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作品名:潮風のセレナーデ・・・会いたい気持ち・・・ 作者:HAPPYソフィア

第23回   蒼い月の涙・・・ペンダントの輝き・・・
カノンは、行きの地下鉄駅のトイレの中で、

            ヒロミのメッセージを聞いた・・・

      そして、ヒロミ達に、「ありがとう」と何度も呟いた・・・・


  今度、二人に会った時に必ず理由を話すから・・・

        今は、そうっと見守っていて欲しいと・・・

            カノンは呟いた・・・・



    カノンがEVANSに行くと、既にテファがテーブルに

        腰掛けていた・・・

    店はそこそこ混んでいたし、入って来る客は、

                   中高年ばかりだった・・・

 しかも、店長が日本人らしいのだった・・・なので、2ヶ国語で

 音声が流れていた・・・

 坂本九さんの曲が、ジャズ風にアレンジされて流れていた・・・


   テファ:「カノン、来てくれて有難う・・・

           ここだったら、若者が余り入らない大人の

        ジャズのお店だから・・・」と言って、

                  カノンの為に椅子を引いた。



  カノンは、いざテファを前にして、何を喋って良いのか分からず、

   緊張した・・・

  記憶を取り戻したとも言えないし・・・前の様に、屈託もない会話や、

    知らん顔も出来ないでいたからだ・・・・


        テファ:「カノン、何か飲む?」


    メニューを差し出されたが、全てがハングルなので、

     頭がボーっとしてしまい、カノンはモゴモゴしていた・・・



  テファは、カノンの横に座り、優しく読んで聞かせ、

  説明してくれたが、ドキドキして心臓が爆発しそうだった・・・

   オッパ、オッパ・・・カノンは何度も心の中で呼んだ・・・

     甘い声がカノンに聞こえ、カノンの顔に息がかかった・・・


   更にサラサラとした流れるような髪がカノンの顔にかかった・・・


  カノンは顔を真っ赤にしながら、適当に

                「これでいいです」と指さした・・・



     テファは「え?カノン、これでいいの?」と聞いた・・・

カノンはうんと、頷いた・・・・テファは笑いながら

「カノン、これは韓国でも度数の濃いお酒だよ・・・

      飲んだらノックダウンしちゃうよ・・・

カノンはお酒が飲めないだろう?だから、このミルクセーキで

良いかな?」と言った・・・

 カノンは、何を言われているかも上の空で、うんと頷いた・・・・

   すると見覚えのあるジャズピアニストの姿があった・・・・


  今日は、お忍びでジャズピアニストの呉ジナが

                 演奏に来ていると言った・・・

  

          カノンはビックリして立ちあがった・・・・


     ジナも、カノンを見てビックリしたが、

       隣りには、ソンジェでは無い男が居たので、

       フフフと笑いながら、席に着き演奏を始めた・・・



        司会の話では、ジナが未だ無名の頃、

           良くジャズの演奏のアルバイトで、


  このクラブのチェーンで演奏のアルバイトをしていたと

      紹介があり、今日は、店長の頼みで、

          演奏に来たと言っていた・・・・

演奏が終わって、ジナは、カノン達の席に来た・・・

ジナは日本語が出来ないので、店のオーナーである

日本人を連れて、通訳して貰いながら話し始めた・・・

       カノンに意地悪く


  「貴女も、可愛い顔して良くやるわね?二股?

      ソンジェを踏み台にするの?」と言った・・・・

 

     カノンは、どう言って良いか分からず、

            見る見る涙目になった・・・



テファ:「呉ジナさんともあろう方が、突然来て、

      失礼な言葉じゃないですか?」


ジナ:「あなたには関係ない事よ・・・二股さん・・・」

テファ:「はあ?・・・ハハハ・・・失礼だな!」

       ジナは、高らかに笑いだしてしまった・・・・

ジナ:「ねぇ、カノンさん、、、

      あなたはソンジェと付き合っているんでしょう?

     だったら・・・この男は誰?二股かけてるの?

    やってる事は、私よりも酷いじゃない・・・・

          違う?ソンジェが見たら幻滅するわよ。」



      カノン:「・・・・えっと・・・・その・・・・あの・・・」



   カノンが涙目で、困っているのに耐えられず、

               テファはジナに腹が立ち、



  テファ:「そっちこそ、サッサト、向こうに行って欲しい・・・

            いや消えてくれ。

     僕はカノンと話がしたくて、ここに来ている・・・

    僕は客だ・・違うか?」と言って、一歩も譲らなかった・・・・



ジナ:「二股さん・・・あなたもこんな小娘に泣かされないように・・・」

    と言ってジナは店を出て行った・・・・



    カノンはどう言って良いか分からずポロポロと涙を流した・・・



         テファはカノンに弱い・・・

      特に泣いているカノンにどうしようもなく弱いのだった・・・



テファ:「カノン、泣かないで・・・」そう言って涙を指で拭ってくれた・・・



カノン:「オッパ・・・誤解しないで・・・カノン、、、

      ソンジェオッパちゃんとは何でもないの・・・

          スンミちゃんの事があって・・・怖くて・・・

        それで二人が付き合ってるって事にすれば・・・

          スンミちゃんやユリさんの怖さから逃れられるって・・・

               そう思ったの・・・

            付き合ってるじゃない・・・です・・・

          それに私には・・・私には・・・

              好きな人がいるから・・・・

                いつも夢に出て来る人なんだけど・・・・

                 だからオッパ・・・誤解しないで・・・」



テファ:「あぁ・・・分かったよ・・・

            だから、カノン・・・泣かないで」と優しく言った。



カノンはオッパにだけは誤解されたくなかったが、上手く伝えられず

チグハグな言葉を言っていたような気がした・・・

テファはテファで、きっとカノンは僕の事を思い出し始めていると

思った・・・スンミやユリの底知れない恐ろしさは、何となく分かるし、

ユリは特に意地悪だったからだ・・・

 それでソンジェと言う味方を見つけて、苦肉の策で付き合ってると

  したのだろう・・

     ところが、ソンジェの方は、どうやらカノンに対して、

     本気で好きになり始めてしまったのかもしれない・・・・

      カノンはソンジェに対しては、兄の様な、家族の様な

      親しみで付き合っていて恋愛感情は無いとテファは思った・・・・

  

   カノンの事は、手にとるようにテファには良く分かっていた・・・・



      カノンは本当に好きな男の前では、

             言葉がドモルし、顔も赤くなったり、

                     直ぐ泣いたり、笑ったりする・・・

  

                  え????



       ・・・・とすると・・・

             さっきのドモったり、顔が真っ赤になったり

          チグハグな注文をしたカノンは、、、、

      もしかしたら、今、ここにいる鄭テファの事を

      好きになり始めてくれているのだろうか?

                     っとテファは思った・・・・・



            テファは、嬉しくなった・・・

               そうだ、カノン・・・

            記憶なんて戻らなくても良いんだ・・・



        カノン、オッパだよ、、、

             またオッパを好きになってくれたら・・・

                オッパは嬉しいよ・・・


   カノンは、泣きながら、ソンジェと、呉ジナの話もした・・・



 二人は、かつて大学では公認の仲であり、恋人同士だったが、

止むない事情で別れてしまった事・・・・

それからソンジェは、専門のアルトサックスが

吹けなくなってしまったこと・・・・

 先日、ソンジェの招待で、演奏会を聴きに行った時に、

呉ジナも出演していて急遽、ピンチヒッターで、ソンジェが

アルトサックスをジナと一緒に演奏することになったが、

物凄く上手で、カノンは、むしろ、またソンジェとジナが寄りを戻せば

いいのにと思った事などを、テファに話した。



   テファはカノンが正直な気持ちで言っている事だと、

    理解しているし、カノンとソンジェは何でもない関係だと言う事が

    分かって、良かった・・・

 

   少なくともカノンは、ソンジェに対しては、恋愛感情は無いと

    言うのが分かった。




テファは「カノン、ジャジャーン、ちょっとこっちを見てご覧・・・」

               と言って笑った・・・

カノンは、泣き顔を上げた・・・

       するとテファは手作りの旅行のパンフレットを見せた。




テファ:「カノン、再来週、1週間、夏休みだろう?

     良かったら、一緒に観光旅行に行かないか?

               今日は、その事を言おうと思って、、、、」



          カノン:「・・・・観光?・・・・旅行?」


テファ:「あっ、うん・・・

        カノンが、秋の童話が好きだって言ってたから・・・・

     ソウルからかなり北にある江原道の束草に行って

     みようかなって思ったんだ・・・

       僕は夏休みだから、いつでもOKなんだけどね・・・

     チョット遠いから1・2泊はしたいし・・・・

                     カノン、行ってみないか?」



・・・・・・・テファが即席ではあるが

          一生懸命、カノンの為に調べて作ってくれた

       パンフレットを見ながら、カノンは、心が温かくなり、

                     即答で「行きたい」と言った・・・



             二人は顔を見合わせて笑顔になった・・・



テファは「ただ・・・ユリや、スンミ、、、

          そして今では、ソンジェって言うスンミの兄さんにも

        気付かれては不味いから・・・用心をしよう・・・いいかい?

           これはね・・・」

                テファの声は急に静かになった・・・・





カノンはチョット嬉しくなって

            「・・・オッパ・・・

              これは

                 秘密ちゃん大作戦かな?」

                    とコソコソとテファに言った・・・


    さっき泣いたカラスがもう笑ったみたいなカノンのくりくりとした

     瞳を見て、余りに可愛いのでテファは吹きだしてしまった・・・・



                秘密ちゃん・・・



      この言葉を聞くのは日本に居た時、以来の言葉だった。



     秘密と言う言葉に

               「ちゃん」をつける事によって

                重苦しい雰囲気が和むでしょう?と

              言うのがカノンの理論だった・・・


  テファは自信満々で言うカノンが面白くて、良く吹きだして

          笑っていたのを思い出した・・・

  

         言ってるカノンは、至って真顔で真剣そのものだった・・・



   テファ:「そうそう、秘密ちゃん大作戦って事にしようか・・・

          アハハハ・・・ 可笑しくてお腹が痛いよ・・・

         カノンは本当に僕のコメディアンみたいだ・・・」



    カノンは、この言葉にも記憶があった・・・

                    僕のコメディアン・・・・



      テファはいつだってポジティブで明るくて、

                楽しい事が大好きだったので、

         カノンにとってはテファの最高の褒め言葉

                          だったのだ・・・

 


  そしてカノンは、今朝、ホームルームで先生が

  滞在家庭は、忙しい家だから、夏休みでもどこにも

  出かけないから、良かったら先生の田舎に行かないか?

   と誘ってくれた事をテファに伝えた・・・

  テファは、先生を味方につけようと思った・・・

  カノンの担任は自分とも親しい林先生だったからだ・・・

  林先生の田舎も江原道の洛山寺にあると聞いた事があった・・・

   カノンも洛山寺だと言ったので確信した・・・



テファは、林先生に電話をかけた。

先生は、まだホンデの教務室にいるみたいで、帰ろうとしていたと

言っていた・・・一緒に御飯でもどうですか?

それに相談したい事もあるし・・・と言って林先生を呼びだした。

  テファはレシートを持ち、ソソクサと会計を済ませ、


   カノンに「カノン、秘密ちゃん大作戦サ」と言って、

                カノンの手を取りカノンを連れだした。



  カノンは、テファのこうした、決断力や、考え方・

                     強さが好きだった・・・



  一見、頑固に見えるけれど・・・

      カノンは、周囲の唯単に優しい草食系の男たちとは違う、

             そんなテファが大好きだった・・・

  自分の考えや言葉に、きちんと責任を持っているし・・・

          真っ直ぐな心が伝わって来るからだった・・・・



  昔、テファが、日本に居た時、、、

      人の意見にいつも惑わされ、迷って実行に移せない・・・

更に言い訳ばかりしていたカノンに一喝してくれたのも、テファだった・・・・・



  周囲の意見は聞くけれど、それは参考程度・・・

     先ずは自分の考えに従って行動してみる・・・・

            他人のせいにはしない・・・・自分が選んで、した事だから

         ・・・誰だれがこう言ったからとか、

    あの人がこう言ってると聞いたと言うのも、

        実際に、自分が面と向かってその人から聞いた言葉だったら

             信じるけれど・・・他人づてに聞いた言葉なら、

            噂に過ぎないし・・・信じない・・・と、言っていた・・・・




       カノンは、納得したし、

            自分もオッパに見習ってみたいと思った・・・



オッパが、カノンの事を嫌いとか、

            バイバイと言ったのなら、諦めよう!

       そう思った・・・だから、そう言われない限りは、

例え周囲が何と言おうとオッパを信じよう・・・ついて行こうと思ったのだ・・・・



   オッパ、何だか日本に居た時みたいに、

         ドキドキワクワクして楽しいとカノンは心の中で呟いていた。

  握りしめられた手は、ギュッと結ばれていて、温かかった、、。

           カノンは益々、嬉しくなった・・・・



         EVANSのクラブから西に5分ほど歩いた場所に、

          ホンデでも隠れ家みたいなレストランがあって、

         そこはテファの姉のアミンがよく利用する店だった・・・

   有名な著名人や芸能人が、お忍びで食事をする・・・

   そんな店で、アミンの名前を利用して、

          テファが予約を入れたのだった・・・

   大概の無理や融通が利く便利な店だった・・・・

        「ムグンファ」と言う店だった。

   ムグンファ=ムクゲ=韓国の国の花の名前の店だった・・・


 カノン:「わぁ!」カノンはお店に入ってビックリした・・・

メルヘンチックな可愛いお店だった・・・

テーブルも4つしかない、せいぜい入っても12人位で一杯になる

お店だった・・・・

更に地下は個室になっているみたいで、1日1組しか予約が取

らないのだが、何とか個室をキープして貰った・・・


  テファは主に「済みません、急なお願いで!」

 主:「大丈夫ですよ、、、丁度20分位前に、一組のお客様が

    お帰りになったばかりですから・・・今日はアミンさんは

    来られないんですか?相変わらずお忙しいんでしょうね?」

 

  テファ:「えぇ・・何でもレポーターの仕事が入って、韓国中を

         旅してるみたいです・・・姉にも、食べに来るよう

          に、言っておきます。」


  主:「さあさ、挨拶はともかく、地下の個室にどうぞ・・・

            簡単な前菜と飲み物をお持ちしますから・・」

テファ:「後でもう一人来ますので・・・宜しくお願い致します」

              主:「承知しました・・・」

地下室は、何だか雰囲気が一転した大人の作りになっていて

               モノクロの世界だった・・・・

テファ:「カノン、どう?ここなら、誰の目も気にしないで秘密

    ちゃん大作戦が出来るだろう?」と言って笑った・・・

カノンは自分の知らない韓国でのテファの姿をまた1つ知って、

嬉しくなった・・・・   

カノンは、ここの地下のお部屋も良いけれど、さっきの上の

お店の雰囲気の方が、玩具の国に来たみたいで可愛いから

今度は、上のお店でご飯が食べたいと言った。

すっかり元気になっていたカノンを見て、テファは安心し、

「じゃあ、今度、また来ようね」と優しく言った・・・



     テファはカノンにだけ見せる優しい顔がある・・・

大概は、微笑んで優しい眼差しでカノンに語りかけるのだった・・

今のテファはそんな感じだった・・・

前菜と飲み物が運ばれて来て、先に食べていようとなった・・・

どれもカノンが好きな物ばかりだった・・・

カノンは喜んで「いただきます」と元気よく挨拶して食べ始めた。

主人は韓国語でテファに「テファさんの日本人のお友達ですか?

随分、可愛いお友達ですね?」と言って笑った・・・

テファも、少し照れながら「日本に居た時の、大切な女の子です。」

と言った・・・カノンは、聞きとれてしまった・・・そう、カノンの韓国語は

かなり上達していた・・・テファが去った後、カノンは、頑張って韓国

語を勉強していたし、更には記憶を失った後も、この語学研修の為、

横浜の実家にホームスティで来ていた李ビョンチョルから個人レッスンを

毎週受けていた・・・実際、語学研修に来てから、毎日、韓国語に

触れていた関係から、何となく韓国人の会話が聴き取れる・・・そんな

感じになって来た・・・今では、完ぺきではないが、TVのドラマも雰囲

気で何を喋っているのかも分かって来たのだ・・・


     ところが、テファは心に油断があったのか?

 カノンがこんなにも韓国語が上達しているとは思わなかったので、、

韓国語の会話で、話しをしていた・・・

  オッパ・・・オッパはやっぱり、カノンの事を忘れないで、

今でも大切に思っていてくれたのだとカノンはそう思うと

、嬉しくて、顔がほころんでしまいそうになった・・・

    だが、自分が記憶が戻ったと言う事を知ったら・・

 沢山の人を傷つけてしまう事も、カノンは分かっていた・・・

特に、今はソンジェには知られてはならないと思った・・・


    又、オッパは、日本でもカノンにとっては王子様だったが、

韓国では沢山の人の王子様なんだと思ったし、、、

変わらぬ優しい笑顔が、今はカノンにとっては少し眩しかった・・・・

  

   主は「ごゆっくり」と言いながら、階段を上がって行った・・・

     鄭アミンの弟のテファさんは相変わらず格好良いな・・・

   でも、テファさんが初めて連れて来たGFが日本人で、あんな可

  愛い小さな女の子とは・・・何だか微笑ましいな・・・主はクスクスと

  笑いが込み上げて来た・・・・




      カノン:「オッパ、これ、美味しいね?」

    テファ:「・・・良かったね・・・良かったら僕のも上げるよ。」

          テファは、カノンの皿に入れてくれようとしたが

    「ううん、オッパも食べて見て、ハイ、あーん」と言って、箸で

    テファの口元に運んだ・・・テファは、カノンに弱いので差し出さ

    れた物を、少し照れたが・・・「どれどれ?」と言って、

     食べてみた。


     カノンは首をかしげながら「美味しい?」と

       質問している感じだったので

    テファは笑いながら「うん、超美味い!」と

                     日本語で言ってくれた・・・



  テファは、林先生が来たら、秘密ちゃん大作戦の話をするから、

カノンは、意味が分からないかもしれないけれど、先ずは聞いていて

欲しいと言った・・・そして先生がOKしたら、日本語で話を三人でして、

カノンは、家に戻ったら旅の準備を内緒で進めて欲しいと言った・・・

       カノンは分かったとして頷いた・・・



      テファ:「さて、カノン、何日くらい行ってようか?」


        カノン:「えっとね、うんとね・・・語学堂の夏休み全部!」

            テファ:「え?全部?・・・大丈夫なの?」

       カノン:「うん・・・だって行く所ないし・・・家にいたら怖いし、、、

            えっと、えっとそれにね、

              秋の童話のロケ地でずっと過ごして

                  みたいから・・・海があるでしょう?

                  海が好きだから・・・だから、

                     1週間、行ってみたい・・・・

                    語学堂の夏休みが終わったら、

   
                       もう帰国だから・・・・」

     



                          え?帰国???





            テファは慌てた・・・「カノン、帰国って?」

  カノン:「元々、この語学研修は、大学の夏休みを使ったもので、

       授業は来週一杯までビッチリあって、

          そして夏休みで、それが終わったら、

       1週間は、毎日、学校行事みたいな遊びがあって、

       最後の2日間は、仁川のホテルに泊まって、帰国です。」



    テファは、改めて時間の経過の速さに気が付いた・・・・

   そして「分かった・・・カノン、1週間、江原道に行こう。

    人目があるから、行きも帰りも、車だけれど?

         良いかな?僕が運転する・・・

    運転は、日本に居た時から得意だったから・・

     ・・・心配しないで!束草までは高速で行くよ、

    ・・・片道4〜5時間はかかるけど、

         夏休みだから混むかな?・・・大丈夫かな?」

                            とテファは言った。


  カノンは、大丈夫と言ってポンと自分のグーの掌で胸を叩いたが、

   勢い余って強く叩き過ぎて、ゲホゲホしてしまった・・・・

1分、1秒でもカノンと一緒に居たかったのでテファは「カノン、来週の

金曜日に出発しよう・・・そうしたら10日間位、行く事が

出来るから・・少しでも長く滞在して来よう・・・」と言って笑った。


  カノンも、そうしようXそうしようと言った・・・

      オッパと10日間も一緒に旅行が出来る事が嬉しかった・・・・



  そんな話をしていると、林先生が、やって来た・・・

この隠れ家のお店をかなり探して歩き回ったらしい・・・


「すっかり、遅くなっちゃって・・・・御免ね?」と言いながら、

             林先生はテファとカノンを見てビックリした・・・



      林:「あら、やっぱり、あなた達、付き合ってるの?」



                 テファ:「え?」



   林は、今朝の話をペラペラとテファに韓国語で説明した・・・

    テファも韓国語で話をした・・・

  カノンは何となく二人の会話を理解していたが、

                     分からないフリをした・・・・



  テファ:「先生、実は、僕の日本に居た時、

              付き合っていた女の子が、

                ここに居る鈴木カノンさんです・・・

        唯、カノンは交通事故で、僕との記憶を失っている

              みたいです。・・・

      でも僕は名乗り出るつもりも、

              無理やり思い出させるつもりもありません。

              今から又、カノンとやり直します・・・・

          先生、僕の彼女、

                   可愛いでしょう?」

  テファは、今までの話を更に続け・・・

         そして、再来週から始まる語学堂の夏休みを

            カノンと一緒に韓国旅行をしたいので、

                    協力して貰えないか?と言った。



     場所は、カノンが好きなドラマのロケ地が江原道にあるので、

          そこに行こうと考えている事も話した・・・・


林:「・・・そうだったの・・・全てが合点がいくわ・・・喜んで協力するわ」

         と言って笑って言ってくれた・・・



   料理が次々と運ばれて来たので、テファが「何事も腹が減っては戦は

   出来ませんから、先ずは食べましょう」と言って、食事を勧めた。



   和風に近い、韓国創作料理の店で、見た目も美しく、味も客の好みに

     合わせてくれるのも良かった・・・

ここだったら、カノンの口にも合うし、日本贔屓の林先生も喜ぶだろうと

言う考えもあった・・・・

食事をしながら林先生は「ところで、パランファと言うバンド名は

どこから取ったの?好きな子の名前が入ってるって聞いたのを思い

出したんだけれど?鈴木カノンさんとどういう関係があるの?」と

聞いた・・・

テファは笑いながら「カノンは良く、僕の事を、風みたいだと言ったん

です・・・そしてカノンは見ての通りお花みたいに可愛いから・・・

花は’コッ’ですが、’ファ’とも発音するから・・・だから風花と言う

名前をつけたんです・・・もう帰国する前から、この名前にしようと

決めていました・・・皆はテファの’ファ’を取ったのだろうといいます

が・・・・実はカノンの’ファ’です。韓国で、こうして会えて、僕は

とても嬉しいです。」と言った。


  カノンは、テファの優しい気持ちが伝わり、涙がでそうになったが、

お刺身のワサビのせいにして「オッパ、今、ワサビが一杯ついた

トコ食べちゃったから・・・・涙が沢山・・・出ちゃった」と言って

ごまかした。

   テファは優しい眼差しでカノンを見て微笑んだ・・・


  林先生は、そんなテファの優しい顔が良いなっと思った・・・

これがテファの好きな子だけに見せる優しい顔なのだろうか?と

思った・・・・


   林:「・・・でも、テファ、姜ユリのことはどうするの?」

テファ:「ユリ?ユリですか?ユリは幼馴染で、、、そうですね、

    良い先輩と後輩と言ったところや、、、どう考えても兄と

    妹の関係ですよ・・・実は僕はユリみたいな子は好みで

    はないし・・・苦手です。」

林:「じゃあ、スンミ・・・李スンミは?」

テファ:「え?何で李スンミが出て来るんですか?」

林:「かなり、テファの事、好きみたいよ。」

テファ:「僕は、スンミのことは考えた事もないです。

     日本語が上手な、優秀な学生だと聞いていて、

     年中、ユリが1番がスンミの為に取れないって

       ジダンダを踏んでいたから・・・・

     好きか、嫌いかと聞かれても答えに困るし、

     ユリと同様・・・いやユリ以上に苦手かもしれません。」



林:「あなたに憧れたり、あなたを好きだと言う子は

  他にも沢山いるのに・・何故、カノンさんを選んだの?」




テファ:「僕が選んだのではありません・・・

          カノンが選んでくれたのかも?

          しれません・・・でも、そんなの関係ないです・・・

      僕はカノンが好きです。

          こんな話をするのも好きではないし

     とても恥ずかしいです・・・

     カノンといると僕はいつも楽しいし、

               幸せです・・・それが理由です・・・」



林は、テファの真剣な気持ちが伝わって来て、それ以上は

突っ込んで話が出来なかったし、見ていて微笑ましい可愛い

カップルなので、応援したくなった・・・

林:「では、ここからは鈴木さんもいるから、日本語で話しましょう?

   良いかしら?」

テファ:「構いません・・・、カノン、話しが終わったから、ここからは日本語

     話すよ。もう韓国語は使わないから、僕らの話しに参加できる

     よ。。。」と、カノンに優しく言った。



カノン:「あっ、ハイ、お願いします。あっ、その前に、、、、」と言って、

     カノンは、テファに内緒話を韓国語でした・・・


 その言葉を聞いた瞬間、テファは余りにも可笑しくて、笑い出してしまった。



林:「え?私?何か変な事、言ったのかしら?」と怪訝そうな顔をした。

テファ:「アハハハ・・・ハハッハ・・済みません、先生・・・カノンが余りにも

    面白い言葉を韓国語で言ったんで・・・・アハハハ・・・先生の事

    じゃないです・・・僕に対してです・・・」


            林:「え?韓国語が上手?」



    カノン:「ハイ・・・だって、本当に上手に話してたから・・・」

ネイティブなんだと改めて感じたのだとカノンは言いたかったのかもし

れないが・・・マジマジと考えてみると、面白い言葉だったので林先生も

吹きだしてしまった・・・・

テファ:「カノンも、日本語が上手だよ」

カノン:「え?当たり前じゃん・・カノンは日本人だもん・・」と言った・・・

これも又、テファにとっては面白かったので、またテファは声を上げて

笑いだした。林先生は、テファが、本当に楽しそうにしているので、

ビックリした・・・テファが声を上げて笑ったりするのは、珍しいと言うか、

見かけない光景だったからだ・・いつも格好よく、クールで・・・華麗なる

ホンデのスターだったからだ・・・



テファ:「先生、済みません・・・では実際の本題に入りたいんですが・・・」

     と日本語で話しだした・・・・

カノンは、忘れないように、携帯にメモして行った・・・紙でメモ書きは、

スンミにみられる可能性があるからだった・・・・





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   一方、ソンジェは家に戻るとスンミに電話をかけた・・・



ソンジェ:「スンミ、テストはどうだ?相変わらず、首席をキープしてるのか?

      余り、無理するなよ・・・1番をずっとキープはシンドイぞ!」

スンミ:「そんな事ないわよ・・・兄さん、わざわざ心配してくれて、済みません。

     私みたいな醜い子は勉強だけが取り柄だから頑張ります。今日は、

     1番苦手な日本語作文のテストだったから、ヘジャ様に替え玉で

     受けに行って頂いたの・・・でもご機嫌斜めで帰宅されて、明日の

     日本語文法のテストは私が受けるからいいんですけど・・・

     何か学校であったみたいです」

ソンジェ:「ヤレヤレ・・・・我儘なお姫様だな?・・スンミ、いつも付き合わせ

      ちゃって悪いな・・・カノンはまだチョンロから戻らないのか?」

スンミ:「さあ?16時位に、一旦、家に戻って来て、着替えて出かけて行った

     けれど?どこへ・何をしに行ったかは分からないわ・・・私はてっきり

     兄さんとどこかに行くのかと思ったわ。お洒落して出かけたもの・・」

ソンジェ:「・・・ふうん、、、そうか・・・何かのパーティにでも行ったのかな??

      カノンが戻ったら、伝えて欲しいのだけれど、明日、学校が終

      わったら、ホンデの正門で待ってるから、少し話をしようって言って

      おいてくれるかい?」

スンミ:「ええ、いいわ・・・話し?話しってもしかしたら、ホンデ語学堂の夏休み

     が始まるから、遊びの誘いの話し?」



           ソンジェ;「え?夏休み?・・・夏休みか・・・・」



              スンミ:「え?その話じゃないの?」

ソンジェ:「・・・いや、最近、カノンに会ってないから・・・

          ちょっと話がしたかっただけなんだ・・・

                    夏休みっていつからいつまで?」

スンミ:「語学堂の夏休みは再来週から1週間だけど?」

ソンジェ:「スンミは、カノンの為に何か計画しているの?」

スンミ:「・・・特に・・・何もしてないわ・・・ヘジャ様の機嫌が悪いし・・・

     私は出掛けるのは好きじゃないから・・・・

      それで、昨日、カノンの担任の先生が教務室に私を呼んで、

       鈴木さんを先生の故郷の洛山って言う所に、連れて

       行って上げたいって・・・

          だからそうしても良いかって聞かれたの・・



     ヘジャ様の意見も聞かないといけないから、

     答えは保留にしているの・・・どうしたら良いかしら?」

ソンジェ:「折角の夏休みだから・・・そうだな・・・

      じゃあ、兄さんがカノンを連れて観光とかしようかな?

              明日、カノンに話してみるよ・・・じゃあ・・・」



               ・・・と言って電話を切った・・・




ソンジェは、そうか・・・カノンは夏休みか・・・

               どこかに連れて行ってやろうかな?



           「済州島」がフト、頭の中に浮かんだ・・・・

         
   ソンジェはPCを開き、済州島について、調べ出した・・・・




  一見、華やかでポジティブな黄色の太陽の王子様の

   テファは、実はシャイで照れ屋な部分もあり、

    強さが出ているが、作者が見る限りは、

    蒼色の月の王子様である音楽家を目指すソンジェの方が、

    実は強いと思えたし、更に未来を目指しているように

     思えるのだった・・・

 

         何故ならば、カノンの行きたい場所を、

              テファは「秋の童話」の江原道だとし、

          北に目を向けるが、、

    

           ソンジェは済州島・・

                  南の暖かい海のある島だった。

     カノンが、ソンジェを慰めた言葉の1つに

           「家族」であり、将来は済州島へ行って

           ジャージャー麺屋をやりながら

                      音楽活動をする・・・・



               と言った言葉を思い出したからだ・・・

          その前にも、ソンジェはカノンと出会った時に、

       ピアノを弾いて聞かせた時、1番好きな曲は秋の童話

       に出て来るショパンの「別れの曲」だった・・・

       つまり想い出や過去のものや場所ではなく、

        未来に目をシッカリ向け、済州島を選んでいる・・・・

 

     カノン自身は、どちらも行きたい場所だろうが・・・・

   やはり軍配は、記憶が戻り、大好きなテファに

              今は上がっているようだった・・・・

 


    作者の私は、この物語に出て来る登場人物は、

殆どが実際にいる人達なので・・・

特にソンジェとテファを見た時、好みにもよるが、

           蒼の王子様にもう一頑張りして欲しいと

                思ってしまうのだった・・・・



    美しい、どこか陰を持つこのソンジェと言う青年は、

   心根も優しく、繊細な美しい青年だからだ・・・

           アジュンマは得てして、こう言った

        青年に肩入れをしてしまいがちだからだ・・・^^;

 



       さて、物語も大詰めとなって来たので、

   作者であるソフィアは、あと数回で、語り手と視点を

          カノンとバトンタッチします。



  つまりカノンにバトンタッチする時が、

              このお話の最終回です。

  


   波乱に満ちた夏休みを迎え、

         そして秋の気配を感じながら、

              時間は容赦なく過ぎ、

             帰国へとカノンは向かいます・・・・

   


           最後まで宜しくお願い致します・・・・





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