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作品名:潮風のセレナーデ・・・会いたい気持ち・・・ 作者:HAPPYソフィア

最終回   オッパ アンニョン
最終回 「潮風のセレナーデ〜オッパ、チルゴワッソヨ 
                 アンニョン〜」


 カノン達がホテルに到着すると、既に明日、帰国の生徒や
 家族達が沢山、集まっていた。

 各語学堂の大学別に部屋割が掲示されており、カノン達は
 南棟の25階のシーサイド側のゲストルームと呼ばれる
 家族用の大きめな部屋だった。
 
 崔 雅子:「わぁ、ほんまに、ええ部屋やね、海が良く見えるわ。
       あっ、こら、静かにせんと!」雅子はベットをトラン
       ポリンにして遊ぶ子供たちを窘めた。
 ソンジェもカノンの荷物を運びながら、「あぁ、本当に良い部屋で
           すね?ここからなら仁川空港も近いし、便利
           ですね?僕も、日本に留学すると思いますか
           ら、このホテルを利用しようかな?」と笑っ
           て云った。
 カノン:「オッパちゃん、韓国の大学出て、もう就職先も決まった
      のに又、日本に留学するの?」
 ソンジェ:「・・あぁ、僕の故里は、やっぱり日本だと思うんだ・・
       本当の母さんの事は全く記憶には無いけれど・・・以前、
       日本語を学びに東京に留学に行った時に、妙に懐かしい
       ・・・そして自分の気持ちが落ち着く感じがしたんだ。
       日本人の友人も出来たし、日本人との交流の方が、自分
       には合う感じがしたし・・・日本でもう一度、音楽を勉強
       してみたいと思うようになって・・出来れば東京藝術大学
       の大学院を目指そうと思ってるんだ。」

 雅子・カノン:「東京藝術大学?!」

           二人の声は驚きながらもハモった。

     東京藝術大学は、日本では1番の芸術学校で、東大に行くよりも
     寧ろ、難しいとされていたし、余程の才能があっても、その大学
     では凡人になって潰れる事もあると云う有名な大学だった。

 ソンジェ:「実は・・もう願書も取り寄せていて、10月に日本に行く予
       定なんです・・どうなるか分かりませんが、自分の人生を
       音楽でやって行こうと・・・そう思っています。」

  ソンジェの瞳はキラキラと輝いていた。カノンもそんなソンジェを見て
  嬉しくなった。オッパちゃんは大丈夫・・きっと大丈夫だと思った。

       ピンポンとドアベルが鳴った・・・
         
       雅子の子供たちが、ドアを開けた・・・

       サヤカだった・・「え?サヤちゃん、どうして?」
       カノンはビックリして、目をマン丸にさせた。

  サヤカ:「カノン、明日、帰国って事で、私は、一緒にカノンと日本に
       戻ろうと思ってね、韓国に遊びに来ていたの。あ!一人で
       来たんじゃないわよ、大学の友達の蘭子や、メイ達と来て
       るの。2泊三日の旅だから、短いんだけどね?このホテル
       に泊まることとかは、ソンジェさんから聞いて、、、」
    ソンジェの方を振り向きながらサヤカはニコヤカに話をした。
    ソンジェも、サヤカとは初めての対面じゃないみたいだった・・・

    サヤカは、ソンジェとは、ずっとメル友で、実は3日前に、1回
    会っていて食事をともにしたと云った。

    カノンは二人の雰囲気が凄く良いので、嬉しくなった。
    サヤカはオッパちゃんみたいな男の人が好きなのだ。
    美しくて、繊細で、優しい・・・自分にない才能を持っている
    人がサヤカは好きなのだ・・・
          
 カノン:「じゃあ、サヤちゃんは、明日は一緒の飛行機?ホテルもこの
      ホテルなの?」
 サヤカ:「ううん、違うの・・ホテルも明洞にあるウエスティン朝鮮
      ホテルよ、だからパーティが終わったらタクシーで帰るわ。
      飛行機は、カノン達の少し前の便で帰るの。でも成田空港で
      お茶でもして待っているから、カノン、世田谷まで一緒に帰
      りましょうね?」
 カノン:「うん・・でもパパ達も来ているかも?」
 サヤカ:「あぁ、そうね、そしたら、横浜の家に行ってお土産でも渡し
      ながら私も泊めて貰っちゃおうかな・・」
 カノン:「それだったら、良いね・・」
 
 サヤカは、パーティで会いましょうとし、仁川を蘭子達と見学して来る
 と言って、去って行った。ソンジェもロビーまで送るとし、出て行った。
 
 雅子:「カノンちゃん、サヤカさんてカノンちゃんの従姉妹でしょ?
     どことなくカノンちゃんに似ているけれど・・でもモデルさん
     みたいに綺麗で華やかな人ね?」
 カノン:「ええ、鈴木家でも、断トツの才女で、家が大きな病院をやっ
      ていて、両親もお医者さんになって欲しいと言ってたのです
      が、どうしてもキャビンアテンダントになりたいから大学を
      医学部を中退して受け直して私と同じ大学の英文科に通って
      います。英文科でも1番です・・多分・・」
 雅子:「見た感じ、本当にシッカリしているお嬢さんで、ステキね。
     これからは日本人もあんな感じのお嬢さんが増えると良いわね。
     日本はやっぱり、国際的な場に弱いでしょう?国交って言うん
     やろうけど・・もしサヤカさんみたいな女性が颯爽と国際社会
     に乗り出したら、もっともっと日本は注目されて元気になるん
     じゃないかと思うわ」と言って笑った。
     
          カノンも、納得して、笑った・・・ 

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 エレベータの中で、ソンジェはサヤカに「遠いのに来て下さって有難う
      ございます。」と言った。サヤカも「いえいえ、ソンジェさ
      んのお陰で、カノンは楽しい滞在が出来たと思います。唯、
      気になるのがテファさんのこと・・カノンは記憶を戻した
      のでしょうか?」
 ソンジェ:「・・恐らく、全部ではないにせよ、思い出してはいると
       思います。でも思い出がなくても、今のカノンは再度、
       テファに恋してます。テファも又、カノンを思っていま
       す。僕は二人に強い縁を感じます。引き裂いたら・・・
       感じがします。」
   ソンジェは寂しそうな頬笑みで、サヤカに言った・・・
   サヤカも考えながら「・・そうかもしれませんが・・・でも・・
             やっぱり、私はテファさんは好きになれない
             です。カノンが悲しい思いを今後もしそう
             です。」
 ソンジェはサヤカの気持ちも分からないでもなかったし・・・唯、微笑む
 しかなかった・・エレベータがそうこうする内に、2階のロビーに到着
 した。「では、パーティ会場で会いましょう」とし、二人は握手して別れた。

  
      「あの・・・」
  
  すると後ろから、サヤカは声をかけられた・・・
      
    「ハイ?」

     振り返ると、朴ソンアと呉ジナが居た。

 朴ソンアは、3番目の金子瞳のホストファミリーだった。ソンアは姜ユリ
 と同じホンデの日本語学科の2年生であり、多少は日本語が出来た。
 呉ジナとは遠縁の従姉妹にあたるそうで、呉ジナは今夜のフェアレル
 パーティで演奏を頼まれていたため、出席することとなり、リハーサル
 を終えて、ソンアとお茶を飲んでいたのだった。
 すると、かつての恋人であるソンジェが、ニコヤカに握手をしながら
 サヤカを見送る姿が見えたので、思わず声をかけてしまったのだ。

  ジナ:「・・あなたは・・李ソンジェとかどういう知り合いなん
      ですか?」
  サヤカは何となく挑戦的な目をして言葉を発するジナに、「え?・・
  なんで私が答えないといけないの?失礼ね?」と英語で言った。
  するとジナはソンアに通訳を頼み、簡単に自分はソンジェの恋人で
  あった事を伝え、それで気になって声をかけた事を、素直に言った。

 サヤカは「あぁ、そうでしたか・・・残念ながら、私は唯の知り合い
      です。私は鈴木花音の従姉妹で、彼女を迎えに来たの。
      唯、それだけです。」と笑って言った。・・ジナは、そう
   いえば、笑った顔が何となくカノンに似ていたので、ホッと安心
   した。

       「サヤカ」っとロビー入口からサヤカを呼ぶ声がした。
        蘭子とメイだった。
 サヤカ:「人を待たせてますので・・・パーティでの演奏を楽しみ
      にしてますね?ソンジェさんもいらっしゃるみたいだし
      頑張って演奏されて下さいね。・・でもソンジェさんは、
      残念ながら心は貴女から離れたみたいですね。だから、
      貴女も新しい素敵な出会いがあると良いですね?」

  そう言って、サヤカは足早に友人たちの居る入口へと向かった。


       ガシャン・・・
         何か心が壊れる音が、ジナの心の中でした・・・

      ソンジェを私はまだ愛している・・・
       ソンジェは、私の恋人よ・・・・
          嫌いで別かれたのではない・・・

       ソンジェが私の前から去ってしまうことは考えただけ
        でも気が狂いそう・・・
          私は・・・
              私は・・・
               ソンジェを
                  愛している・・・

   ジナは泣き崩れた・・・ソンアはそんな姿を見て、ジナが
   哀れでならなかった・・・
    「ジナちゃん、立って・・・ねぇ、、ジナちゃん、
     元気を出してよ。私に良い考えがあるの。」

      「え?」

   ソンアの言葉に、耳を傾けた・・・
   ソンアはここでは何だから、ジナの部屋に行きましょうとし
   ホテルの部屋へと二人は向かった・・・・


  −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


  ユリは、もうホストファミリーではなくなり、財力も無いし
  地位も名誉も、美しさも何もなかったが、それでもこの夏の
  事は良い思い出となり、金子瞳とも暫くは寝食を共にした仲
  だったので、お別れだけは言いたくて、ホテルに来ていた。
  パーティにも出席して欲しいと瞳は言ったが、自分はもう、
  ホストファミリーではないし、自分が出る事によって、気分
  を害する人達も多いだろうし、、、醜い顔を皆の前にさらけ
  出す勇気もなかった・・だから、ひっそりと人影の少ない
  ホテルのベンチで待ち合わせを瞳として、「ユリちゃん、
  有難う、凄く楽しい忘れられない夏だったわ。これから大学に
  戻って就職活動を頑張ってするわ。そして出来れば翻訳家を目
  指してみるわ。お互い、競争だね?ユリちゃんも、頑張ってね。
  いつも応援しているからね。日本に来る事になったら、今度は
  私の家に滞在すれば良いわ。」と言って涙をためた。

   ユリも涙が溢れ「有難う・・私も・・頑張ってみるわ・・」
   
  ユリは、心からそう思った。こんな気持ちになったのも初めて
  の事だった・・・

  瞳:「・・・テファさんは今夜は来ないのかしら?」とつい言葉
   が滑ってしまった・・・

  ユリ:「・・多分、、、いえきっと来ると思うわ。カノンちゃん
      に会いに来ると思うわ。」
    そう言って笑うユリが、なんだか不憫に瞳は思えた。
  瞳:「・・・ごめんね、、、でもユリちゃん、本当にテファさん
     の事、諦められるの?」

  ユリ;「・・・オッパを諦める事は辛いし、、苦しいけれど・・
      でもオッパの心は、もうとっくの昔に私から離れていた
      ・・・多分、最初から・・・オッパは私を妹・・幼馴染
      みとして仲良くしてくれているだけだったの・・・
      それがよく分かったから・・・私は大丈夫よ。」
 
  ユリは、そう、私は大丈夫だと何度も心の中で言っていた・・・


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 フェアレルパーティがホテルで華やかに開催された。
 カノン達も皆、ドレスアップをし、家族と別れを惜しみながら
 最後の食事会をしていた。
 呉ジナが、ピアノ演奏で招待され、演奏が始まった。
 ソンジェは「やっぱり、ジナは上手いな・・」と言ってリズムを
 一緒に取っていた。カノンはクスクスと笑いながら「オッパちゃん、
 貧乏ゆすりはお行儀悪いですよ♪」と言った。
 
 ソンジェ:「えぇ?貧乏ゆすり?・・ハハハ、でも僕は貧乏だか
       らしょうがないよ」と言って笑った・・・
 勿論、カノンの冗談であったが、最近は、ソンジェもカノンの
 冗談にもスッカリ慣れて、それを上手く交わすのが楽しかった。

 ソンジェ:「カノン、このパーティが終わったら二次会になるんだ
       けど、ちょっと僕に付き合って欲しいんだけど?」
       
 カノン:「え?」

 ソンジェ:「最初のホストファミリーとして、渡したいプレゼント
       があるんだ。」
 カノン:「・・ハイ、分かりました。着替えたら直ぐに行きます。」

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  その頃、テファは既にホテルに到着していて、ホテルのカフェで
  軽食をとっていた。
  すると見覚えのある姿を見た。

   「ユリ、ユリじゃないか?」
    「あ!オッパ・・」
  
 テファ:「ユリも来ていたんだね。」
 ユリ:「ええ、パーティには出ないけれど、どうしても瞳ちゃんに
     お別れを言いたくて・・・。でもチョットお腹が空いちゃ
     って、それでササット食べて帰ろうって思ったの。オッ
     パは?」
 テファ:「・・・うん、最後にカノンに会いたくて・・・
      僕はホストファミリーじゃないからパーティには参加
      出来ないからね、やっぱりお腹が減って、ここで軽く
      食べてたんだ。」
 ユリ:「・・あぁ、そうなんだ・・きっとカノンちゃんも、喜ぶ
     と思うわ。オッパが来てくれたから・・・
      オッパ、オッパはカノンちゃんと居る時の顔が、全然
     違うの知ってる?カノンちゃんも、違うのよ。」
 テファ;「え?違うって?」

 ユリ:「二人とも、凄く楽しそうで、いつも笑っていて、、、
     カノンちゃんはもっともっと笑顔になって輝くのよ。
     オッパの事が大好きだって言うのが分かるの・・・」
 テファ:「・・えぇ?そうかな?・・なんだか照れくさいな・・」
 ユリ:「私は、オッパが小さい頃から好きだったけれど・・
     オッパの心が、カノンちゃんに向いていて、カノン
     ちゃんが羨ましいわ・・・」
 テファ:「・・・ユリ・・・」
 ユリ:「ああ〜、でもオッパ、私を哀れまないでね?私だって
     ミスホンデだったんだから!!こんないい女をフッタ
     代償は大きいわよって思わせたいわ。アハハ。」っと
     高らかに笑いながら言った。

   テファは、心の中でユリ、お前の気持ちに応えてやれ
   なくて、ゴメンナ・・・っとつぶやいて、食べていた
   サンドイッチをユリに勧めた。


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  1次会が終わり、パーティは二次会へと移る事になった。
 崔の家は、まだ子供が小さいため、子供たちを寝かしつけない
 と行けない為、二次会はパスすると言ってくれたお陰で、カノンは
 ソンジェと出かけやすくなった。

 軽装に着替えて、カノンはソンジェと、出かけた。

 カノン:「オッパちゃん、どこに行くの?」

 ソンジェ:「うん、この近くなんだけど、、、海さ・・カノンは
       海が好きなんだよね?」

 カノン:「うん・・・大好きです。私は生まれも、育ちも港や海が
      近い横浜だから・・・」

 ソンジェ;「仁川はね、海が近いんだよ。それにこれからはどん
       どん観光地としても有名になって来る場所だよ。」

 カノン:「ふうん、そうなんだ〜」

 ソンジェは腕時計を見た・・そして目を閉じて、「よし!」と
 心の中で呟いた。

   「カノン、この夏、韓国に来てくれて有難う。
     僕を家族にしてくれて有難う。
      楽しい思い出を有難う。
       カノンには有難うの言葉しか浮かばないや・・」

    ソンジェは笑いながら穏やかに話した。
    カノンは、その一つ一つの言葉を聴いている内に涙が
    こぼれた・・・

  ソンジェ:「・・・カノン、僕から韓国に居るカノンへの
        最後のプレゼントをするよ。
         この砂浜を、カノンの歩幅で888歩、
        歩いた所に今から行って欲しい。時間にすると
        1歩1秒とすると888秒=15分もしないと
        思うけど・・・そこに僕のプレゼントがあるんだ
        貰ってくれるかい?」

 カノン:「・・え?オッパちゃんも一緒に行くでしょう?」

 ソンジェ:「僕は・・行かない・・ここで待ってるよ。カノン
       一人で行って欲しい・・」

  その時、カノンは、きっと「オッパ」がいるんだと直感した。
  オッパちゃんからのプレゼントはきっと、オッパに私を会わ
  せてくれる事・・そうに違いないと思った。
  待っていると言いながらも、きっとオッパちゃんは、ホテルに
  戻るだろう・・・
  
 カノン:「・・待ってるって・・・どのくらい?」

 ソンジェ:「・・・うーん、そうだな1時間・・1時間位、待って
       居ればいいかな?多分、ホテルはあそこだし、一人で
       もカノンは帰れると思うよ。何かあったら、携帯で
       連絡してくれれば、迎えに行くから・・・カノン、携
       帯、持ってる?」

 カノン:「・・・持ってるけど・・・でも・・・」

 ソンジェ:「・・・大丈夫・・早く行っておいで、待ってるから。
       振り返ってはダメだよ。振り返る事は過去に戻る事な
       んだ。だから、振り返らずに、真っ直ぐ前を向いて、
       僕からの未来のプレゼントを受け取って欲しいんだ。
       僕からのお願いだよ。いいかい?カノン、行っておい
       で!」そう言って、カノンの背中を押した。

 カノンは、「・・分かった・・でも、待っていてね、戻って
       来るから・・」と言って振り返らずに走りだした。
       早く行って、そして戻って来よう、戻らなければ
       行けないと思ったからだ。しかし、どうにもこうにも
       心ばかりが焦って、足取りが上手くゆかず、途中で、
       カノンは転んでしまった・・・・



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   ここからは、HAPPYソフィアからカノンにバトンタッチします。



   「痛い!!」っと私は思わず膝を抱えて叫んでしまった。
    膝小僧が擦りむけて血が出ていた。
    それでも急がなくてはと思って立ちあがった時、目の前の頭上に
    大きな満月が目に入った・・・

    わぁ、お月さまだ・・・マン丸だ・・・
    蒼い光を浴びて、私は暫く月を眺めた・・・

    私はハッとして、また走り出した・・・
     急がなくっちゃ・・・何故か急がないと行けないような
     気がしたのだった。


   白い影が海辺にあった・・・あ!!居た!!
   私は嬉しくなって、彼の後姿・・・背中に抱きついた。


     「カ・ノ・ン?カノン?!」


   「ただいま、、、オッパちゃん」
     私は元気よく、オッパちゃんであるソンジェさんに
     声をかけた。

   オッパちゃんは驚いて「・・どうして?行かなかったの?」
   と言った・・・
   私は、「行こうとして・・走って行ったけれど、途中で、
       オッパは多分、来ないって思ったの。
        途中で転んで起き上がろうとした時、大きな月
        が見えて、なんだかオッパちゃんに会いたくな
       ったの。だってオッパちゃんは私の家族だし、な
       んだかオッパちゃんが泣いてる感じがしたの。
       元気のない時は、いつも私がクリクリの歌を歌う
       のが定番だし・・・それにね、オッパちゃんは私
       の事を、兎に似ているって言ってくれたでしょう?
       オッパや、ホンデの人達は私を狸に似ているって
       云ってた・・・それに私はお餅が大好きで・・・

   つまり、日本では、月と兎や狸さんは、超仲良しで、兎さん
   は月に住んでいてお餅をペタペタついてるって言うお話も
   あるの・・オッパちゃんは月に似ているの。オッパは、太陽
   みたいな人で、一人でも平気だし、皆の憧れで、強くて元気
   な感じがするの。太陽に憧れて近づくと皆、溶けちゃって、
   一緒に住む事は出来ないの・・・ウサギも狸も焼け焦げちゃう
   しね・・・えへへ・・・
    オッパはこれから先も、きっと一人でも元気に力強く生きて
   行けると思うし、オッパには幾らでも素敵な人が現れると思う
   し・・・お互いにそれぞれの国で、それぞれに頑張って行こう
   って、何故か?思ったの・・・そしたら心が軽くなったの。
   
    日本に居た時も、私は「ヨジャチングよりもトンセンである
    ポジションを好んだのは、トンセンなら、バイバイはないし
    ずっと仲良しでいられる事の方が好きだったから・・今もそ
    の気持ちに変わりないです。私はトンセンで十分だもん。
    本当に・・・それよりも、オッパちゃんの方がもっとカノ
    ンは大事だし、心配です。だからカノンが歌を歌います。」
    私は、元気よくクリクリクリ♪っとへんてこな歌を歌いだ
    した。


    そうなのだ、私には分かっていた・・・
    多分、オッパは待ち合わせに来ない・・・そう思った。
     「日本で会おう」と言う言葉も、よぎったが、、、
    何故か、これが永遠の・・・本当のお別れの様な気がした。

      これで良かったのだ、、そう、良かったんだ・・・
      涙が零れるものの、物凄く悲しくは無かった・・・
      寧ろ、開放感の様なものがあった・・・


   オッパちゃんは「馬鹿だな・・・カノン、今なら未だ間に合う、
           僕も一緒に行って上げるから、行こうよ」と
         云ったが、私は頑なに首を横に振った。



   私は、「オッパちゃん、お願いがあります。カノン、転んで
        足が痛くて・・ドラマみたいにおんぶしてくれる?」
        と云うと、オッパちゃんは、泣き笑いをしながら、

   「良いよ、ほら」と云って背中を向け屈んでくれた。
    私はオッパちゃんの温かい背中におぶさりながら、クリくりの
    歌を歌い続けた・・・

     その時、流れ星がその時、流れた・・・


      「おっ、流れ星だ」っとオッパちゃんも云った。

     私は咄嗟に「オッパ、アンニョン(=さようなら)」
  

            と云った。


       大きな満月が、一層、蒼味を増して、悲しそうに
       輝いた・・・

         チルゴワッソヨ  オッパ、
            チョンマール カムサハムニダ

               アンニョン〜



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    テファは、その頃、まだホテルに居た・・・

     と云うよりも、居させられたのだ・・・


  朴ソンアが、ユリの姿を見て、ユリに喧嘩を吹きかけたのだ。
  
   ユリに散々、苛められていたのはソンアだけではなく、日本語
   学科の生徒たちは、ユリを取り囲んで、裁判が始まった・・・

  ユリは素直に、御免なさいと謝ったが、皆の心は晴れず、土下座
  して謝れと言いだしたり、、、裸になって、皆のさらしものにな
  れとも云った。誰も庇おうとしなかったし、寧ろ楽しんでいるよ
  うだった。
  
   テファは、その騒動を耳にして、ユリを庇いに行ったが、
   ユリは、首輪をかけられ、下着姿で四つん這いにされていた。
   テファは面白がる男子学生に殴りかかったが、人数が多く、
   流石のテファも太刀打ちできなかった。
    後ろから行き成り、クロロフォルモンを含ませたハンカチを
   嗅がせられて、意識が遠のいていった。呉ジナがハンカチを嗅
   がせたのだった。

   意識が遠のく中で、カノン・・・カノンの所へ行かなくては・・
   とテファは、叫んでいた・・・・しかし、薬の力には勝てなか
   った・・・

   ジナは、舌打ちをしながら、テファを自分のホテルの部屋に連れ
   込んでベットに眠らせた。
    この美しい青年をどうしようかと思った。
   従姉妹のソンアから昼間の計画を聴かされた。
    一番の復讐は、このテファを自分の手中に入れることだと言
   われたからだった・・・
   ユリもカノンもテファが好きである事、更にこのテファのせいで
   最愛の恋人だったソンジェも奪われた・・・
   反対にカノンの最愛のテファを自分のものにしたら・・
   カノンは泣き叫ぶだろうか?ユリも傷つくだろうか?更に、今は
   精神病院に居るスンミがもっと荒れ狂うだろうか?・・・色々な
   事が思う描かれた・・・
   ジナはある決心をしながら、眠りについているテファを見詰めた。



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  <仁川空港>


  JL東京行きのファイナルコールが流れた・・・
     皆は、涙でグショグショだった・・・

  私も涙でグショグショだった。辺りを見回してもやっぱり
  オッパの姿は無かったし、昨夜も、きっと待ち合わせの場所には
  来なかったと確信した。
   大変な事件があった事も、丁度、私もソンジェさんもその場に
   いなかったので知らないままだったのだ・・・

   帰りは、自分の日本の大学別での飛行機だったので、KEや
   アシアナで帰国する学生も居たし、JLやANAで帰る者も
   いた。

  ソンジェ:「カノン、気をつけてね」
  崔雅子夫婦:「カノンちゃん、おおきに。また会いまひょな」
  カノン:「ハイ、今度は日本でお会いしたいですね?本当に
       有難うございました。オッパちゃん、絶対、大学院に
       来てね?」
  ソンジェ:「どの道、試験を受けに10月に東京に行くよ」
  カノン:「じゃあ、もう直ぐですね・・楽しみに待ってます」
  

  私は雅子や雅子の子供たちと、きっとまた会いましょうと
  指切りげんまんをし、ソンジェとは韓国の約束を手でしあった。
  

   そして元気よく手を振って、搭乗ゲートへと向かった・・・
   最後の最後まで、やっぱり、オッパは来なかった・・・
    そうだ、こんなモンなんだ・・・
    人は期待をするから、結果が自分の考えと違うと失望し
    たり悲しくなるものなのだと云う事を、私は改めて、
    学んだ。
    更に空港は、別れを告げる方は未来の扉を開ける方で
    あり、告げられる方は、過去に残される・・思い出よ
    りも思い入れが強くなる事も改めて分かったのだった。

   そうだ、私は今度は、未来の扉を開ける方なんだ・・・
   新しい道をシッカリ進んでゆこう・・・そう思った。

   この夏の事は、本当に忘れられない、良い思い出と経験
   になった・・・有難う、韓国・・
      有難う韓国の人達・・・
        有難う、大好きなオッパ・・・
         アンニョン〜




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  私の大学二年生の夏はこうして幕を閉じた・・・
  良い経験をし、良い思い出となった・・・

  こうして振り返ると、この夏は、自分の人生では
   ほんの1点でしかない事なのかもしれない・・・
  
  あれから、私はオッパには1度も会っていないし、
   オッパが今、何をどうしているのかも分からない・・

  有言実行の人だから、きっと日本のIT企業に就職し
  半導体の研究をしているのかもしれない・・・
  または、英語を勉強したいと云っていたから、今度は
  アメリカを目指しているのかも?しれない。

   唯、言えることは、オッパは太陽の王子様だから、
   いつも強くて、元気で、笑顔の日々を送っている
   だろうと云う事だ・・・

   私は、また神様の悪戯で、オッパに会わせてくれる
   接点を持たせてくれるのを楽しみに待つことにした。

   もし、強い縁があるならば、きっといつか接点がある
   と信じ、楽しみにしようと思ったのだ。

   人生は短いようで結構長い・・・どこでどうなるかも
   分からないが、私も元気に頑張って生きて行こうと
   思った。


  最後まで読んで頂きまして、有難うございました。
  深く感謝致します。   


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