に入って行った。





30分位すると、ソンジェの仕事仲間が何人かやって来て



仕事部屋に入って行った。





ソンジェは仲間にコーヒーを入れにリビングに行くと、



シオンたちは仲良くお人形さんごっこをして遊んでいた。



口の周りはココアと事務所のお菓子のチョコレート菓子が沢山ついていた。



ソンジェは笑いながら「3人とも、チョコレートを沢山食べたなぁ〜?」と



言ってお湯で絞ったタオルで三人の口の周りを丁寧に拭いてやった。



そして父親らしく「シオン、今日は幼稚園はどうだった?」とかジニやキョンワ



にも「幼稚園でどんな歌を習ってるの?」とか「これからは暑くなるから、お外



で遊ぶ時は帽子をかぶってね?」とか言葉を優しくかけていた。



なかなか珈琲を入れに戻ってこないので仕事仲間が、リビングに行くと、



その光景を見て、天才音楽家の李ソンジェも家族や子供には本当に親ばかと言うか



マイホームパパなんだなと思ったのだった。



更にソンジェがとても幸せそうで心から今の生活を大切にしている事が分かったのだった。





  「ソンジェ、珈琲まだ?」っとシニャンが声をかけると



  「あぁ、悪い、悪い・・可愛いちびっこが居てね、つい道草しちゃったよ・・



   オチビちゃん、飲み物のお代りはいるかい?」っとソンジェは言うと三人とも



   元気よく「いる」っと言った。








珈琲を入れて又一仕事が始まった時、シニャンやソンダル達仕事仲間が、



ソンジェをからかった。



「すっかり、お父さんだな・・」



「優しいお父さんで、顔がとろけそうだったな?ハハハ」



「え?そうか?ハハハ。シオンは我が家のお姫様だし天使だよ。シオンの為なら



  何だってするさ・・・出来るさ・・・」



「おっ、言うねぇ〜」



「ソンジェが作詞・作曲したシオンと言う曲も良いよな・・CDも売れてる



 みたいだし・・・お前は音楽家としては超一流だよな・・・凄いよ」



「・・・まだまださ、、それに僕には最大のライバルがいるんで、



 そのライバルが、僕の音楽は甘い!甘過ぎる!ライバルにもならんって言ってるしね」



っとソンジェは笑って言った・・・そのライバルは、妻である「カノン」だった。



カノンはこの天才とも言われる李ソンジェでさえも平気でまだまだだと言えてしまう



存在だった、それがたまらなく可笑しくてソンジェはもっともっと努力して頑張ろう



と思うのだった。









   シオンたちはお人形遊びから、次は童話の本を読み始めていた。



 「ヘンゼルとグレーテル」と言う童話だった。



  代わり番こに三人で仲良く呼んでいると電話のコールが鳴った・・・



  シオンは、ソンジェを呼びに行こうかと思ったが、大人たちは忙しそうだったので



  電話に出る事にした。





   その電話はオンマであるカノンからだった。





  そしてふざけて「オンマ、ぺゴッパ(おなかすいた)」と言ってみると



  カノンは大真面目に「あっ、そうか、おやつね?」と言い、



    冷蔵庫にアップルパイとオレンジジュースがあるから仲良く食べてと



    言われ、それでも足りなければ、戸棚にクッキーやおせんべい、



    チョコレートもあったかな?等と言われた。



  シオンたちは自分達はヘンゼルとグレーテルになった気分だった。



     そう、お菓子や美味しい食べ物が一杯あったからだった。







   冷蔵庫を開けるとアップルパイの他にも色々なケーキやお菓子、



   チョコレート、果物、プリンやゼリーもあり、



    更にアイスクリームがあってジニもキョンワも



        「本当だ」と言って笑った。







   大人たちは、自分達の仕事で忙しいから、



           シオンたちは子供天下になっているのを感じ、



           嬉しかった。







シオンは、ジニやキョンワに「好きなもの食べよう」と言って



お皿に盛りつけて食べ始めた。







一方、ソラミもカイトも待ち合わせ時間に10分ほど遅れて到着した。





かなりの大荷物になってしまい、それを持ち出すのに手間取ったのが原因だった。



しかし、慌てて行くまでもなく、マヤの方も遅れていた。



丁度、帰宅ラッシュにあたる時間なので、交通渋滞に巻き込まれてしまったのだった。



それでも、カイト達をそんなに待たせることなく、到着した。



ソラミは二人が自分の発した言葉通りにやって来たので口元が緩んだ。





  そしてドアを開け、早く乗りなさいと手招きしたのだった。







       黒塗りのベンツは重厚で高級感あふれていた。



カイト達の家もベンツだが、マヤの家の方が高そうだったし、マヤには威厳と言うか





品格があった・・・







カイト:「マヤ?ちゃんは、いつもこんな立派な車に一人で乗ってるの?」





マヤ:「ええ、そうよ。私のママは、天才ジャズピアニスト、呉ジナよ。

   

                     年中、世界中を飛び回っているわ。」







ソラミ:「ふうん、凄いね?うちもベンツだけど、お父様が運転して、お隣は

   

         お母様、後ろにお兄ちゃんと私が乗るの・・・」っと言った言葉が





        癇に障ったのか?





マヤは急に不機嫌になり「フン、大したことないのね?あんたはもっとお金持ちだと



            思ったわ。うちはこの車は私専用なの!お母様は違うベンツよ」







                  っとイライラしながら言った。







カイトは、「マヤちゃんのお家に僕までお邪魔させて貰って済みません」と







        言ったが、マヤは「・・別に・・面白そうなゲームが始まるから付き合った





        だけよ。ソラミは馬鹿だから、直ぐに失敗しちゃうだろうし・・





        そんなんなら最初からやっても意味ないじゃない・・・



        だから協力するってだけよ。



                 ゲームは面白くなくっちゃ・・・」と云った。





                    カイトはその言葉を聞いて何だか恐ろしくなった。









              だが、もう引き返せない・・・そんな気がした。









                車は20分も走ると閑静な高級住宅街に入って行った。









        マヤ:「ここのエリアは、有名人しか住んでないのよ。歌手、俳優・女優、

 

                   作家や芸術家も多いわね・・・」と自慢げに言った。











     1件1件が大きくお屋敷が立ち並んでいたが、隣りとの感覚も広く、





        沢山の樹木で仕切りがされていた。また赤レンガの壁や格子壁もあり、



           お洒落な造りになっていた。











花や草木も色の配列も考えられていて、伝統も横浜の馬車道の様な洋風の造りだった。





       ソラミは車の窓に顔をひっつけて、景色を楽しんでいた。



  





          「ホラ、あそこが私の家・・」っとマヤは指差した。





      ソラミは大きなお屋敷だと喜んでいたが、カイトは何だかTDLの

 

        フォンテッドマンションみたいな恐ろしいさにも似た気持だった。





          重々しい扉が自動で開けられて、車が入るとゆっくりと閉じられた。







        カイトはもう二度と、家に帰れなくなるのでは?と不安を覚えながら

  



               何度も閉じられてゆく扉を見たのだった・・・











            玄関の扉が開くと何人かのメイドと、シッターが居て







              「お帰りなさいませお嬢様」っと一斉に言った。









        マヤは「フン、今日はお友達が遊びに来ているの、2〜3日滞在するので

   

               食事の用意や泊まる用意もして頂戴。



           それから叔母様はいらっしゃる?



          冷たい飲み物とお菓子を用意してCP室へ持って来させて・・



            叔母様もお呼びしてね?」

         



                         と云った。











カイトはマヤに「CP室って?」と聞いてみた。



マヤは笑いながら「チャイルドプレイ室よ・・つまり子供部屋ってことよ」と言った。









ソラミは無邪気に自分の家とは違った豪華な家を見て楽しんでいた。



そしてマヤちゃんは、おそらくリラ幼稚園1番の有名人の子供で、



お金持ちなんだと思っていた。



勉強も出来るし、頭の回転も速いし、苛められてもへっちゃらと言った強さも感じた。









  マヤちゃんは凄いな・強いなっと何度も心の中で思うソラミだった。





――――――――――――――――――――――――――――――――





















これから恐ろしい事が起こるとも知らずに、サヤカはリラ幼稚園の



ママ友達と一緒に、最近韓国のセレブなマダム達の遊びとなっている



韓国ミュージカル観劇を楽しんでいた。







それぞれにお目当てのミュージカルスターがいるらしく、



パンフレットの顔写真を見ては「この子、この子、本当に歌も



踊りも演技も最高なのよ」と言ってうっとりしていた。







サヤカも、まだダンサーの一人の若者に心を奪われつつあった。



日本では一昔流行したホスト遊び・・・それに似た感覚があるが、



ミュージカルチケットはホストに通い入れあげるよりも安いし、



健全と言えば健全かもしれないが、それでも贅沢な遊びの1つだった。











   観劇が終わると、決まって近くのホテルの最上階で景色を





楽しみながらハイティをし、歓談にふけるのが定番だった。









せっかちで忙しい韓国人の性格からすると、時間を無駄に過ごして



勿体ないと言われてしまうだろうが、これが最近の韓国セレブの



ステータスにもなっていてホテルの最上階はいつも混雑していた。











「ここのお紅茶は色々な種類が楽しめて美味しいのよね?





あたくしは、ミントティとザッハトルテがお気に入りですの。」







サヤカは微笑みながら言うと、取り巻きの母親たちも右へならえで









「じゃあ、あたくし達もミントティとザッハトルテを・・」と言った。













サヤカはそんな光景を心の中で(馬鹿みたい・・皆、私に逆らったりしないし、



おべっかばっかり使って・・・、









あぁ、退屈だわ・・・あ〜、チュキちゃんママったら、



本当に野暮ったい格好・・それに趣味の悪いコピーバッグ・・・





無理してヒールなんて履いて来て絆創膏が見えるわよ。







みっともないわ。





ルナちゃんママも、ケーキの食べ方を知らないのかしら?



本当に・・・成金上がりが分かるわ・・・生粋のお金持ちで



品のあるお嬢様育ちのお母さんていないのかしら?







・・そこへ行くとカノンはお嬢様だったわ。



でも今は唯の主婦になっちゃって、本当につまらないわ。)



と何度も思いながらこの退屈な時間を過ごしていた。













リラ幼稚園では、サヤカは父兄の中では女王様だった。





(カノンは抜かして)誰一人逆らったりはしないし、



皆、サヤカの前ではペコペコしていた。









誰もがサヤカを褒め、誰もが遠慮しながら・・



顔色をうかがいながら行動を共にしていた。









中には、その交際費が莫大な為、どうしたものかとため息を



つく父兄もいたが、ソウル、いや韓国の有名学校にコネクション



がある権家に逆らうと子供の将来の芽を潰してしまう恐れがあった



ので、言いたい事も言えず我慢をしていた。









       悪いことばかりではなく恩恵もあった。







サヤカの傘下にいれば、リラから有名な小学校や中学校のコネク



ションを貰えたり、一流や本物を体験出来、自分が日々の生活から





逃避出来る華やかな時間を楽しめるからだった。





サヤカ達とランチでも一緒にしようものなら10万Wは軽く飛ん



でゆくし、それなりの格好や装飾品も必要だった。







中には、毎回同じ洋服とはいかないので、貸衣装屋でレンタル



する母親も居た。それでも一日、安くても10万Wはしてしまう。









それが週一回必ずあるので、このままで行くと破産してしまうと





不安を抱えている父兄も居た。











         今日の取り巻きの一人のチュキの母親だった。







  ミュージカルのチケットは130000W・ハイティ代金56000W



   ワンピースや靴・鞄のレンタルは84000W、交通費10000W







     ・・・帰りはバスで帰るしかないわ。











今日もソラミちゃんママは素敵な格好だわ、1度として同じ





洋服やバッグなんて使ってないし、、お金のこととか口にせず



優雅な生活をしているのね?羨ましいわ。









うちはもう火の車なのに・・・



            あぁ、お金・・お金が欲しいわ。





















   「ね?チュキちゃんママ?」っといきなり話題がふられて

   









     チュキの母親は「え?」っと聞きなおした。

















「嫌だわ・・・聞いてなかったの?」エルの母親は怪訝そうな



         顔をして意地悪く言った。

    











「えっと、えっと・・・」チュキの母親はさも考えて

 







    いるかのように振舞ったが、質問の意味も分からなかったので



       逆にエルの母親に「エル君ママはどう思ってるの?」





               っと聞き返してその答えを待った。

















エルの母親;「うち?うちはね、夏休みはいつもハワイに家族で

 

      行く予定なの。今年は息子がリラ幼稚園に入園

   



      出来たから、ノンビリ過ごしたいと思って・・



いつもは10日間位なんだけれど、今年は3週間位いようかと?



思ってるのよ。ハワイにはオアフ・ハワイ・カウアイとか色々な



島もあるから自家用ヘリとかで空の散歩もしてみたいわ。」













どうやら夏休みの予定を話していたんだとチュキの母親は





察知し、「うちは、エーゲ海をクルージングしようかと



思ってますのよ。チュキに、私が良くギリシャ



神話とかのお話を読み聞かせてましたから・・」





っと大見栄を切ってしまった・・・



皆は一斉に「エーゲ海のクルージング!!



      素敵ね〜」と歓声が上がった・・・



一躍、話題の中心になれてチュキの母親は得意満面



だった。(「言うのはタダだし・・これくらい言



っても良いわよね?ウフフ、気分いいわ」っと・・)











サヤカは小さく「嘘つき・・」と言ってチュキを



からかって恥をかかせたくなった。貧乏人がエーゲ海



クルーズですって?銀行員の大家族のくせに・・・



リラ幼稚園の入学金だって払えず何回かの分割にしている



くせに、何がギリシャよ・・・フフン、見てなさい・・・











サヤカ:「まぁ・・・素敵、、実はあたくし達家族も





      今年の夏はギリシャを考えてましたの・・・

      

     チュキちゃんママの話を聞いて、行きたくなりましたわ。



     チュキちゃんママはギリシャ神話にお詳しそうだし、



     うちの娘もチュキちゃんとはもっと仲良しになりたいと



     申しておりましたから・・・



      宜しかったらギリシャ旅行をご一緒しません?



     全行程一緒じゃなくても1日でも構わないので



     向こうでお会いしましょうよ。



     「アセンス」と言うギリシャ1のレストランを予約して



     おきますわ。確かチュキちゃんのお家はお子さんが5人と



     お姑様とお舅様の9人家族でしたわよね?我が家は4人



     家族なので13人分予約しておきますわ。」と云った。







    チュキの母親は言葉に詰まってシドロモドロだった。





      「いえ、、あの、、その、、そうそう、うちは





         クルージングなのでご一緒出来ないと・・・」





          と言いかけると





「それには及びませんわ。私の家はギリシャに1カ月は滞在しますから、



1日位はご一緒出来ますでしょう?ホテルはギャレイパレスアテネよ、



そこのスイートだから、いつでも訪ねて頂戴ね、



チュキちゃんママは何ていうホテルかしら?」と云った。







チュキの母親は耐えきれず「まだ、予定ですから、もっ、もしかしたら・・



予定が変わるかもしれないので・・・お約束できません。」と云ったが、









サヤカは取り巻きの一人の母親に目配せして



「凄いわチュキちゃんママ、9人もの家族でギリシャなんて





              豪華ね?お金持ちだわね?







   ねぇ、皆さん、今日はチュキちゃんママに



          お呼ばれさせて貰わない?



ここのお支払いは全てチュキちゃんママに呼ばれましょうよ。







たまには人に呼ばれるのもいいですわよね?」っと言った。









チュキの母親はただでさえ重荷のこの集まりなのに、



今日の分、全員分など到底無理だった・・・



お財布の中身は、帰りの電車賃があるかないかだった・・」











どうする事も出来ずにとうとう泣き出しそうになった時、





サヤカが「・・そうは言っても、自分を含めて8人分の代金は



     少々、大変だと思いますの。



       それに私はお呼ばれって好きではないし・・



            自分の分は自分で支払いたいわ。







        それに今日のミュージカル観劇は、



     私が見たいと言いだしたので、



          言いだしっぺですし、私が皆さんの





        分をお呼びしますわ。」っと言って微笑んだ。











更にサヤカは「ねっ、チュキちゃんママもそうして





       下さるかしら?私がお呼びしても宜しくて?」と云った。













チュキの母親はホットして「え?・・・ええ、お願い致します」と





              言って頭を下げた。













惨めだった・・・悔しいやら、恥ずかしいやらで泣き叫びたい





心境だったがグッとこらえたのだった。













帰り路、「ちょっと寄るところがある」として、チュキの母親は





足早にその場を立ち去った。



もうお金がなかったのでタクシーを使わず、バスで帰る為だった。









韓国はバス代がとても安く、乗り方を覚えれば大変重宝する乗り物だった。





バスに乗り込んで一番後ろの座席が開いていたのでチュキの母親は座った。











何となく惨めな気持ちになって大粒の涙がこぼれた・・・





すると斜め横の座席に座っていた女性がハンカチを差し出した。













             「あっ」













チュキの母親はビックリした・・・ハンカチを差し出したのは、









         シオンの母親であるカノンだった。











ニコヤカにハンカチを差し出していた。













チュキの母親は「シオンちゃんママ・・・どうして?」







っと言うと、カノンは何も語らず、ハンカチだけ差し出して頷いた。









ハンカチはノーブランドのガーゼのハンカチで



使い勝手の良さそうな清潔なものだった。





何個かのバス停留所を過ぎてから、カノンは慣れた感じで











「次、降ります、アジョシ、モンジュオ」と大きな声で言って





     降りようと人をかき分けて前に進んで行った・・・











  チュキの母親も、カノンを追って一緒に降りた。

   



「あの・・・これ、、使って汚したから

 



    洗って返しますね?」と言うと、



カノンは「ハイ・・分かりました」と笑顔で言った。







後は何も語らず歩きだそうとしていたので、チュキの母親は







一方的に自分の気持ちを機関銃のように話した。



 





カノンは黙って笑顔で聞いていた。

   









   「もう、私はどうしたらいいか・・・

   

    ソラミちゃんママのグループから外れちゃったら・・・



本当に怖い。不安だわ・・」っと言った。



チュキの母親は本当に恐れている様子だった。



 カノンは微笑んで





「友達って・・・無理して付き合うと言うか合わせてたら、



        無理がくるし、お互い

    



      50対50の関係がいいかもって



       私は思います。





        上手く言えないけど・・・



チュキちゃんのママは、無理してない?



気持ちもお金も時間も?



お金はあれば心強いけど平気で心や人を裏切るから・・



人も変えちゃうし・・・





チュキちゃんのママは何が不安で怖いの?



私は権サヤカとは親戚関係だけど、







でもサヤカとはもう住む世界も環境も全て違ってると思ってる。





サヤカは小さい頃からお姫様で、綺麗で頭が良くて、



お金持ちのお嬢様で、いつも彼女の周りは人で一杯で



人の上に立つのが当然な人だったんだ・・







私は凄いなとは思ったけど、



          でも





不安とか惨めとかそういう気持ちにはならなかったし、



今も同じ・・うん、これから先も同じ気持ちかな?







お母さん同士、皆で一緒に観劇や遊びやお食事が



出来るのは素敵な事かもしれないけれど、



私は自分よりも娘のシオンが喜ぶ姿や、



シオンと一緒にいられる時間が楽しいし、嬉しい。



主人のソンジェと一緒に冗談を言ったり、同じ食べ物を分け合って



食べたりする方が楽しい。



洋服も、高価な洋服よりも布から自分で作る方が好きだし、



バーゲンや同じ物を買うなら1wでも安い物を探して買う方楽しい。



それが貧乏臭いって言われるかもしれないけど、



根本的に考え方が違うんだし、それぞれでいいと思う・・・





私は私だし・・無理はしたくない・・・



リラ幼稚園の父兄としてはふさわしくないのかもしれないけれど・・・



バスを使うなとか以前、サヤカに言われた事があったの・・・



リラの父兄は自家用車にしろとか、、、



お受験の時も御用達の洋服じゃないと受からないって言われて、



見学だけしたんだけど、1着300万Wとか高価なものばかりで、



私は買う事が出来なかった・・それで手作りで似たような洋服を



作って着せてやって受験したの・・・



バスだって乗り方が分かれば凄く便利で安くて良い乗り物なのに、、、



食べ物も私は市場とか良く行って値切ったりもするのよ・・



凄く楽しいし、何かそう言った生活が幸せだと思うの。



それで離れて行く人が居たらそれでもいいと思ってる。





リラ幼稚園だってシオンが自分で行きたいと言い、自分で



頑張って入学したんだし、それだけでも誇らしい・・・





親なんて関係ないし・・・地位もお金も名誉も関係ないよね。」



と言ってカノンは笑った。









チュキの母親は何となく心が晴れやかになって来た。











そうだ、何を私はおびえたり、無理していたんだろうと・・







「シオンちゃんママ、私ね、凄く背伸びしていた・・・







韓国1の幼稚園に娘が入園して有頂天になったけれど、うちは





普通の会社員の家庭で、私もパートに出ないといけないのに・・・





何を夢みたいに見栄を張って、、、





頭の中はいつもお金・お金・お金だったわ・・・



そしてソラミちゃんママに嫌われないようにいつもビクビクしていたの。









ありがとう、シオンちゃんママ・・・



私は大切な事を忘れていたわ・・・・目が覚めたわ。本当にありがとう。」









「・・うん、良かった・・バスの中でのチュキちゃんママは

 



  この世の終わりみたいな顔して悲しそうだったから・・・





    心配しちゃったけど、元気になって良かった・・・

 





   チュキちゃんがお腹すかして待ってるから早く帰った方が

 





       いいかも?おうちはこの辺の近く?」







           「ええと、ここは?・・・私ったら

            



              考えもなしに降りちゃったんだけど・・」









「イテウオンの近くよ、あそこのマンションが私の家なんだけど?」









「私の家はイテオン寄りのハンナム駅の近くなの・・そこの高層アパートに



 住んでいるの・・・」





「旦那さんは帰りとかは?」









「いつも10時過ぎよ・・残業ばかりして来るの・・



明洞の銀行員なのよ・・



食事は帰ってから簡単に済ませるだけなの・・・



だから私も子供たち・・・あっ、上は中学校お姉ちゃんから始まって小学校・幼稚園のチュキと



5人の子供たちがいて、ご飯は大概、お姑様が作ってくれて主人を抜かして皆で食べる事が



多いの。ご飯とキムチがあればうちはそれだけで満足だから・・・お米なんてあっと言う間に



なくなっちゃうのよ。」



カノンはクスクス笑いながら「わぁ、賑やかで楽しそうね?今年は白菜が高騰だからキムチ作り



がなかなか厳しいよね?私はこの前、市場で大きな白菜を2つ値切って買ったけど、それでも



高くて、ビックリしたわ。」と言った。



「シオンちゃんママはキムチを自分で作るの?」



「勿論よ!」



「凄いわ、うちは漬けてる暇なく、あっと言う間になくなっちゃうからもう買ってるの・・・



 そしたら子供たちは、最近、キムチが凄く美味しい、お母さん、料理の腕が上がったねって



 言うのよ・・アハハ」と笑った。カノンもつられて笑った。







そして、「良かったら、ちょっとうちに寄っていかない?アップルパイを沢山焼いたの・・・



     持って帰ってくれると嬉しいし・・私が漬けたキムチも食べてみてくれる?



     今日は夫のソンジェが家にいるんで、車でお家まで送って行けるし・・・どう?」



     と言って手招きした。







チュキの母親は是非、そうしたいでカノンの家について行った。



チュキの母親は久し振りに心から笑ったし、話が出来て嬉しかった。



カノンの家は高級高層マンションとして知られているところだったし、御主人の李ソンジェは



世界的にも有名になりつつある音楽家だったが、割りと慎ましやかな生活ぶりだった。



リビングでは、シオンたち3人のちびっこギャングがおもちゃや絵本などを所狭しと



散らかっていた。どうやら遊びは今はビデオ鑑賞になっていた。



テーブルの上にはお菓子の箱や、食べ残ったお皿、コップやカップが散乱していた。



カノンはケラケラと笑いながら、「さぁ、お片付けを手伝ってくれるかな?」で、



掃除に取りかかった。そしてチュキの母親をシオンたちに紹介した。



「チュキちゃんのママ、こんにちは。チュキちゃんは?うちには来ないの?」



 っと、シオンが言うと「うん、たまたま、今日は帰りのバスでシオンちゃんのママと



 会ってね、今度、チュキと遊んでね?うちにも遊びに来てね?」と云った。



 シオンは「うん」と元気よく言って笑った。









カノンはキムチ冷蔵庫から大きなタッパーを幾つも出し





「海鮮キムチ」「キノコキムチ」「水キムチ」等、実に色々な種類のキムチを手際よくお土産用



として包み始めた。





「これ、全部、シオンちゃんのママが作ったの?」と驚きながら言った。



 更に、手作りのプリンやゼリー、プチケーキなども箱に入れて、ソンジェを呼びに



シオンに行かせた。







ソンジェは仕事も一段落し、仕事仲間も帰って行った様子だった。



シオンに呼ばれてソンジェはリビングに行った。 





ソンジェ:「あっ、ママ、お帰り!」と言って笑うと、











チュキの母親は、金縛りにあったかの様に棒立ちになった・・・



 







そこには長身で美しい青年のような男性が立って居たからだった。







間近で見る実物の李ソンジェを見て、光り輝くオーラを感じ、チュキの母親は棒立ちになって



しまったのだった。









ソンジェは「あっ、お客さん?」っとカノンに言うとカノンは「シオンの幼稚園のお友達の



      お母さんで、金 花江さん、日本人の方です。旦那さんは韓国人で銀行員

      

       だそうです。」



      「李ソンジェです、いつも妻と娘のシオンがお世話になってます。



       又この度は我が家にようこそお越しくださいました。今度はお子さんも連れて



       いらして下さい。いつでも歓迎しますよ。」と言って笑った。









カノンはからかう様に「パパ、今、自分はキマッタ!って思ったでしょう?ナルシストだねぇ



            チョヌン キムタクイムニダって顔に描いてあるもん。」と言うと







ソンジェは「えぇ?そんな事、全く思ってないよ・・・カノンこそ、チョヌンイップダ アガシ



って思ってるでしょう?全身からにじみ出てるよ」と言い返したが「子供だねぇ〜オッパちゃん、



ムキになっちゃって、嫌だいやだ・・・これだからナルシストは!」とカノンは続けて言うと



チュキの母親はこらえきれずに噴き出してしまった。



カノンもソンジェも皆で笑った。子供たちも大人たちの笑いにつられて笑っていた。





    笑顔や笑いがこんなにも人を温かく幸せにするものなのだと言う事をチュキの



    母親は改めて感じた。素敵なご夫婦だわ・・いいえ素敵な家族だわ・・



    皆が皆、自然体で、笑っていて、、、、



    幸せなんだなって分かるもの・・・・











夕飯は、チュキの母親を送りながらファミレスでとることとなった、



そして子供たちをそれぞれの家に送って行くとした。



無駄のない日程だった。





チュキの家は車でそれでも30分はかかった。



ごく普通のソウルにある中流家庭の高層アパートだった。築年数も結構ある感じがしたが



こぎれいな感じもした。





「今日は本当に有難うございました。今度、時間がある時に改めて・・お礼させて



  下さいね?」とチュキの母親は言った。



カノンもソンジェも「お礼だなんて・・大丈夫ですから・・・それよりも今度、



          お子さん連れて遊びに来て下さい」と言って別れた。







チュキの母親はずっと両手を上げて手を振ってくれた。



すがすがしい笑顔で・・・







「さて、皆さん、お腹すきましたか?何が食べたいですか?」とカノンは



子供たちに聞いたが、子供たちの反応は薄かった・・・



拍子抜けした、カノンとソンジェで「どうしたの?いつもなら真っ先に



ハンバーグとかスパゲッティとかって言うのに?」っと言うと、



子供たちは昼間、散々お菓子や飲み物を沢山食べたり飲んだりしたので、



お腹が全然減ってなかったのだった。



シオンたちは正直に、ヘンゼルとグレーテル気分になってお菓子を沢山



食べた事を白状した。



ソンジェは大きな口をあけてワハハと笑いだした。



カノンも呆れて、笑った・・・その食欲振りが凄かったからだ。



「じゃあ、パパとママはお腹が空いているので、ファミレスでご飯を



 食べますが、皆さんはパパとママたちに付き合って下さい。



 お願い致します。正し、もし何かご飯が食べたくなったら、遠慮なく



 言って下さい。宜しく!」と言ってファミレスに入った。



 シオンはウエイトレスさんに元気よく「取りあえず、お水」と言って



 皆の笑いをとった。











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子供たちをそれぞれの家に送り、家に戻ったのは、時計の針が20時半を回ろうと



していた時だった。





家に着くと、ずっと自宅の電話が鳴っていたが、慌てて出ようとしたが、切れて



しまった。



誰からだろう?そう思いながらマナーモードで電源を切っていた携帯をONに



した途端、ソンジェの携帯がけたたましく鳴った。



ソンジェが出ると、相手はサヤカの夫である権 海仁だった・・・



「あぁ、権さん、こんばんは。お久しぶりですね?」っとソンジェが話しだしたが、



 権はかなり慌てふためいているらしく「すっ、済みません、、うちのソラミと



 カイトはそちらにお邪魔してませんか?幼稚園から帰ってから、バイオリン



 と英会話の塾だったのですが、そこにも行かず、未だ帰って来てないんです。」



 と・・・・



ソンジェ;「サヤカさんは?サヤカさんは一緒ではないんですか?」 



海仁:「サヤカは今日は園の友達とミュージカル観劇し、ショッピングや食事を



    して先ほど帰って来たんですが、子供たちがまだ帰ってないので、



    園の連絡網で聞いたらどこにも行ってないで・・・それで連絡が取れ



    なかったのは李さんの家だけだったんで、もしかしたらシオンちゃんの



    家に行ってるのではないかと思いまして?」



ソンジェ:「・・・いえ、、残念ながら家には来ておりませんが?」









海仁;「えぇ?行ってないんですか?!」



ソンジェ:「権さんのお爺様やお婆様の家とかではないんですか?」



海仁:「・・いえ、もうとうの昔に連絡しましたが行ってないそうです。



    もしかしたら、誘拐かもしれません・・警察に届けようかと思います・・・」



ソンジェ:「私も、探しますよ、、後は子供が行きそうな場所ですね?



      勝手知ったる幼稚園とか・・公園とか・・家族との思い出のある場所とか



      ・・・何か思い当たる場所は無いですか?一緒に探しましょう!」と



      言った。





海仁:「有難うございます・・・あぁ、どうしていいか・・・」



ソンジェ:「サヤカさんは何か思い当たる場所とか言ってませんか?」



海仁:「・・・それが、、、妻は酒が入り、かなり酔っておりまして・・・



    頭が痛いと寝込んでいるんです。お恥ずかしい・・・更に李さんと連絡が



    取れてなかったので、大方、李さんの家に行って、遊んで食事にでも



    出かけているんだろうって言ってましたから・・・あぁ・・・どうしたら、、



    どうしたらいいんでしょう?」





 海仁はどうして良いのか?かなり取り乱していた。



 今から、そちらの家に行きましょうか?とソンジェは言い、一旦、電話を切った。



        



       そこへ



 お風呂にシオンを入れて寝巻にさせて就寝させて来たカノンは、



 

   ソンジェがやきもきしながら、外出着に着替えようとしているのを見て





       「オッパちゃん、どうしたの?」と聞いた。







   海仁からの電話の話をソンジェから聞いて、カノンは昼間の



   あの不可思議な事をソンジェに伝えた。







ソンジェ:「え?何だって?じゃあ、もしかしたら二人は呉ジナの家に



      いるって事?」



カノン:「多分、そうだと思う・・・あの黒塗りのベンツから顔を出したのは



     ジナさんの娘のマヤちゃんよ・・・



     二人とも、かなりの大荷物で旅行に行くようだったし・・・



     何か嫌な予感がしたの・・・」



ソンジェはジナに電話を急いでしてみた。



ジナは北京の公演会で、今、リハーサル中だったが、ソンジェからの電話と



気づくと直ぐに出た。



ソンジェ:「悪い、君は今、どこにいる?」



ジナ:「今、北京なの・・明後日から公演会が1週間あって、、、ソウルに



    戻るのは再来週の月曜日かしら?・・・ソンジェ、何かあったの?」



    っと心配そうに尋ねると、ソンジェは大切な公演会だと思い



「いや、大したことじゃないんだ、、、あっ、ホラ、あのさ、うちのメンバーが



 今度、是非、ジナと共演したいって言ってて、KBSに頼んで話を取り付ける



 ってなったんだ・・・それで君はその話を知ってるのかなぁっと思って確認で



 電話をしたんだ・・」っと取り繕って話をした。



 共演の話は本当だったから、無理のない話だった。



ジナはホットして「・・・良かった・・・もっと大変なことだと思ったわ・・

 

         例えば、娘のマヤが何かやったのかとか・・・」



ソンジェは、流石は親子で鋭いと思ったが、「いやいや、違うよ・・・



      バンドの仲間に物凄い君のファンが居て今夜、必ず聞いておいて

      

      くれって何度も言われてね・・忙しいのに悪かったよ。



     それに驚かせてすまない。仕事頑張って・・じゃあ」



ジナ:「あっ、待って、ソンジェ、切らないで!私からも言わせて・・・



    あなたもお仕事頑張って!お休みなさい。」



ソンジェは「あぁ・・有難う、じゃあ、お休み」と言って電話を切った。



不安そうに見つめているカノンを見て、



ソンジェは微笑んで「ジナは今、北京らしい。恐らく二人はジナの



          家だ。恐らく何かやらかすだろう・・・



          シオンはもう寝てるよね?起こせないかな?」



             っと言った。





きっと幼稚園でも何かあった筈だし子供の気持ちは子供が良く知ってる



筈だからだ・・・





カノンは普段は、寝た子は起こさないソンジェが起こせないか?と



言うくらいだから緊急事態だと思い、急いで子供部屋に行き、シオンを



起こして来た。





シオンは眠そうに眼をこすりながら、リビングにやって来た。













        ピンポーンとチャイムが鳴った。





        来客だ!!誰だろう?・・・



       そう思ってモニターを見ると海仁だった。



海仁;「すまない、遅くに。居てもたってもいられず、車を飛ばして



    来てしまった。済まない。」と何度も頭を下げながらソファに



    腰かけたのであった。



ソンジェはカノンからの話や、呉ジナやマヤの話をかいつまんで話をした。



海仁;「・・・とすると、子供たちは呉さんの家にいるのか?」



ソンジェ;「だと思います・・・唯、何故?呉さんの家で、今日なのでしょう?」



カノン:「子供たちに変わった様子とかなかったですか?



     子供たちの何かSOSとか・・・感じませんでしたか?」



海仁:「お恥ずかしい話し・・子供たちの事は全て妻にまかせっきりで・・・



    唯、娘のソラミがリラ幼稚園に入った時から、、いや入る前から



    妻は変わった・・・お受験には猛烈に熱心で・・・リラに入ってからも



    自分はリラではトップの座にいたいとか何とか言っていた。



    可哀想だったのはカイトで、、サヤカはソラミしか頭にはなかった・・・



    オボイナレで本来の主役はソラミだったが、当日、主役は取って変わり



    シオンちゃんだったと悔しがってました。サヤカはどんな時でも、



    どこへ行っても自分が1番で女王でなければ気が済まない性格で・・・



    人一倍負けず嫌いで、それなりに努力もしてましたが、見栄っ張りで



    私との結婚も、見栄もあったのだと思います。いつも皆から羨望の



    眼差しで見て欲しいとか、地位も財力も学歴や職業も・・・



    何でも思い通りにならないと気が済まない性格なんです。



    私も・・最近ではこの結婚は失敗だったかもと思いました。



   年がー周りも離れていたので、最初は我儘も可愛い物だと思いましたし、



   美人で物事をハキハキ言うところも気持ちが良かった・・・



   聡明でパーティなど一緒に行くと彼女は大輪の薔薇のように美しく



   咲き誇るし、皆が口を揃えて美しいと褒め称える・・・



   彼女も当然と言った態度だった・・・



   私と結婚し、私の家の財力と地位と彼女は結婚したのでは?と思う時が



   あったが、それでも子供が生まれ、何不自由なく子育てを熱心にしていた



   が・・・子供たちが彼女に似れば良かったが外見が権家の私に似てしまった



   為に、容姿はパットせず、性格は臆病で、頭もそんなに良くは無い、



   不器用で上がり症・・・彼女の思い通りには子育ては進まなかった・・・



   私の母からは年中ナジラレ、妻は焦りもあったろうし、どんどん追い詰め



   られて行き、やがてストレスは思い通りにいかない子供たちになった・・・



   同じ親戚関係にありながら、カノンさん達は楽しんで子育てをされ、



   受験準備も無く、済州島から来たのにリラにすんなり入ってしまった。



   シオンちゃんのこの愛らしい容姿や、聡明さはソラミには無い・・・



   悔しくて、カノンさんやシオンちゃんに当たり散らした部分もあるでしょう?



   子供たちはそれでも、大好きなママだったのです。



   だからどんなに当たり散らされても、どんなに人と比較され罵倒されても



   絶えていたんだと思います。必死に母親の思い描く子供になろうとしたんだと



   思います。きっとその怒りで、家を出たんだと思います。あぁ・・・」







一気に思いのままを海仁はカノン達に語った・・・・



カノンは目を閉じて、思い当たる節が幾つもある事や、サヤカの気持ちが分かって



心が痛くなった。





シオンは「あのね・・・オンマ、アッパ・・・あのね、今日、凄く変だったの・・・



     ドッチボールの時、ソラミちゃんはわざとボールに当たって直ぐに



     コートの外に出て鬼になったの。それで、マヤちゃんも直ぐに



     鬼になって、二人で何か内緒話してたの。



     あとね、お弁当食べ終わってお外で遊ぶ時も、二人で直ぐに



     お外に行っちゃったの・・・変なのってシオン思ったの。」



カノン:「シオン、ソラミちゃんはマヤちゃんと仲良しさんなの?」



シオン:「ううん、良く喧嘩してるし、仲良しじゃないよ。



     オボイナレの時もね、多分、マヤちゃんがシンデレラやりたかったのかも?

    

     それとね、シオンにピアノやれって言ったのもマヤちゃんだったもん。



     シオンがピアノなんて上手に弾けないし、失敗すると思ってワザと



     ピアノやれって言ったんだと思った。」











         ソンジェとカノンは顔を見合せて頷いた。





ソンジェ:「シオンはソラミちゃんとマヤちゃんだったらどっちと仲良くしたい?」



シオン:「うんと、うんとね、二人と仲良くなれるなら仲良くしたいけど、



     マヤちゃんは意地悪で怖いから・・・ソラミちゃんと仲良くしたい。

     

     ソラミちゃんは優しいし、前は良く遊んだモン。」



カノン:「シオン、なんでマヤちゃんはソラミちゃんに近づいて行ったんだろう?」



シオン:「多分・・・えっとね、サヤカ叔母ちゃんのことだと思う」



ソンジェ;「サヤカ叔母ちゃん???どうして?」



シオン:「いつもね、ソラミちゃんは、サヤカ叔母ちゃんの自慢をするの。



     綺麗で優しくて、お金持ちで、英語やフランス語も喋れて、CAだった



     し頭も良いし、お爺様はお医者さんとか・・・

 

     サヤカ叔母ちゃんが幼稚園では1番なの、だから自分も1番だって・・



     1番じゃないといけないんだって言ってた。じゃないとお母様が



     悲しむって・・・シオンはシオンのオンマが1番綺麗きれいで優しくて



     大好きだから、オンマが泣いちゃうのは嫌だもん。だからソラミちゃん



     もサヤカ叔母ちゃんが泣いちゃったりするのが嫌なんだと思う。



    きっとマヤちゃんはサヤカ叔母ちゃんを元気にさせて上げるって言って



    ソラミちゃんに話をしたんだと思う・・でもそれは本当は意地悪なんだと



    シオンは思ったけど???」





ソンジェは「どうやら、見えてきましたね?サヤカさんの気持ちを試すために



      二人は家出を試みたんでしょう・・・唯、幼稚園児が考える事は



      詰めが甘いだろうし、直ぐにばれてしまう・・そこを見透かして



      マヤが何か仕掛けたんでしょう・・・二人はマヤの家ですね。」





カノン:「明日は土曜・・・おそらく土日で解決させる為に金曜に家出を



     したんでしょうね・・・サヤカに昔の優しかったサヤカに戻って



     欲しいと言う一心で、母親の気持ちを確かめるために・・・



     何ていじらしい可愛い子供たちなんでしょう・・・



     サヤカに抱きしめて貰いたいのだと思います。」



海仁:「こんな時、肝心のサヤカは酒食らって寝ている・・・

 

    子供の心配などコレっぽっちもしてないとは・・・

 

     情けない・・・恥ずかしい・・・」



ソンジェ;「いや・・サヤカさんも、本当は可哀想な人なのかもしれないです。



      どうか叱らず、夫である海仁さんが、サヤカさんを愛情持って



      抱きしめて上げて下さい。ここは日本ではなく韓国で、きっと



      サヤカさんは韓国でも肩肘張って、生きて来たんだと思います。



      いつも女王で居ようって強がって・・・本当は寂しかったり



     不安だったり、辛かったのかもしれないです。



     カノンも同じです。異国で本当に大変だと僕は思います。



     そしていつも感謝してます。いつも僕を信じて、僕について来て



     くれます。そして僕の不安を吹き飛ばすくらいの笑顔と楽しい



     言葉で応援してくれるのです。



     僕は何度も何度もカノンに救われました。



     シオンは僕とカノンの最高の宝です。



     勉強なんて出来なくったって良いし、器量も良くなくても構わない



     唯、シオンが自分の思うがままの道を力強く歩んで行け、笑顔で



     いてくれたらそれで十分です。この子の為なら命だって惜しくない



     です。そして同じくカノンの為なら僕は何でもしますよ。



     悪魔にだって心を捧げられますよ。」と言った。



海仁:「・・・私はこの年になって、目から鱗です・・・



    こんな状態になったのは、一番の原因は私だったのかもしれません。



    もう一度、家族を再建したい・・・



    妻も子供たちも取り戻したいです・・・



      李さん有難う、私はあなた達が私の親戚だと思うと誇らしいです。



    素敵な家族の姿を見せてくれて有難う。」







ソンジェはこれで権家も大丈夫だと思い、大きく頷き、そして本題に入った。



ソンジェ:「では、明日の早朝、呉家に皆で行きましょう。





      唯、とてつもなく不安で恐ろしい事が起こりそうなので、



      用意周到にしてゆきましょう」



海仁;「え?とてつもなく不安?



      恐ろしいって?



        何故、園児の家に行くのが恐ろしいんでしょうか?」と



       海仁は笑いながら云ったが、ソンジェの話を聞いている内に



       顔がみるみる青ざめて言ったのだった・・・・




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