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作品名:潮風のセレナーデ・・・会いたい気持ち・・・ 作者:HAPPYソフィア

第13回   ペンダントの輝き・・・記憶の糸
振り返った瞬間、三人は氷のように固まった・・・


       スンミとスンミの家の車だった・・・

 「カノンちゃん」とカノンの名前を言いながら、

         手を振って、車は近付いて来た。



カノン:「スっ、スっ、、、スンミちゃん?どうしてここに?」

        恐る恐るカノンはスンミに聞いた。

  スンミは笑いながら「カノンちゃんたちを送った後、

     今夜、ユリさんの家でのパーティに

     着て行く洋服がないから、それを

         買おうと思って、ロッテデパートを

  見ていたの・・・・素敵なドレスを見つけたんだけど、

     私に合うサイズのドレスが、ロッテワールドの

  デパートにしかないと聞いて、取りに来たの・・・

  そしたら、カノンちゃん達の姿が、偶然に見えて・・・

        嬉しくて・・・・声をかけたの・・・

  これから変えるので、良かったらご一緒に皆さん、

   帰りませんか?・・・さぁさ、乗って、、乗って!」と、

   嬉しそうに言いながら三人を後部座席に誘導した・・・・    

  明らかに、スンミの嘘だと三人は思ったが、

  ここは、荒立てない事にして、言われるまま、乗った。

    ひろみは「あの・・・じゃあ、私たちは明洞までで、、、

     お願いします・・・済みません」と言った。

スンミは、「あら、ご自宅までお送りしても宜しくてよ?・・・・

     でもご都合があるみたいですから、、、了解したわ。

   キム、明洞の・・・・・ロッテホテルまででいいのかしら?」

     綾・ひろみ:「ハイ、結構です・・・お願いします」

 

スンミ:「・・・・そう?じゃあ、キム、ロッテホテルまで!

                          早くして!!」

多分、なかなかソウルタワーに来ないカノン達を変に思い、

     車はホテルに引き返したのであろう?

そして血眼になって、我々の事を聞いたに違いない・・・

 偶然にも、オムさんと出くわし、

      三人は、88へ行ったと聞いたのであろう・・・

 道に疎い3人はきっと、ホテルで、行き方を聞くだろうし、

  田さんに連絡が取れたので、田さんもホテルに

    向かっているだろうから

      と言う様な事を聞いたに違いない。

  スンミは、ずっと我々を待っていたのだろうし・・・

   偶然を装って、そして出くわして車で帰る・・・

   全てスンミの計画通りに修正された・・・・

    だからスンミは満足だろうし嬉しいし、

   楽しんでいるに違いないと思ったのだった。

     カノンは益々、スンミが怖いと思った・・・・

明洞のロッテホテルに着くと、ひろみも、綾も

        有難うございますと言って、

        逃げるようにサヨナラをした・・・・

    カノンは、そのまま家に戻り、

 パーティへ行く支度をしなければならなかった・・・

    ひろみと綾は喫茶店に二人で入り、

            カノンの事を心配した・・・

        何とかカノンを助けないと・・・

   スンミは、明らかに変だと思ったし、

         不気味な怪物に思えた・・・

           唯、二人に分かる事は、

   カノンは、スンミに狙われた獲物だと思った・・・・

           そう、獲物なのだ・・・・

 ひろみは、気のおけないクラスメイトに片っぱしから

        連絡をかけ、事の重大さを

         伝えようと召集をかけた。

     綾も、協力して何とかしようと思い、

       何か良い方法を考えていた・・・

  言えることは、とにかくカノンを助けたいと言う

          気持ちだった・・・・

 ひろみはカバンから、さっき田から貰った

        チケットを見つめ・・・そして、綾に

 「ねぇ、綾、、、田さんに相談してみようか?・・・

   きっと何か良い知恵を貸してくれるかも?・・・・

    田さんなら日本語は上手だし。。。。

  私たちの味方だと思うんだ・・・そう思わない?」



   綾:「そうだね・・・でもさ、同じ韓国人だから・・・

      先ずは、慎重にした方が良いのかも??

  今日は、相談するのは止めといて・・・二人で先ずは

         作戦を練って考えようよ・・・・」

   ひろみ:「・・・・そうだね・・・考えよう・・・」



        「あれ?君達・・・この前の・・・」

 ホンデの学食で声をかけて来た男の子の一人、

               トンスだった・・・

      綾:「この前は、どうも・・・今日は?」

 トンス:『あぁ、今日は、これから日本人との交流会が、

           「テヒョンドン」て所で

            あるんだ・・・うちの大学は、

        梨花大学と近いから、そこの学生と合同

        でやってるボランティアさ・・・

       まだちょっと時間があるから、時間つぶしで

        カフェに入ったんだ・・・

       そしたら君たちがいたから・・・」と言って笑った。

  トンスの友人ソンダル:「僕はホンデ日本語学科の

                    イム ソンダルです。

                 宜しく・・・・君たちは?

                       どうしてここに?」

  ひろみ:「私たちは今まで、会いたかった人に会いに

         オリンピック競技場に行って来て・・・

    その帰りです・・・・お茶でも飲んでって事で・・・」

  トンス:「ふうん・・・そうなんだ・・・

          じゃあ、ごゆっくり・・・」と言って立ち去ろうと

     した時・・・綾もひろみも顔を見合わせて頷き・・・・

 ひろみ・綾:「・・・あの〜・・・」とトンス達を、

               呼びとめたのであった・・・・・

         ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



   ひろみ達と別れて、車は、運転手のキムさんとスンミ、

   そしてカノンの三人だけになり気まずい空気が

    差し込んだ気分だった。         

  明らかに、スンミは、怒っている感じがしたし・・・

  カノンに疑問を持ち始めている事を感じ取った・・・

  カノンは、早く家に着いて!!っと願いながら、、、

        ひたすら寝ている振りをした・・・・

          家に到着した・・・・・

   今のスンミは、気さくで優しいスンミではなく

     我儘でキツイお嬢様の様な刺々しい

           人格だった・・・・・

 強い口調で「カノンちゃん、

       どうしてソウルタワーに行かなかったの?

       悪い子ね・・・」と言って、

       カバンのベルトでカノンを叩いた。

  カノンは痛い気持ちを堪えて「御免なさい・・・

          お腹が痛くなっちゃって・・・

  それにソウルタワーには、もう三人とも修学旅行とかで

  行ってるから、やめようって、気が変わったのです・・・」

  震えながら、カノンは必死に言い訳を言っていた・・・・・

   スンミ:「ふうん、そうなんだ・・・まっ、いいわ・・・

    時間も時間だし・・・じゃあ、早速、お風呂に

   入って、体を綺麗にて!そして、このドレスや、

  靴、アクセサリーをしてね。パーティの支度を

   して頂戴ね・・・・さぁ、早く、早く!!」と言った。

  カノンは怖い気持ちで一杯で、

         シャワー室へと向かった・・・・

     スンミちゃん、まるで別人みたい・・・凄く怖い・・・・

     でも、ここで興奮させたら・・・もっと怖いから・・・

  ここは黙って、言われるままに従おうとカノンは思った。

      きっとひろみや、綾が助けてくれる・・・

    きっとソンジェお兄さんや、ビョンチョルお兄さんが

        力になってくれる・・・そう思った・・・・

       スンミは、現実逃避をしている状態だった・・・

       今は、姜ユリになりきっていたのだった・・・・

  気高く我儘な・・・そんな強く美しい女になりきっていた。

     鏡には、醜い姿しか写っていないのに、、、、

      スンミは、ユリの姿に妄想を走らせていた・・・・・

             私は美しい・・・

           私は素晴らしい・・・・

           テファは私の物・・・・

    誰にも渡さないし、邪魔などさせない・・・・

       その言葉に酔いしれていた・・・・・

 カノンは、シャワーを浴び終わり、

        言われたままの真っ白のドレスを着た。

    

  白いシルクのフリル一杯のワンピースだった・・・・

   着替えて出て行くと、美容師が待ち構えていて、

        こちらに座って下さいと言われ、

         カノンは席に座らされた・・・

      パーティ用の髪型にさせられ、

      更にメイクアップの専門の人が来て、

           お化粧をして来た・・・

 カノンは、お化粧はしないナチュラル主義だったので、

         嫌がったが、スンミが

「カノンちゃん、キチンとお化粧してくれないと、パーティで、

私が恥をかくのよ!プロのメイクアップアーティストに

        任せなさいよ。」と言った。

・・・・その声が、冷たく低い声だったので、カノンは、

      怖くて、されるがままとなった・・・・・

一方、スンミも、髪型やメイクをして貰っていた・・・・

   スンミは、ワインレッドのドレスを着ており、

鮮やかで豪華な宝飾品を

    散りばめ、メイクも濃い目にされていた・・・

      醜い顔が、もっと醜くなっていた・・・・

    ヘアスタイリストや、メイクアップアーティストも、

ヘコヘコと跪き、スンミにお世辞を並べた・・・・

 支度が出来たので、車に乗せられて、

ユリの家へと向かった・・・・

      カノンは、やはり寝た振りをした・・・・

 一言も会話もせず、、、ユリの家に到着したのだった。

   ユリの家はスンミの家ほどではないが、

     それでも豪華で広いお屋敷だった・・・・

     今日は天気も良かったので、   

 広々とした芝生の庭で、パーティをする様子だった・・・・

 受付で、招待状を渡しながら、

         カバンなどを預ける事になった・・・

  

スンミ:「・・・・あのぉ・・・そのぉ・・・・これが招待状です。

    本日はお招き頂き、有難うございます」

     遠慮がちに、静かな声で言った・・・

  その時、カノンはあれ?っと思った・・・

  また以前の優しい自分に自信のないスンミに戻って

          いるのだった・・・・   

 だが、油断は禁物だと思い、少し緊張し、

権勢しながらの距離を保とうと思った・・・・

 沢山のテーブルがあり、スンミとカノンは、

恥っこの後ろの席と最初は言われたが、

スンミの余りのチンドン屋並みの変な化け物メイクや、

似合わないドレスに、クスクスと笑いが出て、、、

ユリは、きっと、いつもは、スンミを庇うテファも、

 この姿や顔を見たらいっぺんで引くだろうし、

嫌うだろうと思い、テファが歌うステージ前の

中央の席に、スンミとカノンを座らせるように命じた。

一方、カノンはアイドルスターの様な

可愛い・可憐な感じがした・・・

うっすらとメイクもしているし、上品な顔が、

            更に上品に見えた・・・

 だが、所詮、チビで豆狸なので、

あの巨大な化け物の陰に隠れてしまうだろうし、、、

    テファの好みでは絶対にないので・・・・

      ライバルの眼中では無かった・・・・

     かなりカノンの事を見くびっていたのだった・・・・

     スンミは、ステージ真ん前の席だったので、

物凄くはしゃいだ・・・そして喜んだのだった・・・・

 パーティが始まって、プログラムの紹介がされた。

  予定では19時頃、テファが来て歌を歌うとなっていた・・・・

  スンミは、かなりはしゃぎにはしゃいでいた・・・

  カノンは、それでもスンミちゃんが、物凄く元気だから・・・

           良かったね・・・っと呟いた・・・・

    今は、以前のスンミと言うのが分かったから・・・

     心から、良かったねと・・・カノンは思った・・・・

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



     テファは時計をチラリと見た・・・

         「18時40分か・・・・・」

     テファはホンデの研究室に居たのだった。

    まだ研究レポートが書き終わらないでいたので、

  やはり今日のユリの家でのパーティは行けないと思い、

       携帯を取り出し、ユリに電話をかけた。



ユリ;「ハイ、姜です・・・オッパ?オッパでしょう?今どこ?」

テファ:「うん、まだ・・・大学なんだ・・・・実験が長引いて・・・

           だから、今日は・・・・

            御免。。。行けそうもないんだ・・・」

ユリ:「えぇ!!オッパ、、、ちゃんとプログラムに

         オッパの歌って書いて、

    発表もしちゃったのよ。私に恥をかかせないで。。。

      お願い、、、来て!来てくれなかったら、

                ユリ、死んじゃうから!!」

テファ:「おいおい、ユリ、、、大袈裟だな・・・

       軽はずみに死ぬなんて言うなよ・・・

        忙しんだよ・・・・分かってくれよ・・・」

ユリ:「分からないわよ・・・オッパ・・・お願い・・・

          パランファのメンバーはオッパを

   抜かしてもう全員が来ているのよ・・・

         ボーカルの居ないパランファなんて

   ・・・格好がつかないじゃない・・・

          あっ、ちょっと待って、、、

         メンバーの人達に変わるから・・・」

ユリはメンバーを脅し、とにかく、遅れても構わないから

         テファを呼べと命令した。

   ミングもイルソンもジノも必死で、

 テファを、パーティに来るように呼んだ・・・・

  パランファのメンバー達の親は、

 少なからず、ユリの会社の恩恵を受けていたり

      頭が上がらない立場だったからだ・・・・

 ミングはグッドアイディアが浮かんだのか?

ミング:「おい、テファ、今夜は絶対に来いよ。。

         面白い物が見る事が出来るぜ。

  絶対に、来て良かったと思わせてやるからさ・・・

                 来いよ。」と言った。

  テファは面白い事が大好きだったので、

   ミングの言葉に、少し心が魅かれた・・・

イルソンも「この前、お前に会いに、お前のファンだと言う

         日本人の女の子が

        来ていて、東京に住んでるって言ってたぞ。

            話が合うかもしれないし・・・

 お前はタイプじゃないかもしれないが、超可愛い子だぞ・・・

                見に来いよ」と言った・・・



    テファは、女には、今は興味はなかったし・・・

 別に追いかけなくても、女に不自由はしてなかったので、

     イルソンの言葉は心に響かなかった・・・

ジノ:「・・・・テファ、頼むよ、、お前が来てくれないと、

   ユリ姫が暴れるし、今日は、あの怪物・・・

   いや、日本語学科1番の醜い李スンミも

     招待されて来ているから・・・

  お前が来ないとなると、真っ先に生贄になるのは

                李スンミかもな・・・・」

  テファは、矢継ぎ早に入れ替わり立ち替わり、

         説得されて、降参し、

    じゃあ今から行くよとなったのだった・・・・



「やれやれ・・・お姫様の我儘には

            付き合い切れないな・・・」

 そう呟いて、テキストをカバンにしまい、

         ユリの家に向かった・・・・





 ユリ:「本当?本当にオッパは来ると言ったのね?」

  ジノ:「あぁ、、、やっと行くって言ってくれたよ・・・」

 イルソン:「今から来ると、19時半近くになるかもな・・・」

 ミング:「来るんだから、

      文句も言えないだろう・・・良かったぜ・・」



 ジノ:「いつ来ても、直ぐに歌えるようにしておこうぜ!」



  3人はそうだなと言って、チューニングを始めたのだった・・・

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





 ウエディングドレスのような美しいドレスを身にまとったユリは、

   着せ替え人形の様に、着替えを何度もし、髪型も、

          宝飾品も変えていた・・・

宝飾品は滞在している金子瞳の親が経営している金子宝飾の

品も幾つかあった・・・ダイヤモンドがキラキラとしていた・・・

   

  流石は未来のミスコリア候補とも言われる位、

                美しかった・・・・



   各テーブル毎に、ユリは瞳と挨拶をしながら

     シャンパンや飲み物を配って行った・・・・

        スンミとカノンの席に来た時・・・

      ユリは余りのスンミの滑稽さと醜さに

      高らかに笑ってしまったのだった・・・



  ユリ:「スンミ・・・ここまでいくと、貴女って本当に、

  ハンチングベルの背虫男に負けないくらい醜いわね・・・

          本当に汚物みたい・・・

     社会の悪にもなりかねないわ・・・

  サーカスの小屋のテント布で出来た洋服を着てるの?

   アハハハ・・・本当に何を着ても似合わないわね?

           気持ち悪いわ・・・・

 そうだわ!将来は、サーカス小屋の見世物になれば?

 沢山の人達が好奇心で見に来るかもね?アハハハ・・・・

         そんな姿をテファが見たら、

      いっぺんで嫌われるわね・・・あはは」



          スンミは涙を溜めながら

  「テファは、そんな人じゃない・・・テファはきっと・・・

                     きっと・・・・」



 ユリ:「え?・・・きっと・・・何よ?・・・

              え?何んて言うのよ・・・え?」

スンミは言葉に詰まり・・・オドオドし・・・泣きだしそうだった・・・



   ユリの取り巻きたちも、一緒になってからかった・・・・

       「きっと化け物って言うわよ」

   「本当に醜いわね・・・気持ち悪いんだよ・・・」

   「何で、ここにいるの?折角のパーティが台無しよね?」



     ユリは更にスンミに詰め寄り、冷笑しながら

 「ねぇ、スンミ・・・きっと何て言うのよ?さぁ、おっしゃいよ・・」

                  と言った・・・・

    スンミは、「・・・きっと・・・きっと・・・    」        



     「きっと、可愛いって言うと思います!!」



  カノンは我慢できなくて真っ赤になって言った。。。。

   一瞬、パーティ会場が、静かになった・・・

           が、、、直ぐに  

      周囲の人々が一斉に笑った・・・・



  ユリ:「え?可愛い?ねえ、チビ狸さん、

            この怪物のどこが可愛いの?

       本当に可愛いって言えるの?え?・・・・」



        カノンは目を閉じて、

 仲が良かった、以前の優しいスンミを思い出して、

     そして凛とした態度で



  「ハイ、、、可愛いです。絶対、可愛いです」と

             言いきっていた・・・





        「僕も・・・可愛いと思うよ」



 カノンは「え?」っと思い、その声の方向を見つめた・・・

           それは



        テファだった・・・

  テファはニコヤカに笑って、ユリに

   「遅れて御免・・・悪かったね・・・

        折角やって来たら、何か雰囲気悪いね?

                  帰ろうかな?ハハハ」と

                    言って笑った・・・

  ユリは慌てて「御免なさい・・・冗談よ・・・

             今、ゲームをやっていたの・・

             オッパ、来てくれて有難う・・・

        直ぐにでも歌えるようになってるの・・・

           ステージに上がって・・・

     こっちよ・・・」と言ってテファの背中を押した・・・

     ステージに向かおうとする時に、、、



       テファは自分の目を疑った・・・

   見覚えのある小さくて細くて可愛い・・・

         テファが今、1番に会いたい・・・

           テファの可愛い彼女の・・・



      カノン?   カノン??



           カノンじゃないか?

 カノンは、テファの視線を感じて、

           ニッコリと笑って会釈をした・・・・

           テファはビックリして立ち止まった・・・・

   ユリ:「オッパ、どうしたの?」

       テファ:「イヤ・・・あの子は?」

ユリ:「怪物・・・じゃない・・・

       李スンミの家にホームステイしている、

          日本人の鈴木カノンと言う子よ・・・

        東京の大学に通う2年生みたい・・・

       チビで細いし、ペッタンコだし

          何か幼稚園生みたい・・・・

          オッパもそう思うわよね?

           しかも、目ざわりなの・・・」

  テファ:「目ざわり?・・・どうして?」

ユリ:「上手く言えないけど、あの子を見ていると、

       何かイライラするのよ。

    馬鹿だし、、、韓国語なんて全然できないのよ・・・

    直ぐにムキになるし・・・私の言葉に逆らうし・・・

簡単な韓国語の会話も発音も出来ないのよ。呆れちゃうわ」



 テファ:「韓国語が出来ないから、

      韓国語を上達させるために韓国に

       来たんだろう?出来なくて当たり前じゃないか?」

            っと少し怒った口調で言った・・・・

ユリ:「そうだけれど・・・何かと言うと、スンミを庇うし・・・

           私の考えとは180度違うの・・・

     あぁ、オッパ、他の女の子の話をしないで!

          ねぇ、オッパ、早く歌って!

          皆、オッパの歌声を待っているのよ・・」

  ユリはテファの左腕をギュッと握りしめ、甘えた声で言った・・・



 テファはそれでも偶然にもカノンにこうして会えたので、嬉しかった・・・

    カノンがいるなら・・・頑張ってカノンの為に歌おうと思った・・・

     ソテジの歌を何曲か歌う事にし、ステージに立った・・・・

  「カムバックホーム」「インタ-ネット戦争」

           「ジュリエット」そして「レプリカ」を

     歌った・・・・ヒップホップ系のノリの良い曲と歌だった・・・・

        歌を聞きながら、スンミは、さっきの事と言い、

        以前の事と言い、自分を何度も庇ってくれる

             テファに対して、、、

    もしかしたらテファも自分の事が好きなのでは?

            っと勘違いをしていた・・・・

     もしかしたら、私はユリに勝っているんだわ!!

       そうよ、テファは私の事が好きなのよ・・・

         何度も何度も心の中で勘違いな

            確信をしていたのだった・・・・・

     歌が終わって歓談の食事会になっていた・・・

 テファは、ステージから下りて、スンミとカノンのテーブルに行った。

        カノンはまるで初めて会ったかのように、

         テファに自己紹介を韓国語で始めた・・・

     「初めまして!私の名前は、鈴木カノンです。

           東京から来ました。

      お会いできて嬉しいです・・・

         歌がお上手ですね?」等々・・・

  テファは、最初はカノンがふざけているのだろうと思って、

 その冗談とユーモアに合わせて、自己紹介を自分も韓国語でした。

            だが、何か変だった・・・

 本当にテファの事を知らないみたいな他人行儀な会話しかなく・・・

        更には、スンミを全面的に前に押し出してきて、、、

          スンミは心の優しい可愛い女の子で、

      ずっとテファのファンで、テファが大好きだとか・・・

    一生懸命、テファにスンミのPRをしていたのだった・・・・

        カノン・・・カノン・・・本当にカノンだよね?

            僕の事、忘れちゃったの?

  それとも、ずっと連絡しなかったから、怒ってるの?

          カノン、僕だよ・・・テファだよ・・・・

          心の中で、何度も叫んでいた・・・

      しかし、カノンは、全く余所余所しくて、

             他人行儀だった・・・・

              やっぱり変だ・・・・

      きっとカノンに何かあったんだろう?

          あったに違いない・・・・

  頭の良いテファは、カノンの様子が変だと言うのが

           分かったのだった・・・・

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


カノンは、スンミが時々、二人居るような錯覚に

陥っていた。

本当に、心優しい自分に自信が無い虐められっ子の

スンミと、お嬢様にありがちな傲慢で欲しい物は

ストーカーでも何でもする強いスンミ・・・

ユリの家に向かう車に乗り込むまでのスンミは、

とても優しい出会った頃のスンミだった様な気がした・・・・

 
カノンは自分の本能で、スンミに話す言葉を使い分けていた

のかも?しれない・・・・

傲慢なお嬢様の時のスンミには、声が上ずったり、

お伺いを立てる様な、敬語を使っていたし・・・・

心優しい時のスンミには、警戒心なく話をしたり、

スンミが苛められていると庇ったりもして来たのだった・・・

自然にスンミの事が大好きだと言えてしまうからだ・・・・

さっきも、皆がスンミを馬鹿にし、からかったりしていた時は、

物凄く腹が立ち、庇っていた・・・・



  そしてパランファのボーカルのテファに、

率先してスンミを推薦する言葉を話して居た。

パランファのテファは、外見も美しい青年だったが、

歌も上手く、そして、何よりも心が綺麗な優しい人だと

カノンは思った。

どんな状況においても平等に人と接し、気さくに笑いかけ、

話しかけてくれたからだった・・・

これも又、カノンは自分の本能で感じていた・・・・

カノン達は最初は、ステージ前の真ん中の席だったが、

テファが遅れてパーティに来て、歌が始まると、

ユリが邪魔よとばかりに、後ろの席においやってしまったから、

良くは見えなかったが、通りすがりに近くで見ても、遠くからでも、

やっぱり、王子様のように美しい青年だった・・・

視線が合うと、ニッコリと笑ってくれたりもした・・・

歌が終わってから、テファは、恐らく傷ついたスンミを思いやり、

スンミやカノン達のテーブル席までやって来てくれたので、

カノンは、あぁ、なんて良い人なんだと思った。


 テファが日本語が出来ると聞いていたので、日本語で話そうかな?

と思ったが、ここは韓国だし、

自分は韓国へは韓国語を勉強しに来たので、

韓国語で自己紹介をしてみた・・・・

通じたのか?通じなかったのか?分からないが・・・

テファは笑顔でウンウンと頷き、きちんと聞いてくれ、

更にはカノンに簡単な韓国語でテファも自己紹介をしてくれたのだった。。。



そうこうしている内に、ユリがやって来て、テファの腕を引っ張って、

自分のテーブル席へと連れ去ってしまったが、、、、

周囲は、ユリ姫を怒らせると怖いし、ユリ姫は、テファが命だから・・・

とにもかくにもテファを好きになるのは良いけれど、彼女になろうなんて

思わない方が良い・・・嫌がらせをユリから徹底的に受けるし、、、

何をするか分からないから怖いと囁かれていた・・・・

テファとユリはホンデの公認カップルだとも聞かされた。



カノンは、その時は、他人ごとのように聞いていた・・・・・・・

 更に、少しだが、自分の弟のトワに雰囲気が似ているのを感じ、

クスクスっと笑ってしまったのだった・・・・



パーティに招待されていた、カノンの日本語クラスの

クラスメイトのアキが、「カノン、何が可笑しいの?」と聞いた・・・

カノン:「うん、・・・・何か家の弟に似ているから・・・」

アキ:「え?誰が??・・・・」

カノン:「パランファのボーカルのテファさんが・・・・」

アキ:「テファがカノンの弟に似てるの???」

カノン:「うん、弟もバンド活動していて、ボーカルやってるんだけど、

      ナルシストが入っていて、自分は格好良いって

    思ってるみたい・・・弟の方が、性格はキツイし、

    いつも自信に充ち溢れているけれど?テファさんに雰囲気が

     似ているかも??」

アキ:「・・・雰囲気ね?」

カノン:「うん、雰囲気が似てる・・・」

アキ:「でもさ、あの姜ユリが独り占めしてて、頭に来ない?

    姜ユリの猛烈片思いとは聞くものの、

   やっぱり美男美女のカップルって言うのが相場だよね?

   あの二人に割って入りこめる女の子なんていないよね?

     お似合いのカップルだもん」

雅子:「え?お似合い?・・・・・お似合いかな?」

    っと話しに割り込んで来たクラスメイトの雅子だった・・・

アキ:「だって、仮にテファと私が並んだらどう?」

雅子はアハハっと笑いだし「・・・確かに・・・」と言うと

アキは「・・・でしょう?ユリだから、似合うのよ・・・

    テファって本当に格好良いよね?流石は、お姉さんが美人

      で有名な女優さんだけあるよね?」と言った。

カノン:「・・・へぇ、お姉さんがいるんだ〜、

     それも女優さんなんて凄いね。なんて言う女優さん?

      ドラマとか映画に出ているの?」

雅子:「えっと、あいつとお前は何なのさって言う、

         コメディドラマに出て準主役やってたし

                  今は携帯電話とかのCMや、

     ラーメンのCMにも出ているみたい・・・

     TVの旅のレポーターもやってて、

    人気絶頂みたいよ・・・名前は鄭アミン・・・だったと思う」

カノンは、韓国映画やドラマが好きの母親に付き合って、

一緒に見ていたらスッカリ、自分もハマって見るように

なったので、「あいつとお前は何なのさ」と言う題名を聞いて

直ぐに分かった・・・

更に、そう言われれば、顔が姉弟似ていて、綺麗だと思った・・・・

カノン:「テファさんのお姉さんて凄いね!

       サイン貰えないかな?」とキャッキャとカノンは

     騒いだ・・・



アキも雅子も「テファじゃなく、お姉さんの方かい?」と笑った・・・

  そして、二人は、もしかしたら、テファにはこう言った可愛い

女の子のカノンの方が、お似合いかもしれないと思ったのだった・・・・



    パーティがお開きになって、

     今度は、カノンの方からテファに話しかけた・・・・


    テファのTシャツの裾を引っ張っりながら、

         「あの〜」と言った・・・



             『え?』



  テファは、一瞬、戸惑ったし、驚いた・・・

    カノンが昔の様に、洋服の裾を引っ張って話しかけて

           来たからだった・・・・



      そう、カノンは小さいから、

       いつも癖で、

       シャツやセーターの端や裾を引っ張るのだった。


         「カノン・・・何?」っと

      テファも昔のように、ニコヤカに振り返った・・・・

カノンは、テファが、もう自分の名前を覚えてくれたんだと

思い嬉しくなりながら、

    「あの〜、お願いがあるんですけれど?」と言った。


  テファは「・・・いいよ、何?」と優しく聞いた・・・

カノン:「あのね・・・テファさんのお姉さんは有名な女優さんと

     聞きました。それでね・・・私は、日本にいる時から

     鄭アミンさんのファンで、、、、

     ドラマも全部、見ました・・・

      お母さんも、ファンです。

       それで・・・

お姉さんのサインとか・・エヘヘ・・無理ですよね?」と言った。


    テファは、相変わらず可愛いし

      面白いと思いハハハとお腹を抱えて笑った・・・

 
       
        周囲は、そんな光景を見て、ビックリした。

パランファのボーカルのテファは、いつもクールで、美しいし・・・

どんな時でも、美しさを絶やさないからだ・・・

幾ら楽しくても、声を上げて笑ったりはしないし・・・

感情を大きく顔に表したりもしないからだった・・・・

そのテファが、本当に愉快で自然に笑っている姿が、珍しかった・・・・

 カノンはテファが笑っているので、つられて笑った・・・

「・・・やっぱりダメですよね?済みません・・・えへへ」

          と言って笑った。

テファ:「・・・姉さんに聞いてみるよ。

      多分、大丈夫だと思うけれど・・・・ハハハ。」

          と言って、ずっと笑っていた。

ユリもその光景を見ていて、

     どうやらカノンは、テファには興味はないみたいだし、

自分の身の程を知ってる部分は丸っきりの

        おバカさんではないわね?っと思って微笑んだ。

    テファの友人のミングやイルソン、ジノも笑いだした。

カノンは、何でそんなに笑うのか分からなかったが、

笑う事は良い事だと思って、状況が掴めず、笑っていた。

イルソン:「ホンデの人気バンドのパランファ・・・

        そしてボーカルのテファに向かって

         お姉さんのサインって言うのは面白いね?」

カノン:「え?どうして???」

ミング:「普通はサ、テファのサインとか写真を一緒に撮っても

     いいですか?って言う女の子が多いのに・・・

     本人前にして・・・お姉さんの事だもんな・・

                 カノンちゃんて面白いね?」

カノン:「えぇ?そうなの?・・・・

      だってファンなんだもん。本当にファンだから・・・」

ジノ:「テファ・・・お前に興味を示さない女の子は、

                初めてなんじゃないか?ハハハ」

テファは思わず、「・・・・・カノンは相変わらず面白いね?」と

         笑いながら言ってしまった・・・ 

カノン;「え?相変わらず???」

       キョトンとしているカノンにテファは慌てて

  「あっ、、、日本語の使い方を間違えたみたいだ・・・

         もう帰国して大分、経つから、、、

日本語を忘れちゃって・・・変な使い方ばかりだ・・・・

カノンちゃんが、面白いから・・・本当に面白くて・・・・」と

慌ててテファが言うと、カノンは、あぁ、そうなんだと言う顔をして

「・・・・良かったら、私が日本語を教えますよ。

一応、ネイティブな日本人だし・・」と言った。

   テファは自信に満ち溢れて言っているカノンに、

                  また吹き出してしまった。

ユリは、イライラして「豆狸・・・じゃない、カノンさん!!

    日本語だったら、私や金子瞳さんが教えるから、

            貴女はお呼びでないのよ!!」と言った。

 

     カノンは、あっ、そうかと思って

        「御免なさい」と悲しそうな顔をした・・・・

 

    テファは、ユリに対して腹が立ち、

        「ユリ、止めないか。」と言って制した。

   
       そしてカノンに、メモを書いて渡した。

「僕は機械工学科4年・・・サークルはK POP

       いつも学校が終わると、バンドの練習に

          部室に顔を出すよ。

サインを貰ったら連絡するね。

         これが僕の携帯電話番号と、自宅PC

のメルアドだよ。日本語でも大丈夫だよ。

 カノンちゃんは、PCあるの?」とテファはカノンに聞いた。



       すると、すっかりハイテンションになって

        飲み過ぎたスンミが、洗面所から戻って来て、

会話に割り込み「あります!ありますとも!」と言って、

立派な名刺をテファに渡した。

テファは「・・・いや、君のではなくて・・・・」

と言いかけると・・・

   スンミは「いえいえ、これは私のではなく、

       カノンちゃんのアドレスです。

               そして電話番号です」

         と言って渡した。

カノンは、この時も、、、あれ?又スンミちゃん、、、、

別人みたいだ・・・そう思った・・・

前のスンミは、とてもじゃないけれど、

テファと面と向かって話したりは出来ない、恥ずかしがり屋

な優しい雰囲気の女の子だったからだ・・・・



   次の瞬間、ハットした。

渡していた名刺には、スンミがカノンの為に用意した

       PCと携帯電話、

自宅の電話番号が書かれていて、

     全て盗聴されてしまうからだった・・・・

テファは、何も知らずに・・・

   「分かったよ。有難う。連絡するよ」と言った。



カノンは、どうしようと思ったが、テファよりも先に、

連絡すれば良いと思い、名演技?ではないが雅子に

「何か、めまいがする・・・」と言って、

洗面所に付き添って貰う事にした。

そして、トイレに駆け込むと、急いで、日本から

ローミングしていた携帯を洋服のポケットから取り出し、

テファにメールをした。

(手荷物と一緒に携帯を預けなくて本当に良かったと

思ったのだった)



     ※※ テファさん  ※※

鈴木カノンです。さっきスンミさんが渡した携帯番号や、

PCのアドレスには、どうか、メールや電話をしないで下さい。

理由は、後でお知らせします・・・済みません。

私の携帯は日本からの物で、ローミングして来ているので、

こちらに連絡下さい。

携帯番号は080XXXXXXで、携帯のメルアドはXXXXXXXです。

※※                        ※※



   そして、テファの携帯にも電話をかけた・・・

あいにく留守番電話だったので、小声で、話した・・・

「こちらの電話番号に電話して下さい。お願いします。

メールも、この日本から持ってきた携帯電話の方に送って下さい。

アドレスはテファさんのPCにメールしておきました。

お願いします。

         ・・・・・・・・・っと残した。





   帰りの車の中でもスンミは別人の様にハイテンションで、

ずっとテファ・テファとテファの名前を何度も言い続けて居た・・・

カノンは、何を言われるか分からないので、寝た振りに徹した・・・



   スンミはフト、何かに気が付いて、

            カノンを揺り動かした・・・・



     「ねぇ、カノンちゃん、テファのメモ、私に見せて!」

           と言ったのだった。



    カノンは、恐らくこうなるだろうと、思っていたので、

       メモは細かく破いてユリの家の洗面所のゴミ箱に

       捨てて来ようかと思ったが、折角、書いてくれた物

だからと思い、咄嗟に分からない場所に隠して入れようと

思ったのだ。



  お父さんから買ってもらったビトンのバッグは、

     特注品で、絶対に分からないポケットを付けたして

      作って貰った物だった・・・


  そのポケットには、自分の身元が分かる証明書と、

    現金(=日本円とアメリカドル)お守り、家族の写真など、

           大切な物が入っていたからだった。


           そのポケットに小さく畳んで隠した。



     カノンは、平静を装いながら

      「あっ、、うん、分かった・・・として、カバンの中

からメモを出そうとする素振りを寝ぼけ眼をしながら見せた・・・・


   そして、いきなり目が覚めたかの様に

     「あれ?おかしいな?無い・・・無い無い・・・」

             っと言って騒ぎだした。

スンミは物凄い形相で睨み「良く探しなさい!」と言った。

「・・・もうすぐ家だから、家に着いたら、

カバンをひっくり返して、落ち着いて探してみる・・・」

と言ってその場を逃れた・・・

家に着くと、スンミは運転手のキムに

「自動車の中にメモ書きを落としたかもしれないから、それを探せ」

と命じた・・・・

カノンがメモを隠すとしたら、自動車だと思ったからだ・・・

カノンが洗面所に行った時も、ビトンのバッグは、

荷物カウンターに預かって貰っていたからだ・・・・

  よもやま、カノンが、自分の日本からの携帯を

洋服に隠し持っていたとは気が付いていなかったようだった。

多分、身体検査もされるだろうから、

日本の携帯があることがバレテしまう・・・

  どうしたら良いだろう?・・・・どうしたら・・・・・





    玄関に入ると、何やら、怒鳴り合っている声がした・・・・・

お手伝いのキムヨナが

「おかえりなさいませ・・・・」と奥の声を気にしながら、

出迎えた・・・・

スンミは「どうしたの?ヨナ」とキツイ声で言った。

ヨナ:「今、ソンジェお坊ちゃまが、家にいらしていて、

たまたま、NYの出張に行かれるお父様と鉢合わせになって、

口論になってしまい・・・・どうしたら良いか?」

カノンは、チャンスだと思い

「スンミちゃん、私、お部屋に戻って、着替えをしても良い?」

と言った。

スンミは「あっ、良いわよ。その代わり、カバンは、

      ここに置いていきなさい。一緒に

           後で例の物を探して貰うから・・・・」

カノンは「ハイ」と言って置いて、急いで2階に行った。

多分、部屋は盗聴されている・・・廊下も分からない・・・



       そうだ!!イチカバチカだが、、、、

そう思いながら、カノンは、

  ビョンチョルが尋ねて来てくれた時の事を思い出した・・・



           死角・・・・

丁度、ベッドの真ん中を背にしている位置が、

             死角と言うのを思い出した。


  部屋に戻ると、大袈裟に、クローゼットを開け、

                   洋服を取りだした。

そして、クローゼットを閉めるふりをして死角を確認して、

ベッドの真ん中に着替えの洋服をポンと置くと同時に、

背中向きになり、着ているドレスから携帯をポンと

ベッドの下の足元に落とした。

   そしてフンフンと鼻歌を歌いながら、

    携帯をベッドの下に足で蹴って隠したのだった。


     ユリの家の洗面所で、帰り際、

  いきなり鳴ったら困るので、電源は切っておいたので、

大丈夫だと思った。そして、着替えをして、

            下に降りて行った・・・・


  スンミは、当然、自分の部屋に戻り、

            カノンを盗聴していた・・・

           死角があるとは知らずに・・・



     更に、カノンは盗聴されているなどとは

       知らない筈だと思い込んでいた事が

          カノンにとっては幸いした・・・



  カノンが下りて行くと、既にスンミが階段の下に居て

        腕組みをしていた・・・・


    スンミ:「カノンちゃんの部屋で、調べましょう」

    と言って、カノンのカバンをヨナに運ばせながら

     カノンは、自分の部屋に逆戻りになった。



   カノンは「でも・・・・着替えたドレスを、

    そのままベッドの上に置きっぱなしできちゃったし、

     散らかっているから・・・嫌だな」と呟いたが、

      スンミは「だからいいんじゃない」と

     小声で言い、ニヤリと微笑んで、部屋に入った。

本当に、脱ぎっぱなしのドレスがベッドにあった・・・

このことも既にスンミは盗聴しているので承知していた・・・

スンミ:「じゃあ、このテーブルの上に、カバンの中味を全部、

      出して!」と言ったので、

カノンは、恐る恐る、カバンをひっくり返して、

中味を空っぽにした。スンミは、中が全部、空と言う事を確認した。

そして、ポシェットや、お財布、スンミが与えた携帯など、

全てを点検した・・・

読みかけの単行本も1枚1枚、挟まっていないかを確認しろと

言ってさせた・・・だが出てこなかった・・・・

そして次は脱ぎっぱなしのドレスを点検したが、出てこなかった・・・・

車の中にも無いと言う報告を受けた・・・・

おかしい?・・・絶対におかしい?

スンミはいきなり「カノンちゃん、下着の中に隠してない?」

と言った・・・

カノンは「え?・・・なんで?」ととぼけた。

スンミは「ヨナ、部屋の、そうねクローゼットを確認して・・・・

  それから、カノンちゃんの身体検査をして!」と言い始めた。

カノンはビックリして「スンミちゃん・・・

      何で私を疑うの?私は、テファさんの事なんて

      全然、興味は無いし・・・

     むしろスンミちゃんに協力したいくらいよ・・・・

多分、気分が悪くなって、洗面所に行った時、

そこで落としちゃったのかも???・・・・

でも、スンミちゃんが、私のメルアドや携帯番号を、

テファさんに教えてくれているから、待っていれば、向こうから

連絡があると思う・・・うん、多分、あるよ・・・

お姉さんのサインをくれるって言ってたから・・・

そしたら、スンミちゃん、一緒にテファさんの所に行こうよ。

私、協力するから」っと必死で言った。。。

更に安心させる為に「・・・実は、私はどちらかと言うと、

SEへENに似ているソンジェお兄ちゃんの方が、好きだし・・・

今は、BFよりも、韓国語の上達をさせて、

将来は韓国語を使った仕事をしたいんです。

だから・・・本当にテファさんの事は興味無いです・・・

本当です。

  もし、どうしてもテファさんのメモ書きが欲しかったら、

明後日の月曜、学校に行った時に、テファさんに会って、

再度、書いて貰っても構わないです。

ついでにテファさんのサイン、貰ってスンミちゃんに

上げても良いです。」と言った。

その顔は、嘘偽りはなかったので、スンミはフムと考えて、

まぁ、いいわと思った。

PCも携帯も全て盗聴できるようになっているし、

カノンの様子も盗聴されているからだった・・・・・

 
       カノンはホッとした。




 すると、階下から大きな怒鳴り声の後、

     ガシャンと言う何かが壊れる音がした・・・

スンミもカノンも慌てて、階下に降りた・・・

するといつもは穏やかなソンジェが、かなり興奮しながら

「分かったよ、出て行くよ・・・

    僕は父さんのいいなりにはならない・・・

      僕の人生は、僕のものだ・・・

        父さんが認めてくれないなら・・・

            僕は一人で頑張るよ・・」

ソンジェの父親:「ソンジェ、お前と言う息子は!

          ・・・父さんがどんな思いで、会社を

         経営して来たか・・・

お前には分からないのか?音楽家など、許さん!!

                  頭を冷やせ!」

と言って怒鳴った。右手にはゴルフのパットを持っていた。

どうやら、興奮して、時価何100万円もする壺を、

ゴルフパットで壊してしまったようだ・・・・・

       
         床には、その破片が飛び散っていた・・・・

ソンジェは飛び散った破片が頬にあたったのか、

切り傷を作り、血が出ていた・・・

しかし、そのまま父親を睨み、出て行ってしまった・・・・・

父親は「勝手にしろ!」と言って、、、

        自分の書斎に行ってしまった・・・・

カノンは、ソンジェが心配になり、ソンジェの後を追った・・・・

ソンジェは、ズンズン早歩きで、屋敷の門を出て、

地下鉄のある駅に向かおうとしていたのだった・・・・

       門を出る手前で、、、

  
   後ろから、自分の名を呼ぶ声がした・・・・

   
    「・・・ちゃん・・・・

        ソンジェお兄ちゃん・・・・

          ソンジェお兄ちゃん・・・・」



    良く見ると、全力疾走で、白いふわふわとした

            物が見えた・・・・


     物凄い勢いで追ってくるカノンだった・・・・

         小さくてフワフワしていて、、、

            兎みたいだった・・・

      必死で追いかけて来たのだった・・・



    それを見て、余りにも可愛いかったので、

      ソンジェは、立ち止まり笑ってしまった・・・



ソンジェ:「カノンちゃん・・・どうしたの?」


カノン:「・・・ソンジェお兄ちゃん・・・

       どうしたのじゃないよ・・・

       凄い顔して出て行ったから

     ・・・・それに顔に怪我してるから・・・」

        と言って洋服のポケットからハンカチを

     探そうとしたが、、、着の身着のままで来たので、

        そんなものはなかった・・・

カノンは、どうしようかと思ったが、

「ソンジェお兄ちゃん、ちょっとしゃがんで!」と言った。



    ソンジェは、ここでは何だからと言って李家の、

      門に近い、庭の噴水のあるベンチに

         座った・・・

するとカノンは、着ていたTシャツを引っ張って、

ソンジェの頬から出ている血をそっと拭き取った・・・

         ソンジェはビックリした・・・・



  「だってハンカチも、テッシュもなかったから・・・

       えへへ〜、ソンジェお兄ちゃん、

           痛くない?」と笑顔で言った・・・・

 

    ソンジェはカノンから甘い良い香りがしたので、

        ちょっと気分も落ち着いて来た・・・



    「・・・うん、痛くないよ・・・少しも・・・

     いつも父さんとは喧嘩ばかりだ・・・・ハハハ」

       と言ってソンジェは寂しそうに笑った。

     カノンが行きの飛行機の内で見た、寂しそうな横顔

     の写真と同じ顔だった・・・・

           暫く沈黙が続いた・・・・・

カノンは、恐らく、ソンジェの夢と親の理想が違うので、

それで争ったのだろうと思った・・・日本・・・

日本の家族だったら、最近は長男だろうと、息子だろうと

娘だろうが、、関係なく、自分の子供の人生だからと言って親は、

好きなように歩ませてくれたり、

応援や協力もして理解も示してくれる・・・

しかし、韓国は家族のつながりが強いし、

親は子供にとっては絶大なる存在だから・・・

しかもソンジェは長男だし、、

家は立派な大会社の社長の子供だから・・・

お父さんとしては継いで貰いたいに違いないだろうし・・・

音楽大学への進学も、日本への留学も、反対だったに違いない・・・・

それでもいつかは、目が覚めて、

自分の後継者になってくれるだろうと期待しているのだろうと・・・

思った・・・・

一方、ソンジェは、音楽家になりたいのだろう・・・

     
        だから自活と独学で、

   頑張って日々を過ごしているのだろうと思った・・・・



   カノンとしては、ソンジェの夢を応援したいと思った・・・

  きっとソンジェは、世界に通用する素晴らしい音楽家に

       なるだろうと思ったからだ・・・・・



        カノンは、勇気を振り絞って、、、

   ベンチで寂しそうに塞込んでいるソンジェの前に立ち、

        元気に言葉をかけた。。。。。




           カノンは咳払いを1つして・・・

「ソンジェお兄ちゃん、ソンジェお兄ちゃん・・・趣味は何ですか?」


     突拍子もない質問に「え?」っと顔を上げたソンジェに、

      カノンは満面の笑みを浮かべて、それでも真面目に

         「趣味はなんですか?」と

        再度、カノンはソンジェに聞いた・・・・



カノン:「ソンジェお兄ちゃん・・・・甘いな?・・・

     普通ね、韓国人の人に、趣味はなんですか?って聞くと

     遅くとも3秒以内に、勉強だよって答えるんだよ。

     

     ソンジェお兄ちゃんは、2,30秒経っても

          答えられなかったから・・・

           韓国人じゃないね?・・・・えへへ」


  ソンジェは、カノンの話しが面白かったので、

               お腹を抱えて笑った・・・


     カノン:「ハッ、その日本語の発音の仕方は、

             中国的だね?もしかしたら、

ソンジェお兄ちゃんは中国人かもしれないね?

      韓国語が分からなかったら、カノンが教えて上げるよ

・・・カノンは韓国語学科だから、ソンジェお兄ちゃんに韓国語

     を教えて上げられるよ。」


ソンジェ:「・・・・カノンちゃん・・・・カノン・・・・」

カノン:「・・・ソンジェお兄ちゃん、何か元気ねぇぞ!・・・」

ソンジェ:「え?元気だよ・・・今、カノンちゃんの言葉を聞いて

       元気になったよ・・・」

カノン:「本当?嘘・・・嘘・・・嘘だぁ・・・

       しょうがねぇなぁ・・・

         じゃあ、カノンが、1曲歌って上げるよ・・・

作詞・作曲は超ウルトラ・スーパー・ビューティフル・ヨジャのカノン

     ちゃんで、歌もカノンちゃんだよ。」


  そしてカノンは即興で、回転寿司のCMの様な、

                 へんてこな歌を歌った。


   クリクリクリクリ・・・クリクリおっぱちゃん・・・・

       納豆大好き・・・クリクリオッパちゃん・・・・

       カレーも大好き、牛丼も大好き・・・・・・・

         どうせ、おいらはクリクリさ・・・・

1・2・3  1・2・3  1・2・1・2 1・2・3・・・

            キムチ キムチ 気持ち良い!!

              寒いギャグだね?

ソンジェが好きな食べ物を並べた歌だったが、楽しそうに歌っていた。

歌い終わると、

カノンは「ソンジェお兄ちゃん・・・お兄ちゃんは

きっと素晴らしい音楽家になると思うよ・・・

カノンは日本人だから・・・・韓国の事情や、韓国人の考え方は

分からないけれど・・・目を閉じて考えた時に・・・

一人の人間として、正直に思った事は、きっとソンジェお兄ちゃんは、

世界中の人々の心にトキメキを与え、優しさや安らぎを与える

素晴らしい音楽家になれると思うよ・・・音楽って言う日本語を、

漢字で書くと、音を楽しむって書くでしょう?

カノンは、歌は苦手で音痴だけど、、、

楽しく歌を歌えればヨシだと思ってるよ・・・

ソンジェお兄ちゃんはその素晴らしい音楽を作り出す人だから・・・・

凄いね〜」と言って、またさっきの歌を歌いだした・・・・



     ソンジェは、それを聴きながら、

       心の中が、温かく優しい気持ちになって

行くのを感じた・・・そして、カノンは本当に心根の優しい可愛い女の子だ

と思った。。。。

ソンジェは「カノン、有難う・・・僕はやっぱり音楽が好きだから・・・

音楽の道をずっと歩んでゆきたいよ・・・頑張るよ。」と言って笑った。

さっきの険悪な顔や、迷い・悲しみが全くないすっきりした顔だったので、

カノンはホッとした。

ソンジェ:「もうこんな時間だね、きっとスンミ達が心配しているよ・・・

       帰ろうか?玄関前のドアまで送るよ。」と言って笑った。

      カノンは「ハイ。。」と言って、帰る事にした。

「ソンジェお兄ちゃん、あのね、、、凄く相談したい事があるんだけれど?」

と言って辺りを見回した・・・


  ソンジェはそれを察知して、スンミの事だろうと言わんばかりに

ウインクを1つして「じゃあ、今度、お兄ちゃんが、

カノンちゃんの学校の帰りに、美味しいトッポギを御馳走しながら、

相談にのろうかな?ところで何の相談?」と言ってみた。

カノンは、「うん、あのね、韓国語の勉強の事と、スンミちゃんがね、

      ホンデのパランファのボーカルの男の子と上手く行く方法を

       考えて欲しいの」と周囲に聞こえるように言ってみた。

      そしてカノンもウインクをした。

ソンジェは楽しくなって「そうか・・・分かったよ・・・

             スンミは良い子なんだけど、容姿に

コンプレックスを沢山、持っていてね・・・・

二人で上手く行くようにスンミを応援しようか?」と言って笑った・・・

カノンは、ソンジェと一緒にいると、安心出来たし・・・

心が穏やかなった・・・・

  それは、雰囲気がカノンの実兄のタクトに似ていたのもあったし…

芸術家特有の優しさや、繊細さを感じたし・・・

何よりもカノンの大好きなSEへENに似ていたからだった・・・・



     「ソンジェお兄ちゃん、

       何か、ソンジェお兄ちゃんはSEへENに似ているね?

      言われた事はないの?」とカノンは聞いてみた。


 ソンジェは笑いながら「えぇ、無いよ・・・

            ただ、クラスメイトから、

            キムタクに似ているって言われた事が

            あるよ・・・・それと日本に居た時に、

             日本人のアジュンマ達に山下智久

      に似ているって何回か言われたかな?」と言った。



       カノンは大きなリアクションをして

       「えぇ〜、どっちも超人気者でハンサムな代表だよ。

        何かお兄ちゃんは、ナルシストだねぇ。」

       と言ってビョンピョンと跳ねながらソンジェに言った。


 ソンジェ:「違うよ、クラスメイトやアジュンマに

        言われただけだよ・・・自分ではそんな事、
           
        少しも、思ってないよ。」


 カノン:「・・・嘘・嘘・嘘・・・ウヒャウヒャウヒャ・・・

          良い事、、考えちゃった」と笑いながら



        ソンジェのTシャツの端を引っ張って言った・・・



  ソンジェは「どうしたの?」と聞くと、

カノンは「お兄ちゃん、カノンが韓国語を教えるから後について、

       発音してね?良い?絶対に発音してね?」と言った。



       ソンジェは「分かった・・・良いよ」と言った。


カノン:「あぁ、テレビが見たくなった! スイッチON。

      あっ、キムタクだ!!

      俺はキムタクだ。本当に格好良いな・・・ハハハ〜」



ソンジェは、余りの馬鹿らしさと変な韓国語だったので笑いしか

なかったので、発音しなかった。

するとカノンは「お兄ちゃん、甘いな・・・ちゃんと発音して下さいね。

          もう1回行くよ・・・」


と言って来たので、

「何か嫌だよ・・・キムタクじゃないし・・・・」と

言って発音を断った・・・

カノンは「・・・って事は、自分の事、キムタクか、キムタク以上に

       格好良いと思ってるの?・・・・

何かナルシストだね?もし、キムタクじゃないなら、発音できるよ・・・」

と言った。ソンジェは仕方ないとして、発音してみると、

カノンは「お兄ちゃん・・・やっぱり自分の事・・・

キムタクと思ってたんだ・・・ナルシストだねぇ」とからかった。

 
   ソンジェは、カノン、騙したなぁっとして、

             カノンのおでこを小突いて笑った。



    カノンはエヘヘと笑いながら、ここで大丈夫として、

              ソンジェとバイバイする事にした。



帰り道、カノンが自分の姿が見えなくなるまで、

ピョンピョンと跳ねて、バイバイと手を振ってくれている姿に、

愛おしさがソンジェに増した・・・

いつもは、父親と喧々諤々として悲しみに満ち溢れた帰り道だったが、、、

今日は楽しく弾んだ気持ちで、帰るソンジェだった・・・



     そしてあのへんてこな歌を知らず知らず

             口ずさんでいたのだった・・・・・



     カノン、、、有難う・・・本当に有難う・・・・

         ソンジェは心から感謝したのだった。





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カノンは、どうやってベッドの下に蹴り飛ばした携帯を

                  取りだそうかと思った・・・・・



   スンミだって人間・・・きっと眠くて寝るだろう・・・

      24時間盗聴なんて無理だと思った。



   唯、きっと録画はしているだろうと思ったので、、、、

慎重にしなければ・・・

   いつまた豹変するかもしれないから、怖かった・・・




  帰宅すると、表ドアは堅く鍵がかけられていた、、、



チャイムも何度か鳴らしたが、誰も出て来てくれなかった。。。。




   父親が、息子のソンジェを閉めだし、

    ドアのカギをかけてしまったのかもしれないし、

     スンミが、怒って鍵をかけたのかもしれない・・・

       いろんな事が考えられた・・・

    どうしたらいいだろうと・・・・困っていた時・・・・


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