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作品名:潮風のセレナーデ・・・会いたい気持ち・・・ 作者:HAPPYソフィア

第9回   小刻みなフラッシュバック・・・あなたは誰?
いよいよ、カノンの韓国語学研修が始まった。

   

    目ざましが鳴る前に、カノンは緊張していたからかもしれないが、

       目が覚めてしまった。

暫くベッドから起き上がらず、天井を眺めていると、

    

        また「カノン、、、ねぇ、カノン」と

                           言う声が聴こえた。

           「カノン・・・・カノン」

                   ・・・・・と何度も聞こえた。

            「誰?」と聞いても何も答えず、

            カノンと呼ぶ声しか聞こえて来なかった。

     やっぱり、変だ・・・誰かが、自分に会いたがっているのか?・・・

      それとも反対に自分がその人に会いたいのかも?しれないと思った。

          全く思い当たる節が無いので、思い直し

      「きっとママの影響で、韓国ドラマの見過ぎで・・・

       サスペンス風な感じを受けているのかも??」とし、

     元気よく起き、学校へ行く準備をしようとした。。。

         お手伝いさんの一人、年齢は40歳くらいのキム・ヨナさんに

「支度が出来たら、学校へ行くカバンなどを持って、1階の食堂にいらして下さい。

朝食の準備が出来ています。」みたいな言葉を韓国語で言われ、

カノンは目を丸くしながら、ニコニコして頷いた。

   ミス・スマイルのカノンの可愛い笑顔に、ヨナも一緒になって笑った。

   準備が終わって階下に降りて行くと、廊下が四方へと延びていて、

      どこに食堂があるのかも分からずに迷っていた。

すると同い年くらいの美しい女の子が、

「あぁぁ・・・うぁあ・・・うううううぁぁぁ」と

   カノンの服を引っ張り話しかけてくれた。

   カノンは、何を言っているのか分からずにキョトンとしていると、

   やはり50歳くらいの美しい女性が

  「ヨナ、ヨナ、どこにいるの?ヨナ?ヘジャが家をうろついてるわよ」と

                     厳しい声でヨナを呼んだ。

   ヨナは、あたふたとやって来て、「申し訳ございません、奥さま・・・

      直ぐにヘジャ様をつれて参ります。本当に申し訳ございません。

      と何度も謝りながら、ヘジャの手を引っ張って、連れて行った。

         カノンは、状況を飲みこめずにいると、

  奥様と呼ばれるイ ユンミが、カノンに「貴女が鈴木カノンさんね?

        イ ユミンです。昨日から我が家に滞在ね?

       食堂はこちらよ。今日は一緒に朝食を頂きながら、

         簡単に我が家のシステムを話しましょう」と言って

                  食堂に案内された。

          既にスンミも食卓についていた。

  「おはようございます、お母・・・いえ、ユミン社長・・・今朝はお食事が

  緒に出来ると伺って、嬉しいですわ」とやや緊張しながらスンミは言った。

  自分のお母さんなのに、ユミン社長と呼ぶスンミや、

         話し方も物凄く丁寧で、カノンは不思議だった。

  カノンは、「おはようございます」も「宜しくお願いします」も言えずに・・・

      いや、言う隙もなく、ユミンは次々と機械的に話をしていた。

        食事もホテルのテーブルマナーみたいな感じで、

           何だか、日本の自分の家とは180度違っていた。

「主人も私も会社をそれぞれ持っていますの。

      毎日、時間との戦いの部分もあるので、

         カノンさんにも構ってさし上げられなくてよ。

     でも、お手伝いもいるし、お金も十分、支払うから・・・・

       それで宜しいでしょう?・・・・

          まったくスンミのせいで、余計な事までする事になって・・・

     だから、私は日本語学科なんて反対だったのよ。」と、

                    言う様な事を言っていた・・・・


             スンミは下を向きながらオドオドしていた。

          カノンは、どうやら、歓迎されてはいない様子だった。

カノンの家も、カノンやトワ達の語学の勉強の為に、短期間ではあるがホームステイを

受け入れるホスト・ファミリィを何度かした事があったが、勿論、空港までの送迎や、

歓迎パーティは当たり前だし、週末は家族とちょっとした観光や旅行もしたし、

平日も、子供たちは勿論、母親もよき話し相手をしていた。

  食事だって、その留学生を中心に、

  いつも笑い声がたえなかったのを思い出した・・・・・

 しかし、これから始まる李家での留学生活に、

   カノンは努めて明るく・楽しそうに振舞った。

     そしてカノンは「あのぉ・・・」とユミンに声をかけると

        ユミンは「・・・カノンさん、食事中は静かに!

   貴女は、自由に、好きなように過ごして下さって構わないから・・・

              余計な話は私は疲れるので止めて頂戴ね?・・

       私の主人に対してもも同じよ・・本当に忙しいのよ。・・

       でもカノンさんはうちの娘と違って、可愛いお上品な顔立ちね?

          お父様が日本企業でも有名な会社の役員様だものね?

     うちの会社とも取引がございますのよ。御存知だったかしら?」と、

      自慢げに言ってきたが、

     カノンは、「静かに!」と言われた事がショックで、何も言えなかったし、

  お父さんの仕事の事は全く知らないから、分からないですと答えたかったが、

          それすらも言えなかった。

  ユミンは食事を10分ほどで切り上げると、仕事へソソクサと向かってしまった。

      御馳走様や、頂きますも、更にはおはようございますと言う挨拶もなく、

      突風に様に現れ、消えて行ってしまった。

      スンミが、オドオドしながら「カノンちゃん、御免ね」と何度も謝ったが、

      カノンは、スンミが悪い訳でもないし、、、

       自分の育った環境と全然違うので、何だか凄く愉快になって来たのだ。

 食事が終わって、地下鉄で学校へ行こうとするカノンと、

   スンミに、ヨナが慌てながら「恐れ入ります・・・奥様に叱られてしまうので、

            どうかお車でお願いします。」と言われた。

カノンは「でも・・・私は車よりも地下鉄やバスとかで行きたいんです。」

       と言ったが、、、

今度はスンミが「・・・カノン、やっぱり車で行きましょう。

          理由は車の中で話すわ。」と言った。

        語学堂への第1日目だったので、 

       カノンは、スンミの言葉に従うことにした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




        ・・・・車中で・・・・李家の事情・・・

スンミ:「ごめんね、カノンちゃん・・・我が家は本当に酷い家族でしょう?

      家庭の温かさが全くないのよ」

カノン:「そんなことないよ・・・

    スンミちゃんやお兄さんに出合えて嬉しかったし、未だ始まったばか

    りだし・・・えへへ。それよりも地下鉄やバスで学校にどうして行けないの?」

スンミ:「・・・・うん、この車の運転手は、

     ヨナさんの旦那さんなの。車を使わないとなると、

     無駄が嫌いな母は、即クビにしちゃうの。ヨナさんは、、、、。

            実は・・・・その・・・・

      これは、今日、学校が終わった後にキチンと説明するわね?

       私の日本語力が足りないから上手く説明できるか?

      心配だけれど・・・李家は、韓国でも有名な建設会社で、

      お金持ちのランキングでも、いつも首位を独走しているの・・・

     それで、地下鉄やバスなどを利用すると、

       誘拐や恐喝を家族はされてしまう事が多いので、特に私たちは、

      女の子だから・・・・私は大丈夫なんだけど・・・

        だから車で学校へは送迎して貰う事に

      しているの・・・・」

カノンは、大金持ちって大変なんだと納得したし、

      ヨナさんの家の事情も知らずに、勝手に地下鉄

          やバスを使う事は、我儘に値する事なんだと、知った。

スンミ:「・・・・それに車の方が、私は好きなの」

カノン:「え?本当?」

スンミ:「えぇ、だって電車の中でブスだとからかわれたり

        イジメられないもの。夏は涼しいし、冬は暖

                      かいし、快適よ。」

カノン:「・・・・確かに・・・私も、冬は、お父さんの車で学校に

         良く行ったっけ・・・私は冬の寒いのが

    苦手で、しょっ中、風邪をひいたり熱をだしたりしたから・・・

        少しでも病気にならないようにと

     車で行ったり、帰りはお母さんの車のお迎えがあったっけ・・・

       寄り道を良くしてくれて、楽しかったなぁ・・・」と

         目を細めて言うと、

スンミが「寄り道??何ですか?寄り道って?」と言った。

カノンはクスクスと笑いながら「学校や家に行く途中で、面白い物があったりすると、

      車を止めて見たり聴いたりしたり、美味しそうな物があると、

       食べたりする事」と話した。

スンミは、「わぁ、楽しい事ですね?

       カノンちゃんは素敵な家族が居ていいな。」と言った。

カノンはスンミが何だか可哀想になってしまったので、

       余り家族の話しはしない方が良いかな?と思った。

       そうこうしている内に、車がホンデに着いた。

      スンミは、カノンを連れて、キャンパスを案内しながら、

       先ずは日本語クラスの教室へと向かった。

沢山の若者たちが、行き来し、楽しそうに会話をしていた。

カノンは、先ずビックリしたのは、皆が体をぴったりと

          くっつけて手を繋いでいる光景が多いからだ。

女同士・・・男と女もそうだが、男同士も・・・

          ゲイ?ホモ?レズ?と言った言葉が

                頭の中をグルグルと翔け回った。

    スンミはそれを見て、直ぐに理解し

    「韓国では仲良し同士は良く手を繋ぎます。親子でもそうです。」

                  と言って笑った。

      カノンは、そうなんだと思い、

           いつもの笑顔で「じゃあ、私たちも!」と言って

                 スンミの手をとって繋いだ。

            スンミは、ビックリした。

       今まで、こんな風に親しみを込めて、

        手を繋いでくれた女の子がいなかったからだった。

       スンミには、友達と言う友達が誰もいなかったからだ。

         嬉しくて、スンミの目から涙がこぼれた。

   カノンはビックリして、「スンミちゃん、どうしたの?」

      と顔を覗き込んだ・・・・

      スンミは「うぅん、何でもないの。嬉しかったの。

           皆、私の事、怪物だとか、ブスで気持ち悪いって言って

                   誰も仲良くしてくれなかったから・・・

       お母さんでさえも、整形手術をしろって言うくらいだもの・・・」

                                                    と言った。

 

     すると向こうから、3人の学生たちがスンミを見つけてからかいに来た。


グッチョル:「醜いお姫様、今日はどうしたんだい?

          可愛い子を連れて来てるじゃないか?紹介しろよ」


ユジン:「ブスなお前が、もっと化け物に見えるぜ・・・・」

ウヒョン:「ハハハ・・・化け物か・・・そいつはいいや。

       お前の家が金持ちじゃなかったら、お前は唯の

     ブスで最悪な、今でも直ぐに死んだ方がマシな人間?

        化け物だぜ・・・やい、化け物、金は持ってきたか?

        40万ウオン早くよこせよ。」

カノンは、何を言っているのか分からなかったが、40万ウオンと聞いて、

どうやら、スンミは、この学生たちから苛められ、

   更にはお金をせびりとられそうになっていると思った。

40万ウオンと言ったら日本だと3〜4万円・・・・

      韓国の物価を考えると、相当なお金だった・・・・

カノンは、黙って涙をためながら、カバンから40万ウオンを

取りだそうとするスンミを見て、「スンミちゃん、渡したらダメ」と言った。

ウヒョン:「おっ、このチビ、日本人だぜ・・・チビは黙ってな!」

と言って、威嚇した。

グッチョル:「スンミ、お前がサッサト金出さなければ、

このチビをひねりつぶしたっていいんだぜ。おい、いいのか?」

テソク:「おい、ユリ様が来た・・・やばいぜ」と言った。

 

         姜 ユリ・・・・


  ホンデでミスキャンパスを独占し、ホンデの日本語学科では、

    スンミと1位・2位の首席を争っていた。

       更には家は、李家と並ぶ大金持ちで、

      IT企業の社長の一人娘だった。

我儘で気高く、そして自分が欲しいと思ったものは、

何でも手に入れないと気が済まない性格だった。

  更に、自分よりも上を行く者たちは許さないし、

 スンミが、日本語学科で良い点数を自分よりも取り、

 自分の家よりも少しだけお金持ちと言うのも癪に障ったが、

 だが、物凄く醜い容姿を持つスンミを、哀れにも思った。

 なので、自分が手を下さなくても、この醜いスンミはいつも苛められ、

 さげすまれているのだろうからと思い、やや寛容な態度で接していた。

ユリ:「グッチョル、何やってるの?」

グッチョル:「あっ、ユリ様、この化け物が、、、」と言いかけた時、

             カノンは真っ赤な顔をして
 
  「スンミちゃんは、化け物じゃない!ちゃんとイ スンミと言う

           綺麗な名前があります。」と叫んでいた。

ユリは、ぴょんぴょん跳ねながら、真っ赤な顔をして怒っている

カノンを見て可笑しくて笑ってしまった。

ユリ:「スンミ、その小さな豆狸は誰?」

スンミは「・・・・鈴木カノンさん、

       昨日から我が家にホームスティする事になったの。

      ユリさん、、、、貴女の家も確か、受け入れ家庭でしょう?」

ユリ:「えぇ、ここにいる金子瞳さん、上智大学の韓国語学科4年生なの。

    お父様は金子宝飾会社の社長よ。学業も優秀だし、家柄だって良いしね。」

      と言って自慢した。

すると金子瞳が「カノン・・・・・?カノンちゃんじゃない?」

         とカノンに向かって言った。

瞳:「ほら、私よ、昔、横浜のカノンちゃんの家の近くに住んでいて、

   良く遊んだ瞳よ。小学校の時に、私たち家族はシンガポールに行って

   しまったけれど・・・覚えている?」と懐かしそうに話しかけて来た。

     かすかに記憶が残っていた。近所の2歳年上の優しいお姉さんだった。

カノン:「わぁ、瞳ちゃんだぁ・・・瞳ちゃんもこのホンデなの?」

瞳:「えぇ、宜しくね」

           二人は顔を見合せながら、笑った。

   
  そして瞳は流暢な韓国語で、カノンとは幼い頃、家が近所で仲良しだった

   話をし、金子宝飾なんて足元に及ばない位、カノンはお嬢様であり、

           お姫様だと言った・・・

    その事が、ユリの心をかき乱した。

      「え?このチビで狸みたいな顔の子が?」と思い、

      再度、カノンの顔を見てみると、、、何故か可愛いのだ・・・

      装飾飾品も派手なユリとは違いシンプルで、

       上品な着こなしもしていた。

       そのカノンが、ホンデ1番の醜いスンミの家に滞在と

       言う事で、冷静さを取り戻した。

 ウヒョン達は、これはマズイと思ったのか

      「俺達、授業があるから・・・」と言ってソソクサと、

            校舎へと走り出してしまった。


スンミは、良かったと思いながら、

時計を見て「あっ、私たちも急がないとね?」とカノンに言った。

   カノンは「うん」と頷き、スンミと手を繋ぎ直して、校舎に向かった。

             ユリは、キリキリと怒りがこみ上げた。

    スンミに対しては、醜い容姿と言う事で、我慢もできたが、

        カノンに対しては、何故か心が乱れてしまうのだった。

      最初からソリが合わない・・・・そんな感じがした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




      ホンデの日本語学科は、3号館と5号館にあり、

  その間にホンデの語学堂・・・つまりカノン達の通う留学センターの校舎が

         5階建てで建てられていた。

  この校舎や、ホンデの校舎全体は全て李建設が手がけ建てられたものだと、

      後で知り、カノンは凄いなっと思った。

初日は、顔合わせとクラス分け、各クラスに移ってからは自己紹介、、、

日本語学科の学生との楽しい歓談とランチ、

そして校舎や施設などの案内で終わる事になっていた。

  スンミは本来ならば首席なので、リーダーシップを取って、

        日本語学科の紹介などをする役になれたのだが、

      華やかで派手な事が大好きなユリが独占して司会と進行を務めた。

   スンミは容姿が醜いので、華やかな事も苦手だったので、

           ユリが積極的にしてくれるので良かったと思った。

           ホンデ語学堂は、

          上級クラス・中級クラス・初級クラス・入門クラスがあり、

              それぞれ2クラスずつで、

           1クラス12〜15人クラスになっていると説明があった。

先生がそれぞれに発表されて、クラス担任が自分のクラスの生徒の

名前を呼んで行く事になった。


     カノンは、同じ大学の生徒達5人とかたまって座っていて、

     「どこになるかな?」などと言いながらワクワクしている様子だった。

    そんな様子を、教室の横で、日本語学科のホンデの学生たちが、見守っていた。

          ユリは一番前の席で堂々と座っていた。

          周囲には取り巻きの学生達が居た。

         スンミは、1番後の席の端っこで、ポツンと一人で

                目立たないように座っていた。

     すると、スンミの前の席に座っている学生たちのあちらこちらから、

             囁き声が聴こえて来た。

       どうやら、カノンの事を話している様子だった。

              スンミは耳をそばだてて聞いた・・・・

               「あの子、可愛いね?」

     「あの窓側の1・2・3,4,5列目の席に座ってる

              髪の毛が長い子でしょう?」

       「良く笑っていて、本当に可愛いね?誰の家に滞在?」

             「・・・・・えっと、、、ゲゲッ・・・」

                 「怪物の家だよ」

              「えぇ!!怪物?」

     「マジで?可哀想・・・・あんなブスで根暗な怪物の家・・・

        友達もいないから、遊びだって勉強しかないんじゃん?」

        「それに・・・・あんなブスな家にいたらブスが移りそう・・・」

「でも、噂では、あの子の家もお金持ちで、それにふさわしい家柄として、

怪物の家が選ばれたんだって・・・」

             「・・・とすると、あの子はお金持ちって事?」

「だって、持ってるものも、凄く有名なブランド品だよ。

あのバリーのバッグだけでも1000万ウオンはする新作みたいよ。

父親が、一流企業の偉い人みたいよ。」

   「・・・だったらユリ様の家がふさわしんじゃないの?」

「無理よ、見栄っ張りなユリ様は、自分よりお金持だったり、

頭が良かったり、人気がある子は嫌いだもの・・・

ユリ様の大切な王子様を取られちゃうもの・・・・」

「ハハハ・・・なるほどね。ユリ様はどの子が滞在するの?」

「金子・・・瞳って言う成績優秀な子みたい。。。

       真中の列の3番前の真ん中の席に座ってるあの子よ。」

         どれどれ?と皆が、金子瞳を探した。

             そして見た瞬間、納得した。

「あぁ、あの子だったら、王子様も見向きもしないわね?

だから決めたんだ。」と

        クスクスと嘲笑されながら、噂話が絶えなかった。

           そして、また話題は、カノンに戻った・・・

      「でも、本当に、あの子、可愛いね」

「うん、本当に可愛いよね」 

   人気はカノンに集中しているようだった。

       スンミは、カノンを見つめながら、

カノンが皆の話題の中心になっているのが嬉しかった。

       すると、

         スンミの視線に気がついたのか?カノンがスンミに

             ニッコリと笑い手を振っていた。

そして声を出さすに、口を大きく開けて

「スンミちゃん、私は、初級クラスになったよ」と言った。

その仕草が、一段と可愛いくて、日本語学科の学生たちが「可愛い」と言っていた。

  ユリは、その囁きが無性に腹立だしかった・・・・

     あんな豆狸に人気が集中するなんて、見る目がおかしいと思った。

チビで身長も低く、痩せていて、女としての魅力が無い・・・

  幼稚園生みたいな話し方をするのも気に入らなかった・・・・

        「何であの子を見るとイライラするのかしら?

            あんな豆狸・・・どうってことないわ!」

                と何度も何度も心の中で思い込んでいた。

 「金子瞳さん、、、上級クラス」と言う言葉が聞こえ、

   更に「金子さんは、今回のこの語学堂の入学試験に首席で入りました。

       優秀な成績で、更には、ご家族様も立派な方です。

     年齢も皆さまより上ですので、リーダーシップを取って頂きたいのですが、

       皆さん、宜しいですか?」と言った。

                  「良いです」と全員一致で声が返った。

         カノンも嬉しそうな顔をして拍手していた。

       ユリは、話題の中心が、瞳になったので、得意になった・・・

        そして「金子瞳さんは私、姜ユリの家に滞在しますの。

         今週の土曜日は、瞳さんの歓迎会をしますから、

               皆さんも、いらして下さいね、後ほど、招待状を

            差し上げますわ・・・」と起立して上品ぶって話をした。

             一方、日本人の学生たちの間では、

             姜ユリの噂でもちきりだった。華やかで、美人で、しかも

          お金持ちな感じが漂ってきたからだった。

               しかも学業も優秀だと先生が、紹介していたので

                 凄いねっと言っていたのだった。

        唯、皆は、「凄い性格がキツそう」とか「我儘そう」と言っていて、

   自分たちは、姜ユリの家に滞在でなくて良かったとホッとしていたのだった。

               カノンは、今朝の事を思い出した。

          自分の事を「チビで豆狸」と言っていた声を思い出し、

                   笑ってしまった。

    綾:「どうしたの?カノン?」

        カノン:「うぅん、ちょっと思い出し笑い・・・えへへへ」

ひろみ:「でも、あの生姜・・・・いやユリって言う女、何か嫌味っぽいよね?」

      綾:「そうそう、何かプライド高そうだよね?」

        綾もひろみも、カノンと同じ大学で、カノンと同じ初級クラスだった。

綾:「ひろみ・・・何でユリさんの事、生姜って言ったの?」

ひりみ:「姜の姜は生姜って言う漢字でしょう?

        それに香りもきついし、目にしみるでしょう?

     食べ過ぎるのも良くないから・・・

        だから生姜ってあだ名で良いのよ。」っと、笑いな

        がら言った。

カノンは「でも生姜って灰汁を抜いたり、

      臭みを抜いたり、体にも良いし・・・私は大好き

         だけど?」と頓珍漢な事を言うと、ひろみも、綾も爆笑した。

カノンは人の悪口を言わないし、いつもニコニコしていて、附属からの生徒たちからは

   「天使ちゃん」と呼ばれていたし、

      「生まれながらのお嬢様で、お姫様」と言われていた。

   カノン自身は、だからと言って威張ったり、

        お金持ちをひけらかしたりは決してせず、

     誰彼となく親切だし優しかったからだ。

        クラス分けが終わったので、明日から通う、

           語学堂の教室に移動となった。

ホンデの語学堂の校舎は、築年数も浅く、ピカピカの新築のような贅沢な建物だった。

       カノンも綾も、ひろみも同じクラスだったので、

        三人で移動する事になった。

スンミも、ひろみと綾のホストファミリィである、

      学友の、金ウンミと朴ジュヒと行こうとしたが、

                    二人から拒否された。

ジュヒ;「怪物さんと一緒にいると、ブスが移るから・・・離れて来てよ」

ウンミ:「美女と野獣って聞いたことがあるけど、美女と怪物よね?アハハ」

          二人は、ズケズケとスンミを傷つけた。

スンミはそんな言葉は慣れっこだったが、その事で、やっとできた友達のカノンが、

   肩身の狭い思いをするのではないかと、心配になった。

しかし、そんな不安や心配を吹き飛ばしてくれるかのような、カノンの笑顔が、

嬉しかったのだった。


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         語学堂に移動の際に、どこからか、音楽が聴こえて来た・・・

           カノンは、妙に懐かしく・・・親しみのある歌だった・・・・

                  そして、何故か口ずさんでいた・・・・

       ひろみ;「カノン、この歌、知ってるの?」

カノン:「え?うぅん、知らない・・・」

綾:「でも口ずさんでるじゃん・・・」

カノン:「うん、何か歌える・・・TVとかで演ってたのかな?」

綾:「誰の曲だろうね?ちょっとラップって言うかヒップホップぽいじゃん?」

         カノンは、何故かその時に

                 「・・・・そ・て・じ・・・ソテジ・・・」と

                              言葉が出た。

ひろみ:「え?何?テジ?=豚?」

カノンは、「豚」と言う言葉に笑ってしまった・・・

       が、その時、またフラッシュバックが

       起こった。

      



      そこは新宿の都庁の近くみたいな感じで、、高層ビルの上に居る・・・

       男の人は夜景を見ながら、ソテジの歌を口ずさんでいた・・・

           カノンらしき女の子が、その曲調の面白さに

                「その歌は誰が歌っているの?」と聞いていた。

           男の人は

             「ソテジ・・・ソテジって言う人の歌で、

            僕がずっとハマっている人の歌なんだ。」

         「・・・ふうん、テジ?って、さっきコリアンタウンで食べた豚肉と

              同じ発音?」

               「ハハハ・・・カノン、本当にカノンは面白いね」


                  ・・・・・・・・・・・・・・・

                       カノンは、またハッと我に返った。

ひろみも綾もソテジと言うアーティストすら知らなかったし、誰それ?の世界だった。

        勿論、カノンも知らない筈だった・・・

      ソテジは、韓国の人なら誰でも知っている有名なアーティストだが、

        韓国とアメリカでの仕事の拠点なので、その他の外国=つまり、

              日本では知られていないからだった。

  ソテジを知っていると言うのは、かなりの「韓国通」とまで言われている・・・・

ひろみは、後ろを振り返り、自分のホストファミリーの朴ジュヒに

        「ねぇ、ジュヒ、ソテジって知ってる?」

               と聞いた。

     するとジュヒは「知ってるも、なにも大ファンよ」と言った。

       更に一緒に来ている金ウンミも

        「私も大好き!ほら、今、流れているこの曲もソテジよ。」

                 と言った。

綾もひろみもカノンを見て

    「カノン、凄いじゃん、ソテジの歌を歌えるんじゃん」と言って

              肩を叩いた・・・・

カノン:「え?じゃあ、この曲・・・ソテジであってるんだ。

          でも私はソテジって知らないよ。」

綾:「じゃあ、何で知ってるの?きっと、CDか何か持ってるんじゃない?

      それを聴いて知ってるんだと思うよ」

カノンは、持ってないし、ソテジ自体も、本当に知らなかったのだが、

      それでもその歌を歌っている曲の

              音楽が流れる方向を探した。

ひろみも綾も「カノン、どうしたの?キョロキョロして?」と不思議そうに聞いた。

カノン;「うん、どこから聞こえるんだろう?と思って・・・えへへ」と言って笑った。


ウンミとジュヒは顔を見合わせて

     「あの歌や声は、我が校ホンデの人気バンドの

          パランファのボーカル、テファの声よ。

      プロにならないかって何度もスカウトされているし、

         本当に歌もうまいし、踊りも上手、

          それにルックスもかなり良いのよ。。」と言った。

カノン:「パラン ファ?テファ?」と言った。

ジュヒ:「えぇ、、でもね、テファは、超モテルし、

       もうテファにはあの姜ユリの王子様だから

    ファンの1人にはなれても、彼女にはなれないからね・・・

      もしテファを奪う事があれば命がけだし・・・

     ユリを敵に回したら、容赦ないバツが与えられるから・・・だから

    遠目で見てた方がいいよ」と言った。

ひろみも綾も、カノンも争い事が嫌いなので、、、

       しかも相手が姜ユリと聞いて、テファには興味はあったが、、、

         一瞬でその興味も吹き飛んだ・・・・

      そして、ケタケタと笑いながら、教室へと入って行った。

   そんなこんなで第一日目の学校生活が無事終わり、帰りもカノンはスンミの家で

      用意された車で家に戻った。


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      帰りも、スンミの家の車が迎えに来ていた。

カノンは、朝のスンミの事情も考え、一緒に乗って帰る事にした。

 帰宅すると、直ぐに食事が用意され、

     スンミと二人だけで広い食堂でとることになった。

     それでもスンミは嬉しそうだった。

    いつもは一人で食事を済ませ、部屋に閉じこもってしまう事が多いと聞いた。

      食事が終わった頃、ソンジェが、久しぶりに家に来てくれた。

ソンジェ:「カノンちゃん、昨日はお疲れ様。第一日目はどうだった?

       相変わらず、この家の家族は、仕事X仕事だから・・・・

      カノンちゃんにとっては、寂しい滞在になってしまうかもしれないね?

                                               御免ね。」

スンミ:「ソンジェお兄さん、来てくれて有難う。」

ソンジェ:「今日・明日と、父さんも義理母さんも、仕事で、釜山だと聞いたから・・・

      スンミだけじゃあ、寂しいし、折角、カノンちゃんが来たのに、カノンちゃんにも

      失礼だと思ってね・・・兄さんが、二人にピアノを弾いてあげようと思ってね。」

            っと言って笑った。

スンミにとって兄のソンジェは、血の繋がりはないが、本当の兄のような存在で、いつも

優しくて、強くて、自慢だった。外見も自分とはまったく違う、美しい青年だった。

       ソンジェは、自分の部屋に二人を連れて行った。

ソンジェの部屋は1階の奥の部屋にあった。扉も厳重で、何だかヨーロッパ調の造りに

なっていた。扉を開けると、物凄い豪華な造りになっていて、カノンは、英国やフランスに

家族旅行で行った時に見た、宮殿のイメージが重なった。

ソンジェの部屋は、50畳は悠にある広い部屋で、中央にスケルトンのグランドピアノ

があった。その他にも楽器が沢山あり、部屋全体が防音装置にもなっていた。

ベッドル−ムやシャワーやバスルームも別にあり、、、カノンはビックリし、ため息をついた。

ソンジェ:「ようこそ、可愛いお二人さん・・・今日は二人の為に、歓迎の曲を披露します。

      」と言って、ピアノを弾いてくれた。

カノンは、ソンジェの演奏の素晴らしさにもため息が出た。今まで、こんなに繊細で美しい

ピアノの演奏を聴いたことがなかったからだ。

スンミは「ソンジェお兄さんは、百済音楽大の期待の学生なの・・・きっと将来は有名な

      音楽家になると思うわ。」

カノン:「私も、そう思う・・・凄く素敵ですね。凄いな〜」

         と言って立ちあがって拍手を送った。

        ソンジェは、ハハハと笑いながら、

「じゃあ、次は聴きたい曲のリクエストを下さい。」と、言った。

カノンは、その時、「別れの曲」と言ってしまった・・・

それは、お母さんと夢中で韓国ドラマにハマったキッカケが、

「秋の童話」と言う作品で、「別れの曲」が何度か流されて、物悲しいと言うよりも、

心に響く曲だったからだと、言った。

  ソンジェは、またお腹を抱えて笑ったが、快く「別れの曲」を弾いてくれた。

スンミのリクエストは、今日、語学堂の校舎に向かう途中に流れたソテジの曲だった。

「ノエギ」と言った。

スンミにしては、珍しい曲のリクエストだったが、ソンジェはまた、快く弾いてくれた。

どんな曲を弾いても、ソンジェの演奏は素晴らしかった。

カノンは今度は調子に乗って「SEへENの曲」と言ったが、

流石にソンジェはSEへENは出来ないと言った。

楽譜があれば、別だが・・・とは言ってくれたものの、

本当に弾けないみたいだった。

   カノンは悪戯っぽく「じゃあ、ソンジェお兄ちゃん、

今度までに、弾けるように練習して来てね?」と

    言って笑った。ソンジェも「分かった・分かった」と言って笑った。

      ・・・・・約束っと言ってカノンは無意識に手を出した。・・・・

       そう、韓国人同士がする約束をしようとしたのだ。

        握手のような、指切りのような約束の仕方だった・・・

   ソンジェは、一瞬、ためらったが、直ぐに笑顔になり、約束をカノンとした。

  そんな二人の光景を見て、スンミは、微笑ましく、嬉しい気持ちになった・・・

   カノンが本当に可愛いし、優しい女の子だと言う事を感じ取った・・・

      私もカノンみたいに可愛い女の子だったら・・・・

   そうフト思ったが、鏡に映った自分の醜い容姿を見て、現実を知らされた・・・

  だが、もしかしたら、この優しい娘のカノンが、大好きなソンジェお兄ちゃんの

              凍りついた心を溶かし・・・・

       ・・・李家自体に春の日差しをもたらしてくれるのではないか?

                  と希望の光を見出していた。


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スンミ:「お父様も、お母様も帰らないんだったら、ソンジェお兄さん、

             泊まって行けばいいのに・・・」

    っと、スンミは残念そうに言った。

ソンジェ:「いや、演奏会が近いんで、明日は早めに学校に行かないといけないんだ。

    集中して勉強もしたいしね。スンミには、いつも迷惑かけちゃって悪いね。

                      また遊びに来るよ。じゃあ、お休み」

カノン:「ソンジェお兄ちゃん、今日は有難うございました。

        気をつけて帰って下さいね」

                         と言って笑った。

      ソンジェは、つられて笑った・・・自然な笑顔だった。

               どうもカノンにつられて笑ってしまうのだった。

    帰り道で、カノンの発した言葉や、カノンの仕草を思い出しながら、

     ソンジェは一人で思い出し笑いをしながら帰った・・・

     明日、学校の帰りに、楽器屋に行って「SEへEN」の楽譜を探してみよう・・・

      そう考えながら、一人、笑いながら地下鉄の駅へと向かった・・・

スンミは「ねぇ、カノンちゃん、ちょっと良い?」

と言って、カノンの部屋をノックした。

      カノンは「もちろん」と言ってドアを開けた。

          本当に生まれて初めて出来た友人のカノンに、

    スンミはまだまだ、話し足りないと思って、部屋に押し掛けたのだった。

スンミ:「美味しいクッキーがあるの・・・どう?・・・

          あっ、でももうこんな時間だし、歯も磨いちゃったよね?」

カノン:「わぁ、美味しそう、また歯を磨けば良いし、大丈夫!頂きます!」

                     と言ってクッキーを食べた。

スンミも嬉しくなってクッキーを食べた。

スンミ:「カノンちゃん、今日は、私、凄く嬉しい事や楽しい事が一杯あったの。

カノンちゃんが我が家に来てくれて、本当に嬉しいわ。

今朝は、一緒に登校し、カノンちゃんの方から手を繋いでくれたり、

     教室でも目と目が合えば手を振って笑ってくれたでしょう?

そんな事、してくれる人、、、誰もいなかったの。私のあだ名は、もう知っ

てると思うけど、’怪物’なの。皆が私の顔を気持ち悪いとかブスだって言っては、

からかったり、イジメたりするの・・・お母さんだって同じ・・・

お母さんは、私が醜いって事で、前のお父さんに責められて離婚したの。

我が家は色々あってね・・・少しずつ話して行くわ。御免ね、カノンちゃん・・・

本当にこんな家だし、、、

             こんな私だから・・・」と言って謝った・・・




カノンはビックリして「えぇ!私は、ここのお家、好きだよ。スンミちゃんも優しいし

大好きだし、お兄さんのソンジェさんも良いお兄さんだし。。。

それにSEへENに似てるから、ここに来る前に飛行機の中で写真見て、

SEへENだって思ったもん。

実は、私はSEへENが大好きで、ずっとファンなんだよ。えへへ。

スンミちゃんはホンデの日本語学科で優秀な成績で首席だって先生が言ってて、

私は鼻が高かったよ。

私は、お勉強が嫌いだし、苦手だもん。だから、これから3ケ月、

スンミちゃんに一杯、韓国語や韓国の事とか、教えて貰いたいなって思ってるし・・・

ここのお家って超豪華で何かお姫様になった気分になっちゃった・・・えへへ。

自分の日本での生活とは違う環境だし、何かとっても楽しいです。本当の事です。

だから、スンミちゃんに有難うって言いたいです。」と言って笑った。

スンミ:「・・・恥ずかしいついでにいっちゃうけれど・・・・実は・・・私・・・」

カノンは、スンミが顔を赤く染めて何かを言おうとしている姿が、可愛いと思った・・・

スンミ:「・・絶対に笑わないでね・・・」

カノンは「うん、笑わない。何?」

スンミ:「私ね、、、今日、学校で話が出た、

        ホンデのパランファのボーカルのテファの大ファンなの・・・」

                         っと思い切って言った。

するとカノンは「へぇ・・・そうなんだ。

     パランファのテファ?さんのファンなんだ。」と言った。

スンミ:「え?笑わないの?」

カノン:「うん、スンミちゃんの本気の気持ちだもん。

    私はスンミちゃんはソンジェお兄さんだと思ったけど?」と言った。

スンミ:「ソンジェお兄ちゃんは、お兄ちゃんだし・・・

    それにソンジェお兄ちゃんには、つい最近まで恋人が

    いたのよ。同じ百済音楽大学出身で、今はジャズピアノ家として有名な

             呉 ジナと言う美しい

    女性でね、、、でもお兄ちゃんは、ジナさんに捨てられちゃったの・・・・」

カノン:「え?ソンジェお兄さんが捨てられちゃったの?」

スンミ:「えぇ・・・お兄ちゃんとジナさんは、大学の同期で、入学当時から

付き合っていたの。

     軍隊に行く前までは、毎日、キャンパスで顔を合わせていたし・・・

仲が良かったの・・・お兄ちゃんは、あの通り無口で、

余計な事は言わない性格でしょう?

更に、自分が李建設の一人息子である事は、隠していたし、

大学も特待生で入学し、生活も自活だったから・・・ジナさんには貧乏な

苦学生に見えたのかも?軍隊に戻ると、ジナさんには、新しいBFが出来ていたし、

卒業学年にジナさんはなっていたの。

その時、新しいBFの洪ヂャンフと言う男が、ソンジェなんか捨てて、

俺と付き合えば、ジャズピアノストの道を叶えてやるって事で、、、洪ジャンフの家は

    有名な音楽一家だったし、百済大学にも多額の寄付もしているから・・・

    ジナさんも、特待生で入学していて家が貧しかったみたい・・・

だから、人一倍、お金持ちになりたい気持ちが強かったみたい・・・

成功もして、早く親孝行もしたかったんだと思うの・・・それで、

    別れを切り出して、、、

お兄ちゃんは、一層、暗い表情しか見せなくなったし、笑う事も忘れて

    しまったかのように思えたわ・・・でもカノンちゃんが来てくれて、

ソンジェお兄ちゃんに笑顔が戻ったの・・・

本当に嬉しかったわ。有難う。本当に有難う。」

カノン:「・・・ソンジェお兄さん、凄くショックだったよね?何だか可哀想・・・」

カノンは悲しくなって涙をポロポロとこぼした。

スンミは、慌てて「カノンちゃん、泣かないで・・・変な話をしちゃって・・・御免ね」

と謝った。

   
カノンは・・・気持ちを落ち着かせて、「それよりも・・・パランファのテファさんって

言う人は、スンミちゃんの好きな男の人なんだね?

ソンジェお兄さんよりも、恋心を抱くテファさんて言う人は、凄い人なんだね?・・・

でも、スンミちゃん、、、テファさんは、生姜・・・じゃない姜ユリさんの・・・」

と、言いかけた時、スンミは「そう、私の叶わない一方的な片思いなの・・・

姜ユリとテファは幼馴染みで、小さい頃からの付き合いみたい。

大学では公認の仲よ。カノンちゃんも、テファを見たらいっぺんで心ときめくわよ。

本当に素敵なのよ。」

カノン:「・・・ふうん、、、そうなのかぁ?テファさんも日本語学科なの?」

スンミ:「いいえ、機械工学学科よ。やっぱり、軍隊に行っていて、

帰国してから1年間、日本へワーキングホリデイをしていて、この春に復学したの。

ソンジェお兄ちゃんとは同い年よ。日本語もテファさんは上手だと思うわ。

姜ユリは、ホンデに入学したテファを追って、自分もホンデに入学したの。

唯、機械工学には興味がなかったから・・・・

テファが日本に行き、出来たら日本の企業に就職したいと聞いていたので、

日本語学科を専攻したらしいの。お金で家庭教師を何人もつけたり、、、

日本にも何度か観光旅行で行ってるらしいわ。親戚が大阪にいるらしいから・・・」

カノン:「姜ユリさんを夢中にさせるテファさんて、

        どんな人なのかは興味あるけれど・・・

でも、私はスンミちゃんを応援するね?えへへ」

スンミ:「私は・・・無理よ・・・醜いし・・・・不器用だし・・・

勉強以外、何も取り柄がないもの・・・」と言った。

カノンは、「そんなことないよ。スンミちゃん、頑張って!

私は応援するし・・・男の子は何が1番弱いかって言うと、心だと思うんだ。

スンミちゃんの心はピカピカに輝いていて綺麗だし、、、

私はスンミちゃんは可愛いと思うし、ブスなんかじゃないと思うよ。

もし、スンミちゃんの事を酷い言葉でからかう人がいたら、私が許さないからね。

スンミちゃんは、スンミちゃんの今のままで十分、魅力的な可愛い女の子だと、

思うよ。・・・ようし!!

テファさんに明日、会ってみようかな?えへへ。」と言って笑った。



         その時、首にかけていたカノンのペンダントが、床に落ちた。



               「あっ・・・」


    カノンは小さく声を上げて、直ぐに屈んで、ペンダントを拾い上げた。

      ずっと肌身離さずにつけていたペンダントの留め金が、

          あまくなっていて緩んだのだった。

        ベンダントは、明かりに照らされて、蒼白く、

          悲しい涙色に光っているように見えた。

                その時、またあの声がした・・・

          



          「カノン・・・ねぇ、カノン・・・」

     それが、今度は、ペンダントから聞こえて来たようで、

         カノンはペンダントを見つめた・・・・

         スンミが「カノンちゃん、どうしたの?」と聞いた。

       カノンは、ペンダントの話をスンミにしようかと思ったが、

       今日は色々な事が有り過ぎたので、

       止めておこうと思い、「何でもない」と言って、笑った。

   

          時計は深夜12時を回っていた・・・

         スンミは時計を見て「いけない、もうこんな時間だったね?

    明日も早いから、もう寝ようね?お休みなさい。」

            そう言って、カノンの部屋を後にした。

            


        カノンは、流石に疲れたのか、歯磨きをして、直ぐに就寝した。


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