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作品名:潮風のセレナーデ・・・会いたい気持ち・・・ 作者:HAPPYソフィア

第6回   新しい生活・・・1つにならないペンダント

いよいよ、大学二年の新学期が始まった。

  大きくはクラス替えがなかったものの、将来の指針によって、

         クラスのメンバーが替わった。

  カノンは、幼稚舎から、ここの大学まで、エスカレータで

上がって来た為、外部から・・・つまり大学から入学した

典子や栄子とは、クラスが離れてしまった。

 実は、典子も栄子も、少しホッとしていた。

 なぜならば、始終顔を合わせていれば、きっと気の緩みから、

 サヤカに口止めされている「テファ」の事がバレテしまうからだ。

   2人もカノンが、テファの事で、元気がなくなったり、

            泣いている姿を見たくないので、

   テファの記憶は消された方が良いと思っていたからだ。

カノン:「離れちゃったね・・・ノリもエイコも同じクラスで良いな。」

栄子:「クラスが離れたと言っても、お隣りさん同士のクラスやし、

      一般教養とかは一緒のクラスになるやん?

 うちらは変わらず仲良しの友達やろ?・・・変らへんて・・・なぁ?」

       っと、相変わらずの京都弁で、ゆったりと話しをした。

典子:「 ・・うん、私としては栄子よりもカノンと

              一緒のクラスの方が良かったな。」

栄子:「え?なんやの、、、うちかて栄子よりもカノンの方が、

      良かったわぁ。カノンは、うちと同じで、ノンビリ屋やし、

                        優しいし、可愛やん。」

典子:「悪かったわね?可愛くなくて!!」

栄子:「ほうら、直ぐに言葉を返すから、、、可愛いくないやん?」

どう言葉を返したら良いか分からず、カノンが困っていると、

       遠くから「カノン」と呼ぶ声がした。

振り返ると、幼稚舎から上がって来た新しいクラスメイト4人が

       駆け寄って来た。

ミドリ:「今年1年、カノンとまた同じクラスになれて嬉しいな。

      宜しくね。」

久美子:「クラスも発表にもなったし、

       担任のオリエンテ−ションとかあるみたいだよ。」

ヨシオ:「カノンは小さいから、前の方の席の方がいいんじゃないか

      と思って、早めに教室行こうと皆で、言ってたんだ。」

ケンジ:「2年生は専門科目が沢山、入って来て忙しいから、、、

          時間割も慎重にしないとね。」

      皆は、口々に新しい1年の始まりを語り出した。

     カノンは、それを聞きながら、ニコニコと笑った。

    ヨシオもケンジもカノンのファンと言うのが直ぐに分かった。

    去年の1年生の時は、ミスキャンパス候補に上がり、

             優勝は逃したが、カノンは

       「ミス・スマイルキャンパス」に輝いた。

美人と言うよりも、可愛いのだ。更に誰に対しても優しいし、

女の子らしい事を好んでしているからだ。

 例えば、洋裁や手芸、編み物、、、

        料理やお菓子作り、掃除、、

 色で言うと薄い「ピンク色」が似合う可愛い可憐な感じがした。

      何度も言うが「お姫様」みたいなのだ。

家もかなりの資産家であり、何不自由なく育ったと言うのが分かるが、

我儘ではなく、いつも謙虚で素直で可愛い・・・誰からも好かれていた。

  欠点があるとすれば、ノンビリ屋だとか、直ぐ泣くとか甘えっ子・・・

         そのくらいだった。

どんなに険悪なクラスの雰囲気になったとしても、カノンが教室に入ると、

何だか春の日差しみたいにポカポカと温かく柔らかい雰囲気になるのだった。

 男子の人気はいつもダントツで、女子からも「妹」みたいな感覚で

 カノンは可愛いがられるのだった。

それは外見がとても小さくて可愛いから弱いイメージがあるのかもしれなかった。

実際に、体もそんなに丈夫ではなく、特に冬の寒さは大敵で、

雑踏の中での待ち合わせをした場合は、次の日は、直ぐにダウンしてしまい、

風邪をひいたり、入院する事もあったりするのだ。

 (テファにも冬が苦手な事をカノンが言うと、

テファは「カノンは、何だか温室のお花みたいだ・・・僕は小さい頃から

高麗ニンジンを食べていたから、風邪をひかなくなったよ。

カノン、自分の事を自分で弱いとか、周囲の意見ばかり気にして、

冬は出歩かないとか・・・寒いのは苦手とか思いこんだらダメだよ」と言った。

カノンは、それまで、自分の事をハッキリ見つめて、言葉を返してくれる真っ直ぐな

意見を言ってくれる男の子はいなかったので、益々、テファが好きになった。

自分の周囲にいる男の子は、やたらとカノンを褒め、更に「可愛い」としか言葉が

ないくらいに、可愛いを連発し、特別扱いをするのが常だった・・・

冬も、なるべく暖かい場所や、車での移動や、お金を使った贅沢な遊びしか

しなかったからだ・・・

テファが、冬も積極的に出かけようよと、誘ってくれたのが、カノンは嬉しかった。)

    典子たちと別れて、カノン達は、新しいクラスへと向かった。

         教室は、全員が顔見知りの学生たちだった。

      つまりこのクラスは、温室中の温室のクラス=

         附属から上がって来た学生のクラスだった。

      就職もきっとせずに、親の会社に入る・・・

  人生が順風満帆なコースの人達の集まりを意味した。

 カノンは、与えられた恵まれた環境は感謝するものの、

     自分の人生は自分の努力や頑張りによって

   切り開くものだと、高校生になってから感じ始めていた。

大学も、違う大学を受験でとは思ったが、親に反対されて、

結局は諦めてしまった、、、

     それでも後悔はしたくなかった。

 どうなるか分からないが、韓国語をシッカリ学んで、

      修学旅行でガイドをして下さった田さんに

             先ずは会いに行こうと思った。

  それから、出来れば韓国ドラマや映画が好きなので、

  それに携わった仕事をしたいと思っていたのだった。

            しかし、、、

      もっと何か大切な事を忘れている・・・

         もっと強く心に思い描いている事が

                あるのでは???

              っとカノンは思ったが、、、、

              思い出せなかった。。。

------------------------------------------




 一方、春休みはずっと娘が帰省していたので、

鈴木家は楽しかったが、次男の永遠(=トワ)が、

アメリカの大学に合格し、LAへと元気よく渡ってしまったし、

カノンも世田谷のマンションに行ってしまったので、

急に寂しくなってしまった。

そこで、母親の遥は、韓国人の男の子をホ−ム・スティで

受け入れる事をした。

 たまたま読んでいたコミュニティ新聞で、

      「協力のお願い」と言う記事を見て、

  部屋も余っているし、男の子は2人育てた経験もあるしで、

       早速、申し込んでみたのだった。

 しかも、韓国ではないが、これまで自宅に豪州人や

アメリカ人の高校生をホームスティで受け入れた経験が

何回かあったので、ホストファミリーになる事は、

遥は心配はしていなかった。

 受け入れ家庭の保護者が呼ばれた横浜国際会議室で、

  国際協力の教育委員会の偉い人から説明を聞いた。

教育委員会:「きちんとした身元の留学生を選びました。

   鈴木さんは、李・ビョンチョル君をお願いします。

   ソウル大学の学生で、将来、有望な青年ですよ。」

     カノンの母親は「李」と聞いただけで嬉しくなった。

李ビョンホンの大ファンだからだ。写真を見せられて、

もっと喜んだのは、李ビョンホンに少し似ていたからだった。

長身でワイルドな感じが似ていた。

 「是非、宜しくお願い致します。とても楽しみですわ。

 娘は大学で韓国語学部ですし、

        私も韓国語を教室で習ってますの・・・

         良い勉強にもなりますわ。」と言って喜んだ。 

  鈴木家も、また新しい春を迎えようとしていたのだった。

母親:「そうなのよ、明日から、1ケ月だけだけど、

       韓国の男の子をホームスティさせるのよ。

     ママは超楽しみよ。トワの部屋を使わすと怒られるから、

 お兄ちゃんのタクトの部屋を提供するつもりよ。

それで、歓迎会を今週の土曜にするから、カノンもいらっしゃいよ。

ガーデンパーティしましょうよ・・・」

カノン:「うん、分かった・・・ママ、凄く楽しそうで良かったネ。

       私も時々、韓国語を教えて貰おうかな?」

母親:「いいかもね、カノンは、お勉強が出来ないから、

      みっちりしごいて貰った方が良いかもね?」

カノン:「えぇ!・・・お勉強は確かに嫌いだけど・・・

         えへへへ。じゃあ、土曜の午後位に行くね。」

母親:「あっ、もうこんな時間だわ、じゃあ、カノン、

                  土曜ね、お休みなさい。」

カノン:「お休みなさい。」っと言って受話器を置いた。

その時、またカノンに衝撃?とも言えるフラッシュバックが起こった。

    それは、遠くで、誰かが「カノン」と呼ぶ声だった。

      靄の中から聞こえる優しい男の人の声だった。

        「誰?」と聞いても「僕だよ」しか聞こえない・・・・・

    その時、キラリと蛍光灯に照らされてペンダントが蒼く光った。

         そして心臓の鼓動がドキドキと高鳴った。

      「カノン」と呼ばれる声が、今度はハッキリ聞こえた。

 サヤカに肩をポンと叩かれて、

      「カノン、さっきから何度も呼んでいるのだけれど

         返事がないから、呼びにきたんだけれど?

        お茶でも飲まない?」とサヤカは言った。

  カノンは、ケタケタと笑い、やっぱりあの声は気のせいだ・・・

     そう思いながら、キッチンへと向かった。



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土曜の午後、横浜の実家に行くと、カノンの母親は

「遅い、遅い」とブーイングを上げたが、

たまたま、午前中、大学で説明会があって、

 それを聞いてから来たので遅くなってしまったのだった。

クラスメイトのミドリも時間が空いたと言って一緒に来てくれた。

 ミドリは、中学時代からの仲良しで、家も比較的に近所で、

        遊びに行き来した仲だった。

ミドリの家は厳格な弁護士一家で、

     弁護士事務所を手伝っている姉が一人いた。

ミドリ:「今日は、チャッカリ、カノンの家に遊びに来てしまいました。」

母親:「あら、ミドリちゃん、人が多いのは、大歓迎よ。

よくいらして下さったわね。どうぞ、どうぞ」母親は弾んだ声で言った。

ミドリ:「カノンの家は、相変わらず光の家だね、、、

なんて言うか、幸せを絵に描いた家だもん。羨ましいな・・・

うちは、何か尖ってる感じがする・・・家族もバラバラだしね」

カノン:「この家も、皆、子供が違う場所で暮らしているから、

バラバラだよ。えへへ」

ミドリ:「それでも、仲良しじゃん。家もお屋敷だし、

         何かお金持ちなんだけど、嫌味もないし・・・

        お父さんもお母さんも優しいし・・・憧れちゃうよ。」

カノン:「えへへ。私もこの家に生まれて幸せだと思うけれど、

時々、このままじゃいけないって思う事が多いよ。」

ミドリ:「罰あたりだと思うよ。そんな事、思うのは・・・」

カノン:「そうかな??・・・まぁ、いいや・・・今日は天気も良いから、

   お庭でバーべキュウするみたいよ・・・ほら、外見て!」と言った。

庭は、既にテーブルセッテイングが済んでいて、父親が火をおこして、

大きなスペアリブを焼いていた。

   カノンたちに気がついた、

父親は、テラス窓を開け「カノちゃん、ミドリちゃん、ようこそ。

      あっ、こちらの男の子が・・・李・・」と言いかけた時、

李;「李 ビョンチョルです。韓国、ソウルから来ました。」と言った。

            カノンもミドリも自分の名前を韓国語で伝えた。

李:「おっ!韓国語が出来ますか?上手ですね?」

母親:「だって二人は、大学で韓国語を専攻しているから・・・」

李:「・・では・・・韓国語で会話しましょうか?」と言ってペラペラと韓国語で

        話そうとして来たのを

       カノンもミドリも、そして母親・父親も「STOP」と言って止めた。

  「全然、分からないし・・・出来ないから、日本語でお願いします。済みません」

           と言って皆で笑った。

母親曰く、李ビョンホンさんに似ているルックス?と、名前も似ていると言う事、

感じの良い上品な物腰や話し方は、益々、母親が気に入る事だった。

      楽しく食事をしながら、会話が弾んだ。

ミドリ:「いつ、帰国ですか?」と言う話題になった。

李:「来月末です。」

母親:「大学の研修で来たそうなの。

      将来は、日本と韓国の貿易の仕事をするから、日本語を

     学びに国から要請されて来たそうなのよ。」

カノン:「日本語は、もう十分、上手なのに?」

李:「いえいえ、まだまだです。色々と、教えて下さい。お願いします。」

ミドリ:「私達の方こそ、教えて下さい。お願いします」

李:「ハイ、分かりました。」

           カノンは、その時、ハットした。

カノン:「あっ、パパ、ママ、お話しするのを忘れてたのだけれど・・・

      今朝、大学の説明会があって、、、、、」と言いながら、

              カバンからプリント物を見せた。

母親:「韓国短期語学研修のご案内?」

カノン:「うん、あのね、韓国語学科は、

             まだ歴史が浅い学部なんだけれど、

     サヤカと同じ英文科に習って、韓国に短期語学研修を

                    今年から設けるんだって。

    学校の授業に支障のない、夏休みを使った3ヶ月間みたい。

       全員参加だって・・・」

春に韓国に行って事故に遭ったいきさつがあるので、

          きっと反対されると思い、

                恐る恐る、話を切り出した・・・・

カノンとしては、行きたいし、参加したいものだった・・・

           ダメだと言われたら、

                 事情を学校に説明して・・・

不参加で、夏休みは、毎日、学校に通い、

              ゼミで単位を取得するしかなかった・・・・

                  すると・・・

父親:「いいじゃないか。やっぱり語学は、

         その国に行かないと直ぐには体得出来ないし、、、

    良い経験にもなるし・・・どんどん行きなさい。」

                と直ぐに賛成してくれた。

父親の俊介は外資系の商社マンだったので、

            子供の海外経験や語学研修には寛容だった。

母親:「学校に通うのね?寮に入るのかしら?」

ミドリ:「いいえ、ホームステイみたいです。学校も、

              能力別になるかもしれないんですが、

     姉妹大学の語学堂に入るみたいです。

       今のところ、延世大学と、梨花大学、高麗大学、

              そして弘益大学です。」

母親:「カノンは、女の子だから、女子大学がいいじゃない?」

李:「梨花と言えば、韓国で1番の女子大で、目が高い大学です。

       カノンちゃんは、

   延世の方が、良いかもしれないです。

       延世は、日本の慶応みたいな感じの大学だから・・・

のんびりしているし、穏やかで、何よりも映画やドラマの舞台にも良く

    使われる大学だし、、、楽しいかもしれないですよ。」

母親:「この弘益大学って言うのは?」

李:「韓国で1番の、芸術大学です。お洒落で、

           大学周辺は青山学院大学みたいな感じかな?」

ミドリ:「私、そこの大学に行きたいな・・・」

カノン:「でも、どこの大学に行くかは、テストとか面接で決まるみたい・・・

     私はどこでも構わないけど・・えへへ」と言った。

李:「丁度、僕も帰国して大学も夏休みだから、案内も出来るし、

    勉強も手伝えるかもしれないから・・・僕の友達も紹介しますよ。」

父親:「心強いな・・良かったじゃないか。カノちゃん、

         頑張って勉強して来ると良いよ。

    正し、車には気をつけて!交通事故は、もうコリゴリだから・・・」

                   と言って笑った。

李;「交通事故??」

    母親は、簡単に、この春、起きた韓国での事を話した。

李:「韓国は日本に負けずに車社会だから・・・

        交通事故も、衝突事故も多いです。

   でも、地下道も沢山、あるから、横断歩道は避けて、

          地下道を通れば良いんですよ」と言った。

カノンは、語学研修のオリエンテーションが今朝、あるまで

、交通事故の事をすっかり忘れていたのだった・・・

何だか記憶の彼方にあるような、遠い感じがしていたのだった。

 あっさりと、OKが両親から出されて、ホット安堵し、

6月から始まるこの韓国語学研修に心弾ませていたのだった。



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カノンは、世田谷のマンションに戻ると、サヤカが、

カナダに留学に行く準備をしていた。

サヤカ:「お帰り〜、どうだった?」

カノン:「うん、凄く楽しかったし、パパもママも元気になったと言うか

張り合いが出来たみたい。」

サヤカ:「カノン、私が留学に行っている間、

このマンションに一人ぼっちになっちゃうから、横浜に一旦、帰っていたらどう?」

カノン:「うん、それも考えたけど・・・でも・・」と言いかけた時、

何故か、サヤカには韓国の語学

       研修の話しはしないでおこうと思った。

何故なら、春休みに韓国旅行をして、事故に遭い、

サヤカに多大なる心配や迷惑をかけたからだった。

 以来、韓国旅行の話しは、避けていたし写真でさえも

プリントしたり保存さえもしていなかった。

サヤカ:「でも?・・・・」

カノン:「うぅん、何でもない・・・

やっぱり横浜に行こうかな?そしてテストとかの時は、

     大学に近いし、一人で集中したいから、

このマンションで過ごすって事でどうかな?

     えへへ」っと言った。

           サヤカも、それがいいねと賛成した。

             サヤカの留学が、もう目前だった。

当初、出発が5月の末だったが、今年は4月中旬に早まったのだった。

 「就職氷河期」の日本であった為、全てにおいて早いスタートとなった。

         特にキャビンアテンダントを目指すサヤカは、

    飛行機会社の就職は、秋から就職戦線が始まる

     ・・・2年生の秋からが勝負と言われる時期に、

       5月から半年の留学は帰国は11月に

          なってしまい出遅れるからだった。

        サヤカは、カノンの事が気にはなるものの、

         今ではすっかり、テファの事を忘れている、

         大学1年になりたての頃の(=テファに知り合う前の)

         元気で明るいカノンに戻っているので、安心していた。

               きっとカノンは大丈夫だ・・・

         自分が帰国するまで、記憶は失っている筈だと・・・

       そんな考えがあったから、留学にも踏み切れたのだった。

 カノンは、モテルし、きっとテファよりも、もっと素敵な人が幾らでもいるし、

       その方が幸せになれるだろうし・・・

       帰国したら、カノンの事が好きだと言っている

        英文科の男たちを紹介しようかな?と思った。

 カノンがミスキャンパスのコンテストで、スマイル大賞をとった時からの、

  ファンが何人もいて、サヤカが親戚で、一緒に暮らしていると聞くと、

        こぞって「紹介して」の嵐だったからだ。

         サヤカは時々、そんなカノンが羨ましく・・・

              眩しくもあった・・・・



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     月日はゆっくりとそれでも確実に流れて・・・・

          サヤカのカナダ留学の日になった・・・

サヤカ:「カノン、じゃあ、行ってくるね・・・寂しくなったら、

       メールや電話をいつでもしてね?」

       カノン:「うん、大丈夫だってば・・・

    サヤカも元気で、頑張って勉強して来てね。

        カナダの様子も教えてね。

      それから、一杯、楽しんで来てね?」

   カノンは、ちょっぴり羨ましそうな瞳をしながら、サヤカをハグし、

         成田空港のロビーで別れを告げた。

 沢山の英文科の留学する学生や、家族が見送りに来ていた。

サヤカは、家族には見送りに来なくて良いと言っていたし、父親の方は、

  英文科に進学しなおした事に、今だに反対だったからだ。

 出来れば思い直して医学部に進み、女医になって欲しいと望んでいた。

 サヤカの母親は、サヤカに少しは理解を示したが、

        今は諦め次女の医学部のお受験に必死だった。

   長女がダメなら次女と頭を切り替えた・・・賢明な考えだった。

故に、成田で見送ってくれたのは、カノンと、大学の友人の数名だった。

  彼女たちも、直に私費で、夏休みを利用して、

      語学研修にアメリカや英国へと出発する。

  英文科の学生たちは、自分たちの名前を英語に文字って

         ニックネームをつけて呼び合う。

サヤカは「サリー」と呼ばれていて、

サヤカの友人の五月(=さつき)は「メイ」、

百合子は「リリィ」そして里美は「トミィ」だった。

カノンは、それらのニックネームを聞いてクスクスと笑った。

 昔、カノンは自分の英語のニックネームは何か?と聞いたが、

     「カノンはカノンだよね?」と言われた。

でもサヤカは「カノンは、キティだよ。

    カノンのパパも、カノンの事、キティちゃんと呼んでいるし、

        カノン自身も、キティちゃんが好きでしょう?

      キティには可愛いと言う意味があるから・・・

       カノンの英語のニックネームはキティだよ」と言った。

カノンは「私は可愛いくなんてないよ。ブスだよ。」と言うが、

皆は口を揃えて「可愛いよ。」と言い、それ以上、

カノンが否定した言葉を言うと「世界中の女の子を敵に回す

発言はカノン言ってはダメよ」とカノンを叱った。

 

 語り手である私、ソフィアもカノンは本当に可愛いと

             欲目や贔屓抜きで言える。

   サヤカは何度も、何度も振り返り、手を振りながら、

         入国審査の入口へと入って行った。

            「カノン・・・・カノン・・・」

  その時、カノンはまた、自分を呼ぶ声が聞こえた。

 確かに男の人の声だった。甘く・優しい・・・そして懐かしい声だった。

             「誰?」

 カノンは、辺りを何度もキョロキョロと振り返りながら、見回した・・・・

 だが、周囲にいるのは、サヤカの女友達だけだった・・・

      五月:「どうしたの?キティちゃん?」

      カノン:「今、誰か私の名前を呼ばなかった?

         カノンって・・・男の子人の声が

           聞こえたんだけど??」

    両手を耳に当てながら、カノンはまた見回した。

 里美:「雑踏の音以外は何も聞こえないけれど?」

インンフォメーションが、CAN ON?=乗りますか?みたいな紛らわしい

      発音したんじゃないのかな?」

            カノンは、この時も、

              「CAN ON」

  と言う百合子の言葉で、納得し、また聞き間違いだと思った。



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        その晩、カノンは不思議な夢を見た。

  カノンは、どこか海辺にいるようだった。

       さざ波がザザッっと時折、聞こえる・・・・

        誰だか分からないが、カノンの横に座っていて、

             「カノン、ほら、、綺麗だね」と

                話しかけて笑っているのだった。

   カノンが、その笑い声の方向を見ようとはするが、

              靄がかかっていて、誰なのかが

                     分からないのだ。

   パパでもないし、弟のトワやタクトお兄さんでもない・・・・

              でもどこかで、、、

         そう遠い記憶にかすかに覚えのある

             優しい・甘い声だった。

       「ねぇ、あなたは誰?誰なの?」っと

       何度も質問するが、言葉は一方通行で

           相手には届いてないようだった・・・・

  ただ、「カノン、ねぇ、カノン」と言う言葉だけが聴こえた。

  何故か切なくて、悲しくて、目が覚めた時は、カノンは泣いていた。

      物凄く悲しい夢を見た後みたいだった。

       涙顔を洗い流そうと洗面台へと向かった。

    「あぁ、きっと今日から独り暮らしになるから、急に寂しくなって、

           悲しい夢をみちゃったんだ」とカノンは思った。

          そして、元気を取り戻す意味で

           「カノン、ファイティング!」

          と言って鏡に向かって笑顔を作った。

      可愛いミス・スマイルキャンパスの笑顔だった・・・・



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 学校に行くと、いよいよ、韓国語学科も、

         韓国語学研修のプログラムなどが発表され、

  テストや面接を受けて、通う大学の語学堂や、

          滞在家庭なども決めて行くとなった。

     説明の後で、調査書と言う書類を書かせられた。

      実家の住所や、家族構成、趣味、、、

    韓国語を専攻した理由、、、将来の希望など、、、、

          ・・・・一通り書き上げたが、

将来の希望は、まだ曖昧で、どう書けば良いのかは分からなかったが、

     必ず書きなさいと言う「※」マークがあったので、

      夢は大きく「韓国映画の仕事」と書いた。

    夢は夢だし、、、まっ、いいかな??と軽く考えていた。

          書類が学生、皆、書き終わった時、

        先生がテストは、これから抜き打ちですると言った。

その方が、自然な今の本当の実力が分かるからだと言うのだったが、

   学生たちは、驚き、一斉にブーイングが飛び交った。

        カノンは元々、勉強は好きではないし、

  テストだからと言ってもそんなに大して成果の差は

 出ないと思い、諦め気味で、テストを受ける事にした。

 テストが終わってからは午後は面接で、調査書を元に、

    学校や家庭滞在先を決めて行くとなった。

お昼休憩をミドリたちと、とりながら、テストは相変わらず出来なかったとか、

どこの大学になるかな?とか、話しをしながら、将来はなんて書いたか?となった。

 先生たちは、今頃、必死で、学生たちの採点をし、配属の大学を決めて

   いるだろうと思うものの・・・多分、皆、ドングリの背比べの点数で、、、、

Xばかりだから採点速いだろうとか・・・・たわいもないお喋りと、午後からの面接が

どうなるだろうかと言った話題があちらこちらから聞こえて来た・・・・

 皆は「親の会社を継ぐ」とか「お見合いして結婚」とか現実的な事を書いたと

言っていて、カノンは青くなった・・・・

  「カノンは?」と聞かれて、「韓国映画の仕事と書いた」ことを伝えると、

    皆が一瞬、無言になり・・・そして爆笑した・・・

そう、このクラスは、親の仕事の世襲をするクラス・・・温室クラスだった・・・からだ。

 家事手伝いとか・・・お見合い結婚が妥当な答えだったのかもしれない。

      カノンは恥ずかしくて、ただ一緒になって、エヘヘと笑った。



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  先生:「鈴木さんは、弘益大学の語学堂です。」

 カノン:「え?・・・弘益?・・・・弘益大学ですか?」

先生:「・・・ええ、弘益大学の語学堂は、今年できたばかりの新しい語学

     学校です。校舎もピカピカで綺麗ですよ。

           街並みも、原宿や青山と言われる位、お洒落で、

     学生自体もお洒落な子が多いし、、華やかな大学です。

         雰囲気もうちの大学に似ている部分も多いけれど・・・

     唯、弘益大学は、韓国で1番の芸術大学です。

      鈴木さんは、韓国映画の仕事がしてみたいと書かれていたので、

      弘益大学なら、映像科もあるし、良い勉強になると思いますよ。

       ホームスティ先は、まだ決まってませんが、弘益大学に通う、

       同い年位の女の子が居る家庭になります。

   鈴木さんは幼稚舎から、うちの大学だし、お父様も立派な方ですから、

    同じくらいの家柄をと、考えてます。ご安心ください。・・・・」

   ペラペラと先生が話をしていたが、カノンは、弘益大学に自分は決まったと

     言う言葉の印象が大きくて、後の話しは、良く聞いてなかった・・・・

先生:「鈴木さん、鈴木さん、では、6月初旬には出発です。

              3ヶ月半の語学研修になるので

      、、、準備もキチンとして下さいね。」と言う言葉で、

      我に返り「ハイ、、、」と言って、一礼をしながら、

              クラスメイトのいる教室に戻った。

ミドリたちも面接が終わっていて、どこに配属になったかで話しが盛り上がっていた。

久美子;「私は梨花大学になっちゃった。女子大なんて最悪!

多分、パパが女子大の教授だし、梨花大学とも交流のある大学だからだわ

・・・それに、将来はお見合い結婚してセレブな生活って書いたからかも?」

ミドリは「私は、高麗大学になったの。親が弁護士で、

早稲田出身だからだと思うけれど、早稲田に似た大学の語学堂と言ったら

高麗大だものね。将来は、親の弁護士事務所に就職って書いたからかも?

カノンは、きっと親は慶応だし延世大学でしょう?」と、言って来たが、

       「うぅん、弘益大学って言う所になったよ。

        映画の仕事って書いたからかもしれないけど、

  ここの大学と雰囲気が良く似ている新しい校舎の語学堂だって・・・

           芸術大学らしいよ。」と言った。

ミドリ:「ホンデ・・・ホンデでしょう?ほら、前、カノンの家に行って、

      李さんが言ってた韓国1番の芸術大学じゃない?

          カノン、凄いじゃん、私はその大学に

             行きたかったんだけどなぁ・・・

        私も映画の仕事って書けば良かった!!」

               とショックを受けたように話した。

カノンは、「ホンデ・・・何か楽しい大学みたい・・・」と呟いた。

   そしてカノンはウキウキした気持ちになって来た。

   その時、カノンに強烈な痛みが、頭に走った。

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