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作品名:潮風のセレナーデ・・・会いたい気持ち・・・ 作者:HAPPYソフィア

第16回   花の薫り・・・風の囁き
ユリは、「バァカ」とスンミに言いながら

テファと帰って言った・・・

ユリは昨日、テファが替え玉でジュンギにスンミとメル友や

電話をさせていたのを知っていたので、逆上はしなかった・・・

ジュンギも、ズングリムックリで、

更にとても格好良いとは言えない容姿だった・・・・

    なので、ユリは、

「スンミとジュンギはお似合いかもね?オッパ」と

左腕を組みながら楽しそうに言った・・・・

ユリ:「オッパ、スンミ達とロッテワールドに行くの?」

テファ:「あぁ・・・だって、ジュンギが約束しちゃったみたい

だから・・・僕が行かないと変だろう?

僕は、スンミにもカノンにも興味は無いから、

途中で理由を作って帰るよ・・・・

さっき、カノンと話をしたけれど、

僕にカノンも興味ないみたいだったし、

姉さんのサイン貰って喜んでたしね・・・・

ユリが心配する必要は無いと思うけどね??ハハハ」

ユリ;「オッパ、オッパはどんなタイプの女の子が好きなの?」

テファは、ユリに左腕をギュッと掴まれたまま質問をされて、

言葉に迷ったが、

「そうだな〜、鄭アミン・・・

つまり姉さんみたいな人だったら良いかもね?」と言って笑った。

ユリは鼻をピクピクさせ

「えぇ、アミンちゃん?アミンちゃんは超美人だし・・・・

 勝ち目ないじゃない ・・・オッパ、他には?ねぇ、どんな子?」

        と言って来た・・・・・



テファは、薄ら笑いながら

「・・・今のトコ、居ないね・・・ハハハ」と言ってごまかした。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






 カノンは、テファとユリが

   二人で帰って行く姿をずっと見つめていたら・・・

    何だか心が痛く、そして悲しい気持ちになった・・・・

 そして、今日は、物凄い近くで1対1でテファと話ができ、、

テファが物凄く外見が美しい男の子だと言う事を知った・・・・



  更に、内面も、優しさが伝わって来て、

      カノンは時々、ドキドキしていた・・・・

そしてテファさんがペンダントの持ち主だったら、

どうしよう?と思った事が、可笑しくてクスクスと笑った・・・

   そんな筈はない・・・そう心の中で唱えた・・・





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カノンは、ソンジェと付き合っている事をスンミに

公開したので、放課後は、自由に過ごしやすくなった。

 

ソンジェが一人暮らしなので、ご飯を一緒に食べたいとか、

カノンが韓国映画が好きなので、ソンジェと見たいとか

言う事によって、スンミは、ソンジェとなら

構わないとした。

  ソンジェもまた、スンミに電話を入れてカノンと

会うから言ってくれたので益々、スンミは安心した。



 『今日は、ソンジェお兄ちゃんの演奏会が、

ソウル国際劇場であるから、お友達のアヤちゃんと

聴きに行きます』とスンミに言うと、直ぐに、

     『了解』と言ってくれた。

  恐らく兄であるソンジェのスケジュールも

スンミは把握しているのだろう。

 語学堂の韓国語の授業にも大分、慣れて来て、

カノンはソンジェと付き合っているカモフラージュに

関しても、どこから話が漏れるか分からないので、

アヤや、ヒロミにも内緒にした。

 でも、カノンにとっては嬉しいカモフラージュだった。

 ソンジェといると、自分は、物凄く元気で明るい

カノンでいられるからだったし、更には、ソンジェを

幸せにしたいと言う気持ちになって来るからだった。

 もちろん、カノンの大好きなセブンに似ている事も

あるが、、、、

  この悲しみの・・・・蒼の王子様を、

出来れば光輝く、そう黄色のカナリアの王子様に変えて

上げたいと思ったのだ。

   つまり、テファの様な明るくて眩しい

     光の王子様にして上げたいと思ったのだった。

 



    カノンは、ここで

       何故?テファの事が思い出されたのか?

                 不思議だった。



  するとカノンにまたフラッシュバックが訪れた〜

  



    〜あちらこちらから聞こえる人の声〜

    

     沢山の露店〜華やかなファッション、、

 

          ザワメキ?雑踏?



      あっ、ここは原宿だ!と思った。

 

竹下通りの看板があり、

  沢山のお店が所狭しと並んでいた・・・・

カノンは、男の子のシャツの裾を握りながら、

ショッピングに夢中な男の子に付き合っている

みたいだった。

  カノンは、ショッピングは、

    余り好きではなかったし、人が多い場所は

苦手だった・・・来たばかりだと言うのに、

欠伸を何度もカノンはしていた・・・

そしてシャツを引っ張りながら

      「オッパ、早く帰ろう・・・つまんない」

        と言っていた・・・・

すると男の子は「カノンは、女の子なのに、

ショッピングが嫌いなの?面白いね?何か欲しい物は

無いの?」と笑いながら言った。

カノン:「何もないし・・・

    お買い物は、疲れるしお金を一杯遣うから

    余り好きじゃないかも。・・・」



    「ハハハハ・・・カノンは面白いね?」

カノン:「え?面白いの?エヘヘ〜だって、

       本当に好きじゃないんだもん」

     『・・・ところで、カノンは、何色が好き?』

   『・・・好きな色??・・う〜ん、白色かな??』

 『・・・そう、白色なんだ。

  僕が何か、かわいい服をカノンに買って上げるよ』



         『え??・・・

         うぅん、何にもいらない。

         もし買うなら自分のお金で

           買うから大丈夫。

      ここは日本だし、オッパは

      ワーホリで来たから、

      お金をカノンの為に使って欲しくないです。

       一円でも働いて得たお金は貴重だから、

      オッパは、自分の為に使って欲しいです。』



   『ハハハ〜安いから大丈夫だよ。

       この洋服可愛いよ、カノンに似合うと思うよ。

      どうかな?サイズも小さいのがあれば

       良いんだけれど???お店の人に聞いてみるね?

        ・・・すみません・・・』



『うぅん、違う違う、本当に要らないの。

           気持ちだけ、有難うちゃんです。』

「・・・・カノン、僕はカノンに何か買って上げたいよ。

         僕は僕の為にお金を遣うんだから、

                  気にしないで!」 





カノン:「・・・オッパ・・・

      本当にX本当にお洋服とか今は、欲しくないの。

          ・・・・・じゃあ、カノン、欲しい物が

       あるから、それを買ってくれる?」っと男の子に

          カノンは首をかしげながら言った。



  男の子は笑いながら「勿論、いいよ。何?」と言った。



    カノンは、困り果てながら、

       安くて負担にならない物を探すために、

     辺りのお店を見回した・・・・

       そしてアクセサリーショップを見つけた。

 今度はカノンが男の子に

    「オッパ、オッパは何色が好き?」と聞いた。

       『え?好きな色?そうだな〜黄色かな?』

『元気で明るくて良い色だものね?

             オッパらしい色だね?』

カノンはそのお店でかわいい携帯ストラップを見つけ、

白と黄色の色違いの物を二つを男の子に買って貰った。

そして1つを男の子に差し出した。

 早速、男の子もカノンも自分の携帯を取り出して、

つけてみた。

      水晶がついていてキラキラしていた。

     「ありがとう、カノン、大切にするよ。」

 「えへへ、オッパとお揃いだから、嬉しいな・・・」

   「僕も、カノンとお揃いだから・・嬉しいよ」

        二人の笑い声がこだました。

  



     カノンは、ハッとして、現実に返った。

            携帯ストラップ!

そう言えば春の交通事故の前まで使っていた携帯は

どうしたのだろう?

    多分、記憶では白の携帯だった。

 今は薄いピンク色でキティちゃんが柄でついていた。

    明らかに、携帯が替わったのだった・・・

      黄色、買い物好きでオシャレな男の子、、

ホンデ、ボーカル、ソテジ、チャムシル、ロッテワールド、

ペンダント・・・原宿〜パズルの様に段々と記憶が

繋がれて行く感じがした。



 



  『カノン、早く行こうよ。

       ソンジェさんのコンサートでしょう?』

    アヤに言われて、カノンはハッとしながら・・・・

    『あっ、うん・・・

       アヤちゃん待ってよ」と慌てて走り出した。





   ソウルの中心部、明洞に大きな、

          ソウル国際劇場があった・・・

ここは、世界各国の有名な音楽楽団の演奏会の催し物が、

年中開催されていたし、いつも満席で、なかなかチケットも

取れないと言う評判の劇場だった。

 ソンジェは百済大学でも首席の成績で、その音楽家としての

才能は他の学生よりも飛びぬけていた。

学生でありながら、直ぐに就職先も決まり、韓国でも有名な音楽

楽団に所属し、演奏会には必ず出ては演奏をしていた。

大概はソウルで演奏会があるが、時には釜山や、テグ、大田、光州、

蔚山、、、といった韓国中まで、巡回するのだった。

今は学生なので、ソウルや近郊の演奏会に参加していると

いったところだったが、かなり忙しく、

全州にある百済大学にも2週間に1度行けるか?

行けないか?の忙しさだった。

ソンジェは演奏する事も得意だが、

出来れば作詞・作曲を手掛ける音楽家の道に進みたいと

思うようになってきた。

 そしてまた日本に行って、日本の音楽大学院に進み、

更に勉強を重ねて、日本で音楽会社を興したいと考えていた。

だが、カノンとの出会いにより、済州島でノンビリ音楽活動を

しながら過ごすのも悪くは無いなと思うようにもなって来ていた。

 

   カノンとアヤは、ソンジェにチケットを貰って、

       聴きに来たのだった。



   18時から始まるのだが、早く着き過ぎたカノン達は、

ソンジェのいる楽屋に顔を出した。

来る途中で、可愛い花束を作って貰い、それと皆さんで食べて下さい

として、チョコレートボックスを買って持って行ったが、到底数が

足りる筈はなかった・・・

物凄い人の数だったからだ・・・

あちらこちらで、演奏の音合わせの音が聞こえていた。。。。

ソンジェを見つけて、カノンは駆け寄ろうとしたが、

何やら雰囲気が良くない感じを受けた・・・

楽団長が、ソンジェに何かを頼んでいた・・・

ソンジェは、躊躇っていたし、、困っている様子だった・・・

「オッパちゃん・・・どうしたんだろう?」と

カノンは心配になった・・・・

       するといきなり、スンミが現れ、

カノン達に、状況を説明してくれた。

 

   スンミの登場はカノンもアヤもビックリしたが、

スンミは「兄の演奏会に妹の私が来ても可笑しくないでしょう?」

と平然と言った。



   そして、「それよりも、ソンジェ兄さんは、

        百済大学の音楽家で、1番の得意な楽器は、

      アルトサックス・・・つまりジャンルはジャズなの

     ・・・今日は、兄さんは、出番は最終の6番手の

       弦楽器演奏をするのだけれど、それよりも

      2番手に出場するジャズの演奏にハプニングがあり

     、、、アルトサックスの演奏者が急病で、

      出られないから、出来たらソンジェ兄さんに

      代役としてやって欲しいって依頼が来たの。」

         と言った。

 

 カノンはフンフンと聞いて、恐らく、

   気持ちの優しいソンジェは、引き受けて演奏するのでは?

    と思った・・・

スンミは興奮しながら話を続けた・・・

「ジャズピアニストの呉ジナ・・・つまり、ソンジェ兄さんを

捨てた女の為にアルトサックスを吹かなければならないのよ・・・

だから兄さんは戸惑っているの・・・・」

   



        カノンは、え?っと思った・・・・





スンミ:「呉ジナと別れてから兄さんは、

        アルトサックスが吹けなくなった・・・

    吹かなくなったの・・・それで今は、弦楽器や

    鍵盤楽器に転向し、その方面で演奏をしているのよ・・」

アヤ:「でも、サックスを吹く人がいなければ、

     2番目の呉ジナさんのジャズは、取り止めになる

      ってこと?」

スンミ:「・・・当然、そうなるわね?

      今日のスポンサーの一人は、姜ユリのIT会社よ・・・

     当然、ユリもテファも来ているんじゃないかしら?

     姜IT会社の偉い人達も沢山、来ているし・・・

     万が一、呉ジナが演奏しないとなると、

     呉ジナは、大きなスポンサーを失う事になるわね。

    ・・・どうするのかしら?フフフ」っと冷ややかに笑った。



カノンは、ソンジェを見た・・・

         凄く困っている様子だった・・・

           カノンは、どうしたらいいだろう?



   どうすれば、蒼の王子様のソンジェが

           元気になるだろうかと思った・・・





    カノンは、ソンジェのもとに駆け寄り、

           元気よくソンジェの背中に抱きついた・・・



   「オッパちゃん・・・カノン、オッパちゃんの

                 演奏会に来たよ・・・」



   ソンジェ:「・・・・カノン、良く来てくれたね・・・

               まだちょっと早いから、

      コーヒーショップでお茶でも飲んでくればいいのに・・

     今、ハプニングがあって、

       2番目のアルトサックス奏者が欠場なんだ。

   それで、誰か代役をたてるって事で、ゴタゴタしていてね。

・・・カノン・・・ごめんね、今、ちょっと大変なんで、、、

後でね。」

カノン:「オッパちゃん・・・オッパちゃんは、

              何でも楽器が弾けるの?」

ソンジェ:「カノン・・・うん、何でも楽器は得意さ。

                  特に・・・特に・・・」

カノン:「特に?特になぁに?」

ソンジェ:「・・・アルトサックスが、専門さ・・・

        でもここ1年は・・・吹いてないよ・・・・」

         寂しい横顔でソンジェは言った。

カノンは、「オッパちゃん・・・

       音楽は楽しくやらないとね?

              オッパちゃんの得意な

       アルトサックス、カノン、聴いてみたいな〜

      1年のブランクなんてオッパちゃんには

      問題じゃないとカノンは思うし、得意なものや、

      事柄って直ぐに勘を取り戻すよ。

オッパちゃん、オッパちゃんが演奏したら、

そのジャズ演奏会は大丈夫になるなら、吹けば良いのに・・・

カノンも聴きたいな・・」

ソンジェ:「・・・カノン、そんなに聴きたいの?」

カノン:「うん・・聴きたい・・・聴いてみたいな・・・

        オッパちゃん、、、、

     真の音楽家は、どんな状況でも、それを乗り越えて、

     見事に演奏しきれることだとカノンは思うよ。

     やっぱり、オッパちゃんは、まだまだ甘いね。

   エヘヘ〜済州島に行ってもホストとジャージャー麺屋

にはなれるかも?しれないけれど、音楽家へは厳しいね?えへへ

・・・・オッパちゃん、、、アジャアジャ ファイティング!」



   ソンジェは、カノンの可愛い韓国語の声援を聞いて、

楽しくなり、そして



    「・・・分かったよ。

         じゃあ、やってみるか。

           カノン、僕の演奏が下手くそでも

            応援頼むよ・・」と言ってほほ笑んだ。

カノン:「うん、ずっと応援してるから・・・

        下手とか上手いなんて関係ないよ・・・

       音楽は楽しくないとね?オッパちゃん、楽しんでね。」

ソンジェ:「そうだね・・・

       カノン、じゃあ、団長に言ってくるよ。

        リハーサルもあるから、、、

             終わったら、また楽屋に来てね。」

カノン:「うん。待ってるね。じゃあね。」



     ソンジェは、何かが吹っ切れた気がした。

        そして足早に楽団長の所へ行き自分が、

          代役としてアルトサックスを吹くとした。



  楽団長;「良かった・・・助かるよ・・・

       君しか代役は出来ない・・・1年のブランクがあると

       言ったが・・・たとえ失敗しても構わない・・・

        頑張ってやってくれ・・・済まないな・・・」

                っと言っていた。。。。



 呉ジナがそこへ、バタバタとソンジェのもとへ走り寄って来た。



 ジナ:「ソンジェ・・・有難う・・・

           引き受けてくれて嬉しいわ・・・」

ソンジェ:「・・・時間がないから、直ぐにリハーサルをしよう。」

     そう言って、楽譜に目をやりながら、

           用意されたアルトサックスを取りだした。

 

      ジナは、分かったとしながら、ピアノに向かった。



ジナの心の中は高鳴った・・・

       やっぱりソンジェは、私の為にサックスを吹いて

         くれるのね・・・

           私達・・また寄りを戻せるわよね?

ソンジェ、私も貴方の気持ちに応えるために、

ピアノを精一杯、演奏するわ。



        ジャズコンビの復活ね?・・・

               とても嬉しいわ・・・・

      

・・・カノンとアヤは、遠くから、ソンジェを見ていた・・・

ソンジェの真剣な眼差しや、芸術家らしい、繊細な顔立ち

・・・本当に格好良いなっとカノンは思った・・・

アヤも「カノン、ソンジェさんて格好良いね」と言った。

 呉ジナは、スレンダーな長身な女性で、

長いストレートな黒髪が良く似合う美しい女性だった・・・・

  やはり音楽家同士で、二人を見ていたら、何だか

 ヨーロッパ調の彫刻の絵画を見ているような

美しい感じがした・・・



   そしてカノンは段々と、

    自分が惨めな気持ちになって来た・・・



ソンジェとカノンだったら、美しい芸術家の男の子と、

        チビで幼稚な豆狸だからだ・・・・

オッパちゃんは、やっぱり格好良いし、蒼の王子様だな〜



 カノンは、蒼の王子様にひっついている豆狸かも?・・・・

 

   それでも、カノンは気持ちを取りなおし、

    「私はオッパちゃんの家族だもん。

        まっ、いいか〜」と、思いながら、

            笑ってみた・・・



  



  演奏会が始まって、2番手のジャズの演奏が始まった・・・

ジナとソンジェの二人の息がピッタリ合った、美しいジャズの音楽で、

二人の音楽と言う絆を感じた・・・

     演奏が終わった後も、観客達のその感動で、

       拍手喝采が鳴り止まなかった・・・・





  音楽の偉い評論家達も、呉ジナは勿論、

急遽、代役として演奏した ソンジェを絶賛した・・・



  招待客の姜ユリも

      「わぁ、ジナお姉様、やっぱり凄いわね。

       洪ジャンフ兄さんの恋人って言われた時は、

        本当にビックリしたわ。ジャンフ兄さんは

       親戚中では余り良く思われてなかったから・・

        きっと今頃は目が高いと思うわ。」

鄭アミン「・・・呉ジナのチケットは即完売だから、

      今日は聴きに来られて良かったわ。

              ユリちゃん、有難う。」

ユリ;「アミンちゃんの為なら、何だってするわ。・・・

     喜んで貰えて良かった・・・

      でもジナお姉様と一緒に演奏した

      あの、サックスの男の人・・・

ピンチヒッターだと紹介があったけど、凄く上手だったし、

   息も合ってたわね。」

アミン:「・・・しかも、かなりイケメンな感じがするわ?

         ユリちゃん、見てご覧なさいよ」

ユリ:「・・・う〜ん、そうね・・・

       でもテファオッパの方が、格好良いわ。」

アミン:「まぁ、ユリちゃんは、

      小さい頃からずっとテファ、テファって、、

     一途ね・・・フフフ・・・

       テファが本当なら今日は来る筈だったんだ

         けれど・・・ユリちゃん、御免ね。」

ユリ:「テファオッパは、こう言ったクラッシックや

    ジャズは余り興味無いと思うし・・・

誘っても、いつも学校の研究やレポートで忙しいって言っては、

キャンセルするから・・・アミンちゃんが今日は一緒に来て

くれてチケットが無駄にならなくて、本当に良かったわ。

アミンちゃん、忙しいのに、有難うございます。」

アミン:「いえいえ、可愛い未来の妹のユリちゃんと

        来られてうれしいわ。フフフ」   

   未来の妹と、実姉のアミンからお墨付きまで貰った

   ユリは得意になっていた。

  ユリはこの世の中で決して失いたくない物を

3つ上げろと言われたら、何を置いても

「テファ」・・・次は今の美貌を持つユリ自身、、

 そして財力だった。

 しかし断トツに「テファ」に対しては執着があった。

ジナの演奏が終わると、3分の一の観客は、席を立ち、

帰ろうとするのが常だったが、今夜はジナの他に、

ジナとのパートナーを務めた李ソンジェに人気と

話題が集中した・・・





  「6番目の弦楽器の演奏に、

       彼がもう一度出演するみたいよ・・」



    と言う事で、皆は、

     ソンジェの弦楽器を聴いてから帰ろうと

          口々に言っていて、

        席を立って帰る者はいなかった・・・・

    

 一方、カノン達も、ソンジェとジナの演奏を、聴いて、

その素晴らしさに魅了されていた。



 



  ソンジェお兄ちゃんは、呉ジナさんとお似合いだな・・

ジナさんの方も、何だか、ソンジェお兄ちゃんの事が

今も好きな感じが音楽から伝わって来た・・・・

カノンは惨めな気持ちにはなったが、テファとユリが一緒に

帰って行く姿を見た時ほど、心は痛まなかった・・・

   そして不思議と、ソンジェお兄ちゃんとジナさんが、

また寄りを戻し、付き合えば良いのにっと思って

しまえるのだった・・・・

 

     6番目の弦楽器の演奏も、

        ソンジェは素晴らしかった・・・・

        沢山の拍手が、ソンジェに送られた・・





   カノンは、何だか自分が称えられてるようで、

    嬉しくて、席を立って、360度周りながら、

   お辞儀をして有難う・有難うと呟きながら拍手をした。



 



       ユリ:「あの豆狸!!」

           アミン:「え?豆狸?」



ユリ:「・・・えぇ、あそこでピョンピョン飛び跳ねて回ってる

      幼稚園生みたいな女の子・・」

アミン:「・・・・あぁ・・・あの子ね?豆狸なの?・・・

            結構、可愛いじゃない。」

ユリ:「・・・今、ホンデの語学堂に語学研修で来ている、

      日本人の女で、何をするにも幼稚でトロクて、

      頭も悪いの・・・・

         でも嘆かわしいのは、ホンデの男どもは

    あんな子が可愛いだのと言って騒いでて馬鹿みたい・・・

    何であの子、このコンサートに来ているのかしら??」

アミン:「ホンデの男の子って、あぁ言う女の子が人気なの?

      じゃあ、テファもあの子のファンなの?」

ユリ:「・・いいえ、テファオッパは、全く興味無いとい

      って笑ってたわ。それにあの子もテファオッパよりも、

     アミンちゃんのファンだと言って、

     オッパにサインを貰えないか?って頼んでたけど?」

アミン:「・・・・・あぁ・・・サインて、

      あの子に上げるためだったのね・・・フゥン・・・」



アミンは、またカノンをずっと見つめた。

遠目で見ても、直ぐ可愛いと分かる顔立ちに、表情がクルクル

変わり笑顔一杯で、更には音楽を楽しんでいる姿は、見ていて

凄く可愛いかった・・・

豆狸と言うよりも、真っ白いフワフワした兎の様な感じがした・・・

アミン:「・・・・ねぇ、ユリちゃん、、、あの子、何て名前なの?」

ユリ:「鈴木カノンて言うけど?」



         アミン:「・・・・え?」



  ユリ:「・・・鈴木カノンよ、アミンちゃん、知ってるの?」



アミンは、どこかで聞いた事がある名前だと思った・・・・

            どこだっただろうか??



   その時は、思い出せずに、

    「うぅん、どこかで聞いた事があったかな?って

            思ったんだけど、、、、

忘れちゃったわ。多分、

日本人には鈴木なんてありふれた名前だろうし・・・

カノンって言う名前が、アメリカ人みたいで、、

変わってるわね?」とアミンは言って笑った。

ユリ:「漢字だと花と音と書くのよ。

      何か生まれながらのお姫様って感じで

    育ったみたいだと皆は言うけれど・・・・。

            お姫様とは言えないわよ。」

アミン:「ユリちゃんみたいな女の子がお姫様って

               言うのかもね?フフフ」

ユリ:「フフフ・・・アミンちゃんもそう思う?」

   まんざら悪い気はしないユリだった・・・・・

アミンは、そう言いながら、心の中で、

ユリはお姫様と言うより、女王様って感じかも?しれないし、

あの女の子は、小さくて可愛いから「親指姫」って

ところかな?っと思い、フフフと笑ってしまった・・・・

 しかし、それにしても「鈴木カノン」と言う名前・・・

どこかで聞いた記憶があった・・・

どこだろう?いつだろう???そう思ったのだった・・・・・



   全ての演奏会が終わって、ソンジェは、

 打ち上げ会を楽団でするよと言われたが、

人を待たせているのでと言って、断って帰る事にした・・・・

 ソンジェは、アルコールが1滴も飲めなかったし、

どうも酒の席は苦手だった・・・

更に音楽をやるので、煙草も一切、吸ったりはしなかった。

 敬虔なクリスチャンである為、真面目で穏やかな青年だった。



 カノンとアヤは挨拶だけして帰ろうと思って、

   ソンジェの楽屋に訪れた。

   

  まだ、ソンジェは楽屋にはいない様子だったので、

            待つことにした・・・・

   すると、ジナが、ソンジェが急な事にも関わらず、

         代役を気持ち良く引き受け、

更には見事に演奏してくれた事に対してのお礼を言いに、

スンミと一緒に楽屋に入って来た。



  スンミは、「あっ、カノン、、、ソンジェ兄さんは?」

カノン:「まだみたいです・・・

     私達も、挨拶だけして帰ろうかと思ってます。」

スンミ:「お二人さん、こちらは、呉ジナさん、

      さっきソンジェ兄さんと一緒にジャズ演奏した

       有名なジャズピアニストよ。」



カノン・アヤ「こんばんは!ジャズピアノ、

       凄く良かったです。」二人は緊張しながら

        挨拶を日本語でした・・・

ジナは、日本語が出来ないので、スンミに通訳して貰った

・・・それを聞いて、クスクス笑って

「どうも有難う。久しぶりにソンジェと組んでジャズ演奏で来たわ。

流石は、ソンジェね、ブランクなんてまるで感じさせなかったわ。

多分、これからも、一緒に、演奏会をして行くかも?

しれないわ。」と言って瞳をキラキラさせた。



 また、スンミは意地悪く

   「二人は恋人だったんだもの、息が合って当然よね。

今もお似合いに見えるけれど・・・・残念ながら・・・・」

っと言おうとした時、、、、

 「カノン」っと言う元気な声が、後ろから聞こえて来た。

ソンジェだった・・・真っ直ぐ、カノンのもとへ走り寄って、

スンミやジナは眼中に無いと言った感じがうかがえた・・・・

ソンジェ:「カノン、どうだった?カノンの為に演奏したよ。

      アルトサックス、もう2度と吹けない・・・

         吹くまいと思っていたけれど・・・

     カノンに背中を押して貰って、吹いてみた・・・

     僕は、やっぱりサックスが好きだと言うのが

      分かったよ・・・

           カノン有難う。

              今も体中が熱いよ。

こんなにもサックスを演奏する事が楽しいとは思わなかったよ。

カノン、カノンの応援が聞こえて来たよ。

        アジャアジャファイティングって、、

           聞こえて来た感じがして、

楽しい気持ちになったよ。」と嬉しそうに言った・・・・

   

       逐一、スンミはジナに通訳した・・・

   ジナの顔は、通訳される度に悲しく歪んでいった。



   ジナは、ソンジェが、元恋人の自分には目もくれずに

       いる事に、少し腹が立った。

  



     そして「ソンジェ、、、ソンジェ」と

             何度かソンジェの名前を呼んだ。





      ソンジェ:「あっ、、、あぁ、ジナか・・・何?」



ジナ:「・・・随分、そっけないじゃない?・・・

         今日は、助かったわ、有難う。

       やっぱり私たちは音楽では二人で1つなんだと思ったわ。

       ねぇ、あなたさえ良ければ・・・

      私達、もう一度、ペアを組んで・・・」と

          言う言葉をソンジェは遮って・・・

ソンジェ:「・・・それは出来ない・・・そう・・・

         もう僕らは終わったんだ・・・

      今は、笑って言えるよ。ここにいるカノンのお陰で、

      音楽や、演奏が改めて好きだとか、楽しいと思えるように

      なったんだ・・・もう僕はジナ・・

       君の事は忘れられるよ。・・・・

        今日も、カノンのお陰で、僕は、アルトサックスを

       吹く事にしたんだ・・・

            君の為じゃない・・・カノンの為だ・・・

     ・・・・君は、洪ジャンフと、仲良く幸せになってくれ・・・

       じゃあ・・・」と言って、





     別れを告げ、今度は日本語でカノン達に

        「待たせて、悪かったね・・・僕も、帰る事にしたから、

           一緒に御飯でも食べて帰ろうか?」っと、

               優しく笑いかけながら言った。



 カノン達は、二人の会話のやり取りが良く分からなかったので、

     ジナとスンミに一礼をして、帰る事にした・・・



カノン:「オッパちゃん、ジナさん、何だか、寂しそうだったよ。。。

      大丈夫?」

ソンジェ:「え?そうなの?僕はそんな風には思えなかったよ。」

アヤ:「ソンジェさん、凄い演奏が格好良かったです。

    ギターも良かったけれど、アルトサックスが

       メチャ格好良かったです・・・

      呉ジナさんとのピアノと合っていたし・・・・

          感動しました。」

ソンジェ:「・・・どうも有難う・・・

           少し照れくさいな・・・ハハハ」

カノン:「オッパちゃん、、、

       キムタクに似ているって言われるのと、

             どっちが照れくさい?」

ソンジェ:「ハハハ・・・どっちも恥ずかしいよ・・・」

カノン:「ナルシストだねぇ、オッパちゃんは!!!」

ソンジェ:「えぇ、カノンにとったら何でもかんでも

           ナルシストになっちゃうね。

      ハハハ、面白いな。」っと言って笑った。



  ソンジェは、ジナと会い、そして一緒に演奏したが、

もう悲しい気持ちも痛みも全くなかったし、

更には自分から、笑ってジナにサヨナラを告げられる

   とは思ってもいなかった事だったので、、、

   これも全部、カノンのお陰だと思った・・・・



ソンジェ:「さて、今日は二人に美味しい物をご馳走するよ、

      何でも良いよ。」と元気よく言った。

カノンはソンジェが「タットリタン」が好きだったので、

  「オッパちゃん、タットリタンが食べたい」と言った。

ソンジェは、カノンが自分の好きな「タットリタン」と

言ってくれた事が無性に嬉しかったが、

カノンは辛い物が苦手だと言うのを知っていたので、

タットリタンは辛いから、「サンゲタンにしようか?」と言った。

アヤが「わぁ、私、サンゲタンを食べてみたかったの。

美肌効果があるって聞いたの」と言った。



   カノン:「え?美肌効果?」

アヤ:「うん、健康にも良いし、コラーゲンたっぷりで、

       お肌プルプルってガイドブックに書いてあったのよ。」

カノン:「わぁ!サンゲタンが良いな・・・

            オッパちゃん、行こうX行こう!」

 



     三人の意見がまとまって美味しいサンゲタンで有名な

     「オザッキョ」へと向かった。



      一方、スンミはこの展開を楽しんでいた。

  ソンジェが去ってからジナは取り残され泣き崩れた。



      「ソンジェ・・・ソンジェ・・・・ソンジェ・・・」



       何度も泣きながら、ジナはソンジェの

            名前を呼び続けた。



スンミ:「ジナさん、ここだと目立つし、

        何だから・・・近くに個室カフェがあるの・・・

          そこに行きましょうよ」と言った。

      ジナは、スンミに言われるまま、カフェに入った。

      個室のある高級カフェ「スノーホワイト」だった。



最近、韓国でも、セレブや高級志向が高まり、

会員制の高級カフェが幾つか建ち並んでいた。

コーヒー1杯が5000円、ケーキもつけると8000円はするのだった。

食事なんてするものならば、1回で3万円はすると言われていた。

    スンミも当然、会員であり、たまに利用していた。

    個室なら人目も気にしないので良かったからだ。

ジナ;『私は、失ってみて初めて大切なものと知り、

    ソンジェが、、ソンジェがもう・・・・・

    遠くなってしまった事を、知って・・・

     どうしたらいいの?もうダメなのかしら?』

     ウッウッウっと声を噛み殺しながらジナは、

       泣きながら言った。

 スンミ;「・・・・と言うと、お兄さんの事が?』

ジナ; 『・・・ええ・・・今でも好きよ、愛しているわ。

       あの時は仕方なかったのよ、、、、

  家は貧乏で、私は音楽が好きだったから、特待生で、

  大学に入ったけれど、それでも学費は大変で、、

  沢山の借金のある家だったし、、ソンジェにしても、

 苦学生で、お金もなかったと私は思い込んでいたの・・

    彼を苦しませたくはなかったから・・・

    お金の事は、相談などしなかったわ・・・・

   私の兄さんの呉チョルスが、洪ジャンフに騙されて、

  多額の借金や弱みを握られたからいけなかったのよ。

  あの時、洪ヂャンフーから、借金を帳消しにしてやるし、

学費も全部出してやる、そのかわり、ソンジェを思いっ切り、

 残酷に振ってしまえ、そして俺の女になれって〜



     勿論、断ったわ、、、、



      でもお金には勝てなかった〜



  ヂャンフーは、ソンジェの才能を嫌っていたから、、、

    それに美しい容姿も、許せなかったと思うわ・・・・

私と、別れてからソンジェはアルトサックスが吹けなくなったと

  噂で聞いたわ。私は、酷い事を、ソンジェにしたと、

    今でも後悔の連続で、、、、、

     夜も良く眠れなかったわ・・・

 だけれど、早く有名になって、借金を返し、、

 そしてソンジェのもとに戻ろうと思ったの・・・

      きっと、ソンジェは許してくれる・・・

そしてまた元のように私達は愛し合えると思ったの・・・

    私たちの音楽は二人で1つだから・・・

 今日の演奏を聴いて聴衆は皆、そう思った筈よ。

・・・でも、ソンジェは、心が私から離れてしまったわ・・・・

  あの可愛い日本人の小さな女の子に・・・

            私は、負けたんだわ・・・」

スンミ:「兄さんがお金持ちだと知ったから、

     後悔したんじゃないの?それで、兄さんと、

      よりを戻したいんじゃないの?」っと、

       スンミは意地悪く言った。

ジナ:「・・・酷いわ・・・ソンジェがお金持ちと

         知ったのは、、、

          つい最近の事よ。・・・・・

           ・・・・・それも、、、

        ・・・・・・そう・・・
     
               ・・・・・・・・
                ・・・・・・・・      


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