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作品名:潮風のセレナーデ・・・会いたい気持ち・・・ 作者:HAPPYソフィア

第32回   オッパ、ゴマッスムニダー夏の終わり・・・
カノン達は、休憩も取らず、ノンストップと言って良いほど、車を走らせた
 お陰で、14時にはソウルに到着し、ソンジェの持っているスペアキーで
 屋敷の鍵を開けた・・・幸い、家には誰もいなかった・・・
 キムヨナも、夫のキムから娘、ミランの事などを伝えられていた様子で、
 離れの家で荷物をまとめている様だった・・・父親は、恐らくイタリアに
 出張だろう・・・義理母は、年下の部下と情事の為、グアムに行っている
 と様子だった・・・
  「オッパちゃん、支度が終わりました」意外にも早くカノンの支度が
 出来たのでソンジェはビックリした・・・
 ソンジェ:「荷物は、これだけ?忘れ物はない?」と聞き返した。
 カノンは「ハイ、元々、このスーツケース1個と、手荷物だけだったから」
 と云って、笑った・・・
  そうだ、そういえば、カノンと初めて会ったのは、ホテルでの食事会と
 ホストファミリーとの対面の時だった・・
 ミランと一緒に、カノンを迎えに行ったっけ・・・ソンジェは、その時の
 事が、なんだか遠い遠い昔の事の様に思えた・・・
 カノンによってソンジェは元気になったり、幸せな気持ちになったり・・
 忘れかけていた音楽への情熱も思い出させて貰った・・・人をもう一度、
 愛せる優しい気持ちも取り戻せたからだ・・・
 そのカノンが、あともう1週間で、韓国を去ってしまうことが・・・
 妙に切なく、悲しい気持ちになった・・・
  だがこの愛しいカノンが1番好きな相手は、鄭テファであり、自分では
 無い事を改めて知り、、、テファから奪い去りたい気持ちを抑えた・・・

 「オッパちゃん?どうしたの?」とカノンは心配そうに顔を覗き込んだ。
 ハッとしてソンジェは我に返り、「じゃあ、行こうか?カノン」と言って
 家を後にした。
 ソンジェも又、もうこの家には戻らないつもりでいたからだ・・・

 カノン達は、そのまま、崔雅子の家に行き、インターフォンを押す前に、
 ドアが開かれ、パンパンっとクラッカーが鳴った。

雅子:「カノンちゃん、いらっしゃい。今か今かとずっと待っていたのよ。
    大歓迎します。ようこそ!!」と言って温かく迎えてくれた・・
ソンジェ:「雅子さん、本当に済みません。」
雅子:「何をおっしゃる・・・私こそ、嬉しいわ。それにカノンちゃんは
    料理が得意なんでしょう?だから1週間、私は楽させて貰って
    美味しい物を一杯食べさせて貰うわよ〜楽しみだわ〜」
カノン:「任せて下さい・・・何でも作ります。えへへ」
雅子:「わぁ、頼もしいわ。今日は、私が、韓国料理を沢山作ってみるから
    ソンジェさんも食べて行ってね?」
ソンジェ:「はい・・楽しみです」

 カノンはホッとしたのか、「なんだか、急にお腹が空いちゃった」と
 云うと、「じゃあ、ラーメンでも作ろうか?」と雅子は云った。

カノンは「え!!韓国のインスタントラーメン?」
雅子:「え?えぇ・・・カノンちゃん嫌い?」
カノン:「大好きです。いつもドラマとか見てるとインスタントラーメンを
     お鍋に作って、蓋をお皿がわりにして食べてる姿が、凄く美味し
     そうで・・・ラーメンをコンビニに買いに夜中に行って、作って
     食べた事もあります」と元気に云った・・・

    ソンジェも、雅子も、カノンも、皆で笑った・・・


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キム一家もカノン達に遅れること3時間で、屋敷の離れの家に到着した。
母親のキムヨナは、涙を溜め、ミランの手を握りしめて母子の対面を
喜んだ。父親は、「喜びは後で幾らでも出来るから、今は、早くこの
屋敷から離れよう・・・済州島に皆で帰って、やり直そう」と言って
3人は頷いた・・・家の中に、自分たちの身元が分かる物を残してな
いかを再度、点検し、必要最低限の物を持って、屋敷に別れを告げて
後にした。
 ミランは、「カノンちゃんは本当に優しくて良い子だったのよ。
       私が醜い恰好をさせられていた時、学校では、醜い
       と云うだけで、皆からイジメられていたのに、庇って
       くれたり、友達だと言ってくれたのは、カノンちゃん
       だけだった・・・人の真価は外見やお金ではない事を
       教えてくれたのはカノンちゃんだった」と両親に云うと
 キム夫妻は頷いて「良い友達を持ったな・・落ちついたら連絡を
          してみると良いよ」と言った・・・
 ミランは「うん」と頷いた・・・
 親子3人でこれからは、楽しく暮らしてゆこうと誓い合ったのだった。

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スンジュたちも4人で、自分たちの旅の終わりを惜しみつつ、家に
戻っていた。
 途中、アヤが、何度も気分が悪いと、吐き気を訴えた。
トンスの運転が韓国人的で荒い感じがしたのと、海辺の道を窓を
開けての運転だったので、浜風の匂いがきつくて車酔いをしたのだと、
アヤは訴えた。
 ヒロミもつられて、車酔いをした様子だった・・・
 いや、ヒロミの場合は、帰りたくないと云う気持ちが、そうさせて
いるのかもしれなかった・・・
  少しでも長く、4人で旅を楽しみたかったのかもしれなかった。
 途中、夕日が見えて来て、その夕日の大きさや美しさに
 4人は、車を停め、眺めることにした。

トンス:「アヤ、気分はどう?大丈夫?」
アヤ:「・・・うん、大丈夫・・・」
トンス:「そうか〜、良かった・・・」
アヤ:「ねぇ、トンス、私の事、帰国しても本当に忘れないで居て
    くれる?」
トンス:「・・アヤ・・当たり前だろ?忘れるもんか!」

スンジュ:「ヒロミ、日本に帰っても俺にメールとか電話とか
      してくれよ・・」
ヒロミ:「えぇ?私がするの?」
スンジュ:「・・・あっ、いや、勿論、俺もするけど・・・だけど
      なんか女がしてくれると、やっぱ、嬉しいしね」

ヒロミ:「男のプライドって奴?」
スンジュ:「まぁ・・・そんなトコなんだけどさ・・」

カナカナカナ・・・鈴虫の鳴き声が、夏の終わりを告げるかの
様に、寂しく鳴いていた・・・・
  あぁ、もう夏も終わるんだ・・・
    9月から、また大学がお互い、始まる・・・・

大学始まったら、またバタバタと忙しくなるだろう・・・
この夏の事は、良い思い出として心に残されて行くのは間違いないが、
記憶と言うのは、曖昧で、そして時間とともに忘れてしまう物なのだ
ろうか?スンジュの事も、良い思い出になってしまうのだろうか?
やがて、スンジュの、声も、顔も忘れてしまうのだろうか?
何となく、センチメンタルになりそうな心を抑えてヒロミは明るく
     「ねぇ?お腹空かない?」
         と云うと、そういえば、腹減ったとトンスが
         オドケテ云ってくれたので、
 近くの食堂で、夕飯をとることになった。



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 3番手でソウルに到着したのは、テファ達だった・・・
 テファは、自宅に、ユリ達を招き入れた・・・
 アミンも心配そうにユリ達を受け入れた・・・
 しかし、アミンは、変わり果てたユリを見て、余りにも
 醜いので、気の毒に思ってしまった・・・・
 テファの母親は、あんなに自分の息子のお嫁さんはユリちゃん
 しか考えられないと言っていたが、醜い姿につい目を外してしまった・・
  それを感じて、ユリは「御免なさい・・私は、友達の家に泊めて
 貰います」と言ったが、テファが「いや、ダメだ、僕の家に滞在して
 貰う・・それで良いんだよね?父さん、母さん、そして姉さん?」
 と云うと、三人は「勿論よ」と口を揃えて云った・・・ 
 ユリに本当の友達なんている筈はなかった。
 寧ろ、今回の件は、皆、ザマアミロと言ったところが多いからだ。
 テファは、そんなユリの事を知っていたので、変わらず、優しく
  ユリに接した。変わり果てた、オドオドしたユリが可哀想で
 ならなかった・・ユリはいつでも自信に充ち溢れ、元気で、
 少し生意気ぐらいの方が良い・・・幼馴染みのユリはいつでも
 お姫様で居て欲しいとテファは思った・・・

 カノン、今はどうしているだろうか?
 もうご飯は食べただろうか?
 泣いていないだろうか?

 夕食は、テファが好きなプデチゲだった、、、テファの好きな
 スパムのソーセージが沢山、お皿にあって、
  「ソテジ、テジコギ、ソーセージ」・・・
      カノンの声が聞こえたような気がして、
  テファは可笑しくなって笑ってしまった。
 クヨクヨしても仕方ない・・・腹が減っては戦も出来ないし、
 「さぁ、食べようか?」と言って、ユリのお皿を取って、
 テファは、自分の好きなソーセージを盛ってやった・・・


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 次の日、江原道は、雲行きが怪しく、灰色な空だった。

 ヘジャになり切っていたスンミは目を覚ますと、余りにも
 静かなので、何が起こっているのか、起こったのかを思い出すのに
 時間がかかった・・・
 目の前が少しフラフラしたが、昨日の事を徐々に思い出し、
 腹がまた立ってきた・・・

 「スンミ、スンミ、スンミはどこ?」
 「キム、キム?」
  「ユリ、ユリ、ヒトミさん、姜、姜・・、お兄さん、お兄さん」
 知っている名前を手当たり次第に呼んでみたが、しんと静まり返って
 いた・・・

 するとスリッパのペタペタとする足音が聞こえ、ヘジャは「何だ、
 居るじゃない」と少し安心して、その足音が入って来るのを待った。

 ところが、入って来たのは女の子だった・・・
 その女の子の顔を見た瞬間、ヘジャは青ざめた・・・


   「いや・・・来ないで・・・来ないで・・・」
 

 ヘジャは涙声で、発狂した・・・その声のすさまじさで、医師と
 看護婦がやって来た・・・

 「スンミさん、どうなさいましたか?」
  「スンミさん、、、大丈夫ですか?」

  「女の子が・・・女の子が・・・ヘジャ・・・ヘジャが・・」

   「お母さん、止めて!ヘジャを殺さないで。。。」

   「ヘジャ・・・ヘジャが苦しがっている・・誰か助けて!
    ヘジャが死んじゃう・・・」


 スンミは、叫び続けていた・・・
  どうやら、あの忌まわしい事件の事を思い出した様子だった。
 医師は直ぐに警察を呼ぶようにとし、ヘジャの言葉をICレコーダー
 に録音し、立ち合いの看護婦も何人か呼んだ・・・


 スンミの母親イユンミの逮捕は時間の問題だった・・・
 ニュースは韓国中を駆け回った・・・
 逮捕された時、イユンミは、グアムから帰国したばかりで、仁川の
 国際空港に年下の恋人と腕を組んでゲートから出て来た所だった。
 けたたましくフラッシュをたかれ、警官が、二人の周りを包囲し、
 、、ユンミは最初、恋人が何か汚職をして、それで逮捕になったのか
 と思って庇おうとしたが、実は、自分が殺人の罪での逮捕で手錠が
 かけられた事に、動揺した・・・
 「何のことか?全く分からないわ」・・そう云ってとぼけたが、
 「詳しい事は、署で伺います」と冷たく警官に云われ、更に冷たい
 手錠が重くかけられた・・・・

 李建設も、土台がぐらついて来た・・・
 裸一貫で築き上げられた李建設も、黒い噂で一杯だった・・・
 監査が徹底的に入り、ソンジェの父親も取り調べに応じざるおえ
 なかった。

 カノンは、ソンジェと崔の家でこの日も食事を一緒にとっていた。
 横顔が、一層、寂しそうに見え、泣いている感じがして、カノンは
 「オッパちゃん、テレビ消そうか?」と言ったが「いや、良いよ。
  僕の父さんは今や韓国一、名前が知られる有名人だね?ハハハ」
 と、云って笑ったが、もっと悲しい気持ちにカノンはなった。
 
雅子:「ソンジェさん、そうは云っても、あなたのお父さんでしょう?
    辛くは無いの?」
ソンジェ:「辛くは無いと云えば、嘘になりますが、、何れこうなるこ
      とは分かっていたから・・・僕にはもう失う物は何も
      ないです。家族も、財産も、、、地位も名誉も元々ない
      ものだらけです・・・でも僕には音楽や未来があります。」
 そう云って、笑ったソンジェが、雅子は物凄く不憫でならなかった。
 カノンは「え?オッパちゃん、オッパちゃんは、まだ得るものがあるよ
      。カノンと家族じゃん。だから家族は失ってないよ」と
      云って笑った・・・
  ソンジェは、そのカノンの言葉を聞いて、今まで我慢して来た気持ち
  が抑えきれなくなって、声をあげて泣いてしまった・・・・

 カノンは慌てて、どうしようかとオロオロしたが、知り合った当初、
 ソンジェを元気づける為に、「クリクリクリクリ♪」と即興の歌を
 歌った・・・
  ソンジェは、その一生懸命に歌うカノンの姿を見て、更には
 その歌の面白さに、元気が出て来た・・そして泣き笑いとなって、
 段々と笑いになって行った・・・・

 雅子は、急いでタロットで占ってみた・・・
 この二人の未来・・手を取り合ってずっと一本の道を歩いている
 姿がうつった・・・
 やっぱりこの二人は未来は、いつで繋がっている・・・・
 雅子は、ホッとした・・・特に、ソンジェがカノンを必要として
 いるからだった・・・
 
 
ソンジェが自分のアパートに戻ってから、雅子は、カノンと
お茶を飲みながら、雅子の夫の帰りを待つことにした。
 

雅子:「まさか、こんな展開になるなんて思わなかったわ。
    ヘジャさん・・・いえ、李スンミさんが、精神の病で
    病院に緊急入院になり、李建設は今は黒い謎で手入れがされ
    スンミさんのお母さんのイユンミさんが逮捕・・・
    ソンジェさんは辛いでしょうね?でも、ソンジェさんの事、
    私は心配で占ってみたら、決して悪くは無いの・・・
    寧ろ、ピカピカに輝いていて、良い人生かも?なのよ。
    家族も出来るし、子供も2人・・・海があって、素敵な
    一戸建ての南の島で穏やかに暮らしているの・・・
    だから心配いらないわ。」
カノン:「え?本当?良かった〜、オッパちゃんは、凄く凄く優しいし
     繊細な人だから、幸せになって貰いたいです。オッパちゃ
     んは私の大切な家族だし、大好きな人だから・・・音楽も
     凄い才能があって、きっと世界中の人を幸せにしてくれる
     素晴らしい音楽家になると思います。私はオッパちゃんの
     ファン1号になって一生懸命応援しようと思います。」
雅子:「ソンジェさんには恋愛感情とかあるの?」
カノン:「え?・・オッパちゃんは凄く良い人で、大好きで、何て云うか
     本当のお兄ちゃんみたいな感じです・・・」
雅子:「じゃあ、テファさんは?」
カノン:「・・・えっと、その・・・えっと・・・テファオッパは、
      ずっと一緒に居たい、世界中で1番好きな人です・・
      でもオッパは、もしかしたら私の事は妹としか思ってない
      かもしれないです。それでも妹ならバイバイがないから、
      だから私はそれでもヨシって思ってます」
雅子:「テファさんに彼女ができちゃってもいいの?」
カノン:「・・・はい。オッパが幸せなら、私も幸せだからです。
     オッパは私の憧れだし、私の自慢です。オッパがいつも
      笑顔でいて欲しいです。いつも一緒にいると、私は凄く
     楽しくて、元気で、怖いものなんてなくなります。オッパ
     が辛いのは嫌だから、もし私のせいで辛いなら、私は
     オッパとバイバイも出来ます。」
雅子は、そうか〜と思いながら、テファとカノンの事も占ってみたが
二人が今後、交わる場面は、10年後になっているが、、、それも
平行線の道を歩んでいるのだった・・・・
雨?涙?を表すカードがあり、この二人は、好き同士で会っても、
結ばれないと出てしまうのだった・・・
 占いは占いだし、私の占いも外れる時は思いっきり外れるしねっと
雅子は、心の中で思った・・・

   カノンは、首にかけているペンダントを外した。
   そしてペンダントを見詰めて笑った・・・・
   「ソテジ、テジコギ、ソーセージ」
    カノンは何回も心の中で云ってみた・・・・


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語学研修も大詰めとなり、帰国が見えて来た。
テファとも、キャンパスで会う事も無く、会ったとしても、お互い
無視し合う約束だったので、カノンは、日本で又、テファに会える事
を楽しみにしながら、残り少ない、韓国での生活を楽しんでいた。

林先生も、今回のカノン達のクラスを最後にし、教壇を去ることになった・・・
それを聞きつけて、カノン達は、慌てて、林の所に行くと、林はけろりとして
「ジャジャーン」と言って指を見せた・・・

 「実は・・・先生は結婚するのであります。なので、寿退職なのよ。
  あなた達のせいじゃないのよ。ウフフ」

  ・・・と満面の笑顔で云う姿が妙に乙女に見えて可愛いかった・・・

ヒロミ:「先生、相手の人は?」
林:「日本・・」
アヤ:「え?日本人なの?」
林:「いえいえ、韓国人よ。日本人に韓国語を教えているの。この先の
   日本人学校の教師なの・・・」
    アヤは少しガッカリした顔だった・・・

林:「そうね、私も最初はね、日本人の男性と付き合ったことがあるの。
   実際、日本にも留学して・・・その時、毎日、デートしてたわ。
   でもね、やっぱり国や文化、環境・言葉、近い国で似ているけれど
   似てない部分の方が大きいし、、、、国境と同じ位、壁もあって・・
   だから難しいって思ったわ。結婚もお互い考えた事もあったけど、
   結婚は本人同士だけでは済まされないし・・・家族の絆が強い
   韓国では、かなり難しい事だったの・・・距離や溝は深まるばか
   りで、喧嘩ばっかりになっちゃって・・・疲れてしまったの・・
   その内、私は新しい彼氏が出来て、、、それでもう日本人の
    彼とは自然消滅になったの」
アヤ:「日本人の彼氏は、どうしてるのかって気にならないんですか?」
林:「・・・そうね、、でもきっと彼も同じ日本人の可愛いお嫁さんを
   貰っているんじゃないかしら?やはり同じ国同士が気楽よ。」


   国際結婚・・・日本では今でこそ、フランクになっているけれど
   色々な問題や壁がある事を、カノン達は感じ取ったのだった・・・



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ソンジェは、帰国の前に、カノンに会ってやって欲しいと
 テファに依頼をしたが、テファの答えはNOだった・・・
 もう一度、頼みに、テファの前に現れた・・・

 二人はホンデ近くのコーヒーショップに入ったが、
 美しい二人の若者に、周囲に居た人達が振り返った・・・

 カノンが以前、二人を月と太陽と云ったように、二人は対照的な
 美しさを持った若者だった・・・・


 「カノンに最後、会ってやって下さい。」とソンジェは頭を下げ
 ながら頼んだ・・・

テファは微笑みながら「それは出来ない・・・そういう約束をしたから」
と言った・・・

ソンジェはそれでも諦めずに、何度も頼んだ。
今年の夏はもう2度と戻って来ない・・・更にカノンが韓国に来て、
韓国の思い出もクライマックスを迎える・・・だから、最後は、
自分が日本でカノンと付き合っていたペンダントの持ち主だと云う事を
伝えて、日本で又会おうと言ってやって欲しいと頼んだ・・・

 テファ:「なぜ、そこまで僕たちの事を考えてくれるんだい?」
 ソンジェ:「カノンは僕の大切な家族だからだ・・君も知っている
       通り、僕はこの夏、沢山の物を失った。父も母も妹も、、
       韓国の家族を失った・・・李建設と云う大会社・・
       家も財産も地位も失った。。。そんな時、カノンは、
       僕を自分の家族だと言い、元気づけてくれた。更に
       人は、地位や名誉、外見など一切関係ない、大切なのは
       心だと云う事も教えてくれた・・音楽や人を愛する気持
       ちを僕に呼び起こしてくれた・・・だからそんなカノン
       を僕は喜ばせてやりたいからだ・・カノンが1番好きな
       鄭テファから、またねと言う言葉を、カノンに聞かせて
       やりたいからだ・・・」

テファは、ソンジェの真剣な言葉に、心を打たれ、カノンと会う約束を
した。
 どこで会おうか?・・・ソンジェはテファに聞いた。

カノンの帰国は明後日だ・・・明日は、最後と言う事で、語学堂に参加した
日本人達は、ホストファミリー達と、仁川のエアポートホテルで過ごす事
になっている事を伝えた・・・
 仁川か・・・では仁川はどうだろうか?とテファが云った・・・
      カノンは海が大好きだからだ。
      日本で別れる時も、海だったから・・・
      もう時間が無い、明後日の朝、帰国だったと思うけれど?
      そうしたら、明日、食事会などが終わって
       お開きになった後、仁川エアポートホテルに近い海で
       どうだろうか?
       時間は21時・・・どうだ?
  
   カノンには、テファが居ることは告げずサプライズで、
   連れて行くことにするから・・・それで良いだろうか?
   と、ソンジェは云った・・・・
   テファも、OKとし、約束が交わされた・・・



   カノン・・・最後にやっぱり会いたい・・・
    テファは心の中で呟いた・・・




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



崔の家では、カノンが語学堂から戻って来ると大騒ぎで、荷造りが
始まった。
 雅子は、あれも持たせてやりたい、これも持たせてやりたいとして
沢山の韓国の乾物やらお菓子やら、民芸品を詰め込もうとした。
写真も一杯、入れてやりたかったが、今はPCで簡単に送信が出来る
ので、極力、荷物を少なくしたかったが、カノンは雅子の優しさに
心から感謝した・・・

 雅子:「明日はもう仁川のエアポートホテルに午後から行くのだし、
     午前中は修了式だけなのよね?」
 カノン:「ハイ、午前中は、修了式で、終了証書を貰って、
      皆で会食をして・・・それでお家に帰って、ホテルに
      向かいます。・・・何かあっと言う間に終わってしま
      って・・・もっといたかったな〜」
 雅子:「ほな、またいつでもいらっしゃいよ。」
     
 カノン:「ハイ・・雅子さん達も、是非、東京に来て下さい。
      今度は、私が案内したり、お世話します」
 雅子:「わぁ、楽しみだ、おおきに・・
      カノンちゃんに東京見物してもらわんと・・」

 子供たちもすっかり、カノンに打ち解け、「カノちゃん、カノちゃん」
 と慕ってくれていた・・・更に雅子の夫も、今日は早めに帰宅すると
 して、勤務先の新世界百貨店で、美味しい物を買って来るとの事だった
 。カノンが望んでいた、温かく優しい家庭での滞在が出来て、カノンは
 大満足だった・・・雅子と知り合った時のことが、遠い昔の様で、
 鼻がツンと痛くなるような、切ない気持になってしまった・・・

  ピンポン・・・インターホンが鳴った・・・
   ソンジェだった・・・

ソンジェ:「カノン、もう直ぐお別れになっちゃうけれど・・・
      1番最初のホストファミリーとして、今日から帰国まで
       キチンとお見送りに来たよ」と言ってカノンに可愛い
      ガーベラの花束を渡した。
カノンは、満面の笑みを浮かべて「有難う、オッパちゃん」と言った。
雅子は、そんなところに立ってないで、上がって、上がってとし、
ソンジェも遠慮なく上がった・・・


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


テファの家を既に後にし、姜一家は、IT企業の時に、世話をした
部下の計らいで、アパートを借りて、心機一転で出直す事にし、立ち直
ろうとしていた・・・
 元社員たちも、もう一度、姜IT企業を復興させようと頑張っていた。
ユリの母親は、昔、取ったデザイン技術を生かし、ブテイックを開く
友人の店で雇ってもらい、デザイナーとして手腕を振るった。
 ユリはユリで、今までの自分に制裁をしているかのように、醜い事
に対しても、正々堂々としていた。日本語が得意だった事を活かし、
日本語をもっと真剣に勉強し、日本映画や日本のドラマなどを翻訳する
翻訳者になろうと決意した。手に職を持っていれば、外見がどんなに
醜くても、食べて行ける。何か自信を持てるものがあれば、それが
支えになる・・希望にもなる・・・頑張ってみよう・・・
 ユリは以前の高慢なユリではなく生まれ変わったようだった・・・


 テファもユリとはこれから先も仲の良い幼馴染であり、可愛い妹だと
公言し、万が一、ユリを馬鹿にしたり苛める者がいれば、自分が許さない
と睨みをきかせた・・・
 テファにはカリスマ性があり、強い男らしさもあったので、
 誰一人、テファに逆らう者はいなかった・・・・


  瞳は、クラスメイトの家に滞在をさせて貰うことになり、
   またもやホストファミリが変わったのだった。
  それでもユリとの交流は続き、前にもまして本当の親友の様に
  仲良くなったのであった。
  瞳の実家も、出来る限りの援助を、姜ITにしたいとし、
  良ければ、ユリに、日本に留学にいらっしゃいとしていた。
  


  ユリは、本当の友人を得た気がした。
  この夏の出来事を、私は一生忘れないと思ったのだった。
  ところが、瞳が滞在したそのクラスメイトの家族の娘は、
  ユリにサンザ、苛められた朴ソンアの家だった。
  事あるごとに、瞳にソンアは「ユリは残酷だったでしょう?」
  「ユリは悪い女」と言っていた・・・
   瞳は「ユリも、反省し、今は人が変わり凄く良い子になった」
  と伝えるも、ソンアは信じて無かった・・・
  
 ソンア:「ねぇ、テファ先輩は、あんなブスになったユリを
      どうして庇うのかしら?同情かしら?」
 瞳:「いいえ、違うと思うわ・・・ソンアさん、もうユリを
    許してあげて・・・お願いよ。本当に良い子になったのよ」
 ソンア:「フン、私は信じないわ・・・あんな女、この世の中から
      居なくなれば良いのよ。私がされたイジメ・・・瞳さん
      は知らないから言えるのよ。屋上に呼びだされて、裸に
      されて、、、男子に好奇の目で見られ、写真まで撮られた
      のよ?分かる?」
 瞳:「え?」
ソンア:「グッチョルって言う取り巻きの男に、体を舐められたり
     掴まれたりもしたの。あぁ・・・本当に悔しい・・・」

  ソンアは発狂しそうな位、興奮していた・・・瞳は、ただ聞くしか
   なかった・・・

 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−




  別れを惜しむかのように、次の日は朝から小雨が降っていた・・・
   天気予報では、この雨も、午後からは止むだろうとなっていたが、
  何となくセンチメンタルになりそうな気分だった・・・

   カノンは、高校生の様な、紺色の夏用のスーツをかわいらしく着こなした。
   修了式用のスーツは、大学から云われていたことだったからだ。

   髪の毛をお団子にして、リビングに行くと、雅子が「あら、可愛いじゃない」
   と言ったのを皮切りに、子供たちも「カノンちゃん、可愛いねぇ」と言った。
   昨夜、雅子の家に泊まったソンジェも、「カノン、可愛いね」と照れながら
   言った・・・

   泣いても笑っても、今日が実質、最後の韓国の語学留学最後の日だった・・・
   明日は、もう帰国だった・・・・


  雨が降ってる窓を見ながら、カノンは「オッパ」とつぶやいてみた・・
  旅行から、オッパと1度も言葉を交わしてはいなかったし、遠目で見た事は
  あるが、会ったりはしなかった・・・
  メールも電話もしなかった。
   オッパ、もうカノンは、帰国ですよ・・・オッパ、ポゴシッポヨ(=会いたいです)
   胸がキュンと痛くなった・・・
    その胸を押さえて何度も「ソテジ、テジコギ、ソーセージ」と呪文を唱えたが
     痛みは消えなかった・・・



 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
    いよいよ、次回は最終回です。
    筆者であるHAPPY ソフィアから、カノンにバトンタッチ
    させる時が来ました。

    最終回は、チョット、ビックリする・・・だけれど納得する
    =全てが1つに繋がる、そんな結末になります・・・
    あぁ、こう言う事だったんだ・・・
      最初から、結末はこうなることが暗示されてたんだと
       云うお話です・・・
       どうぞ、お楽しみにして下さいね・・・


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