午前中の授業が終わって、
昼食を取りに、三人は、ホンデ近くの食堂に行く事にした・・・
その時、カノンは
アクセサリー店の主人のクモクの父親に
声をかけられた・・
クモクの父:「お嬢ちゃん・・・
えっとカノンちゃんだったかな?・・・」
カノン:「あっ、オジさん、
すっかり御無沙汰しています。こんにちは。」
クモクの父:「・・・ペンダントの
お兄さんの事なんだけど?・・・」
カノン:「・・・ハイ、お陰様で、見つかりました・・・
有難うございます。」
クモクの父:「そうかい・・・彼はちゃんと名乗ったのかい?」
カノン:「・・いいえ・・・でも、私は名乗ってくれなくても大丈夫です。
あ・・・でもこの事は・・・
秘密にしていてくれますか?済みません」
カノンは簡単に、テファとの事、記憶が戻った事などを
クモクの父に伝えた・・・・
そして何度も、この事は内緒にして欲しいと頼んだ。
クモクの父:「あぁ・・いいよ・・・お嬢ちゃん・・・
でも良かったな・・・
ペンダントを1つにする時とかあったら、
持って来てくれよ。
おじさんが、綺麗に1つに直して上げるからな・・・」
カノン:「ハイ・・・その時が来たら、宜しくお願い致します。」
カノンは笑って元気よく一礼をした。
クモクの父は「良かったな・・・本当に良かったな」と言った。
ヒロミとアヤとカノンは、
インド料理の店「マハラジャ」に入った。
流石に夏休みを取り始めているホンデの学生たちが
いない為か、店の内は空いていた。
カノンは辛い物が苦手なので、お子様用の甘口のカレーを頼み、
ナンにつけて少しづつ食べた。それでも辛いのか?一口食べては
水を飲んでいた・・・
アヤもヒロミも辛口や、大辛を注文し、ヒーヒー言いながら
食べた。
ヒロミ:「最近、うちらってさ、お昼は大概、韓国料理以外の物
を食べてない?」
アヤ:「もう胃が韓国料理を受け付けなくて・・・疲れてるみたい・・・
そう言えばもうすぐ、このホームスティも終わるんだね・・・
早いね・・・」
カノン:「・・・・そうだね・・・あっと言う間だったね。」
アヤ:「ところで・・・カノン、朝、言おうとした事って?」
カノンは、ハッと思い出し、スンミの不可解な事柄を話した。
ヒロミ:「・・・カノンの見間違いじゃないかも?
余りに謎が多すぎるし・・・
うちらも最初の頃の、オドオドしてるスンミと、
自信に漲るスンミを知って、何か2重人格?
とも思ったけど・・・
2人いると思えば不思議じゃないじゃない?」
アヤ:「それからトンスから聞いた話なんだけど・・・
ヒロミはもう知ってるんだけどね・・
もう5年くらい前の話し・・・
李家で誘拐事件が起こったの・・・
カノン、その話は知ってる?」
カノンは、確か崔さんの家で、誘拐事件があった事だけ
聞いた事を覚えていたが、詳しくは知らなかった。
その事を二人に伝えた・・・・
アヤは、カノンに誘拐事件の話しをしだした・・・・・
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ヒロミは、何だかこれらの事が1本の線でつながっている・・・
そんな気がした・・・
そして「ねぇ・・・カノン、何か恐ろしい事に巻き込まれそうだから、
無視した方が良いし・・・
どちらにせよ、もうすぐ帰国だから・・・
帰国までこのままでいようよ」と言った。
アヤもヒロミの意見に賛成だった・・・
しかし、アヤはソンジェ贔屓な部分があって、
出来ればカノンはソンジェを選んで欲しいと願った・・・
1番、波風が立たないし・・・
1番無難な選択だと思ったからだ・・・
カノンは兄のような存在と言ってたが、
ソンジェの方は、多分・・・カノンが好きだと思った・・・
恐らくテファに負けないくらい・・・・
ヒロミ:「・・・・・・ね?アヤもそう思うでしょう?」
と言われて、アヤはハッとして
「・・う?うんそうだね」と慌てて口裏を合わせた・・・・
カノンはカノンの方で、帰国までには、記憶が戻った事を
テファに伝えようと思っていたし二人に、
テファが好きだと言う事を話せて良かったと思った。
更には、クモクの父親にも昼食の出先に会えて、
話しも出来たし・・・・
李家の秘密を探ろうとはもう思わないで・・・
かなり不可解でも、マイペースでホームスティを楽しみ、
語学学習を終えようと思った・・・・
最大の楽しみは、テファと江原道に行く事だったから・・・
その楽しみがあれば、
この夏は幸せな想い出になると思っていた・・・・
カノン:「あっ!」
アヤ:「どうしたの?」
カノンは指をさしながら
「オッパ・・・テファオッパだ」と言った。
二人は、どこどこ?と言って、カノンが指さす方向を見たが、
沢山の人の往来で、テファの姿が全く見えなかった・・・
ヒロミ:「え?いないよ・・・
私は両眼が1.5で、かなり視力が良いけど?
それでも分からないよ。カノンの見間違い・・・」と
言いかけた時、
カノンは「ほら、、、今、右側の5番目位のトコに
歩いてる人・・・」とニコニコしながら言った。
テファだ・・・テファだったのだ・・・・
カノンは自慢げに「ね?オッパだったでしょう?
カノンね、オッパなら、どんなに豆粒でも、
直ぐにオッパだと分かるよ。
オッパのへんてこな日本語でも何を言ってるか?
言いたいのかも直ぐに分かるし・・・
オッパの事なら何でも分かるよ・・えへへ」
と満面の笑みで言った。
ヒロミは「ハイハイ」と言いながら、
時間だから教室に戻ろうと言い、三人は会計を済ませ、店を出た。
丁度、テファが、通りの向こう側を歩いて来た。
音楽を聴きながら歩いていたみたいだったが、
カノンが「オッパ」と声を出すと、
テファは立ち止まり、「やぁ、カノン」と言って
手を振って笑った・・・
カノンは、アヤとヒロミに先に行っててとして、
テファのもとに走り寄った。
カノン:「オッパ、学校?」
テファ:「うん・・・秋に学園祭があって、ライブをやるから、
その練習なんだ。大学には夏休みでも、
ほぼ毎日、通うつもりだよ。研究もあるしね。」
カノン:「韓国の大学生さんは、凄いお勉強熱心だね?
日本の大学生は、毎日、遊んでるよ。
後はアルバイトをしたり・・・留学したり・・・
旅行したり・・・余りお勉強はしないかも?」
テファ:「でも、カノンだって、今、韓国語の勉強をしに
韓国に来ているから、勉強熱心じゃないかな?」
カノン:「えぇ・・・違うよ。
カノンの場合は、お勉強嫌いだけど、
これは日本の大学の授業カリュキラムの1つで・・・
それで来ただけだし・・・
お勉強と言っても毎日、遊びみたいなものが多いよ。」
テファ:「そうなの?・・・
ところで、カノン、午後の授業大丈夫?
もうすぐ1時だよ・・・」
カノン:「あっ!大変だぁ〜
オッパ、またね。」
カノンはピョンピョンしながら校舎へと走って行った。
テファは優しく微笑みながら、その姿を少し眺めて、
それからヘッドホンをつけ直して、歌を口ずさみながら、
ゆっくりとサークルの部室のあるところへ向かって行った。
その姿を、またクモクの父親は見ていた・・・
「おっ、あの二人・・・上手く再会できて、
仲良く話してるじゃないか・・・
ペンダントを1つにする日も
近いかな?ハハハ」と
目を細めながら、店の内に入った・・・・
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日本語学科6クラスの午後のテストが終わって
生徒達は、テスト日半ばだと言うのに、
講堂に集合させられた・・・・
ザワザワとしている中で、
先生が「静かにしなさい、直ぐに終わるから」と
言って鎮め、学長が挨拶をした。
学長:「えぇ・・・テスト中、済みませんが、
皆さんに、1つお話があります。
このホンデに後期から編入する仲間を
紹介します。」
生徒たちは、たかが後期から編入する生徒の紹介だけで
このテストの忙しい中、召集をかけられては、たまったモンじゃ
ないと、半ば怒りにも似た言葉が飛び交った・・・・
学長:「あぁ・・・皆さん、静かに!!
李ヘジャさんです。
李ヘジャさんは、日本語学科首席の李スンミさんとは、
御両親が違うものの、御家族です。
長い間、アメリカにおられました。
そこで日本語を専攻していたそうです。
ホンデの編入試験も満点の成績でパスし、
特待生レベルです。
更に我が校の校舎の殆どが李建設の
手がけたものでもあります。
特に語学堂の校舎は、李建設に就職した我が校の卒業生が
デザインさせて貰い、構築したものです。
・・・では李ヘジャさんに一言、挨拶して貰いましょう。
李ヘジャさんどうぞこちらへ。」
生徒たちは一斉に歓声を上げた・・・
そこには眩いばかりの大輪の薔薇が咲いたかのような
美しいヘジャの姿があった・・・
姜ユリも霞んでしまう位の、スレンダーで美しい女性だった・・・
ヘジャ:「皆様、ごきげんよう。
李ヘジャです。
李スンミとは家族ですが、私は生粋の李家の娘です。
皆さん、後期から宜しく。」と言った。
ユリは、自分よりも明らかに美しく目立つヘジャの登場に
心穏やかでは無かった。
何もかも、自分の上を行く女だったからだ・・・
学力も、財力も、容姿も・・・・
ユリはカチカチと指の爪を噛んだ。
ユリの取り巻きたちも、クラスメイト達も
「ユリよりも美人だな」とか「ユリの取り巻きなんかより、
ヘジャにヘコヘコした方が、恩恵が大きそうな気がするな」
等々、ユリの神経を逆なでる言葉を
聞こえるように言っていた・・・・
李ヘジャが後期から来ると言う、
その挨拶だけの為に、日本語学科全員が、
集められたと言うのも、ヘジャの家の威力が
あるからだと言う事も、ユリをイライラさせた。
ヘジャはユリとすれ違いざまに
「フン、姜ユリ・・・お前を奈落の底に
突き落としてやるわ。ホホホ」と囁いて、
冷笑しながら通過した。
先生達もヘジャにヘコヘコしていたし、
付き人のように世話をしている先生も居た。
次に注目を浴びたのは、スンミだった・・・
今まで、スンミを率先して苛めていた学生達が、
スンミにも「今まで御免な」とか
「本当は、苛めるつもりはなかった」とか
ヘコヘコしながらおべっかを使っていた・・・・
それもたまらなくユリを怒らせた。
ユリ:「あんた達、今さら何やってるのよ。
この日本語学科のお姫様は、私・・・私よ。
違うの?」
グッチョル:「・・・姜ユリ姫は、お姫様には違わないけど・・・・」
ユリ:「違わないけど何よ?え?」
グッチョル:「・・・なんて言うか李ヘジャは、、、
女王様みたいな感じで・・・
姫よりも上って感じが・・・
そのぉ・・・するんだよな?」と言うと
周囲も、そうだ、そうだと賛同した・・・・・
ユリは怒って、取り巻きたちに、荷物を持たせて帰って行った。
そこへ、バンドの練習が終わったテファ達、
パランファのメンバーとユリ達はかち合った。
ユリは、テファの顔を見るなり
「オッパ・・・テファ・・・オッパ」と言って泣きついた。
テファはビックリして「ユリ?どうした?」と聞いた。
取り巻きのシネとヘギョが、さっきの事をテファに伝えた。
テファは、微笑んで「何だ、、ユリ、ホンデのお姫様のユリも、
たかがそんな事で、揺れ動くなんて
、、、いいじゃないか、
言いたい奴には言わせておけばいいんだ・・・・
李ヘジャと言う子が女王様なら、
余裕でその座を譲ってやればいいのさ。」
ユリは泣きながら「・・・だって、、、悔しい・・・」
テファ:「何が悔しいのか?僕には分からないよ・・・
女王もお姫様もどちらも近寄りがたい存在だし・・・
そんな名前や地位にとらわれるなんて、気持ちが小さいぞ!
李建設は超金持ちなのは誰もが知ってるけれど・・・
でも人の幸せは、お金じゃないし、容姿でもないし、、、
僕は、日本に行ってその事を学んだんだ・・・
美しい物は、いつかは枯れる・・・
特に生きているものは・・・・
でも心は枯れたりはしない・・・
お金がもしなければ無いなりに、過ごせるもんだし、
気持ちの問題だと思うようになったよ・・・」
テファは、日本でのカノンとの事を思い出していた。
カノンが「オッパと一緒だったら、どんな場所だって構わない。
駅のベンチでも公園の芝生でも良いし、、、
食事だってレストランやちゃんとしたお店じゃなくても
構わない・・・肉まん1個を半分に分けあって食べる方が、
幸せだ」とも言った・・・・
プレゼントがなくても、言葉や、繋いだ手と手のぬくもりが感じ
られれば幸せなんだとも言ったから・・・・
そう言えば僕は、そんなカノンの言葉に甘えて、
カノンにプレゼントらしいプレゼントをした事がなかったし、
ご馳走もして上げなかったと、思った。
ユリは心を落ち着かせ手で涙を拭きながら
「オッパ、李ヘジャの顔を見て、虜にならないでね?・・・
約束よ・・・
私は怖いの・・・あのヘジャが、私の持っているものを
全部、奪い取りそうだから・・・
オッパを取られちゃったら・・・
私は死んじゃうわ・・・」と言って、
テファにしがみついた。
そのユリの手を解きながらテファは
「ユリ、、、僕は物じゃないよ・・・
だけど、これだけは言えるよ・・・
僕は李ヘジャを見ても、
心ときめいたりはしないと思うよ・・・」と言った。
どんなに美人でお金持ちで、華やかな女性を見ても、
今のテファには、関係なかった。
ユリは分かったとして、
ニコヤカになりながら、家へと帰って行った。
明日の試験も頑張るんだと張り切っていた・・・・
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ソンジェとカノンは、今日も帰りに待ち合わせをして
崔雅子の家にお邪魔していた。
崔:「カノンちゃん、その後、記憶の方はどう?」
カノン:「・・・相変わらずです・・・
でも、もう探せなくても良いかな?って
思うようになりました。
もしかしたら、このペンダントの人は、
日本に居るのかも?とか・・・・
あるいは、このペンダントを私がどこかで拾って、
それで持ち主が現れるまでつけているのかもしれないし
・・・・なので、もう探すのを止めました・・・・」
ソンジェ:「・・・カノンは、それでいいの?一緒に探してあげるよ?」
カノン:「ううん、、もういいです。
オッパちゃん、色々と心配かけちゃって御免なさい。
雅子さんも御免なさい。・・・
それにもう直ぐ帰国だし・・・
あとは帰国まで楽しく過ごしたいです。」
ソンジェ:「カノンがそう言うなら、いいんだけれど?・・・」
雅子:「・・・もしもよ、そのペンダントの男の子が表れて、
名乗り出たら?
そして、僕はカノンの恋人だ!って
言ってきたらどうするの?」と聞いてみると、
カノンは、その雅子の言い方が面白かったのでケタケタと笑いながら
「・・・・ん〜・・・多分、あっ、そうですか?
じゃあ、このペンダント返します。
って言って終わりだと思います。」と言った。
本当は、違うのだが・・・・
ソンジェだけは傷つけてはいけないと
言う気持ちが強く働いたので、、、
とぼけるようにカノンは言った。
そしてチラリとソンジェの顔を見た・・・
ソンジェは相変わらず繊細で美しい横顔だった・・・
そして微笑んでいたのでホットした。
雅子:「そうか〜、ほな、カノンちゃんは日本に帰っちゃうんやね・・・
寂しいな〜カノンちゃん、いつでも韓国に遊びに来てね。
カノンちゃん一人ぐらい、いつでも泊めて上げるわよ。」
カノン:「有難うございます。雅子さんやオッパちゃんのお陰で、
本当に楽しい韓国滞在になりました。
オッパちゃんは、多分、また日本の大学院に入る為に、
日本に来るだろうし・・・
雅子さんも実家が関西だけど日本でしょう?
だから、日本でも会う事が出来るから・・・楽しみですね。」
ソンジェ:「・・・・そうだね、カノン・・・
僕の母親は日本人だったから、
何れは日本に又行って、ずっと住みたいと思ってるし・・・
住むならやはり東京だと思ってます。
東京芸術大学の大学院が第一志望だから・・・・」
カノン:「オッパちゃん、凄いね?芸術大学って、
日本で1番の芸術大学だし、東大に入るよりも難しいと
言われているよ・・・
しょうがねぇなぁ〜だからカノンが、日本語と韓国語を
オッパちゃんに教えて上げるよ。
では、早速、、、
後について発音してね?」
ソンジェ:「えぇ・・・嫌だよ・・・どうせ、TVが見たいな・・・
スイッチオン・・・おっ、キムタクダって言う奴だろう?」
カノン:「甘いな・・・更にナルシストだね?オッパちゃんは!!
カノンは違うフレーズを教えて上げようと思ったのに・・・・」
ソンジェ:「嘘・・嘘・・・嘘・・・カノンは本当に面白いね。ハハハ」
雅子は、二人のふざけ合いを可愛いなと思いながら眺めていた。
この二人は、きっとずっと一緒だろう・・・
10年先・・・20年先も二人が一緒にいる気がした。
実は雅子は、天理大学韓国語学部出身なのだが、
大学の時に占いサークルに入っていて、タロットや星生術などを学び、
チョットした占いが出来るのだった。二人の名前や、
生まれなどをそれとなく聞いていたので、カードで占った事があり、
相性は抜群で、夜空を司る月の神と星の女神がほほ笑んでいる
最高のカードを引いたのだ・・・・
しかし、障害が二人にそれぞれあるカードも引いていた
・・・多分、ソンジェにはジナ・・・
カノンにはテファの陰だろう・・・
しかし、何度占っても、
10年、20年先も二人は一緒にいる・・・
そんな占い結果だった・・・・
カノン:「雅子さん、帰国する前に、
私、雅子さんに日本食を作って
御馳走したいんですけれど?
その時、キッチンとかお借りしても良いですか?」
雅子:「勿論よ・・・あぁ・・帰国なんてなければいいのにね・・・」
ソンジェ:「僕も、料理を手伝うよ・・・
日本に居た時、自炊してたから、
料理は得意だから・・・・」
カノン:「オッパちゃん、趣味は何ですか?」
ソンジェ:「え?趣味・・・えっと」
カノン:「ブブーっ、甘いな・・・趣味は勉強です
って言わなくっちゃ・・・」
ソンジェ:「ハハハ・・カノン趣味は何ですか?」
カノン:「音楽活動です。ライバルは李ソンジェです。
李ソンジェは生意気です。
だって、カノンが、韓国語を教えて上げたのに、
最近は生意気で、カノンの発音にケチつけるんだよ。
更には料理もするって!
カノンの得意は料理だから、カノンの真似っこしてるよ。
生意気でしょう?」
ソンジェ:「えぇ、、、違うよ、カノンのお手伝いをしようと
思っただけだよ。韓国語は、僕はネイティブだから、
日本人のカノンに習う必要はないし、
カノンに正確な発音や言葉を教えたいから、
こうだよって言ってるだけだよ。」
カノン:「嘘、嘘、嘘〜ナルシストだね、オッパちゃん・・・
まっ、いいか・・・ね?」と言って笑った。
ソンジェも「ね?」と言って笑った。
雅子:「本当に仲が良いわね。それに楽しそうね。」
と言って笑った。
ソンジェは雅子の言葉を聞いて嬉しかった・・・
カノンとは、出来ればずっと一緒に居たかったので、
出来れば、カノンの帰国に合わせて、
日本に留学出来る手続きをしたかった。
遅くとも来年、卒業したら、直ぐにでも日本に留学したかった。
ただ、鄭テファの存在が気になった・・・
あいつ、何で名乗り出ないんだろう?
カノンは目の前にいると言うのに・・・
もしかしたら、心変わりをしたのだろうか?
家族に日本人と付き合う事を反対されたのだろうか??
カノンとは気まぐれか、遊びだったのだろうか?
疑問ばかりが浮かんできたが、、、
カノンが幸せならば、どんな事でもしてやろうと、
ソンジェは思った。
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よいしょ・・・・あぁ、しんどい・・・
額の汗をぬぐいながら、サヤカは、世田谷のマンションに戻った・・
サヤカにとってカナダの語学留学は、退屈な物で、テストは案の定
首席レベルで終了したし、カナダの学校側では、更に1年〜2年、
大学で本格的な留学生活をしないか?との話しに、サヤカは、
首を縦に振らず、横に振った・・・答えはNOだった・・・
サヤカにはキャビンアテンダントになる夢があったからだ・・・
更に、カノンの事も気になっていた・・・
誰もいない部屋に入ると、部屋の中は夏の暑さにモワっと
した・・・・・
サヤカは、空気の入れ替えで窓を開けながら、TVをつけたり
郵送物に目を通したり・・・・荷物を開けて、洗濯機を回したりと
大忙しだった・・・・
一息つこうと、珈琲を入れて飲もうとした矢先、
電話が鳴った。
サヤカ:「もしもし・・・」
長野の妹のカレンからだった・・・・
サヤカ:「・・・なんだ、カレンか〜どうしたの?」
カレン:「お姉ちゃんがカナダから今日、戻るって聞いたから、
電話したんだけど・・・実は、我が家はリフォームする事に
なって、お姉ちゃんの荷物とかも、一旦、離れの蔵に
移したの・・・
その時、たまたま今年の3月か4月にお姉ちゃんが送った
荷物の段ボールが破けちゃって・・・中から、沢山の写真や
手紙、手帳とか出て来て・・・余りにもサイズが小さいし、
写真もカノンちゃんと男の子が一緒にうつってる物ばかり
だったから、お姉ちゃんが間違えて送っちゃったのかな?
って思ったの。手帳もカノンちゃんの名前だったから・・・
それで、手帳や携帯もあったから、どっちも大切な物
だろうと思って、郵便で送ったの・・・多分、ポストに
投函できる様に送ったから・・・届いてる?」
・・・・・と言われた・・・・・・
サヤカはハットして、郵送物をガサガサとして見つけた・・・
サヤカ:「あったわ・・・有難う・・・・お姉ちゃん、間違えてカノンの荷物を
送っちゃったみたいね?ハハハ・・・御免、御免・・・」
・・・・と、言ってとぼけた・・・・
カレンは変なお姉ちゃんと思ったが、気を取り直し
「夏休みが終わる前に、長野に帰って顔を見せに来てよ。
お父さんはなんだかんだ言っててもお姉ちゃんを応援している んだから・・・本当はお姉ちゃんの方が、お医者さんに向いてる
って・・・私も思うもん・・・でもキャビンアテンダントになりたい
気持ちもお父さんには最近、伝わってるみたいで・・・・
飛行機や、キャビンアテンダントのドラマやCM、ドキュメントとか
TVでやると、必ず見ているもの・・・」
サヤカは、分かったX分かったと何度も言って、電話を切った・・
妹のカレンから送られて来た携帯と手帳を目にして、、事故の事、
カノンのテファへの記憶の抹殺や、、、、様々な事が、想い出された・・
携帯の電源を付けて見ると、テファの笑顔の待ち受け画面がポップ
アップして来た。すると、カノンが、携帯から「フレンドネットランド」と
言うサイトに何度も受発信している事に気が付いた・・・・
つい最近、フレンドネットランドからメールが何件か入っていた。
サヤカは、そのメールを見て、わなわなと震えた・・・・・
ペンネーム「ナルカマ」より、「カノカマへ」と言うものだった。
ナルカマはテファ、カノカマはカノンの事だと言うのが、
直ぐに分かった・・・・
内容は、カノンに似た女の子をホンデのキャンパスで見かけた
事や、、、、カノンがサヤカや家族を騙してホンデに語学研修を
していた事などが、テファのメールから伺えた・・・・・
カノンは記憶を取り戻したのだろうか?
私を騙しているのだろうか?・・・・
いや、カノンはそんな子じゃない・・・・・・
サヤカは、PCを立ち上げ、ソンジェにメールを打ち始めた・・・
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