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作品名:潮風のセレナーデ・・・会いたい気持ち・・・ 作者:HAPPYソフィア

第5回   それぞれの新しい生活・・・

    ここから沢山の登場人物が出てきます。

       カノンからの視点ではなく、

     語り手として ソフィアが、物語を後半まで、

       語って行きます。

 カノンには、また後半のお話でお会いすることとしましょう。



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      サラサラとした髪型、ニコヤカに笑う顔や声は、

          見覚えのある懐かしいテファだった。

   カノンは、コーヒーショップを飛び出し、駆け寄ろうと思った。

              ・・・が、次の瞬間、、、ためらった。


 テファは、何人かの男の友人と楽しい会話をしながら、

              正門を出て来た、

    後ろからテファの名前を呼ぶ声がしたのだろうか?

         テファは振り返った。

  
     するとテファの左腕を掴んで、腕を組み、

       楽しそうにハシャグ、おおよそカノンとは、

        正反対の美しい背の高い女性が居た。

 テファも、嫌がるどころか、自然に、彼女の腕を受け入れた。

      そして、何かを楽しそうに語り合いながら、

             歩き去ろうとしていた。

     「・・・オッパ・・・テファ・・オッパ・・・」

   ・・・・カノンは、涙声でテファの名前を言い、

        呆然とその姿を見ていた。

コ-ヒ-のお代わりを貰いに行っていた、

             サヤカがテーブルに戻ると、

 カノンがいないので、どこだろうかと辺りを見回すと、

   カノンが、外を眺めながら、泣いているのを見つけた。

       「カノン?・・・カノン、カノン」と、

     テーブル席から、サヤカは声をかけた

   ・・・すると、カノンは、フラフラと外に出て、

         歩きだしていた。


   横断歩道が、赤に変わった事にも

           気がつかないカノンに、

           一抹の不安がサヤカに走った。

        「カノン・・・危ない・・・カノン」

    と言うサヤカの声をかき消すかのように、

    ケタタマシク鳴らされた車のクラクションで、

           カノンは、我に返ったが

             ・・・その瞬間、

          カノンの小さな体は、

            フワフワと宙を舞った。

     そして地面にたたきつけられた・・・

   沢山の人達が群がり右往左往した。

    サヤカはカノンの名前を叫びながら泣き、

            カノンに駆け寄った。

         何重にも人の輪が出来た。

   サヤカは日本語と、英語で

          「早く、救急車を!」と何度も叫んだ。

その内に、救急車が来て、病院へと運ばれて行った・・・・

      病院に運ばれる救急車の中で、

   カノンはずっとテファの名前を呼び、泣いていた。

 カノン:「サヤカ・・・テファオッパ・・・

         テファオッパが・・・いたんだけど・・・・

    もうカノンの事、、、、忘れちゃったみたい・・・・

          テファオッパに彼女が居た

  ・・・・・・もうバイバイになっちゃったみたい・・・・

             テファオッパ・・・・」 

 何度も、何度もテファの名前を呼び、泣いていた。

     サヤカは、カノンの冷たくなった

         細い白い手を握りしめながら、

               心配そうに

          「カノン・・・カノン」と

         カノンの名前を呼び続けた・・・・

      幸いカノンは、軽い脳震盪で済んだ。

  傷も怪我もなく2,3日もすれば、もう大丈夫だと

        医師に言われ、サヤカはホッとした。

           カノンの意識は、直ぐに戻った。

    面会を許されたのは、病院に運ばれてから、

     5時間後の深夜23時過ぎの事だった。

      サヤカは、恐る恐るカノンの病室に入った。

 カノンは、キョトンとした顔で「あっ、サヤカ・・・御免ね、、、

             心配かけちゃったね。」

          カノンは、笑いながら言った。

サヤカは「もう、カノン、物凄く心配したよ。

          カノンに万が一の事があったら・・・

      そう思うと、心臓が止まるくらい心配したよ。」

                と泣き笑いで言った。

カノン:「本当に、御免ね、私は何で、あんな所で、

         事故に遭ったのかな?

      多分、目が悪いから、信号に気がつかなかった

               んだね?エヘヘ。

     サヤカは、どこに居たんだっけ?別行動してたんだっけ?」

      っと、トンチンカンな話をして来た。

         サヤカは、心の中で「え?」っと、思った。

サヤカ:「ホンデの正門の前にあるコーヒーショップにいたんだよ・・・」

カノン:「ホンデ?ホンデって何?本屋さん?コーヒーショップ?

何かショッピングしてたんだっけ?それで疲れてお茶したんだっけ?

全然、覚えてなくて・・・エヘヘ。」と笑いながら言った。

           サヤカは、あれ?っと再び思った。

      カノンが変だからだ。悲しい顔と言うよりも逆で、

           物凄く明るいし、元気だからだ。

医師は、「チョット」とサヤカに声をかけて、医師の部屋に呼ばれた。

サヤカは韓国語が出来ないので、英語でも構わないか?と、

断りを入れて、英会話で話す事にした。


  医師は、怪我自体は大したことはないが、

         何か物凄くショックで悲しい事があった

                       みたいだと言った。

 
        その悲しみを取り除く為に、催眠術・・・と言うか、

                 暗示をかけたとサヤカに伝えた。


                サヤカ:「暗示?」

医師:「えぇ・・・元々、鈴木カノンさんは、体が弱く、

                 精神的にも弱い人みたいです。

     あのままだと、命取りになったかもしれないからです。

      何があったのかは分かりませんが、、、

            思い出させない方が、幸せだと思います。

     日本語が出来る精神医療師のチェ医師に暗示をかけて

          貰いました。

     つまり、事故に至った記憶・・・

         悲しい事柄を全て思い出させないように・・・

                        暗示をかけました。」


    医師の説明を聞いて・・・・・サヤカは好機だと思った・・・・

サヤカ:「有難うございます・・・ショックな事は、

              私にも思い当たる節があります。

     暗示にかけて下さって有難うございます。・・・

         カノンの両親も、直ぐにカノンを迎えに来ます。

          両親には、この暗示の事、、、

      知らせないで下さいませんか?

        物凄く過保護に育ったので、大騒ぎになってしまう

          からです。お願い致します。」と言った。

  サヤカは医師にどうしてこんな事故に遭ったのか?や、

    カノンの家族など、簡単に説明し、暗示の事を、

           秘密にして欲しいと説明した・・・・・

          医師は、サヤカの必死の説明に対して、

        「・・・いいでしょう。この事は、秘密でいきましょう。

   正し、ひょんな事で、その悲しい事を思い出してしまうかも?

          しれません。

   それまでの間に、完全にその想い出を乗り越える強さを

     持たせて上げる事は出来ますか?」と聞いた。

サヤカ:「・・・えぇ、約束します。カノンは、きっと元気になるし、、

  ショックな事を思い出したとしても、きっと乗り越えられる・・・

            そう思います。」と言って笑った。

          そう、必ず忘れさせてみせる・・・

   そして以前の明るく元気なカノンに戻してみせると、

              強く決意した・・・・・・。

直ぐに両親は、ソウルにやって来て、カノンの無事を聞いて、安堵した。

カノンの母:「・・サヤちゃん、、、一体どうしてカノンが事故に遭ったの?」

          カノンの母親は、サヤカに心配そうに聞いた。

サヤカは、恐らく、カノンは、テファを見つけたのだろう、しかし、テファは

、多分帰国してから、韓国の生活に戻り、学生生活を満喫し、、、

   恐らく新しい彼女が出来たのであろう・・・

        カノンはその光景を見て、ショックではあったが、、、

            それでも会いたい気持ちが強かったので、

       テファがいる所に駆け寄りたかったのだろう・・・

                       そう、思った。

         カノンの両親は、テファの事は知らない様子だったし、

       これ以上、心配をかけたら大騒ぎになってしまうだろうと思い、

       二人で買い物に出かけた時に、

        たまたま信号が赤になったのに気がつかずにカノンだけが、

         渡ってしまっただけ・・・と言って話をごまかした。

サヤカ:「大事をとって、2・3日は安静が必要らしんいんです。

       ・・・私も残って見舞ったり、一緒に帰国したいのですが、

        エアーチケットの関係で、もう延長が出来ないんです。

        一足先に帰らなければならないんです。。。

      でも一旦、帰国したら、また直ぐにエアー・チケットを購入して

        韓国に来ますから・・」と済まなさそうに言った。

  カノンの両親は、「我々が来たから、もう大丈夫だから、サヤちゃんは、

           帰国しても良いよ、、、

        英文科の留学試験の結果が出て、

      サヤちゃんは、今年の5月からカナダのケベック大学に

      合格が決まったそうよ、長野のお母さんが言ってたわよ。

        オリエンテ-ションが、春休みにあるみたいだから、、、

               早く帰国しないと!」と言って、

           サヤカの帰国への背中を押してくれた。

        サヤカは言葉に甘えて、サヤカは、一足早く帰国する事にした。

        サヤカは、その時、この事故と、カノンへの暗示を利用して、

           カノンのテファに対する想い出を一掃しようと思った。

ホテルにあるカノンの荷物を全部調べ、テファの想い出となりそうな物は全て、

  サヤカの荷物に詰め込んだ。

そして残ったカノンの荷物を、カノンの両親に渡し、一足早く帰国した。

   帰りの飛行機の中で、サヤカは、何度も確認して言い聞かせた。

    サヤカは、テファに対して余り良い印象を持っていなかったし、

      テファではカノンが不幸になると思ったからだった。

   何よりも許せないのは、サヤカのプライドを傷つけられたからだった。

     サヤカは、テファに、自分と似た性格の強さや、

         プライドの高さなどの同じ匂いを感じていた。

      お互いが強い個性なので、対立してしまうのかもしれない。

        初めて、カノンからテファを紹介された時、

           サヤカは、テファの容姿の美しさに、

                      見惚れた。

         カノンが可愛いお姫様なら、

              テファは美しい王子様に見えた。

           ちょっと意地悪っぽく、サヤカは質問してみた。

           「カノンのどこが好きなの?」と・・・

           テファは、黙って微笑んだだけだった。

            サヤカは、もう一度、違う質問してみた。

           「カノンとどうして付き合う事にしたの?」

                 テファはまた黙って微笑んだ。

        サヤカは単刀直入が好きだったし、

        自分の質問をはぐらかされたみたいで、イラついた。

サヤカ:「聞いてるの?私の質問が分かりませんか?」とぶっきらぼうに聞いた。

     テファ:「・・・聞こえているし・・・分かりますよ・・・」

        サヤカ:「・・・なら何で応えて下さらないの?」

テファは、「何で、サヤカさんに答えないといけないんですか?

             好きか嫌いかとか・・・・

                 どこが良いとか、悪いとか。。。

              僕はカノンに直接、伝えますよ。

                 サヤカさんには関係ない事です。」

                        ときっぱり言い切った。

                  サヤカはカチンと来た。

        そして「結構、キツイ性格なんですね?カノンが傷つく

           かも?」と、サヤカは、テファに聞こえるように言った。

            テファは、今度は、声をたてて笑った。

                    バカバカしいと言った感じで・・・・

   サヤカは続けて「カノンは、凄く清純で真面目なんです。

        貴方みたいな派手な男の子とは合わないと思います。
 
              見るからに歌をやってますと言う姿とか・・・

      傲慢で威張ってる感じ・・・自分が格好いいんだと言う

       感じが伝わって来て・・・何かカノンとは合わない・・・・」

           と、話している時に・・・

  テファは「私であるサヤカさんとなら、似合うと言いたいんでしょうか?」

       と、ズバリ、サヤカの本心をついた言葉が返って来た・・・・

       そうなのだ・・・・サヤカは、テファに魅かれていたからだ・・・・

    これまで、良いなっと思う男の子は、大概、自分に振り向いたし、

         カノンよりも自分の方がモテルと自負していた・・・・

            サヤカは、カーッとなるのと、

        本心を見通しされた恥ずかしさで、赤くなった・・・・
          
               その時・・・・

     そうとは知らずにカノンは「お茶が入りましたよ」と言って、

             声をかけながら、部屋に入って来た。

            やわらかで甘い空気に部屋が変わった。

          テファの、クールな顔が、優しい顔になった・・・・

   サヤカに見せていた、冷たくクールな美しさとは全く違う、、、、

         そんな甘い・優しい顔つきが、

          サヤカを更に腹立だせたのだった・・・

        この私が、思い切りフラレルなんて・・・・

       ・・・・・・・・飛行機の中で・・・・・・・・・

      その時の場面を、サヤカは思い出していた。

     いつもいつも自信たっぷりな姿も、鼻につき、

       カノンの他に、違う女と付き合って

         居た事も、知っていた・・・

 つまりカノンと、その女達を天秤にかけている様子だった。

       帰国したら、カノンの部屋から、

       全てのテファの想い出をなくそう。

       テファとの時間があった事自体、

       全てを消してしまおうと決意した。

  テファはもう帰国して、自分の国で、新しい生活を楽しみ、

          未来を歩きだしているのだ。

             カノンの事は、

      やはり使い捨ての日本人だったのだと思った。

          カノンが傷つかない様に、、、

  これから先も決して傷つくことがないようにしなければ

         ならないと、サヤカは決意した。


         --------------------------------------


  テファの事を知っているカノンのクラスメイト達にも、

         テファの事は口封じをした。

  今回の事故の事や理由を簡単に述べ、協力を仰ぐと、

    クラスメイト達も、快く了解してくれた。

 自宅の部屋中のテファの想い出となりそうな物、

   テファの写真、カノンの日記、プレゼントや、置物、

全てを一掃させ、荷物は、梱包して長野の実家に送ってしまい、

 妹に「私の部屋のクロ-ゼットに放り投げておいて」と軽く言った。

もし絶対に中味を開けないで!とか、物置の奥深くに隠して!

            等と言ったら、、、、

    逆に怪しまれるし、好奇心の強い妹なので、

          秘密を嗅ぎつけてしまうからだ。

             カノン・・・

         カノンは、テファさんよりも、

       もっと素敵な人が現れるし、、、

     お互いがお互いのそれぞれの国で、

         生きて行った方が

          幸せになれると。。。

     特にカノンの場合は、そう思ったのだった。

「これでいいんだ・・・そう、これがカノンにとって幸せなんだ」と、

       サヤカは何度も自分に言い聞かせていた。



     --------------------------------------



     韓国で交通事故に遭い、両親がソウルに迎えに来て、

  そのままカノンは、横浜の両親のいる実家で春休みの期間を

    過ごす事にした。
 

    サヤカは、カノンが横浜で静養している際に、見舞いがてら、

     カノンの実家を訪れた。

 今回の韓国旅行は、カノンが「韓国語学科だったので、

   その成果を生かしたい」と言う気持ちと、


  サヤカが、キャビンアテンダントになる為に、鼻と目をプチ整形しよう

  かな?と言う下見とエステで、韓国に行く事になったのだと言う事で、

      サヤカが話しを作っていた。

     事故は、サービス精神旺盛なカノンが、

  整形外科の病院を、サヤカの為に韓国人に尋ねてくれ、

     道を見つけようと、探してくれるのに夢中で起こった

              ものだと付け加えて言った。

      カノンの家族もカノンも、サヤカの言葉を信じた。

     テファの「テ」の字も言葉も出さずにいたが、

  本当に、カノンはテファの事を全て忘れてしまっていた。

 サヤカは、言葉の響きが似ているテファニーのネックレスを

見せながら「テファ」ニーは、やっぱり可愛いし大好きだと言ってみると、

         カノンはキョトンとしんがら、

          「そうね」・・・と、言って笑った。

   また、テファに似た俳優、、、

    特に目元が似ている「ソンスンホン」のドラマ

「秋の童話」のDVDを見ても、カノンは興味を示さず、

「目力が凄いね?」と言って更に「やっぱり、秋の童話は、ウオンビンさんが

最高ね!」と言って、笑っていた。

カノンの母親は、「あら?ママは断然、イ・ビョンホンさんよ。」と言ってカノンと

    キャッキャとはしゃいで、話しを弾ませていた。

カノンの父の俊介も「サヤちゃん、本当に心配かけちゃって・・・悪かったね。

 カノンが事故に遭ったと聞かされた時は、心臓が止まる思いだったが、

      軽い脳震盪で怪我も、かすり傷程度だったから、、、

     それにこうしてカノンが、我が家に暫く戻って来てくれたから、

       返って良かったよ。ハハハ」と言って笑った。

カノン:「サヤちゃん、特待生でカナダに留学って聞いたけれど?おめでとう!!

    やっぱりサヤちゃんは、凄いね」

サヤカ:「有難う。キャビンアテンダントになりたいから、頑張っているだけよ。

     それに、女医には絶対になりたくないから、親への意地もあるのよ。

     5月からカナダに半年くらい行く事になるけれど、出来れば3カ月位で

     帰国するつもりよ。私は時間がもったいないのよ。

     早く社会に出て活躍したいのよ。」っとキラキラと瞳を輝かせて言った。

カノンは「サヤカはやっぱり、凄いし、偉いなって思うな。私は、将来の事、

     全然まだ見えてないし・・・何になりたいとか?何をしようとか・・・

     全く分からないでいるんだもの。

     何だか恥ずかしいな・・・」と言って笑った。

サヤカ;「カノンは、我が鈴木親族のアイドルなんだから、そのまんまで良いのよ。

私はカノンが羨ましいし、時々、私もカノンになりたいって思う事が何度もあるのよ」

トワ(=カノンの弟):「えぇ、カノンになったら、お馬鹿な頭だし、

           ドジで、間抜けだし、直ぐ泣くし、、、

    何かへなチョコな女になっちゃうよ・・・サヤちゃんは格好良いし、美人

     だから、オカメチンコのカノンになったら、モテなくなっちゃうよ。」

カノン:「トワ!!酷い、、オカメチンコって?オバカって?

      ドジで間抜けって??」っとカノンは怒りながら涙目になっていた。

トワ:「ほうら、直ぐ泣く!!オカメチンコ〜」っと益々、

     トワは面白がってカノンをからかった。

         カノンは、わぁんと泣き出してしまった。

  母親は、末っ子のトワにかなり甘く、いつもトワの味方で

       「カノン、お姉さんのくせに、直ぐ泣くから、からかわれるのよ。

       オカメチンコ、いいじゃない、愛嬌があるわね?」と

        言って一緒に笑った。

たまたま父親が、書斎に戻ってしまっていたので、助け船を出す人がいないので、

カノンは、「トワ嫌い」と言って一人でいじけて泣いていた。

 サヤカは、トワは本当は姉のカノンが大好きで、、、

   良く好きな子への愛情表現をどうしたら上手く表せるのか分からず、

      逆の事を言ったり、してしまう子がいるのと同じ事を

            トワがしているのだと思った。

  本当に、小さい頃から、仲が良くいつも一緒にいて遊んでいたからだ。

   喧嘩もするが、それでも直ぐに仲直りしているし・・・

 トワが、陰で姉のカノンの事をいつも自慢しているのを、

     サヤカは知っているからだった。

    「僕のお姉ちゃんは、超可愛いし、お姫様みたいなんだ。

     それに洋服とか作ったり、料理が上手だし、

      掃除も上手いし、、、優しいし、、、ピアノも上手だし、

 僕のお姉ちゃん、本当に可愛いんだ」と言っているトワの言葉を、

     何度も耳にしていた。

    カノンは親戚中のアイドルで、サヤカの両親も

   「カノンちゃんは本当に可愛いし、素直だし、

      お姫様みたいね」と言っていたし、

      サヤカ自身も、カノンを見て、お姫様だと思っていた。

    そんなお姫様が、好きになった男の子は、

          韓国人の留学生の男の子だった。

            しかし、、

         今は、もうその男の子=

           テファの事を忘れさせなければいけない・・・

   そうしなければ、カノンが悲しい思いや、辛い気持ちになって、

        病気になってしまう・・・そんな感じがしたのだった。

        その日は、夕食をカノンの家族と済ませ、

         サヤカは一人、世田谷のマンションに戻った。

          カノン達が玄関まで見送ってくれた時に、

              サヤカは努めて明るく

      「私も明日から1週間、長野の実家に戻るわ。

           じゃあ、カノン、長野からマンションに戻ったら、

                   連絡するね?

        それまで横浜で、ノンビリ過ごせばいいかもね?

         もっともっと元気になって、世田谷で会おうね」

                 っと言って別れた。

「うん、分かった。サヤカも、長野でのんびりして来てね?またね〜」と

元気よく手を振って言ってくれた。

    桜の花びらが、ひらひらと花吹雪のように降って来た。

             「あぁ、もう春なんだ」

                っと、サヤカは呟きながら、

       世田谷のマンションへと先ずは戻ったのだった。



      --------------------------------------------

二人は、新学期が始まる3日前に、世田谷のマンションに合流した。

サヤカ:「4月から、お互い2年生だね?今年も、宜しくね?」

カノン:「エヘヘ、、こちらこそ、宜しくお願いします。

       暫く、ここに戻って来てなかったから、

     何か薄汚れているし、先ずは掃除したいな。

         それに冷蔵庫の中も何もない感じがするから、

             買い物にも行きたいし・・・」と、

             カノンは主婦みたいな口ぶりで、

             家事全般をやろうと張り切っていた。

サヤカは、お腹をかかえて笑いながら

 「カノン、おばさん臭い発言で面白いわ」と言ってケタケタと笑った。

            カノンも一緒になって笑った。

 そして「それにしても・・・」と言いながら、

    カノンは部屋をキョロキョロと眺めた。

  サヤカはギクリとしながら、「何?何か?」と、どもりながら言った。

   カノン:「しばらくここにいなかったけれど、何か凄く殺風景・・・

           こんなだったっけ?」と言った。

        サヤカ:「・・・・こんなって?」

       カノン:「何か、違う感じがしたんだけれど???」

      サヤカ:「え?・・・前と同じだよ・・・ど、、どこが違うの?」

カノン:「うん、、、、上手く言えないけれど、、、何か私たちって、

                 男っけがなくて、寂しいね?」

サヤカ:「彼氏いない歴、1年だもんな・・・カノンはいいじゃない・・・」

         っといいかけて、サヤカはハットした。

カノン:「え?何が良いの?私なんて、彼氏いない歴、何年だろう?

         えへへ。でもいいんだ。私には、SEへENが

              いるもん。」と言った。

サヤカは、ホットした。テファの事は、まだ思い出していなかったからだ。

カノンはSEへENと言う韓国の歌手の男の子が大好きで、

      コンサートには必ず行っているし、

 サヤカも何度か付き合わされてコンサートに行っている。

  カノンが好きになる男の子は、いつも同じだった。

    綿菓子みたいなフワフワした髪型で、

   いかにも王子様みたいな男の子だった。

 カノン自身もSEへENの事を「永遠の王子様」と言って

いるくらいだったし、CDやDVDなども、全部3枚ずつ購入し、

 1枚は永久保存版できれいに取ってあるのだった。

 あとの2枚は聴いたり、見たりをバンバンして、失くしたり、

  擦り切れて壊れた場合のスペアとしてしていた。

  テファも、アイドル歌手の様な甘い顔立ちで、

        カノンが好きになりそうな

        王子様のような容姿だった。

カノンは、テファの事を本当にすっかり忘れてしまったようだったし、

       テファと出会う前の、元気で可愛い、

         良く笑う女の子・・・

       普通の女子大生に戻っていた。

サヤカはホッとしながら、、それでもこの世田谷のマンションにいたら、

    ひょんな事で思い出してしまうのではないかと?

         不安な気持ちでいたので、

     「引っ越ししようかな?」っと呟いた。

    カノンは、聞こえてなかったみたいで、

    フンフンと鼻歌交じりに、掃除を始めていた。

      4月はもう目前で、

    大学二年生が始まろうとしていた・・・・

         春は新しい出会い、

              新しい季節なので、

             何をするにもピカピカしていて

             新鮮な気持ちになるし、

       きっとカノンも、新しい素敵な出会いが

              あるだろうと・・・

     サヤカはそうであって欲しいと願っていたのだった・・・



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