20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:潮風のセレナーデ・・・会いたい気持ち・・・ 作者:HAPPYソフィア

第17回   花の薫り・・・風の囁き・・・
    それも・・・・
       
   あなた・・・

         スンミ・・・

    いえ李ヘジャさん、

    あなたから聞いたのよ・・・・違う?」


     「アハハハ・・・そうよね?・・・

           そうだったわね?呉ジナさん」

          クククっと笑いながら、

      姿を現したのは、スンミではなく、

      スンミと言う仮面を剥いだ

           李ソンジェの実の妹の、

            李ヘジャだった・・・・


    ヘジャは、父親に溺愛された父親にとっては

      最高の女性に育て上げられていた。

     スレンダーなモデル体型、美しい大和撫子な顔立ち、

          物腰も上品だった・・・・

      以前、話しが出たと思うが、ソンジェの母親は、

        日本人で、幼い頃、体が弱くて直ぐに亡くなって

           しまったのだった。

           父親は、毎日、嘆き悲しんだ・・・

       日に日に美しく育ってゆくヘジャに父親は、

      妻の面影をダブラセ、ヘジャを1歩も出さない

         籠の鳥にしてしまった事件が起きた。


            李建設は、韓国随一の建設会社で、

            その財力は計り知れなかった・・・・

         ヘジャが中学に上がる時、誘拐事件が起きた。

      犯人は、李家に5億円の金の要求をして来たのだった。

    この誘拐事件は、韓国中を巻き込み、大きな騒ぎになった・・・

     ヘジャと一緒に誘拐されたのがスンミと、あともう一人の金美蘭と

             言う女の子だった。

  
        スンミは、イ・ユミン・・・

               つまり今のソンジェの娘だ・・・

      美蘭は、住み込みで働いている運転手の父親とお手伝いの

              キムヨナとの娘だった。

       3人は仲良しで、いつも学校が終わると、一緒に帰宅し、

          そしてヘジャの家で遊ぶのが常だった・・・・・

    イ・ユミンは、当時は李社長の第1秘書として手腕をふるっていた。

        実は、この誘拐事件の真相は明らかになってない・・・

           不透明なままで、解決したのだった・・・・

           つまり、あれだけマスコミなどを騒がせたが、、

              結末は呆気なかった・・・

        唯、キムの子供だけは、死体となって搬送された・・・

       スンミとヘジャは無事、無傷のままで自宅に帰された・・・

         ・・・犯人は捕まらないままだった・・・・・

         当時の真相は、子供たちの言葉だけが頼りだったが・・・・

   子供たちは、口をつぐんだまま、ただ分からない・知らないのまま

       だった・・・・

    子供たちは、一人一人、個室に入れられ、目隠しされ縛られ

   ていた。何が各部屋で起こっているかも分からなかった・・・・・

       その事件がキッカケで、李社長は、自分の娘であるが為に、

     今後も誘拐事件や恐ろしい事が起こるだろうとして、溺愛する

      娘ヘジャを、一歩も屋敷の外には出さないこととし、学校へも

       行かせなかった。有り余る財力で、一流の家庭教師を雇い、

     教育を受けさせた・・・・更に、秘書であるユミンと再婚をした

       事も謎だったが・・・娘のスンミをヘジャのダミーとした。

     この醜いスンミを、通じて、醜くても、スンミを心から愛し、
 
    人の真価は外見や、財力では無い事を見抜ける男性を探しだし、

      その男性と、ヘジャを結婚させようと考えたのだった・・・・

     スンミを日本語学科に進学させたのも、ヘジャもソンジェも

      日本人の母親の血が流れるハーフだからだ・・・

     出来れば、相手の男も日本語ができる方が良いからだと思った

      のだった・・・・

      誘拐事件から、ヘジャの性格は一変し、傲慢で意地悪な

        女王様の様な性格になった・・・・

      思い通りに行かないと、容赦なく物が壊れ、更には体罰があった。

          その体罰は残酷な程の物だった。

          自分だけではなく、家族全員を巻き込むものだった。

       我儘なお嬢様のヘジャは、時々、外の空気にも触れてみたい

    として、外見をスンミそっくりにメイクや変装をプロにさせて貰い、

      出かけて楽しんでいた。

         つまり、カノンが本能で、今日は怖いスンミちゃん、今度は、

          出会った頃の優しいスンミちゃん・・・

       まるでスンミちゃんが二人いるみたいだと感じ取ったのは

        ・・・この事だったのだ・・・・


           実際のスンミは、心が優しい、

        いつも自分に自信が無いオドオドした

           イジメられっ子のスンミだった。

        カノンが、ホームスティに来てから、スンミは
     
   心から嬉しかったし、カノンと仲良くしたいと思っていた・・・

        しかし、最近は、ヘジャがカノンに興味を持ちだし、

     スンミは大人しく家で過ごしなさいと命令をされて、

    如何仕方なく、黙って家で過ごしていたのだった。

        スンミとヘジャの共通する事に「テファ」が居た。

       最初は、スンミが、テファに片思いをしている事を

       ヘジャが見抜き、スンミを通じてテファの話しを聞き、

             興味を持ったのだった。



       そして、スンミに変装してホンデキャンパスに入り、

            テファを実際に見る事によって、

            ヘジャもテファに夢中になった・・・

      そのテファが、カノンに盗られてしまうのでは?

       と言う危機感?・不安感を、ヘジャは本能的に感じ

          取っていたのかもしれない・・・

 それで、執拗なまでにカノンを疑っていたが、カノンが、テファには

興味がなく、テファもカノンに興味がないと言うのが分かって来て、

更にはカノンは、実兄のソンジェと付き合い始めたと聞いて、安堵したのだった・・・

    これが誤算だったと気が付いたのは、ずっと後の事だったが・・・・

 
        アヤと別れて、ソンジェとカノンは、

           帰り道を歩いていた・・・・

  カノンは、ソンジェに「オッパちゃん、あのね、ジナさん、

      まだオッパちゃんの事、好きかも?ジナさんとオッパちゃんが

     二人でジャズを演奏してた時、周囲の人達が、ため息をついてた・・・

      なんて素敵な演奏と、二人なのかしら?って・・・

                カノンもそう思ったよ。えへへ」

ソンジェ:「ため息?ガッカリしたため息じゃないの?ハハハ」

カノン:「ううん、違うよ〜、凄く素敵な二人による、素晴らしい演奏だったから

        ・・・二人はお似合いだねって皆が言ってた・・・

     オッパちゃん、格好良かったから、カノン、凄く自慢だったよ・・

      演奏も凄く良かったもん」

    ソンジェ:「ハハハ・・・どうも有難う。舞台からカノンが
 
          ピョンピョン飛び跳ねながら拍手してくれているのが

           見えたよ。アルトサックスはもう吹けないと思ってた

            ・・・ブランクもあるし・・・・

        上手く弾けるかな?弾けなかったらどうしようかとか・・・

          でもカノンが、音楽は楽しくやるものだと教えてくれた

       事を思い出したんだ・・・上手いとか下手とか・・関係ないし、

      問題にすること自体、可笑しいよね・・・僕は音楽が好きだし

       ・・・音楽をすることによって楽しいと言う事を改めて知っ

            たんだ・・・カノン、有難う・・・

                  それから・・・・

             カノン、僕は、もうジナとは何でもないよ。

         カノンも、ジナと僕の事をスンミから聞いているんだろう

           けれど・・・僕たちはもうとうの昔に終わったんだ。」

    カノン:「えぇ・・・何だか勿体ないな〜」

  ソンジェ:「え?勿体ない?ハハハ〜どうして?」

       カノン:「・・・だって、ジナさん、超綺麗な人で、ピアノも

           超上手だったから・・・・オッパちゃんは
         
           ナルシストだし、キムタクだから・・・

           工藤静香に似ているスレンダーな美女?の

         ジナさんと似合ってたし・・・サックスをオッパちゃんが

           吹いてた時、チョヌン キムタクイムニダって、

           聞こえてきたもん」

  ソンジェは「えぇ!!そんな事、ちっとも言ってないし・・・演奏する事に

       夢中でキムタクなんて全然、考えてもなかったよ・・・」

カノン:「嘘、嘘、嘘〜何か、格好つけてたよ・・・

       それにオッパちゃん、元気なかったもん・・・」

ソンジェ:「えぇ!元気だよ、今も物凄く元気だよ・・・」

カノン:「嘘、嘘、嘘〜しょうがねぇなぁ〜、カノンが1曲歌って上げるね。」

     ♪クリクリクリクリ〜クリクリ オッパちゃん〜♪

ソンジェは「カノンは、その歌が歌いたいから、元気無いっていったん

      じゃないの?ハハハ」と言った。

    カノンは、エヘヘっと笑い、実はそうだと言って、また歌い始めた。


   ソンジェは、凄く幸せだった・・・

        そして楽しい気持ちになって、声を立てて笑っていた・・・

      いつまでもいつまでもこの家路に続く道が続けば良いと

         思った・・・カノン、、本当に有難う・・・

          そして僕は、カノンが好きだ・・・

  ふと、ビョンジュが言っていた言葉を思い出した・・・・



     カノンには、探している韓国人の男がいると・・・

   恐らくその男とカノンは付き合っている・・・

                 恋人だと・・・・

   何かのキッカケで、その記憶がスッポリ消えているのかもしれないと・・・・

      ホンデや、ペンダントがカギになっている事も伝えられたが・・・・

       もし恋人がいるとしたら・・・その恋人がカノンの前に現れたら・・・


      カノンも、またジノの様に、自分から去って行くのだろうか?

             ソンジェは一抹の不安を覚えた・・・・

                万が一、そんな時が来たら・・・・

   ソンジェはカノンを失いたくは無いと思った・・・だが同時に、フフフっと

   笑って、もし、そうなったら、カノンが幸せであるなら、、、、

   その幸せを自分も喜び、応援しようと思った・・・

そして自分には「音楽」があるじゃないか、、、音楽の楽しさや生きがいを

改めて感じさせてくれたのはカノンだから・・・今度は、カノンを幸せにして

上げよう・・・

  カノンの笑顔の為に・・・カノンが1番望む事をしようと思ったのだった。

    僕は、カノンの家族・・・そうだ家族だから・・・別れは無い・・・・

        今は、この幸せで楽しい時間を大切にしよう・・・


ソンジェ:「カノン、演奏会も終わったし、明日から、カノンが探したがっ

      ているそのペンダントの人を一緒に探そうか?」

カノン:「え?本当?」

ソンジェ:「うん・・・ビョンジュからも頼まれていたんだ・・・

      ビョンジュも協力したいと言っていたんだけれど、

      政府から期待されてる学生だから、忙しいって、電話をこの前、

      貰ったんだ。思い出したよ。」

カノン:「ビョンジュお兄さんは、完璧な日本語だったっけ・・・

     オッパちゃんの日本語は、上手だけど・・・・」

ソンジェ:「おっ!上手だけど?何なの?」

カノン:「何か、中国的・・・韓国語も下手くそみたいだから、カノンが

     やっぱり、教えて上げるね。日本語も韓国語も・・・」

ソンジェ:「えぇ・・・僕は韓国人だよ。中国人はカノンだよ。僕は、日本に

      居る時、日本語学校で1番、苦手だったのは漢字だったんだよ。

      中国語は漢字で書くものだから、僕は余り書けないから中国人

      じゃないよ・・・カノンの方が漢字を沢山、書けるし・・・自信満々

      で、日本語や韓国語を話そうとするところは、中国的だよ。」

カノン:「えぇ・・・・あ!でも、顔がね、真ん丸だし、ドングリみたいな目

     だから、何か台湾の人に間違われる事が何回かあったかな〜」

ソンジェ:「ほら・・・やっぱりね・・・カノンの方が中国人だよ」

カノン:「違うX違う・・・だって台湾の女の子って、超可愛いし、アイドル

     みたいだもん・・・カノンはチビで、ブーだもん・・・だから違うもん」

ソンジェ:「カノンは可愛いよ・・・だから台湾人だね。ハハハ」

カノン:「え?オッパちゃん、カノンは可愛いの?」

ソンジェ:「うん、可愛いよ・・・」

カノン;「えへへ〜・・・・でも、日本の大学で、韓国文化演習で、韓国人

     の最高の褒め言葉は、女の子は美人ですね、男の子は格好

     良いですって習ったっけ・・・その他の場合は、普通や普通以下

     でも可愛いって言うって・・・日本だと可愛いは最高の褒め言葉

     なんだけれどって・・・・」

ソンジェ:「違うよ・・・僕は、母さんが日本人だから半分は、日本人の血が

      流れているし、考え方も日本人的だよ・・・僕の言う可愛いは、

       日本人が発する可愛いと同じ感覚だよ・・・カノンは可愛いよ。

      本当に可愛いよ・・・」

カノンは、ムキになって言葉を訂正するソンジェを見てウヒャウヒャと笑い

だした。

ソンジェ:「・・・それよりも、もし、そのペンダントの人が見つかって、

      その人が、カノンの恋人だったら、、、カノンはどうするの?」

          カノンは、またまたお腹を抱えて笑った・・・

カノン:「多分、違うと思う・・・だって、全然、記憶にないんだもん・・・

     時々、フラッシュバックで、思い出す事はあるけれど・・・・

     強く会いたいとかって思わないし・・・もし、相手の人が恋人

     なら、相手の方からカノンに会いに来てくれるはずだと思うし、

     そんな気配すらも感じられないから・・・絶対に違うと思う・・・

  私は、このペンダントを元の1つのペンダントに戻してあげたいと思って

いるだけなの・・・時々、悲しそうな涙の蒼い色に、ペンダントが光る

から・・・だから、持ち主に戻してあげたいだけなんだけど・・・・」と言った。

 カノンは、真っ直ぐに、ソンジェを見つめながら言った・・・嘘偽りは全く

     なかった事を、ソンジェも感じ取り・・・安心した・・・

        そうこうしている内に、李家の屋敷の門に到着した。

カノンは「オッパちゃん、今日は本当にどうも有難うございました。

     凄く楽しかったです。またね?お休みなさい。」と言った。

  ソンジェも笑いながら「お休み・・・良い夢を!」と言って帰ろうとした。

  
  カノンは「オッパちゃん・・・夢で逢いましょう。」と言って手を振った・・・

    ソンジェは益々、嬉しくなって、「あぁ、そうしよう!またね」と手を振り

          返し、自分のアパートメントへと帰って行った・・・・



    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



  「お帰り、姉さん、コンサートはどうだった?」ニコヤカに笑いながら

        テファが、姉のアミンを出迎えた・・・・

      アミンは、テファと顔を合わせながら、ハッとした。

   


     「鈴木カノン・・・」この名前・・・聞いた事がある・・・


            それは、春先の3月末の事だった・・・  



  アミンは深夜番組のレポーターの仕事をしていて、その時に、電話が

   鳴った・・・発番は、見知らぬ番号であり、、更には韓国内の番号で

   はなかった・・・それでも一応は出てみようと思い出たが、小さい弱々

   しい声で、しかも変てこな言葉で・・・・悪戯電話だと思い、切ってし

   まった・・・ところが、また直ぐ、同じ番号から電話が来て、今度は、

   韓国語らしき言葉で、「自分は日本人で、テファの妹とか、友達とか

     だとか言っていて、テファに会いに来たみたいな事を言っていた。



            名前は「鈴木カノン」と言っていた・・・・



  そうだ、確かに鈴木カノンだった・・・・名前が変わっていたので、かすか

              に記憶にあったのだった・・・・


 アミン:「テファ、ちょっと話しがあるんだけど?私の部屋に来てくれない?」

  テファ:「あっ、あぁ・・・いいけど?」テファは台所でコーヒーサーバーから

           コーヒーをカップに注ぎながら言った・・・・


        <アミンの部屋>

            テファ:「姉さん、話しって何?」

アミン:「今日は、ユリちゃんとコンサートに行けて楽しかったわ。テファが

     チケットを譲ってくれたお陰よ・・・有難う!」


テファ:「いや・・・どっちにしても、僕は大学のレポートの事で忙しかったし

     行けなかったから・・・姉さんは呉ジナの大ファンだったから・・・・

    行って貰って良かったよ・・・ユリも姉さんが好きだから一緒に行けて

     満足だったと思うよ・・・ハハハ。お礼を言うのは僕の方かも?」


アミン:「・・・ところで、今日、私は、テファに言わなくっちゃいけなかった事を

     思い出したの・・・」

テファ:「・・・・言わなくっちゃいけなかった事???」



   アミンは、この春、起きた不思議な電話の事、

             鈴木カノンの事を話しだした・・・

         テファの顔はみるみる青ざめた・・・・

     カノン・・・カノンが、春休みに、僕に会いに韓国に来た・・・

         そして姉さんに連絡した・・・・・



  姉さんは、仕事で忙しくしていたし・・・

       TV局のスタジオの近くで寝泊りをしていたから、

   僕に連絡もままならず・・・バタバタとしていた・・・

  ただ姉さんは、僕が大体、大学が6時頃終わる事、ホンデNBに行って歌を歌う事

 だけを何度も繰り返して伝えた・・・・恐らく、カノンは、大学の近くで、ずっと僕を

    待っていたのだろう・・・・


  僕を見つける事が、出来たのだろうか?それとも、その日は、ホンデNBには行か

         なかった???


  テファ:「姉さん・・・いつ、その電話があったのか?正確に分かる?」

アミン:「えぇ・・・分かるわ・・・

       それに、多分、テファに知らせようと思ってたから、

      携帯に履歴が残ってるわ・・・ちょっと待って!!」

      アミンは、手帳や、携帯を取り出して履歴を探しだした。

アミン:「・・・あったわ、、3月18日に電話があったわ・・・ほら・・・番号は080

     XXXXXXXXXよ」

        確かに、テファが覚えているカノンの携帯番号だった。

アミン:「ねぇ・・・テファ、あなたと鈴木さんて?」

テファは、顔を赤くしながら「実は・・・僕たちは付き合っていたんだ・・・」

アミン:「え?じゃあ、彼女はユリの話だと、今、ホンデでしょう?再会

      できたの?」

テファ:「・・・再会は出来たけれど・・・実は・・・」っとテファは言って、事の仔細

    を、姉に話しだした・・・そしてこの事は、誰にも言わないで欲しいとした。

アミン:「テファが言う通り、、、多分、そのカノンちゃんは、記憶を失っているの

     かもしれないわね?テファ、正直に、カノンちゃんに言って、名乗りを

     何故、上げなかったの?」


   テファは、幼馴染のユリの事もあったし、もしかしたらカノンは事情があって、

   僕達の事を隠しているのかもしれないし・・・李家には色々な黒い噂があるから

   それに巻き込まれているのかもしれないし・・・慎重にしたいと思っている事も、

      伝えた・・・・



  お互いに好きあっているから、たとえ記憶がなくなったとしても、また再度、築き

   上げれば良いし・・・自然に思い出してくれるのを楽しみとして待つのも良いの

         では?と思っている事も伝えた・・・・


        アミン:「これは一波乱ありそうよ・・・

     特にユリちゃんは、テファにゾッコンだから・・・怖いわよ・・・」

テファ:「カノンは、僕が守る・・・だから姉さん、知らん顔していてくれないか?」

アミン:「分かったわ・・・秘密にしておくわ・・・

     でもカノンちゃんて小さくてフワフワしていて可愛い女の子だったわ

     ・・・白い兎みたいだったわ・・・」

    テファ:「だろう?もっと近くで見て欲しかったよ・・・超可愛いよ・・・

    それにいつも笑っていて、僕を楽しませてくれるコメディアンみたいなんだ

    ・・僕は神様も運命や偶然も信じないけれど、、、

     カノンとの、こうした再会は、神様がいるとしたら感謝するよ・・・

        運命も少しは信じたい気持ちだったしね・・・ハハハ」

 
          アミン:「フフフ・・・面白いわね・・・」


         テファ:「何だよ、、、姉さん、何が可笑しいの?」

アミン:「私はテファが好きなタイプって、もっとこう、ユリみたいな美人な子だと

    思っていたし・・・大人っぽい子が好きなんだって思っていたわ・・・」


  テファ:「・・・ハハハ・そうかな?僕はカノンみたいな子が好きなんだ。」



アミン:「とにかく、早く記憶が戻れば良いし・・・二人が仲良くまた付き合え

    れば、良いわね・・・そう言えば、ユリちゃんが言ってたけど、カノン

    ちゃん達の語学研修は夏の間だけでしょう?今度は、あなたが、

    カノンちゃんを見送る番よ・・・その前に真実が分かって、二人の

    仲が戻れば良いのだけれど???」


テファ:「・・・姉さん、有難う・・・たとえダメだったとしても

      ・・・・僕は出来れば来年、日本の企業に就職して、

       日本に戻るつもりだから

     ・・・・・そしたら、じっくりカノンとの時間を取り戻せば良いと思っ

     てるから・・・」

アミン:「・・・テファにしては、凄い決意ね・・・」

        その時、姉の部屋の鳩時計が深夜2時を告げた・・・  

テファ:「もうこんな時間だ・・・姉さん、明日も早いのに・・・御免」

アミン:「テファだって大学でしょう?勉強もほどほどにして寝なさいよ。」

テファ;「あぁ・・・そうするよ、じゃあ、お休み」

アミン:「お休み」



   アミンは弟のテファが、本当にカノンの事が好きなんだと言う事や、

     カノンの事を大切に考えている事を知った・・・これからの二人の展開と

        進展を楽しく見届けようと思ったのだった・・・・

    幸い両親は、子供たちの意思を尊重し、好きなように人生を歩めと言う

    考えの人たちだったので、自分の芸能界入りにも快く賛成してくれ、応援

    もしてくれた・・・弟のテファにしても、軍隊に戻ってきたばかりだと

    言うのにテファが日本に行きたいと言うと、あっさりとOKを出してくれる

    両親だった・・

   とにかく後悔のないように、思ったままの人生を歩んで御覧といってくれる

    親が有難かった・・・  

    
    おそらくテファは意志が強く、自分が思うがままの人生を進むだろう・・・

          来年はきっと有言実行で、日本に行ってしまうだろう・・・・

 
   寂しい感覚にとらわれたが、それでもテファが幸せなら、姉のアミンも又

        笑って送り出してやりたいと思った・・・・



          ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



  バタバタと時間だけが流れ、今日は土曜日、、、

             テファ達とロッテワールドに

                   行く事になっていた・・・・



   ところが、いざ行く事になったが、ジュンギは緊張のあまり腹痛を起こし、

        行く事が急遽出来なくなってしまったのだ・・・・



    テファに、ジュンギは伝える前に、カノンにメールと電話で知らせた・・・

        勿論、カノンに直接は伝わっていない・・・

   電話もPCメールもスンミ・・・いやヘジャの部屋のPCと電話に繋がって

   いるものだった・・・

       ヘジャもまたジュンギとは知らず、テファとのメール交換や、

           電話だと思っていた・・・・

ジュンギ:「あっ、カノンちゃん、、、先にメールしたんだけれど、御免、

      急用ができちゃって・・・・(=まさか腹痛なんて天下のパラン

      ファのボーカルがそんなみっともない理由じゃあ格好がつかな

      いだろうし・・・)それで今日のロッテワ-ルドには行けないんだ。

      また次の機会で良いかな?李スンミさんにも伝えておいてく

      れないか?すまないって・・・」

ヘジャ:「わぁ、残念だわ・・・とっても楽しみにしていたのに・・・・急用って

     何?私と会いたくは無いの?それよりも大切な用事なの?」

ジュンギ:「え?・・・カノンちゃん、分かってくれよ・・・とにかく、

       急用だから・・・うっ、、、」と言って、電話を早々に切って

       しまった。急な差し込みがジュンギを襲ったからだ・・・

            ジュンギはトイレに駆け込んだ。   

     一方的に電話を切られたヘジャは、誤解をした。多分、姜ユリが嫉妬

   して行かせまいとして横やりをいれたのだ・・そうに違いないと思った・・・

     そこへホームテレフォンが鳴った・・・カノンからだった・・・

カノンが、準備ができたから、ロッテワールドへ行きましょうと言って来たの

だった・・・ヘジャは、無性に腹が立ち、カノンに意地悪をした・・・

  「御免ね、カノンちゃん・・・私、急に自分に自信が持てなくなったの・・・

  テファはあなたであるカノンちゃんと遊びたいのだから・・・私は邪魔なだけよ。

      テファは日本にいたから日本語の通訳なんて必要ないでしょう?

  そう思ったら・・・私は、行きたくなくなったの・・・多分、テファはもうロッテ

    ワールドに向かってる筈よ・・・今、地下鉄の駅に向かってるってメールが

     来たの・・・悪いけど、カノンちゃんだけ行ってきてくれる?」

         カノン:「え?本当?・・・・私だけで行くの?」

ヘジャ:「大丈夫よ・・・テファやジュンギって言う男もいるし、多分、姜ユリも

      ひっついて来るから・・・遊んできてよ・・・私はやっぱり行かないし・・

      行けないわ・・・」

カノン:「・・・・分かったわ・・・人を待たせたら悪いから。でもスンミちゃん、

     本当に行かなくて良いの?」

ヘジャ:「ええ・・・とにかくいいから早く行ってよ。遅刻しちゃうわよ。車で行くと

     逆に渋滞するから、電車で行ってね・・・じゃあ・・」

カノンは「え?」っと思ったが・・・それでも出かけることにした・・・・

地下鉄駅で切符を買って、丸っきり一人でチャムシルまで行く事になっ

たのだった。ソンジェは、今日は今日から、大田で演奏会があるので、

ソウルにはいなかった・・・今日はロッテワールドに行く事もキチンと話をして

おいた・・・ソンジェは快く「楽しんでくれば良いよ・・・我儘なスンミの為に

御免ね」と言ってくれたので、、、これ以上は心配させたくなかった・・・

地下鉄の中で、カノンは、今日はテファが来ない事を、

何となく察知した・・・

カノンに待ちぼうけを食わして、カノンがテファと喧嘩するようにしかけたり、

カノンがテファに対して失望するようにしむけたいのだと、悟った・・・

 カノンは、チャムシルまでの切符を見つめた・・・

     チャムシル・・・折角切符を買ったし、行ってみようかな?それにいつも

    フラッシュバックで出て来るお兄さんはチャムシルに住んでいたみたいだし、

   ロッテワールドでアルバイトをしていたとも言っていた・・・何かが分かるか

          もしれないから・・・行ってみようと思った・・・・



    一方、ジュンギはトイレで小一時間ぐらい、唸っていた為に、テファに

            連絡するのをスッカリ忘れていた。

       慌てて、テファに電話をした・・・

         
       ジュンギ:「おっ、テファ、鄭テファか?」

       テファ:「・・・もしもし、、もしもし?」

       ジュンギ:「テファ、俺、、ジュンギだ。今、どこだ?」


   テファ;「今か?今は地下鉄の電車の中さ・・・

                次の駅がチャムシルだけど?」

ジュンギ:「・・・テファ、、済まない・・・

          昨日の夜から緊張して腹の調子が悪くて

      ・・・今日は行けそうもないんだ・・・

        カノンちゃんには電話とメールを先に入れたから・・・

     申し訳ないが・・・今日はキャンセルになった・・・悪いな・・・」

テファ:「え?(何だよ・・・お前がどうしてもって頼みこんだから

     ・・・忙しいのにスケジュールをあけたんだぞ!っと言いたくなったが、

     その感情を抑えて)・・そうか、、仕方ないな・・

    じゃあ、次の駅で乗り換えて帰るよ。え?埋め合わせ?

         いいよ、いいよ・・・じゃあ、大事にしろよ・・」


         アナウンスが「チャムシル駅」と告げた・・・


 テファは下りて、又家への地下鉄に乗り換えようとした時に、

  見覚えのある小さな女の子が、キョロキョロしながら出口を探しているのが

  見えた・・・・

            カノン?カノンじゃないか・・・

        テファはカノンを追いかけて「カノン」と呼んでみた・・・


   カノンは自分の名前が呼ばれて、

      声の方向に振り向くと、テファが立っていた・・・・

      テファは走り寄り「カノン、どうして?」

 カノン:「え?テファさんもどうして?

       今日は、スンミちゃんが行けなくなったけど、折角の約束だから、

      カノンだけ行ってって言われたけれど・・・電車に乗ってる時に、

     きっとテファさん達は来ないんだって思ったの・・・でも、もう切符

     を買っちゃったし・・・地下鉄に乗ってるし・・一人でチャムシルに

     行って、ロッテワールドも行ってみようかなって思ったの・・・」


       テファ:「え?一人で?ロッテワールド?」

カノン:「うん・・・ロッテワールドは、修学旅行で高校生の時に来た事が

       あるんだけれど・・・・凄く可愛いテーマパークだし・・・

    それに歴史博物館も隣接しているから、そこを見学しても

      良いかな?って思ったの・・・でも、テファさんは?

  私はてっきりテファさんが来られないかと思ってたんだけれど???」

        

     テファにとってはジュンギの嬉しい誤算だった・・・


テファ:「実は、スンミとメル友を実際にしているのは、

     僕の友人のジュンギさ・・・そのジュンギが、腹痛を起こして

     行けなくなったんだって・・・スンミは、ジュンギの事を僕だと

     思ってるから、僕が今日、行けないんだと思ったわけさ・・・

   ジュンギが行けないって知ったのは、僕がもうチャムシルに着く手前

   ・・・そうついさっき、電話で知らされたんだ・・・

   仕方ないから、Uターンして家に帰ろうと思ってたら、

   カノンの姿が見えたんだ・・・どうやら同じ電車に乗っていたんだね?」

          二人は顔を見合わせて笑った・・・


  テファ:「折角、ここまで来たんだから、二人でロッテワールドへ行こうか?

     僕は、こう見えてもロッテワールドに何回も来ているから乗り物にも

       詳しいよ、きっと役に立てると思うよ。」

カノン:「えぇ、本当?・・・」

テファ:「それに今日は、天気の良い土曜日だし、カップルや家族連れで、

     混み合ってるよ。一人のテーマパークは寂しいよ。一人より二人

     で回った方が楽しいし、変な眼でも見られないし・・・良いかも?」

     っと言った。

カノンは「・・・そうだね?じゃあ、宜しくお願い致します。」と言った・・・・



  早速、入場券を買おうと、売店にカノンは行こうとしたが、

  テファは「違うよ」とカノンの声や口調を真似て、手招きして言った。

    カノンは、「え?」と思ったが、テファについて行く事にした。

  テファは、従業員入口の方向へ進み、入口の守衛さんと親しいのか?話をして、

  難なく中に通された・・・そしてすれ違う従業員の人達に、親しく挨拶を

  されたりしていた・・・・

   カノンは、迷子になったり、置いてきぼりをされない為に、

  テファのシャツの裾をギュッと握りしめていた・・・・

テファは、相変わらず、カノンは僕のシャツの裾を握りしめるなと思って、可笑

しくて笑い出しそうになった・・・・

既に開園され、次々と人が入場していた・・・テファは、「ちょっとここで待って

いて」とカノンに言って、駆け足でインフォメーションセンターへと入って行った。

五分もしない内に、テファは戻って来て、ロッテワールドのチケットと、日本語の

ガイドブックをカノンに渡した・・・

カノン:「有難うございます・・・チケット代金、幾らですか?」

テファ:「あっ、いいよ・・・いいんだ」

カノン:「え?でも・・・ここに35000ウオンって書いてあるから

        ・・・・35000ウオンで良いですか?」と言って

   お財布から35000ウオンを取りだしテファに渡した・・・

テファは、カノンは、決して人に甘えて奢って貰ったりする性格ではない事を

知っていたので、素直にお金を受け取った。代わりに後で食事でもご馳走して

上げようと思ったのだった・・・・

テファ:「さて、カノン、何から乗ろうか?午前中の早い時間は、人気のある

     乗り物にドンドン乗った方が良いからね・・・360度回転のジェット

     コースターに乗ろうか?それからシンドバッド・・・そうTDLのカリブの

     海賊みたいなアトラクションに行こうか?」

カノン:「うん・・・そうしようXそうしよう!あっ!!」

   
    カノンの驚きの言葉の方向を見てテファは直ぐに分かった・・・



テファ:「カノン、ソフトクリーム食べたいの?ロッテワールドのソフトクリームは、

     逆さまにしても落ちないって言うので有名なんだよ。」

カノン:「うん・・・知ってる・・・

        もし落ちたら2倍にして返してくれるんでしょう?」

テファ:「良く知ってるね?ハハハ・・・」

カノン:「ソフトクリームは今はまだ要らないです・・・後で食べるかも?えへへ」

    

      テファは、まるで日本に居た時の事を思い出した・・・

  

  カノンと会い、二人でこうして又、遊べるなんて夢みたいな事だったからだ・・・

     カノンも又、楽しくて弾んだ気持ちだった・・・

 テファを独り占めして、一緒に遊んで貰っているなんて、、、

    この事が、ユリやスンミにバレたら・・・・

         それを考えると恐ろしかったが・・・・

 そんな事抜きにしても、テファと一緒に居られる事が、嬉しく・楽しい事だった。

    ソンジェと一緒に居る時とは、ちょっと違った楽しさだった・・・

ソンジェといると、どうしてもカノンが、ソンジェを励ましたり、笑わせる役になる

のだったが、テファといると、テファ自体も明るく元気で、カノンは、無理は全く

しなくて良かったし、自然に笑ったり、楽しんだりできるからだった・・・・

お昼の時間になり、テファは、ロッテの建物の高層階にある民族館近くの食堂

にカノンを連れて行き、海鮮チヂミ、キンパブ、おでんと、辛くない料理ばかりを

手際良く注文した。テファ自身は、辛い料理であるビビン冷麺を頼んだ。

カノンはとても不思議だった・・・テファが、カノンの好きな物を全部知っているか

の様な、注文内容だったからだ・・・


    おでんを食べながら、テファは、思い出し笑いをした・・・

カノン:「テファお兄ちゃん、どうしたの?」

テファ:「あっ、、、いやちょっと思い出し笑いしちゃったよ・・・」

カノン:「思い出し笑い?」

テファ:「あっ・・・うん、、、日本に居た時、仲良くなった女の子が居てね・・・

     その女の子とは仲が良すぎて喧嘩する事もあったんだ・・・」

カノン:「喧嘩?」

テファ:「多分、言葉の誤解もあったし・・・国や文化の違いも有ったし・・・   

     凄くささいな事だったと思うよ。原因が思い出せない位だから・・・

     そんな時、いつも仲直りに、このおでんが登場し、おでんが解決

     してくれたんだ・・・・」

カノン:「ふ〜ん・・・このおでんが???」

テファ:「うん・・・最初の喧嘩は・・・・ちょっとした事があって、バイバイすると

     まで大ごとになったんだ・・・・でも彼女が誤解してたって事で・・・

     仲直りを僕に求めて来たんだ・・・・」

カノン:「やっぱり些細な事で喧嘩になったの?」

テファ:「いや・・・最初の喧嘩は、彼女が日本に来ている韓国人の男や

    女達に酷い事をされたり、言われたから・・・それで韓国人は嫌いだ

    って・・・僕の事も、彼らと同じ韓国人だから、、、酷い人なんじゃ

    ないかって・・・・しかも彼女だけではなく、彼女のお母さん達も、皆

    韓国人に酷い事をされたみたいでね・・・・日本は韓国ブームで、

    しかもウオンが強くなり、留学やワ―キングホリディに、韓国人は、

    行きやすくなったんだ・・・特に韓国人の男たちは、日本に行けば

    若い女やおばさん達にチヤホヤして貰えるし・・・日本人のおばさ

    んは騙しやすいし・・・財布代わりにすればいいって・・・そんな噂

   まであったし・・・僕の周囲でも、日本人の女の子は簡単にナンパ

   出来てヤラセテくれるし、馬鹿が多いって・・・おばさんも、何でも

   欲しい物を買ってくれるから、お財布を持つ必要は無いって自慢

   してる奴もいたから・・・」

カノン:「・・・・何か悲しいね・・・それでどうなっちゃったの?」

テファ:「僕は、どんなに頑張っても韓国人には変わりないし・・・・

    韓国人にも悪い人もいれば、良い人もいるし・・・日本人だって

    同じだろうって思った・・・でもその時は、言い訳を言うのも疲れるし

    自分は良い人だし信用してくれって言うのも・・・何か嫌だったし、

    馬鹿みたいだし・・・彼女がそんな風に僕の事さえも悪い人って

    見ているなら・・・何を言っても無駄だと思った・・・だからバイバイと

    言われたから、それを受け入れるしか無くてね・・・」

カノン:「それがどうやって、おでんで仲直りしたの?」

テファ:「彼女も、誤解して悪かったと反省したのかもしれないね・・・

     そして何故か、仲直りの切り出しの話が、おでんから始まっ

      たんだ。彼女は凄く映画が好きで、暇さえあれば映画を見に

     行ってるんだけれど・・・その中で、韓国人の多くが涙し、感動

     した邦画があって、、、その映画のタイトルが・・」っとテファが

      言いかけた時に、カノンが元気よく、

                 「ラブレター」と答えた。

テファ:「その通り!正解。・・・中山美穂が、北海道の小樽で、

    お元気ですか?って叫ぶんだけど・・・韓国人は中山美穂の

    発音が「おでんさしますか?」と聞こえてしまうんだ・・・その話を

    彼女の親戚の韓国通のおばさんから聞いたと言う話をして来て

    僕も知ってる、知ってるって事で、おでんの話になって、よく高校の

帰りに、屋台のおでんを買い食いして帰ったとか、1本10円で安いし、

 お腹一杯になるし、美味しかったとか・・・そんな話で自然と仲直りが

  できたんだ。以来、喧嘩をすると、何故か?おでんの話をするようにな

    って、仲直りになるんだ・・・」

カノン:「嬉しくて美味しい・しかも安い仲直りの方法ですね?・・・でも

     おでんが1本10円なの?」

テファ:「あっ、いや、今は1本50円ぐらいかな?」

カノン:「それでも安いね?日本のおでんよりも具が大きいし、、、」

テファは、やっぱりカノンは記憶を失っていると確信した・・・

   今のおでんの話しも、まるで初めて聞く話のように、目を丸くして、

    興味津々で、聞いていたからだった・・・

テファ:「ところで、カノンは良くラブレターと言う映画を知っているね?」

カノン:「うん・・・私も映画やTVドラマが大好きだから・・・特に韓国映

    画やドラマが大好きだから・・・」

テファ:「何のドラマや映画が好きなの?」

カノン:「全部好きだけど?テファお兄ちゃん、カノンの好きなドラマ

     と映画、それぞれ1番を当ててみて!当たったら、カノンが、

     何かご褒美をテファお兄ちゃんにします・・・・」

  テファは勿論、直ぐに答えられるが、直ぐに答えたらカノンが逆に

怪しんだり、戸惑ったりするかもしれないので、、、、考えるふりをした。

片方は正当にして、もう一つは避けようと思った・・・

確か、カノンの好きなドラマは、「秋の童話」だった・・・この時から

ウオンビンのファンになり、今もずっとファンだからだ・・・・

映画はカンドンウオン主演の「私達の幸せな時間」か、チョンドヨン

主演でAIDSがテーマの「ユア マイ サンシャイン」で、タッチの差で、

「私達の幸せな時間」だと記憶している・・・3番目は「春が来れば」

と言うチェ ミンシク主演の物があった・・・よしこの答えで行こうと思い

テファ:「ドラマは、そうだな・・・冬のソナタと言いたいけれど、冬のソナ

タは、アジュンマが好きだから・・・カノンはまだ若いし・・・だからひょっと

して「秋の童話」かな?・・・そして映画は、カノンの名前から由来して

音楽に関係ある作品「春が来れば」じゃないかな?」

カノン:「凄い!!テファお兄ちゃん!!・・・ドラマはあってるよ、私は

    秋の童話が大好きだから、何回も見て泣いてるし・・・出演し

    ている準主役のウオンビンさんが大好きだから・・・・

     映画は、残念ながら、外れ!!でもね、3番目に好きな映画

     です・・・1番は「ユア マイ サンシャイン」て言うのと、2番目は

     「トンマッコルへようこそ」って言うの知ってる?」

テファは思わず「え?私達の幸せな時間じゃないの?」と言ってしまった・・・

カノンは、キョトンとして「え?・・・それってカンドンウオンさんの映画?そう、

その映画も好きだけど・・・凄く悲しくて見るのが辛くて・・・チャンドンゴン

さんとウオンビンさんのブラザーフットも好きだけど、、、やっぱり切ない気持

ちになるし・・・チョ・スンウさんのマラソンと言う作品も好きだし・・・最近は

楽しい映画の方が好きになってきていて、だるまシリーズとか、知ってる?

ダルマよ遊ぼうとか、ダルマよソウルへ行こうとか・・・でもテファお兄ちゃん、

凄いね・・・よく映画とか見ているんですか?」

カノンに疑われることなく話題が続いているので、テファはホッとしながら、

「・・・いや・・・そんなに詳しくは無いけれど・・・・そう・・・僕の姉さんが芸能

人で女優だから・・・それで・・・姉さんが結構、ドラマや映画を自分の勉

強の為に見ていて・・・僕が付き合って見させられて・・・自然と詳しくなっ

たのかもしれないな・・・ハハハ」と言って、ごまかした・・・・

 これ以上話すと、ドンドンとボロが出てしまうのでテファは、そろそろ、

ご馳走様にして乗り物に乗ろうよとしたのだった・・・・

   カノンは賛成と言って、ご馳走様を元気よくした。

その韓国語の発音が、可愛い響きだったので、周囲もクスクスと笑った。

テファも微笑んだ・・・相変わらず可愛いな・・・カノン、今日はカノンと

二人で、本当に楽しいよ・・・・これで、カノンの記憶が戻れば・・・

僕はとても嬉しいのだけれど??

  テファは心の中で何度も、何度もカノンの名前を呼び、そして

カノンに語りかけていた・・・・・

パレ-ドが始まった隙に、テファはカノンを連れてジャイクロンに乗った。

そんなに待たずに直ぐに乗るためだった・・・

カノンは、「わぁ・・・ジャイクロンだ・・・こんなにスムーズに乗れるなん

       て・・・凄く嬉しい」と言って興奮していた。

テファは「・・僕と一緒だと得するだろう?役に立ってるかな?ハハハ」

と言って笑った。見る見るうちに、上へ上へとジャイクロンは昇り始め

て行き、ロッテワ―ルドホテルの建物が小さく低く見えて来た・・・

てっぺんに辿りつきそうな時、誰彼となく、隣り同士の人と手を繋いで

万歳をしながら、落ちて行くのが定番の乗り物だった・・・

カノンもテファと自然に手を繋いだ・・・その瞬間に、真っ逆さまに乗

り物が、下に降りて行った・・・人々の悲鳴や声・・・

「お母さん」「キャー」「助けて」「怖いよう」「好きな人の名前」等々・・

       テファは、「カノン」と叫んでいた・・・ 

         カノンは「え?」っと思い、テファの方向を見た・・・

 するとテファの胸元から、ペンダントがキラキラと飛び出た・・・

       カノンは、また「え?」っとなった・・・・

     繋いだ手のぬくもりにもかすかな記憶が甦ってきた・・・・



        「オッパ?・・・オッパ?」

              そう思った・・・

つかの間の時間だった・・・そしてあっと言う間に、ジャイクロンの乗り

物は終わってしまった・・・・

テファ:「カノン、大丈夫?」

カノンの顔を覗き込みながら、テファはカノンに声をかけ、手を差し

出した。

カノンは慌てて「あっ、ハイ・・・大丈夫・・・です」とギコチナク言葉を

返した・・・

   もしテファが、フラッシュバックで出て来る・・・このペンダントの

     男の人なら・・・全てが合点が行く事だった・・・・

カノンは、いや違う・・・そんな筈はないと認めたくはなかった・・・

・・・と言うか心にブレーキがかかっていた・・・・

だが、それならば、どうしてテファは、カノンに直ぐに真実を伝え、

カノンのペンダントの片割れの人物だと名乗ってくれないのか?

     不思議だったし・・・もう少しこのまま確かめてみようと

     思った・・・・

テファは「ちょっと喉が渇いたね」と言って、カノンにはソフトクリーム

を買い、自分は「アイスコーヒー」を買って来た・・・・

カノン:「テファお兄ちゃんは、ソフトクリームじゃないの?」

テファ:「・・・うん、僕は甘い物は余り・・・」

カノン:「テファお兄ちゃんは、色は何色が好きなの?」

テファ:「え?どうして?」

カノン:「さっき映画とドラマをニアピンで当てたから、何かプレゼ

    ントしようって思って・・・」

テファ:「え?ここは、韓国だから、カノン、お金は僕の為に遣

    わなくて良いよ・・・気持ちだけで良いよ。・・・」



え???どこかで同じような会話をした記憶がある・・・・そう、

多分、、、日本で・・・カノンが男の子に同じ言葉を言っていた

言葉だった・・・

カノン:「・・・えぇ・・・でも約束だから、ちゃんと守りたいです。

     私が買うものだから安い物だし、負担にならない物に

     するので・・・好きな色を教えて下さい。」

テファ:「・・・・う〜ん・・・好きな色は、白かな?」

カノンは白と聞いた瞬間、あっ、違うと少しホッとした・・・

テファは、実は黄色と答えようかと思ったが、カノンと韓国で再会

してから、カノンの好きな物が全部、自分の好きな物に変わった。

だから、カノンの好きな色の白が今は1番好きになったのだった・・・



       「テファ・・・テファじゃないか」

次の乗り物に移り、お化け屋敷の前で、テファは高校時代の友人

に声をかけられた様子だった。

友人は、男5人で、ロッテワールドに来ていると言っていて、更に

カノンが日本人だと気が付くと、日本語で「僕は中央大学の日本

語学科4年の柳正龍、君、可愛いね。」と話しかけて来た。

カノンはちょっと恥ずかしい気持ちになって、テファの後ろに隠れた。

その他の男たちも、日本に留学経験があったり、日本に遊びに行

ったり・ワーキングホリディ経験があるらしく、日本語が多少出来た。

「鈴木カノン、東京の世田谷に住んでいる大学二年生だ」と、

テファは男達に紹介していたのを聞いて、カノンは、え?っと思った。

世田谷に住んでいる事をテファが何故知っているのか?不思議

だった・・・やっぱり「オッパ」かな?

  そうだ!!カノンは、テファのシャツの裾を引っ張り

 1回、大きな深呼吸をして

          「オッパ」

            と、呼んでみた・・・・

       するとどうだろう?

これまで、韓国人の男の子に「オッパ」と言う言葉を遣うと、

頭に激痛が走り、気分も悪くなってしまっていたのに・・・

テファに「オッパ」と言っても痛みも吐き気もなかった・・・・

  更に、カノンが「オッパ」と呼びかけると、男達の視線が

全てカノンに向けられた・・・・

  カノンは、ひょっとしてこの男たちの中にオッパがいる

のかな?とも思い、戸惑ったが・・・・

テファは微笑みながら「何?カノン?」と聞き返した・・・・

正龍は「二人のラブラブのトコ、邪魔して悪かったな・・・」と

言って、立ち去ろうとした・・・そしてカノンに「カノンちゃん、

テファは、ロッテワールドで、大学が決まって高校生の最後の

春休みの時や、大学に入ってからも、暫く俺らとアルバイト

をしてたから、凄く乗り物にも詳しいから、、100倍位、

得した気分になるし、楽しめるよ・・・それにテファは、今は

江南に住んでるけれど、前は、ここチャムシルに住んでい

たから・・・・」と言って去って行った・・・・・

  
     カノンは、オッパだ・・・

        このペンダントのオッパだと思った。


  だが、まだ確信が持てない部分も有り、カノンは戸惑

っていた・・・もしオッパだったら、どうしよう?と言う気持ちの

方が大きかったからだ。



   ペンダントが最終的な決め手だと思ったカノンは、もし、ペ

ンダントが三角形だったら・・・間違いなくテファだと認めよう

と思った・・・しかし、近くで見れば見るほど、、、テファは美

しい青年だった・・・ホンデのバンドのボーカルで、人気が

物凄くあり・・・優しくて、強くて、自分と言うものをちゃんと

持っている逞しさを感じた・・・

ジャイクロンの乗物から、カノンとテファは自然と手が繋げ

るようになった・・・それでも時々、カノンの癖であるシャツの

端を掴む事があったが・・・・

そしてカノンの口は、テファの事を「オッパ」と呼んでいる事が

多くなった・・・

  テファもカノンに「オッパ」と呼ばれる事が嬉しかった・・・・

カノン:「オッパは、東京のどこに住んでいたの?」

テファ:「新大久保・・・新宿の歌舞伎町の近くだよ」

カノン:「コリアンタウンのあるところ?危なくなかった?」

テファ:「ちっとも危なくないよ・・・凄く楽しいところだったし・・・・

     綺麗な女の人や可愛い女の子が多かったよ・・・」

カノン:「オッパ、趣味はなんですか?」

テファ;「え?趣味?歌かな?だって僕はパランファのボーカル

    だもの・・・」

カノン:「どんな歌でも歌える?」

テファ:「あぁ、歌えるよ・・・セブンの歌だって得意さ♪」

   やっぱり・・・オッパだ・・・・

          セブンと言う名前が真っ先に出て来るところも

             オッパだと言う事を確信させた・・・・

カノン:「ボーカルって、何でも歌えるの?凄いね。」

テファ;「うん、ボーカルに歌えない歌は無いよ。」

カノン:「え?違うよ〜」

テファ:「え?」

カノン:「だって、私の弟のトワもバンドやっててボーカルなんだけど、

     同じような質問を昔、したんだけれど、歌えない歌だらけ

     だって言ったもん・・・」

テファ:「ハハハ・・・韓国と日本の違いかも?韓国のボーカルは、

    とにかく、歌えない歌は無いんだよ・・・カノン、じゃあ、この

    歌、知ってる?」

     ♪世界に1つだけの花〜♪

テファはSMAPの歌を歌いだした。

     勿論、カノンは知っているし、歌えるが、カノンはワザと

   「え?誰のなんて言う歌?知らない・・・」と言ってみた・・・

テファはそんな馬鹿な?と思い「SMAPの有名な歌だよ」と、

慌てて言った・・・だが、帰国してから日本語を余り遣っていな

いので歌詞やメロディが違ってしまったのかも?と思い、何度も

記憶を確認しながら、口ずさんだ・・・・

カノンは可笑しくなってクスクスと笑い・・・「オッパ、ちゃんとSMAP

の歌だって分かってます・・・カノンが冗談を言いました。エヘヘ」

と言って笑った・・・・

テファは「おっ、カノン、騙したな」と言って、おでこを軽く小突いた。

 ロッテワールドの一通りの乗り物に乗って、あっと言う間に時間が

過ぎ、そろそろ帰ろうとなった・・・・

カノンは、お土産を買って帰りたいとして、ロッテワールドの可愛い

マスコット人形の携帯ストラップや、お菓子などを買おうかと思った

・・・・・・・

スンミやアヤ、ひろみ達にも買って帰ろうかとも思ったが、こうして

テファと会って遊んだ事がバレルと、どんな恐ろしい事が起こるか

分からないので、、、やめておこうと思った・・・・

ただ、ソンジェと、一緒に遊んでくれたテファには何か買いたいと

思った・・・・カノンは月並みだが、携帯ストラップにした。

ソンジェとテファには青い色のロッテイ君が付いたストラップにして

自分はローリィちゃんのピンク色のストラップにした。

 「オッパ、これ、どうぞ」と言ってテファに包み袋を渡した。

テファは、袋を開けてみて、吹きだして笑った・・・・

テファ:「カノン・・・これ・・・僕にくれるの?」

カノン:「ハイ、カノンとお揃いです。今日の記念にプレゼントしま

    す!!遣ってね?」

     自信満々で話すテファは、益々、愉快になって笑いだした。

カノンは、そんなに笑わなくてもいいじゃないと言った顔をしたが、

次の瞬間、何故、テファが笑ったのか?理解できた・・・

カノンがテファに渡したのはピンク色のロ−リィのストラップだった。

自信満々で言い切った手前、カノンは引っ込みがつかず、どう

しようかな?っと思っていた・・・・

テファは「ハハハ・・・どうも有難う。僕はロリコンだと良く日本人の女

     の子に言われたから、ローリィのストラップで嬉しいよ。

     ハハハ・・・ピンク色って言うのも面白いね?」

カノンもつられて笑った・・・もう笑って乗り切るしかないと思ったの

だった。テファは早速、携帯を取り出すと、ローリィのストラップを

つけた・・・カノンは、次の瞬間にもギクリとした・・・見覚えのある

黄色のストラップだったからだ・・・水晶がついて、紐の部分が黄

色のストラップだった・・・・

  やっぱりオッパだ・・・・オッパ・・・オッパ・・・・

帰りの2号線の地下鉄で二人は別れた・・・

テファが1つ電車を遅らせるとして、カノンを先に電車に乗せ、見

送ってから帰るとしたのだった・・・・

    今日の事は二人だけの秘密にしようとテファは、一連の

不可解なスンミの・・・いや李家の謎が気になるので・・・・

カノンに危険が及んだら大変だから・・・慎重にしようと言った。

更に、姜ユリは我儘な女王様だから、スンミに対して、陰湿な

イジメを繰り返しているので、カノンに対しても、火の粉がかかっ

たら、大変な事になるから・・・・普通に過ごそうと言った・・・

大切なことや、緊急な事は、今まで通り、カノンの日本から持っ

てきた携帯に送信したり、電話するとした・・・・カノンも、知らせ

てくれたテファのプライベートなメルアドと携帯に連絡するとした。

テファ:「カノン、凄く楽しかった・・・またどこかに遊びに行こう。

    じゃあ、取りあえずは、学校でまた会おう。気をつけて!」

カノン:「オッパ、有難う。カノンも物凄く楽しかったです。またね。」

テファ:「あぁ・・・またね。」

電車のドアが閉まって、カノンを乗せた地下鉄電車は走り出した。



  カノン、、、カノン・・・僕は今日は何度、本当の事をカノンに

          伝えようかと迷っていたよ・・・

      カノン、カノン・・・早く僕を思い出してくれ・・・・

  すると、テファの首にかけていたペンダントが、ホームの床に

落ちた。

        「あっ」

       テファは慌てて、ペンダントを拾い上げた・・・・

肌身離さずつけていたペンダントだったが、やはり留め金のところが

あまくなっていたので、落ちてしまったのだと思った。

「来週学校が始まったら、学校の近くのショップに持って行って、

直して貰うか・・・」そう思って、大切に、カバンの中にしまった・・・・・



カノンは、地下鉄の電車に一人、先に乗って、運よく直ぐに座る事が

出来た・・・すると、テファが、ずっと手を振って、電車を見送ってくれる

姿が見えた・・・・カノンは胸が締め付けられる苦しさに襲われた・・・・

     自然と涙が頬をつたった・・・・

   鄭テファさんが、オッパだ・・・探していたこのペンダントの人だ・・・

カノンは、ペンダントに話しかけた、

         「ねぇ、そうでしょう?オッパでしょう?」

       ペンダントはキラキラと、光色に輝いたのだった・・・・



← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 18348