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作品名:潮風のセレナーデ・・・会いたい気持ち・・・ 作者:HAPPYソフィア

第31回   オッパ、ゴマッスムニダー夏の終わり・・・
カノンは何度もオッパちゃんであるソンジェの寂しそうな背中を
 振り返りながら、皆のいる場所へ戻って行った・・・・

 「カノン、遅いよ〜」とヒロミが悪戯っぽい目で云ったが、アヤは
 カノンが、泣いていた様な目をしていたのを察知し
 「カノン、なんか今年は本当に楽しい、忘れられない夏になったね?」
 っと優しい笑みで言った。
 カノンは涙をさっと拭き取って「うん、本当にそうだね?」と言った。
 キョロキョロをカノンが辺りを見回したが、テファがいなかったので、
 今度はカノンが「テファオッパは?」と云うと、「ファジャンシル=
 トイレじゃないかな?さっきから男性陣は、ビールをガブガブ飲んで
 いて、引っ切り無しにトイレに行ってるもん。韓国の男って、凄い
 お酒が好きなのかな?」とヒロミが笑いながら言い、アヤが「そう
 云えば、良くTVドラマで出て来る、爆弾って言う飲み物・・・
 ビールだのウイスキーだの焼酎だの・・手当たりしだいある御酒を
 チャンポンで入れて混ぜて、一気飲みするの!!あれって、凄いよね?」
 と云うと、カノンも、ヒロミも、想像しただけでも恐ろしいと思い、
 顔を見合わせて笑った・・・

 「あ!」カノンは、遠くの豆粒大のテファの姿を見つけ、テファのもとに
 走り出して行った・・・
 ヒロミもアヤも、そのカノンの凄さに、またお腹を抱えて笑った・・・
  テファもカノンの顔を見て優しく微笑んでいた。
  
 カノン:「オッパ、ファジャンシル、長かったね?お腹痛かったの?」
 テファ:「・・え?・・・あっ、うん・・・大きい方を、ウンウン唸って
      していたから・・・ハハハ〜・・・冗談だよ」
 カノン:「えぇ・・・でも大きい方だった感じがする・・・」
 テファ:「え?何で?」
 カノン:「・・・ただ何となく・・・皆さぁん、パランファのボーカルの
      鄭テファは、今まで1時間も、大きい方をしにトイレに行って
      ました〜!!」とヒロミ達に、元気よく云って駆け出した。
 テファは「えぇ?1時間もなんて大袈裟だし、、、カノン、待て、カノン
      ・・・・大きい方じゃないよ・・・」
 カノンは「えへへ・・・皆さあん、パランファの〜・・・」カノンは、
     凄く楽しかった・・・オッパと一緒にいるだけでも幸せだったし
     何もかも楽しくて、いつも笑っている自分がいた・・・

  その時、日本に居た時の事を思い出した・・・・
  テファオッパの好きな子・理想の女の子は、いつも一緒に居て楽しい・
  笑顔でいられる子だった・・・
  それが、カノンではないかもしれないけれど、、、ともカノンは思った
  が、、、それでもカノンは、自分もテファオッパと同じで、いつも
  一緒に居て、楽しくて笑顔でいられる人だと思った・・・
  「トンセン=妹」はバイバイが無いから、このポジションでも良いじゃ
  ない?考えたら、凄く良いポジションかも?っと、カノンは思った。
  カノンには実の兄がいるが、得てして、妹は兄からは可愛がられる存在
  だし・・・ずっと仲良く出来るし、、、甘えられる・・・そう思ったら
  何を悲しんでいたんだろうって思えて来たカノンだった。

 
  夜もふけて来たので、酒席はお開きになり、それぞれの部屋に戻って
  休むことになった。

  カノンとテファも部屋に戻って、シャワーを浴び終わって戻って来た
   カノンを自分の傍に座らせたテファは、真面目な顔をして
   「カノン、大切な話があるんだ」と云った。
  カノンは髪の毛をタオルで拭くのを止めて、「ハイ」と答えたが、
  その顔が、豆タヌキのローリィーの顔に似ているので、テファは
  可笑しくて笑いだしてしまった・・・
  カノンは、「え?何?何で笑うの?」と云うと、テファは「御免、
  御免・・・だってカノンの顔が面白かったから・・・」と声を
  上げて笑った・・・

  気持ちを取り直してテファは「カノン、秘密ちゃん大作戦には、
  実はもう一つ、深い作戦が隠れているんだ・・二人だけの秘密
  に出来る?」と言った。
  カノンは、辺りをきょろきょろさせて、小さな声で「出来る」
  と言った・・・するとそれが益々、可笑しくてまたテファが
  笑った・・・「アハハハ、カノン、本当に面白いね、カノンは
  僕のコメディアンだね」と言った。
  カノンはいつだって真面目なつもりだったので、何で笑われて
  しまうのか?分からなかったが、大好きなテファオッパが、笑
  って楽しんでくれるのが嬉しかった。
  「カノン、ドウシテキョロキョロして声をヒソヒソにするの?」
   と、テファは聞くと、カノンは「だって、秘密ちゃん大作戦で
   二人だけの秘密でしょう?壁に耳あり・障子に目ありって言う
   から・・・声も小さい方が良いかな?って思ったの・・」と
  真面目に云っている姿が、益々、可笑しいし、可愛いので、テ
  ファはカノンを抱きしめたくなった・・・
  気持ちを抑えて、「カノン、実は、さっき、僕はソンジェさんと
  会って話をしたんだ。僕がホテルにソンジェさんを呼んだんだ。」

 カノン:「え?ソンジェお兄ちゃんと会ったの?」
 テファ:「あぁ・・・明日、先手必勝法で、ホテルで会おうとした
      けれど・・・カノンは、スンミの家に戻らないといけない
      し、スンミの家で帰国まで住まないといけない・・
      最低でも1週間は一緒に過ごすことになる・・・これは、
      凄く危険だし、カノンに危険がかかる感じもするんだ。
      だから、明日、ソンジェさんと、二人で、ソウルに戻る
      んだ。そして荷物をまとめて、崔雅子さんの家に滞在
      させて貰えばいいよ。話はもう崔さんの家にはつけて
      あるし、心配は要らない。良いかい?」
 カノン:「・・・え?・・・嫌・・・です」
 テファ:「カノン、聞いて、良いかい?これは、僕からの心からの
      頼みだ・・・それから、帰国までもう僕と学校で会っても
      話しかけたり、挨拶もダメだ・・無視するんだ・・
      良いかい?」
 カノン:「・・・・嫌です・・・出来ません・・」カノンの顔は
      みるみる涙目になっていった・・・
 テファ:「あれ?可笑しいな・・・カノンは僕の云う事ならいつも
      賛成してくれるし、僕の考えが正しいっていつも云って
      くれてたじゃないか?これは秘密ちゃん、大作戦なんだ。
      」
 カノン:「だって・・・帰国まで無視するんでしょう?そんなの出来
      ない・・・うっうう・・・」今度は、カノンは声をあげて
      泣いた・・・
 テファは、我慢が出来なくなりカノンを抱き寄せて「カノン、御免、
 でも、こうするしかないんだ・・・分かって欲しい・・僕は、大学を
 卒業したら、必ず、日本の企業に就職して、日本に行く・・・そした
 ら、又、日本で会おう・・だから、分かって欲しい。泣かないで・・」
  抱きしめられながら、カノンは心が落ち着いてきた。そうだ!オッ
 パはいつだって、考えも無しに、意見を言う人ではなかったからだ。

 「カノン、じゃあ、約束の印に、何か秘密ちゃん大作戦の暗号を作ろう。
  無視しあっていても、悲しくないように・・・」

  「暗号?」
 「うん、暗号・・・必ず日本で会おうねと言う約束の暗号・・・
  どうしようか?」
  「じゃあ、ソテジ・テジコギ・ソ−セージってカノンが云うね。」
 「え?ソテジ?テジコギ?ソーセージ?」
  「うん・・・オッパの好きな物だから・・」
   テファはカノンのその面白い言葉の組み合わせに可笑しくて
   また笑い出してしまったが、「じゃあ、僕は、キンパブ・アイス・
   トックとセブンって言うよ・・カノンが好きな物だから・・」
  カノンも声をあげて笑った・・・
  カノンの涙を指でぬぐいながら、テファは「いいかい?カノン、
  日本で必ず会おう・・絶対、会える・・・大丈夫・・(僕たちは
  もう最初から強い縁があるんだから)・・・」と言った・・・
 
  カノンは「うん」と頷いて、うとうととした。
  テファはカノンをそのまま抱きかかえて、寝室へ向かった・・
 
   明日は、きっと上手くいく・・・大丈夫だ・・・テファは
     何度も自分に言い聞かせた・・・・
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 次の日は、朝から気温がグングンと上がり、朝食で下のレストランに
 降りて行った時間には30度近くになっていた・・・

 トンスもスンジュも昨日の酒がかなりきいたのか?
 更にこの猛暑で、食欲がない様子で、ゲンナリしていた。
 ヒロミとアヤは、だらしないとか情けないと言いながら、かいがいしく
 お皿に沢山の食べ物を盛り付けてテーブルへと運んだ・・・
 カノンもテファと朝食をとっていた。これが二人の韓国での最後の食事
 になるからだ・・・カノンは、朝から「ソテジ・テジコギ・ソーセージ」
 と何度も何度も呪文のように口に出していた。テファはそれを聞いては
 いるが、わざとそっけないフリをしていたが、カノンだけに聞こえる
 様に「キンパブ・アイス・トックとセブン」と言葉を返した。
 カノンは満面の笑顔を見せたが、八ッとして、顔をこわばらせた・・・

 秘密ちゃん大作戦・・・頑張ってやろう!!そう思ったのだ・・・
 テファはヒロミ達に、「今日は、皆を振りまわしてしまうけれど、、、
 本当に申し訳ない」と言って謝ったが、スンジュ達は笑って「ケンチャナヨ
 =大したことないよ」とか「それより、今年のこの夏は忘れられない思い出
 になったし、楽しいから、気にしないで欲しい。」と言った・・・

 すると、この朝を待ち切れずにいたのか?約束の時間よりもかなり早くに
 ヘジャ達の車が到着するらしいと、ホテルのボーイが伝えに来た。
 スンジュ達の酔いは一気に冷めてしまい、顔が青ざめ、ヒロミもアヤも顔を
 見合わせ、思わず立ちあがってしまった。
  
   敵もやるな・・・テファは、口角を少し上げて笑った。
  
 テファはボーイに「済みません、今、朝食をとっていますので、あと少しで
          終わりますから、終わったらお知らせします。それまで
          プールサイドにあるホテルのコーヒーショップで待って
          いて頂けないか?と伝えて頂けますか?」と言った。

 テファは、カノンを連れて、急いで、カノンの荷物を持たせ、タクシーを
 呼んで、ソンジェとの約束の場所のカフェに行ってくれるように、伝えた。
 タクシーにカノンを乗せ、優しい微笑みで「カノン、キンパブ・アイス・
 トックよセブン・・大丈夫・・・日本で会おう、いいかい?約束だよ」
 と云って、約束の韓国式指きりをした・・・
 カノンも分かったとして何度も頷いた。
   「運転手さん、行ってください」とテファは云った・・・
    カノンは慌てて「ソテジ・テジコギ・ソーセージ」と言ったが、言葉に
    なっていないシドロモドロの言葉だった・・・
   テファは、カノンのタクシーが見えなくなるまで手を振ってくれていた。
   カノンもタクシーから身を乗り出して手を振った・・・

  
 テファは、直ぐにソンジェに電話して、計画を実行した事を伝えた。
 そして何食わぬ顔をして、戻り、スンジュ達にもカノンが、動揺しているので
 一旦、部屋に戻らせて、休ませているとした・・・
 
 トンス:「なんだか、身震いして来たぜ・・・」
 スンジュ:「何、相手は女じゃないか・・・同じ人間・・同じ韓国人だ・・」
 ヒロミ;「何があっても、大丈夫よ・・・」
 アヤ:「それに、私たちは、もう帰国だもの・・・」

         帰国・・・・⇒この言葉が皆の心に響いた・・・
                残暑が余計夏の終わりを感じさせた・・・

    テファは努めて明るく笑っていたが、けたたましくロビーに入って来る
    集団を見て、ユリや、スンミ達だと察知した・・・・
    ソンジェは車を預けるふりをしたのか?その足で、直ぐにカノンの待つ
    場所へと直行しているのだろう・・・姿が見えなかった・・・
    
   テファはホッとしながら、自ら敵陣の渦の中に入って行った・・・・

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 テファ:「 おはようございます。皆さん、こんな遠い所に、ようこそ・・
      待っていましたよ」と言って笑った・・・
 
 ヘジャは意地悪そうな顔つきで「わたくし、李建設の愛娘の李ヘジャです。
                初めまして、鄭テファさん、未来の李建設の
                社長さん♪」と言って笑った・・・
 テファは、ハア?何を言っているんだろうと云う顔付きで、冷笑した・・・
 そう!テファは、日本に行く前の頃は、いつもクールで、いつも笑いは冷淡な
 微笑みだった・・・それが一層、テファの美しい容姿を華やかにした・・・
 ヘジャは、「ねぇ、ユリさん、早く挨拶なさいよ、あんなに会いたがっていた
       あなたの恋しいオッパがいるのよ。さあ、遠慮せず、前に出て
       挨拶なさいな・・・オホホホ」と高らかに笑い、ユリの背中を
       押そうとしたが、テファは、それを遮り、「やあ、ユリ、僕も
       会いたかったよ、朝ご飯は食べたか?まだなら、ここのビッフェ
       、まだやってるから食べると良いよ」と明るく優しい声で云った。
 トンスやスンジュ、ヒロミとアヤは、ユリの変わり果てた醜い姿を見て、
 足が止まり、何て声をかけて良いのかも迷っていたのに・・・テファだけが
 変わらず、ユリに接していた・・・
 ユリは顔を隠しながら「・・オッパ・・私がユリだって分かるの?」と
 聞いた・・・
 テファは「あぁ・・・直ぐに分かったさ。ユリは僕の幼馴染さ。ずっと
      僕ら、一緒だったのに、分からない訳ないじゃないか・・ハハハ」

 ヘジャは慌てながら「え?こんな醜いユリになってしまったのよ、気持ち悪く
           ないの?無理してるんじゃないの?パランファのボーカル
           の鄭テファは、そういえばスンミといい、この醜い女の
           ユリと言い、獣が好きなのね?変わった趣味だわ。」
           と云った・・・
 テファは「どこの誰が醜いって?醜い基準を教えて欲しいな・・僕の醜い
      基準だったら・・李ヘジャと名乗る、君が1番醜いよ。話もしたく
      ないし、顔も見たくないんだが、、、ここに居る以上、話をしなけ
      れば行けないし、顔も合わせなければならないしね・・・しかも、
      新学期からも同じ大学で、キャンパスでも場合によっては顔を
      合わせるかもしれないけれど・・・」

 ヘジャ:「ほほほほ〜アハハハ〜、益々、気に入ったわ、鄭テファさん・・
      貴方は何れ私の物、せいぜい云いたい事を云ってなさい・・
      貴方は私なしでは生きていられなくさせてやるわ・・・
      貴方はきっと感謝するわ。こんな美しくてお金持ちで、頭の良い
      私の伴侶となれるのだから・・・李家に、出来ない事はないの・・
      そう!欲しい物は何でも手に入るのよ・・・」

 テファ:「悪いけれど、僕はあなたが、どこの誰だろうと、何をしようと
      構わないけれど・・・僕はあなたとは関係ない・・・友達でも
      知り合いでも何でもないし、、、それよりも僕の大切な幼馴染
      みのユリをコテンパンにして、君って本当に醜い・可哀想な
      人だな・・・ユリ、あおれからユリのお父さん、お母さん・・
      それと・・・」
 ヒトミ;「あっ、ユリさんの家に滞在していたカネコ ヒトミです。」
 テファ:「あぁ、そうだったね・・・疲れたでしょう?ご飯は本当に
      食べたんですか?」
 ヒトミ;「ええ、民宿で食べてきました。」

     テファは民宿と聞いて、意地悪なヘジャがきっと、ユリや
     ヒトミ達を酷い宿に泊まらせて、惨めな思いをさせようと
     したのではないか?と・・・察しがついた・・・
     だが、ユリ達、家族が何だかとても和やかにしている顔つき
     を見て、寧ろ、安心したのだった・・・
     ユリも又、この夏を通じて、大切な事を学んだのだろうと思った。

 ヘジャ:「・・それよりも、カノンさんは、どうしているの?」

  テファは無視した・・・
 ヘジャ:「ねえ、テファさん、カノンはどこ?」
  テファはまた無視をした・・・
 ヘジャ:「なぜ、黙っているの?私が質問しているのよ、答えなさいよ」
  テファ:「僕は、さっきも言いましたが、あなたとは関係ないし、
       醜いあなたとは、話したくも無いから・・・答えたくない
       だけだしね」冷たく言い放った姿が、妙に堂々としていて
       男らしかった・・・
 ヘジャはトンスを睨んで「ねぇ、そこのボケナス、カノンはどこ?」
 と云った・・・トンスは、その蛇の様な目に、恐怖を感じ、アヤの後ろ
 に回って縮こまってしまった・・・
 ヒロミは負けん気が強いので「カノンは、部屋で休んでます。あなたが
 怖いから・・・あなた達が、朝早くから押しかけて来るって聞いたから
 、、今頃、部屋で泣いているかも?」
 アヤも、応戦して「呼んで来ましょうか?・・・本当に怖い人・・・
 そして、醜い人だわ」と言い放った・・・

        醜い?み・に・く・い???
               一体、誰が醜いの?
                   何をこいつらは云っているの?
        醜いのはお前たちだろう???

   ヘジャの中で、何かが壊れて行った・・・・
         え?私は醜いのだろうか?
               私は醜い?
                  嘘よ、何を言ってるの?
                    醜いのは、ユリやスンミよ。

 ヒロミも、トンス、スンジュも一緒になって「本当に醜い女だ」と言った。
 その醜いと云う言葉がこだまの様に、ヘジャの心を突き刺したのだった・・
 ヘジャは頭を押さえて、「うううっ、頭が痛い、、割れるように痛い・・
 スンミ、早く薬を取って頂戴・・」と言ったが、余りの激痛で、ヘジャは
 倒れてしまった・・・・・

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 ホテルの医務室では、難しい精神の病気なので、少し大きめの街の病院に
 ヘジャは運ばれた・・・
 テファは、これで時間稼ぎも出来ると少しほっとしていた・・
 勿論、ヘジャに少し、言い過ぎたかな?とは思ったが、そこまで
 追い詰めないと、ヘジャが益々、増長し、ユリにも留めを刺すだろうし、
 カノンや、トンス達にも、魔の手を広げるだろうから、、、
 それを見込んで、先ずは言葉のダメージをヘジャに与えようと思っての
 作戦だった・・・ヘジャが嫌う言葉は「醜い」だと云うのが分かった
 からだ・・・・
 思いこみの激しい・・プライドの高い女を突き落とすのは、「言葉」だと
 云うのを、日本に居た時、あのキャバクラのモモコたんに教えて貰った
 からだ。
 モモコタンは、今、どうしているだろうか?ふと懐かしんだテファだった
 が、別れた事に後悔はなかった・・・縁がなかったのだ・・・
 更にモモコタンと自分の住む世界が完全に違っていたからだ・・・
  それでもモモコタンが、幸せに笑っていてくれたら良いなと思った・・

     カノン、今どうしているだろうか?
        キンパブ、アイス、トックとセブン・・
           テファは暗号を口ずさんだ・・・

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 ソンジェ:「カノン」

   海の見える見晴らしの良いカフェで、一人キャラメルラテの
   甘い飲み物を飲んでいたカノンは、ウトウトしていたが、
   自分の名前を呼ばれて、つい寝ぼけて「ハイ!」と返事をして
    席を立った・・・ソンジェはそれを見て笑った・・・
   
 カノン:「あ!!オッパちゃん・・」
     カノンは慌てて寝ぼけた顔を整えようとしたが、ソンジェは
     ずっと笑っていた。

 ソンジェ:「遅くなって御免よ。時間がもったいないので、直ぐに
       ソウルに向かおう・・・詳しい事は車で話すよ」
    そう云ってソンジェは、カノンを車に乗せて、猛スピードで
    ソウルに向けて走らせた。

 昨夜、ソンジェはテファに呼ばれて、一足先に、ホテルで話し合いを
 したこと、李家の謎、不思議な事件など、全てをテファにも話したし
 カノンにも今、話した事を伝えた・・・

 カノン:「え?じゃあ、今まで醜いフリをしていたのは、死んだと
      されているミランさんで、ヘジャと名乗る新しい人は、
      スンミさんなの?スンミさんは、ヘジャさんだと思い込み
      をしているの?オッパちゃんの本当の妹は、本当にあの
      事件で亡くなっちゃったの?・・・ユリさんは、ヘジャ
      さんと思いこんでるスンミさんの策略で、大切な物、
      好きな物を全部、奪われてるの?・・・・なんだか怖い
      ね・・・そして可哀想・・・」

 ソンジェ:「可哀想?」
 カノン:「うん、だって、あの事件から、運命や人生が変っちゃった
      んだし・・・お母さんの野心や陰謀でこんなになっちゃって
      ・・・もし、普通の家庭で育ったら、こんな事にならなかっ
      たかもしれないし・・・本当のお友達や、本当に心から好き
      な人を見つけて恋愛したり、楽しい事を一杯したり、、、
      勉強したり、遊んだり・・・何かそれが出来なかったから・・
      可哀想な感じがしました・・・」
ソンジェ:「・・・そうだね・・・スンミは、本来は可愛い女の子だった
      と僕も思うよ・・・」


   暫く沈黙が続いたが、ソンジェが「でも・・・スンミは、初めて
   本当に恋をしたんだ・・好きな男が出来たんだ・・唯、その愛情の
   表現が上手くいかなくて、歯がゆいのか?我儘になっているんだ・・
   スンミを救えるのは、彼しかいないかも?しれない・・」
   カノンは、彼って?と聞こうとしたが、直ぐに分かった。
   それはカノンの大好きなテファオッパだと誰が考えても分かるからだ
   った。そして、醜くなった、ユリさんを救えるのも、テファオッパし
   かいなかった・・・
     カノンは小さな声で「ソテジ・テジコギ・ソーセージ」と
     何度も云ってみた・・・テファオッパ、今、どうしているかな?
     一人で立ち向かっているのだろうか?大丈夫だろうけれど、、、
     さっき別れたばかりだったが、テファオッパに会いたくなった。
     でもこれは秘密ちゃん大作戦だと思って、又暗号を口ずさんで
     笑顔を作った・・・きっと大丈夫・・・
           日本で又会える・・・
                カノンは残暑厳しい窓の風景を見た。


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スンジュ;「なぁ、俺たち、これからどうする?」
ヒロミ;「カノンが、上手くソウルに戻って、荷物をまとめてかくまって
     くれるお家に着いちゃえば、こっちのものよ・・」
アヤ;「でも、やっぱり、テファさんは凄いわ。敵を欺くには味方って
    よく言ったものよね?すっかり騙されたわ・・カノンを呼びに
    行ったらいないんだもの・・・」
トンス:「テファって凄いよな、頭もキレるし・・・どんなに相手が
     凄い奴でも怯まないし・・・俺なんて、ヘジャに睨まれた時
     、オシッコちびりそうだったよ・・スゲー、怖かったしな・・」
アヤ:「情けない・・・もう一回、軍隊に行ったら?」
トンス:「嫌だよ・・・それだけは、嫌だよ」
アヤ;「私には強気のくせに!!」と言って、アヤはトンスの顔を手で
    つねった・・・
トンス:「イテテテ・・・やめてくれよ・・・」
ヒロミ:「やめなってば・・・アヤ・・、カノンは今、どの辺だろう?
     ソンジェさんと上手く会って、車でソウルに向かったのが
     9時だったとしても。今は2時位だから、休憩を取ったとしても
     もうそろそろ着くんじゃないかな?」
スンジュ:「荷物をまとめて、また車を飛ばしてかくまってくれる家に
      行けるのは、夕方かな?・・でもそれ以降は、帰国までは
      安全だろう?帰国まで、後1週間だし、学校をさぼっても
      長い夏休みですってすればいいんだし・・・イム先生に、
      後は任せて相談すればいいしな・・」
トンス:「・・・ところが・・・イム先生さ、ヘジャが圧力かけて、
     ホンデの語学堂の先生を退職させられるらしいぜ・・・
     さっき、ゼミョンからメールが来てさ・・・ほら・・」
 

   トンスがそう云って、皆にメールを見せた・・・

スンジュ:「恐るべし・・李ヘジャ・・・目的の為なら何でもする女だな」
ヒロミ:「ねぇ・・・私たちは、あと1週間で帰国しちゃうけど、
     残った皆・・つまりスンジュもトンスも、、テファさんも
     大丈夫なの?心配になっちゃったわ・・・」
スンジュ:「今は、何も考えられないし・・・考えたくないよ・・
      でも・・・大丈夫さ・・・そんな気がする・・・」
トンス;「心配してくれて有難う・・・何とかなるさ・・ならなかったら
     日本に行ってみるのも良いかもな・・そしたらアヤやヒロミに
     も会えるし・・ハハハ」とオドケテ云うと、一気に場が和み、
     4人は笑い合った・・・


 一方、ヒトミ、ミラン、ユリ、ユリの両親は、それぞれに
 重い気持ちで居た・・

 テファは先ず、昨夜、ソンジェと話した言葉を、ミランと運転手のキム
を呼んで話した・・二人は親子であること、そしてこれを機に、二人で
やはりソウルに戻り、母親にもきちんと話をして、故郷の済州島で暮らし
なさいと言っていた事、更に、今までよく仕えてくれた事は心から感謝
し、自分が音楽家として成功したら、必ず恩返しをする事も伝えた。
運転手のキムは、男泣きをし、「ソンジェ坊ちゃんは本当に優しい人で
、その気持ちだけで十分だと云って欲しい」とテファに云った。
父と娘は改めて親子対面が出来、手を取り合って泣いた・・そして、
直ぐにソウルに戻って、ソンジェの云う通り、済州島へ帰ろうとした。
 テファに別れを告げ、ミランとキムは車で、ソウルへ向かった。
テファは、やはり車が見えなくなるまで、見送った・・・

   「これで2回目の見送りだな・・・」
       テファは、笑った・・・
          見送りと見送られる方・・・どちらが寂しいか・・
        ふと、日本に居た時、カノンが質問した言葉を
           思い出した・・・・

   そう!!
       カノンの答えは、見送る方がより寂しくて悲しいと
       云った・・・
       
   見送られる方は、未来が待つ扉が開けられ、今までの事が
   「良い思い出」になって締めくくられるが・・・
   
   見送る方は、過去に置き去りにされる、そして今までの事が
   いつまでも「思い入れ」になってしまうのだと・・・
   取り残される方がずっと心を引きずるから辛いのだと云って
   いた・・・

   テファの心がチクチクと痛んだ・・・
    カノンは僕と別れる時、ずっと悲しくて辛かったのだろうか?
    寂しかったのだろうか?

   ・・・・・テファは、下を向いていたが、キンパブ・アイス・
   トックとセブンとまた唱えてみた・・・
    フフフ・・・カノン、僕もまた、未来の扉を開けに、日本に
    行くよ・・・

     テファはまた前を向いて歩きだした・・・

  次にテファが向かったのは、ユリたちの所だった。
 
テファ:「ユリ、ユリのお父さん、お母さん、そしてヒトミさん、、、
     この度は大変な事になってしまって・・・大丈夫ですか?」
ユリの父:「・・あぁ・・思ったより元気なんだよ。大丈夫さ、
      ソウルに戻ったら、また裸一貫で頑張ってみるつもりだ。
      幸い、私には愛する守るべきものがいるから、幸せだし
      頑張れるよ。姜IT企業をまた復活させてみるさ」
ユリの母:「私も、アルバイトだってなんだってするわ。全てを失った
      訳じゃないし・・・これで良かったと思う事も、この年
      になって初めて分かったの・・・だから、今の方が本当の
      幸せかもしれないわ・・なんて云っても、負け惜しみか
      しら?でも本当よ・・・」
ユリ:「テファオッパ、私も同じ・・・オッパ、私はオッパの事が
    小さい頃から凄く好きだった・・・今もその気持ちに変わりない
    けど・・・ヒトミちゃんから、オッパとカノンさんの事を聞い
    たの・・・良く分かったわ・・オッパは日本に行ってから凄く
    変わった・・・この事は誰よりも私が近くに居たから分かったの。
    その苛立ちが、弱い人達に向けられちゃったりして、私は、
    凄く傲慢だったわ・・・(醜い私でも)ユリはユリだし、直ぐに分
    かったと今朝、オッパはいつものように、声をかけてくれて、私は
    凄く嬉しかった・・・オッパは、カノンさんによって変わったんだ
    と思ったの・・カノンさんには負けたわ。本当に可愛い、性格の
    優しい人だと思ったの。私も頑張って家のお手伝いをしたり、
    一生懸命勉強して、日本語通訳の仕事をするわ。そして出来たら
    前の顔に戻りたいの・・いえ、今が醜いから成形するってことでは
    ないの・・・大好きなお父さんとお母さんから貰った元の顔に
    戻りたいの・・・今度は心を沢山磨きたいわ・・・そしたら、
    テファオッパみたいな素敵な人を見つけるわ。」
テファは、ユリが、今回の事で、物凄く成長した事を感じ取り、嬉しくなった。

 テファ:「だったら・・ユリ、こんな所にいないで、ソウルに戻ろう。
      皆で戻ろう。」
ユリの父:「・・・でも、ヘジャさんは?」
テファ:「・・大丈夫ですよ、お金もあるだろうし、地位も名誉もある・・
     それにここは韓国・・韓国語だって喋れるのだから・・・、
     どうにでもなるでしょう・・・さぁ、彼女が目覚める前に、帰り
     ましょう・・・そして、何事も無かったかのように、生活しまし
     ょう・・」
ユリ:「・・・でも、私たち、家が無いの・・・きっと報道陣も一杯だろうし・・」
テファ:「ユリ、僕らは、幼馴染だろう?僕の家で暫く住めばいいさ・・ユリの
     お父さんもお母さんもそうして下さい・・困った時はお互い様ですよ」
テファはウインクを1つして、自宅に電話をし、仔細を伝えた・・
 テファの両親も、家族ぐるみで仲良くしていたユリの家族を快く迎えると即答
 してくれた・・・
 「よし、丁度、5人乗りになるし、僕の車で帰りましょう」として、話がついた。
 医者の話では、ヘジャは、今は薬が効いていていて、明日の朝までは眠っている
 と確認が取れた・・・

 テファは、スンジュ達も集めて、ソウルに戻ろうと云うと、全員賛成となった。
 テファは、眠っていると云われているヘジャの部屋のドアを見詰めて、
 「李ヘジャ・・君に僕らを見送って貰おうか?僕らは未来の扉を開ける・・
  君は、過去に残してゆくよ・・サヨウナラ」と心の中で呟いた。 
    


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