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作品名:潮風のセレナーデ・・・会いたい気持ち・・・ 作者:HAPPYソフィア

第11回   偶然の再会・・・カノン、僕を覚えてないの?
今朝、目を覚ますと、外は雨がシトシトと降っていた。


    カノンは今日も目覚まし時計に起こされて、目を覚まし、

      慌ててシャワーを浴び、支度をしてから食堂に向かった。

    そんな様子を、自分の部屋でスンミは全て見ていてクスクスと

      笑いながら、階下に先に降りて行った。



      スンミ:「カノンちゃん、おはよう」

    カノン:「スンミちゃん、おはようございます・・・

        いつもスンミちゃんは早いですね?それにいつもキチンと

     していて、直ぐにでも学校に行けそうだもの・・・

      私なんてドタバタしちゃって・・・・いただきます!」

       カノンは、ご飯を口にパクパクと放り込んだ。


   スンミはまたクスクス笑ってしまった。

          本当に可愛いなっとカノンのことを思った。

   スンミ:「今日の格好も可愛いわ。早速、そのキャミソール

          着てくれたのね?有難う。カノンちゃんは薄い

           ピンクとか小さな花柄が特に似合うわね。

           バッグはエルメスが良いかもよ?」と言ったが、



     カノンは、お父さんに買って貰ったヴィトンのバッグが

      お気に入りで、毎日、使っていたのだった・・・

カノン:「でもエルメスは新品だし、、、私には勿体ないかも?

        それにお父さんが、出張の帰りに買ってくれたこのバッグ・・・

      高校1年の時からずっと使っていて・・・

      愛着があるんです。だから・・・毎日大切に使ってるんです。」



    スンミは、チョット面白くなかったが、カノンに嫌われたく

             なかったので、その場は引き下がった・・・

    おいおいカノンを自分の思う通りの人間にして行けば

      良いのだと思った。。。そう最初から思い通りになったら

      つまらないじゃないと心の中で思っていた。

      ・・・フフフ・・・可愛いカノン、、、

          カノンは私の遊びの玩具よ・・・


スンミは何食わぬ顔で「今日のスケジュールは?」と聞いた。

カノン:「えっと、今日も4つのお勉強があって、15時半に授業が終わります。

     それから、今年の春に横浜のお家でホームスティしていた

       ソウル大学のお兄さんが、ここの家に会いに夜、来てくれ

     るのですが、、、大丈夫でしょうか?ダメなら、

      私が、どこか、、、町まで出て行って、お兄さんと会って

     お茶でも飲んで来ます。お母さんから頼まれた贈り物も

     渡したいので・・・」と、、、

スンミの顔色をうかがいながら、たどたどしく説明をした。。。

スンミは、既にそうなる事を、昨日のカノンのPCメールをチェックしていたので

知っていたが、初めて聞くふりをして、快く我が家に招くことを賛成した・・・・

カノンはホッとして・・・・何でホッとするのか?分からないが、、、

とにかくスンミに何かを伝える時は、緊張するのか?OKを貰うとホッと

するのだった・・・

  

   スンミ:「カノンちゃん、私も、今日は15時半には学校が終わるの・・・

        だから、直ぐに一緒に車で帰れるわね?そのお招きする

       お兄さんは、何時頃、来られそう?夕食を一緒にすることも

        可能よ・・・どうかしら?」

    カノン:「えぇ!本当に良いの?じゃあ、お兄さんに後で電話してみるね?

         お兄さんは、ソウル大学の人で、今、高麗大学との交流会で、

        1週間ばかり、高麗大学キャンパスに通うらしいんです。

       高麗からホンデまでは近いから、、、会おうってなったんです。」

   スンミ:「そうなんだ・・・ソウル大学は韓国で1番の大学で、

          日本だと東京大学になるんだけれど、、、

     私は、最初、日本で1番の大学は日本大学だと思っていたの・・・

      東京よりも日本と言う国の名前が付いた大学の方が、

       何となく立派で、大きくて凄い感じがしたのよ」と言った。



      カノンはケタケタと笑って、「そしたら、ソウル大学も同じで、

           韓国大学って言う大学が1番大きい凄い大学って

          感じになるのかな?でも韓国大学なんてないものね?

          えへへ」と言った。

  今度はスンミが笑った・・・カノン、、本当に貴女といると、

       楽しいし、貴女の事がドンドン好きになるし愛しいわ。

   きっと男たちは皆、こう言った素直で明るくて可愛いカノンみたいな

   子が好きなんだろうなぁ・・・私がカノンだったら・・・

    カノンならいいのに・・・・カノンだったら、

     テファの心だって手に入れることができるかもしれない・・・・


         食事が終わって、学校へと車で向かった。

    学校の正門の前は、沢山の赤や黄色や青などの傘の花が咲いていた。

   ホンデのカップルは、皆、相合傘で学校に登校しているみたいだった。



         「わぁ、カップルの傘が一杯だね」っと

         カノンは、車窓を手で拭きながら見つめていた。

        スンミ:「カノンちゃんは、彼氏とかはいないの?」


    カノン:「えへへ・・・自慢じゃないけれど、

             彼氏なんていないよ〜チビでブスだもん」

スンミ:「え?信じられない・・・本当に?本当に彼氏、いないの?」

カノン:「うん、いないよ。男の子のお友達なら沢山いるけれど・・・

       あ!でも、好きな男の子がいます。。。

       えへへ〜歌手のSEへENです。私の王子様です。

     デビューの時からずっとファンだし、、、、SEへEN大好きです。」

カノンは、嘘偽りなく話をしているようだったが、

           スンミはカノンに彼氏がいないのが、

                         不思議だった・・・

カノン:「スンミちゃん、じゃあ、今日はここで15時45分頃で大丈夫ですか?」

スンミ:「あっ、、ええ、じゃあ15時45分ね。

          カノンちゃんも、頑張って勉強してね。じゃあね。」
 


 そう言って、いつものように、朝、ホンデの正門で別れて、

              カノンは、ホンデの語学堂校舎へ向かった。


   可愛い赤いビニール傘をさして、くるくる回しながら、

          カノンは楽しそうに弾んで、校舎に入ろうと

                          していた・・・・


               ユリ:「あの豆狸・・・」

                テファ:「・・・豆狸?」


     ユリは、べったりとテファにくっついて、

           一緒の傘に入り込み、今朝は相合傘で登校した。


     周囲の学生たちは、二人は公認の仲なので、お似合いだと

                   言う目で見ていた・・・

   ユリは、カノンを見て、いつも楽しそうに満面の笑顔でいるカノンが

          憎らしかったし、気になっていた。



         テファ:「豆狸って、僕の事かい?」

   ユリ:「違う、違う、オッパのわけないじゃない・・・

         オッパは、ライオンとか、格好よくて強いイメージよ。

       狸は、、、そう、あの怪物ちゃんのスンミの家にホームスティ

            している日本人の女の事よ。

        チビでペッタンコで、顔は狸に似ているの。。。」

テファ:「ユリ、、自分のクラスメイトのことを、怪物とか、狸とか、、、

       僕は聞いていて余り愉快じゃないな・・・・

       スンミは良い子だと思うよ。調べ物で図書館に行くと、

      一生懸命、勉強していて、頑張っているみたいだし・・・」

           ユリ:「・・・オッパ、止めて!」

                テファ:「え?」

  ユリ:「オッパが、自分以外の女の子の事を話すの・・・

          好きじゃないわ。分かったわ・・・

      私が悪かったわ・・スンミの事、怪物なんて言ったりして・・・

         皆が言ってるので、つい言ってしまったの・・・・

   スンミは・・・そうね、凄い頑張り屋で勉強家よ・・・

       私も認めるわ・・・スンミの家の女の子も、

   狸って言っちゃったけど、ロッテワールドのローリィみたいな子

        って言った方が良いかも?

   小さくて可愛いって事よ・・・そう、可愛いのよ、、

              まるで幼稚園生みたいなの・・・」

   

         テファは幼稚園生と言う言葉を聞いて、

         思わず笑ってしまった・・・そうカノンの事を思い出したのだ。

  よくテファはカノンを「幼稚園生」とか「幼稚先生」と言ってからかった。

     いつも甘えた声で話し、背格好も小さくて細い、、、

          ぬいぐるみが似合うので、幼稚園生みたいだったからだ・・・

  カノンは、ムキになって「違う、、私はお姉さん」と

                 大人ぶって言い返したりしてきた。

       それが可愛いくて、もっとからかうと、

          カノンは、直ぐに涙をためて泣いてしまうのだった。

   

            テファは、カノンに弱い・・・


 カノンにも「僕はカノンに物凄く弱い」と言っていたが、

    カノンは「えぇ?オッパは、カノンに強いよ。

         全然、弱くないよ」と言っていた・・・

   でもカノンに本当に弱いとテファは思っていたし、

      カノンが泣くとどうしていいか分からなくなるし、、

        カノンを苦しめたり、酷い事をする人がいれば、

         たまらなく腹が立ち、世界中を敵に回しても良い位、

            カノンを守ってやりたいと思ってしまうのだった。

   いつもはポーカーフェイスでクールな性格だが、

       カノンにだけは、かなり甘いし優しい気持ちになってしまうの

             だった・・・・

 テファは、ふと、昨日、見かけたカノンと見間違えた女の子を思い出した・・・・

  いや、まさか・・・カノンではないだろう・・・

      もしカノンならば、自分に必ず会いに来てくれるだろうから・・・・

   ホンデに通っている事も、バンドのボーカルをやっている事も、

      カノンは知っている筈だからだ・・・

 でも、カノンだったら・・・良いなっと思ってしまうテファだった・・・・



     ユリに「どうしたの?オッパ?校舎はこっちよ」と言われて、

       「あ?あぁ、そうだな・・・御免、チョット考え事

         をしてたんだ・・・行こうか?」と言って、、、

         自分の学ぶ校舎へと吸い込まれて行った。


    ユリは、校舎に入りながら、テファに

     「ねぇ、明日の土曜何だけれど、我が家でお世話している金子瞳さん

      の歓迎パーティを開くのよ・・・それでオッパ、家に来て、

       歌を歌って欲しいの。。。お願い・・・オッパの歌声

       を皆に聴かせてあげたいの・・・場も盛り上がるし・・・」

         と、体を摺り寄せながら甘えた声で言って来た。

  テファは、やれやれと思ったが、ウンと言うまでずっとベッタリ

   くっついて来るユリの性格を知っているので、

     「いいよ、、、何時に行けばいいの?」と聞いた。

  ユリは目をクルクルと輝かせ「やった!やっぱりオッパは、

     私の願いを叶えてくれるわ。(=私だけに優しいし。。。私だけの王子      
     様・・・)じゃあ、19時に来てね。お願いね。

      日本語学科の仲良しだけを呼ぶつもりだけど、、、

    人数は大体50人くらいよ、立食ガーデンパーティにするつもなの。」

    と言った。

   テファは、辟易しながら「分かったよ、19時にユリの家だね?」

      として、やっとユリから自分の左腕を解放して貰い

          教室へと向かった・・・・



        ・・・・土曜の19時か・・・

          確か予定は無かったが、研究レポートを書かないと

           いけないので、ドタキャンではないけれど、、、

      また用事を作ってキャンセルの電話をユリにすれば良いかな?

       とテファは軽い気持ちでいた。



  ユリは、誰と誰を呼ぼうか。。。選定をした。自分はいつも話の中心で、

   お姫様でいたいので、周囲は、自分よりも優れていたり、人気があったり、

     目立ってはいけない・・・そんな人物を考えながら、招待状

       を作っていたのだった。

  すると、金子瞳が「カノンちゃんも招待して欲しい」と言っていた事を思い出した。

      「豆狸か・・・・オッパは、多分、豆狸みたいな幼稚な子は

        タイプでないだろうけれど・・・

       それにスンミは怪物・・・醜いし・・・呼びたくないけれど・・・

       呼んだら、オッパはユリはどんな子にも優しい女性だと思う

       だろうか?オッパも、スンミはいじめられっ子だと言うのを

      知ってるしね・・・」と思い、スンミとカノンを招待することにした。

 招待状を、自分の取り巻きのシネとヘギョにそれぞれに渡すようにと命じた。



     シネ:「全くお姫様の気まぐれには付き合いきれないわ・・・

           どうせ、このパーティだって、自分がお金持ち

                   で、美人だと言いたいんだろうしね」

      ヘギョ:「ひがまない、ひがまない・・・御馳走を沢山、食べて、

           ユリ様の要らなくなった宝飾品とか物色しようよ・・・

           私、あのカバンが欲しかったのよ。バーキンの2009年
     
           度版・・・多分、もう飽きたから要らないって言う筈よ・・・」

       シネ:「ちゃっかりしてるわね・・・でもまぁ、いいかもね・・・

           それにしてもユリ様って本当に飽きっぽい性格なのに、

           テファだけには、一途よね?テファの前だと、

           本当に素直だし、、、好きだと言うのが見え見えだもん・・・」

          ヘギョ:「でもさ、テファの方は、どうなんだろう?」

      シネ:「・・・さぁ?ユリはミスキャンパスだし、

           お金持ちだし、いいんじゃん?うちらには関係ない事だよ。

             さてサッサト配っちゃおうよ」

     ヘギョ:「うん、だけど・・・何で怪物を招待するのかしら?場が暗く

           なるし・・・気持ち悪くなるのに・・・」

      シネ:「お嬢様の気まぐれかもね?・・・何を企んでいるのか?

            分からないわ・・・何かが起こりそう?じゃない?」

     ヘギョ:「ユリって、本当に怖いね・・・綺麗なバラには

             棘があるって、、、本当の事って感じがするわ。」

         シネ:「とにかく、サッサト配ってしまいましょうよ。」

                 へギョ:「そうね」





       スンミ:「え?招待状?」

   シネ;「えぇ、ユリ様からの招待状よ。金子さんの歓迎会ですって!」

    スンミ:「でも・・・きっと私なんかが行ったら、暗くなるし。。。。」

   ヘギョ:「ユリ様の命令よ、必ず来なさいよ。

           (=お前なんか、ユリ様の引き立て役よ)」

       スンミ:「テファが来て、歌を歌ってくれるらしいわ。」

             スンミ:「え?テファ?」

      ヘギョ:「えぇ、そうよ。パランファのボーカルのテファ!よ。」

   シネ:「やだ、怪物ちゃん、赤くなってる・・・

           もしかしてテファが好きだったりして・・・」

          スンミ:「え?違う、違うわ・・・」

        シネ:「私はテファが好きだって、前、あんたが、

             ノ-トに書いてたり、カメラでテファを隠し撮りしてんの、 
               ちゃんと知ってるんだからね?」

       スンミ;「え?・・・そんな・・・・私は・・・・ただ・・・」

       シネ:「・・・ただ何よ、、、好きな事には変わりないんでしょう?

            ええ?違うの?」

       スンミ:「私は、ただ・・・憧れているだけよ・・・」

       

            教室が、ザワザワっとした・・・・・

   ヘギョ:「皆さん、、、聞いて!ホンデ1、醜い怪物ちゃんのスンミが、

          パランファのボーカルのテファに片思いしています!!」

              と大声で言った・・・・


           教室中が、嘲りと冷ややかな笑いに包まれた。

     更にあちらこちらで、噂話が広まった・・・

       そうそう、スンミってテファのストーカーやってるみたい・・・

     デジカメやボイスレコーダーを持って来て、

           テファを投影や録画したりしてるみたい・・・・・

        バンドのライブにも毎回、来ていて、うっとり見つめてたわよ・・・

     えぇ、マヂ?もし俺がそんな事を怪物にされたら、死んだ方がマシさ・・・

      あんな汚物、人間じゃねぇよな・・・

      あんな怪物にコクられたって、ちっとも嬉しくないし、、、

      幾ら金持ちだからって、あんな化け物、抱きたくないよな・・・・

      美女と野獣の反対バージョンって奴だよな?

      テファだって気持ち悪いだろうよ・・・

       俺だって噂になるだけでも嫌だし・・・・



       そこへ、たまたまテファとテファの友人のジノが

        廊下を通り過ぎようとしていたところだった・・・



        テファは自分の名前が呼ばれ、クラスメイトにスンミが

        からかわれているのを聞いてしまったのだった。


        ジノは、テファをつつきながら「テファ、お前は誰からも

          好かれる人気者で羨ましいぜ」と言ってからかった・・・・


       更にジノは「・・・でもさ、あんな怪物に好かれても・・・

         俺だったらパスだぜ・・・テファ、お前もそうだろう?」

            と言った・・・・・ 



    テファは、教室の片隅で、赤くなっている怪物・・・

        いや肉の塊が、自分を熱く見つめて涙目になっている

                          のを感じた・・・・

  

       テファは、何と声をかけていいか?

         又は声をかけない方がいいのかを躊躇した・・・・



    テファは、自分自身の事を、やはり美しいと思っているし、

               ナルシストの部分もあった。

   カノンと付き合っていた時も、カノンから「オッパはナルシスト」

                  と言われていた。

   綺麗な物も好きだったし、自分自身も美に対する気持ちが強かった・・・

     芸能人の美しい姉を持ち、そこそこに父も母も美しかったからだ・・・

   カノンと出会うまでは、人は顔や容姿では無いと言うのは

          綺麗事だと思っていたし、、、

       実際に自分も綺麗な子、可愛い子が好きだった。

        カノンもかなり可愛い女の子で、気に入っていた。


     カノンと付き合うようになって、カノンから人は容姿ではなく

       「心」が大切だと言う事を改めて知ったし、

        反省もしたのだった・・・・

    故にスンミの事も、酷い言葉を言われ、からかわれたり

    苛められていたのは知っていたが、、、

          最初は見て見ぬふりをしていたが、、、、

    カノンの言葉を思い出して、つい庇ったりしてしまうのだった・・・・

    ジノが「何か言ってやれよ、怪物が泣きそうだぜ」と言って来た。


     ハッとしてテファは


       「李スンミさん、泣かないで。僕は、全然、気にしてないから・・・」


            と言って微笑んだ。


    更に、教室の学生を見回し

       「中学生レベルの中傷みたいだ、、、クダラナイ・・・」

            と言って冷笑した。

   

      それが返って男らしく、スマートに見え、

        教室の女学生はうっとりしたし、

        男たちも「ヒュー、モテル男は格好良いな」と、

          好感度が増した・・・・

  スンミは、テファが優しい言葉をかけてくれて、

       益々、赤くなり、心が弾んだ・・・やはりテファは内外ともに

        美しく優しい男の人だと思ったのだった・・・・

 テファとジノは早々に、立ち去ったが、ジノはテファをからかった・・・

     「おい、テファ、きっと怪物ちゃん、勘違いしちゃうぜ?

       テファはあたしの事が好きなのかも?って・・・」

  テファ:「よせやい。そんなこと有る筈ないよ・・・それに僕は・・・」

   ジノ:「・・・僕は?・・・何だよ・・・・」

   テファ:「・・・・いや、何でもない・・・・

         僕は、今は、就職の事しか、頭にないよ・・・」

     ・・・・・・・そう言って話題を変えた・・・・
 
 


   韓国は、日本よりも経済状態もかなり悪く、一流の大学を出ても、

   就職出来る学生は少なく、多くの学生は、更に勉学を重ねる為、

     大学院に進んだり、留学したりするのだった・・・・

   多くはアメリカへと行くが、最近では、日本への人気も高くなり、

    日本の企業に就職を考えている者も少なくは無かった・・・・・

      テファも、出来れば日本に再度、行き、

     日本のIT企業に就職し、半導体に関わる仕事がしたかったのだった。

   もちろん、日本にはカノンもいるし・・・そう、カノンがいる国だから・・・

      カノン・・・今、どうしているだろうか???

 


     ---------------------------------------------------




        雨音を聴きながら、テファは、フト、カノンとの写真メール

          交換の事を思い出していた。



           「フレンドネットランド」で、

       カノンと知り合い、何度となくメールを交わす内に、

       テファは、カノンと言う女の子が一体、

         どんな女の子なのかを想像してみた。


     カノンは、自分の事を、凄く身長が低くて、

           健康診断の時は、背伸びをして、152cm

      としたと言っていたが、実際は150cmあるか無いかだと言い、

      よく小学生に間違われると言っていた・・・

      更に顔は「ブー」だし、頭も悪く、勉強が嫌いだと言っていた。

 

       気持ちが優しくて、面白い、心が純粋な感じが伝わって来て、、、

       得てしてそう言う子は容姿が醜かったりするものだとテファは、

        これまでの経験で知っていた。

      メールで、自分はブスだと何度も言うカノンだったので、

       テファは、ならば、韓国みたいに

      「整形手術をして自信をつけたらどうだ?」と返信した事があった・・・



        するとカノンは、「整形手術はしない、

         折角、お父さんとお母さんに貰った顔と形だから、、、、

       それに美人は3日で飽きるけれど、ブスは3日で慣れると

        言われてるから・・・

       顔や姿よりも私は、心をピカピカにしたい・・・

         心の美しい人になりたい。」と、答えが返ってきた。



      テファは、ブスな女の子にありがちな綺麗事な言葉だとその時は、

       思った。

     テファは、ふざけて「自分も、髭や胸毛がもじゃもじゃで、

        頭が禿げているし、身長は、カノンと同じ150cm、、、

        太っているし、、お風呂も1年に数える位しか入らない・・・
          
         頭も悪いし・・・醜い外見だ。こんな僕は、モテない、、

          だから整形手術をしようかと思ってる。」

                    とメールをした。

   カノンの返信は「個性的で、面白くていいじゃないですか?

           テファお兄ちゃんは、モテタイから整形をしたいのですか?

          整形しなくても、大丈夫ですよ。

           カノンが、お兄ちゃんのファンだから

        ・・・・それにテファお兄ちゃんは、心がピカピカしていて、

          綺麗だから、、、カノンには良く分かります。」

                          と書いてあった。

 テファは、それを読んで照れくさかったのと、何だか、今までの自分を反省した。

   ブスや、醜い物が嫌いだったし、、、眼中には入れないようにしていたから

         だ・・・

    そして、益々、カノンに興味を持ち、カノンがブスでも醜くても

       構わないと思うようになった。

       更にメールのやり取りが続き、カノンはどんな外見なのかが

       知りたくなった。

      それで、テファは写真メール交換を、同時にしないかと聞いた。


    カノンは、大概の日本人は自分の写真は嫌いだとしながらも、

      テファが送るからと言って来たので、

         その気持ちに応えようとして、送る事をOKとした。

        ほぼ同時に、お互いの写真が送られた・・・・

        すると、直ぐにカノンから返信が来た・・・・


           ※※  カノンのメール  ※※


         テファオッパ・・写真を有難うございます。

      凄くビックリしました・・・オッパは、楽しい事が好きだから、

      ふざけてアイドルスターの写真を、送ったのだと思いました・・・

       凄く綺麗で優しい王子様みたいな顔だったんですね?

        その上、心が優しくて、綺麗だから・・・・

        私はそんなテファオッパの妹になれて、凄く幸せですね?

              エヘヘ       ^^;>>>                  


      ※※※                  ※※※


              ・・・と、あった。

   テファは、カノンのメールを見て、ハハハと笑いながら、

   送られて来たカノンの写真を見た・・・・




                え?????!!!




     それは想像していた顔とは全く別の、

             予想外の可愛い女の子だった。


       花音=花のように可憐で可愛い顔・・・

             音楽の様に優しい気持ちにさせる心を持つ、

      それこそアイドル歌手みたいな、可愛い女の子だった。


       「お姫様みたいだ・・・」テファは呟いた・・・・

          そしてテファもカノンにメールした。

         ※※※  テファのメール  ※※※

             とても可愛いですね?

              お姫様みたいだ・・・

          僕もこんな可愛い妹が出来て嬉しいよ。

         ※※※              ※※※


         返信をしてから、テファは胸の鼓動を感じた・・・

    宮殿食堂での仕事が終わって、テファは、その日、新宿都庁へと

    向かい、高層ビルの上へと上がった・・・

      夜景を見ながら、又携帯のカノンの写真を取りだして見ながら

        ・・・・トクントクンと言う胸の高鳴りを感じた・・・


       心の中で、カノン・・・

         カノンと、カノンの名前を叫んでみた・・・・


        カノンは、どんな声をしているのだろう?


     カノンはどんな話し方をするのだろう?声が聞いてみたくなった。

         テファは急いで、カノンに携帯電話番号を聞いた。

              返信はなかった・・・



     日本は、相手に何かを尋ねる場合は、自分の事を語ってから、

     相手に聞くのが礼儀だと言う事を後で知った・・・

      その時、テファはそんなことを知らずにいたので、

      「カノンの電話番号を教えて欲しい」とだけメールし

      たのだった・・・・



    カノンから返信が来たのは、テファが自分の部屋に戻って、

    ベッドに入る時だった・・・

「今日は、学校で飲み会があったので、返信が遅くなってしまい、御免

なさい。それから、携帯電話番号ですが、私は080-XXXX−XXXXで

すが、テファオッパの番号を教えて頂けますか?ここは日本だし、私は

日本人だから、私が、テファオッパに電話をかけます。

余計なお金をオッパに使わせたら申し訳ないです・・・

だから、私がかけます」と返信が来た。

 テファはまたトクントクンと胸の鼓動を感じた。

直ぐにテファは自分の番号を伝え、何時になっても構わないから、電話を

下さいとメールした。

  すると、直ぐに電話がかかって来た・・・・

テファはドキドキしながら「もしもし・・・」と電話に出てみた。


   「ヨボセヨ  チョヌン スズキ カノン ラゴ ハムニダ。

        チョン テファ シ イムニカ?」=もしもし、
    
        私は鈴木 花音です。鄭テファさんですか?

  たどたどしいが、頑張って韓国語を使う可愛い甘えた声が聴こえた・・・

       「イエ、、オッパヤ」=はい、僕です。

   直ぐに韓国語が続けて話せなくなったカノンは、

    ケタケタと笑いながら「日本語で話します」と言って来た。

    テファはたまらなく愉快になって、一緒に笑いながら、

     楽しく会話をした。



   
         「おい、テファ、テファ・・・」


    ジノが、窓の外をずっと眺めているテファに話しかけた。



      テファ:「あっ、あぁ、、、何?」

    ジノ:「何じゃねぇよ・・・ぼんやり外眺めて・・・

           今日は一日中、雨だし、外の景色なんて

                      見えないぜ・・・」

テファ:「・・・・雨音を聴いてたんだ・・・新しい曲が出来そうなんだよ」

            っと、慌てて言葉を発した・・・・

ジノ:「女っぺえな・・・雨音が音符に見えたなんて言うんじゃないだろうな?

       ハハハ・・・俺だったら、チヂミを思いだすけど?」

テファ:「え?チヂミ?・・・チヂミかぁ・・・そうだよな・・・」


     韓国人は、雨の日はメランコリックやセンチメンタルな気分に

      なるらしいし、、鼻がキュンと痛くなると言う・・・

       昔の懐かしい想い出や、初恋・失恋など恋にまつわる事は必ず、

       雨がつきものとされていた・・・

     更に深く考えると、雨の日は、家にいると、お母さんはチヂミを

      焼いてくれると言うのが定番らしい・・・


    ジノ:「チヂミが無性に食いたくなった・・・

           テファ、後で、付き合えよ・・・

             勿論、お前の奢りだ!!」



         テファ:「えぇ、何でだよ・・・」

 

          ジノ:「お前が雨を見てたから・・・」


      丁度、ジリジリっと授業の終わりのベルが鳴った・・・・

   テファは、眼鏡を外し、テキストをカバンにしまいながら、

            また窓の外を見た・・・

 

             ん???か・の・ん???カノン?!



             窓の外に薄らと、見覚えのある姿があった。


        赤いビニール傘をさして、友達と楽しそうに

             会話をしながら歩いている姿だった・・・・



         慌てて眼鏡をかけたが、、またもや姿はなかった・・・

 


       きっとこの雨のせいで、カノンを強く思いだし・・・

          センチメンタルな気分から、カノンと見間違えたのだろう・・・

      カノンが、韓国のホンデにいる筈ないし・・・

              本当にどうかしているゾ!と、、、

          テファは、フフフと笑って、教室を後にした・・・・


        ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



        テファがカノンだと見間違えた女の子は、

      正にカノンだった。カノンは、2限目の授業に移動するところだった。

      今日の2限目は、ホンデの日本語学科の生徒との交流会だった。

    入門クラスや初級クラスは、日本語学科の優秀な学生が担当し、

    中級・上級クラスへ行くにつれて、日本語学科でも、

           そんなに良く会話が出来ない学生が担当となった。

  カノンは初級クラスだったので、ホンデの日本語学科の優秀な学生たちが

   集まるグループがテーブルに着席することになった。

    スンミは日本語学科では首席だったので、ユリと同じテーブルだった。

   しかし、皆、スンミの醜い姿を見て、あの席には行きたくないし、

         気持ち悪いと言っていた。

  更に、隣りがユリなので、醜さがより一層、目立ち、滑稽な感じさえ

   伝わって来た。



       じゃあ、ユリの隣りに座れば?となったが、

          美人だが傲慢さが出ているユリの隣りにも座りたく

     ないと言って、入門クラスも、初級クラスの生徒達も、

           着席するのを嫌がっていた。

  ユリは「あなたが居るからよ、スンミ・・・皆、貴女がいるから

         気味悪がって座らないじゃない。

    違う席について頂戴よ。それか、後ろでみていなさいよ。」

          と強い口調で言った。

       スンミは、仕方ないとし、席を立った・・・

    カノン達とスンミと入れ違いに教室に入って来た。



    カノン:「あっ、スンミちゃん、、、

          2限目は一緒の授業なんだね、宜しく!!」

スンミ:「・・・・カノンちゃん、、、わっ、、私、今、先生に呼ばれて・・・

     教官室に行かないと行けないの・・・」

カノン:「・・ふうん、そうなんだ・・・じゃあ、後でね・・・」


  カノンは元気よく手を振って言った・・・だが、スンミは薄らと目に涙を溜め、

    泣いているようだった・・・と、カノンは思った・・・

          教室に入って、事情が良く呑み込めた・・・


  綾とひろみが、「何か教室の雰囲気、悪くない?」と小声で言った・・・

     カノン:「うん、何か変だよね」


  クラスメイトの弘:「何かヤバイ雰囲気だよ・・・

           あのお姫様が、思い通りに行かないからカンカンなんだよ」

クラスメイトの敦:「生姜姫の隣りの席に誰が座るかで揉めててさ、、

         あのグル-プの席に座るのも嫌だよな・・・」

カノン:「え?どうして?」

弘は、簡単にさっきのスンミを追いだした出来事をカノン達に伝えた・・・・

カノンはそれを聞いて、ぷうっと頬を膨らませた・・・・

 そして「じゃあ、あのグル−プには、スンミちゃんもいるんだよね?

       私がユリさんの隣りに座るよ。」と言って行こうとした。

敦:「カノンちゃん、止めておけよ、馬鹿だのブスだの酷い事を言われるよ。」

カノンは、皆の心配を余所に、ニコヤカに笑い「え?だって私、ブーだし、

       頭悪いし、散々、弟からも悪口聞かされてるから、慣れてるもん。

         大丈夫!」と言って、勇ましい歩き方で、ユリの横の席に座った。

敦も弘も「俺たちは男だし、生姜のターゲットは女だから、大丈夫だろう・・・

カノンちゃんと一緒に座ろうぜ」と言って、カノンの後を追って、同じ席に就いた・・・

見る間にユリのグループ席は満席になった・・・

しかも、日本人の男の子ばかりでなく、日本語学科の韓国人の男たちも、

こぞって座った。

   ユリは、自分がお姫様で、美しいし、頭がよく、お金持ちだから、

   皆が自分と一緒のグループが良いと思って座ったのだと勘違いしたし、

   更には、ブスなスンミを追いだしたから、こうなったのだと思って

    満足な高笑いをした。



   その席には、ホンデの学食で声をかけて来たゼミョンとトンスが居た。

     スンジュは、席に座れず、隣りのグループの席に座っていた。

 ゼミョン:「カノンちゃん、また会えたね?」

   トンス:「カノンちゃんは初級クラス?入門クラス?」

     カノン:「初級クラスです。全然、会話できないし、

             韓国語の文法とかも難しくて・・・えへへ」

           カノンは、恥ずかしそうに笑いながら言った・・・

   そこに居た韓国人や日本人の男たちを一瞬で虜にする笑顔で、

    柔らかな甘いピンクのハートマークが沢山飛んでいるような風景だった・・


     ユリがその雰囲気をぶち壊した・・・

      「さあさ、勉強に入りましょう。今回は初級クラスの方が多いみたい

        だから、レベルをうんと下げないと・・・

        今、あたくしの家に滞在している金子さんはここの上級クラス

      なんですが、日常会話もお上手だし、私も教え甲斐がありますのよ。

       では、あたくしの後について発音して下さらない?

          あなたから、、そう須田弘さんから、時計周りにね?」

   

      カノンの番になった時、ユリは意地悪な発音をした・・・

             カノンは、発音が出来ずに、失敗した・・・

    何度も何度も発音できるまで言いなさいとユリは言った・・・

     その内、韓国人の男子生徒たちは

      「その発音は難しいから・・・」と助け舟を出してくれたが、

        ユリにキッと睨まれ・・・言葉を撤回させられてしまった。

ユリ:「ホホホ・・・本当に出来ないの?こんな簡単な言葉・・・

      お馬鹿ちゃん・・・入門クラスにも入れなくてよ・・・

    さぁ、もう1度・・・ダメダメ、もう1回・・・本当に下手くそね。」

カノンは、皆に迷惑をかけてはいけないので、隣りの教室隅っこで出来るまで練習して

来ますとして、席を立った。

泣きたい気分だったが、スンミのこともあるし、ユリのきつくて我儘な姿が、

カノンは少し許せなかった。

  隣りの教室は空き教室だったが、既に先客が居た。

          ・・・スンミだった・・・

    カノン:「あれ?スンミちゃん?」

   カノンの呼びかけに、サッサット涙をぬぐってスンミは

       「あっ、カノンちゃん・・・もう授業が終わったの?」と言った・・・



       カノンは、スンミを察して「えへへ、追い出されちゃった!!

         私の、韓国語は下手だし、馬鹿だって・・

      ・・・馬鹿って言われるのは慣れっこだけど、、凄く傷つくね・・・

            えへへ」

  スンミ:「ユリね、そんな酷い事を言うのは・・・

        自分が美人だし頭が良いし、何もかも思い通りに行かないと、

       直ぐに怒ったり・・・怒鳴るの・・・言われると傷つくし・・

      私は特に醜いから、美人に言われると物凄く傷つくわ・・・」

         カノンは、キョトンとした・・・

    カノン:「美人て???・・・ユリさんが美人??・・・

          私はスンミちゃんの方が美人だと思うし、本当の美人だと

            思うけど?」と真面目な顔をして言った。。。。



      カノンの言葉が、余りにも可笑しくて、スンミはお腹を抱えて笑っ

         た・・・・

  誰が見ても、ユリはお姫様で美人だ・・・ミスキャンパスにもなった・・・

     更にはミスコリアにも応募すると言う勢いだった・・・

  そんなユリよりも、化け物だの怪物だのと言われている自分が美人だと真面目に

   言えてしまうカノンが可笑しくて笑った・・・

  カノン:「だって、美人て、美しい・人って漢字で書くでしょう?

  この世にあるものは、仮の姿だし、人間の本当の真価や美しさは目に見えない、

   なかなか形に現れない誠意とか心や行為、言葉だと思うんです・・・

   ユリさんは、言葉はキツイし、考え方も我儘で、棘が一杯だもの・・・・

   外見にもそれが表れていて、私は少しも美しいとは思えないけれど??

    えへへ。スンミちゃんは、私にとったら、物凄く美しい人だもの・・・

     心がピカピカしているから・・・」



     その時、またカノンにフラッシュバックが起こった・・・


     「心がピカピカしている・・・カノン、、、カノン、、、

                    君の心もピカピカだよ・・・・」



  カノンは「え?」っと思い、キョロキョロと周囲を見回したが、

   誰もいなかった・・・・

    今度は胸元のペンダントを見た・・・

     するとペンダントは、銀色にキラリと光っていた。


   スンミは、カノンの言葉で元気を取り戻した・・・

      カノン、あなたこそ、心も外見もピカピカで、

    本物の「美人・・・美しい人よ」と呟いた。。。。

       そしてカノンの事がもっともっと好きになって

          行ったのだった・・・・


スンミは「カノンちゃん、何の発音が出来ないの?教えて!私が、

         カノンちゃんを助けるわ。」と、言った。

  カノンは「あっ、うん、この文章・・・短い文章なんだけど、、

   この単語があるから発音が難しくて・・・・・何か自分でも発音しても、

   カタカナみたいな発音で変なんだもん・・・えへへ〜スンミちゃん、

  発音してみるから、聞いてて!」と言って文章を発音しはじめた。


  スンミは、成程、意地悪なユリが、言わせそうな文章だと思った・・・

  韓国人でも難しい発音が入っていて・・・スンミは、偽物の美人に

   胡坐をかいているユリが許せなかった・・・そして、可愛いこのカノンの

   力になりたいと思ったし、、、更には、自分の憧れであるテファには

    カノンみたいな女の子が合うなっと自分の理想を重ねたのだった・・・・


     -------------------------------------------------



          廊下の窓が開いていたのだろうか?

           そこから音楽が流れて来た・・・・

            ソテジの「ノエギ」だった。

        スンミとカノンは、顔を見合わせた。

     カノンは何やら思い付いたみたいで、ニコニコしながら

      スンミに「スンミちゃん、もしかしたら、パランファが

      練習しているのかも?授業、サボッテ、行ってみない?えへへ」

         と、言ってみた。

  真面目で勉強好きなスンミにサボろうと誘ってくれたこれまで

    誰もいなかったが、スンミは「そうだね、、、行ってみようか?」

   と言って、二人は、教室を抜け出し、バンドサークルが練習する

    部室へと向かった。

   部室は地下室にあって、ちょっとしたライブハウスのようになっていた。

   薄暗い階段を下りて行き、堅くて重いドアを開けると、何組かのバンドの

   人達が集まって、秋の学園祭の曲の練習をしていた様子だった。

  スンミとカノンが入って来た様子に気が付いたのは、ドア越しに立って

   演奏を聞いていたジョンアだった。


       ジョンア:「あんたたち、何か用?」

  スンミ:「あっ、、えぇと、、、」もごもごとスンミは、

          何をどうやって説明しようかと言った感じで言葉を

          濁らせていた。

 カノンは、ぶっつけ本番に強い?性格なのか、ジョンアに

     「練習を見せて下さい。実は私はパランファの演奏に興味があります。

        テファさんを見に来ました。」と正直な気持ちをまっすぐに

        伝えた。。。

 ジョンアは、その凛とした姿や、可愛い笑顔を見て、ダメとは言い辛くなり、

むしろ、笑いだしてしまい、「どうぞ、どうぞ」と言った。

  しかし、残念なことに、パランファのメンバーは、いるけれど、

   肝心のボーカルのテファは授業中でいないと言われてしまった。

ジョンア:「テファは機械工学部だから、2限目は、実験で忙しいと思うの。

      会わせて上げたかったけど、残念ね、オチビちゃん。。。」

   それでも、パランファのバンドの人達とは、顔見知りになる事が出来た。


  ジョンアが、練習が終わったばかりのメンバーを呼んで、

   一人一人名前を告げて、カノンたちに紹介してくれたのだった。

 メンバーは、口々に「小さくて、可愛いな」とカノンを見て言っていた。

ミング:「俺は、リードギターのミング・・君、日本から来たの?」

カノン:「ハイ、、1週間前に来ました。」

イルソン:「あっ、俺はイルソン、ベースやってるんだよ。

          ボーカルのテファも、今年の2月まで、日本の東京で

         ワーキングホリデイィしてたんだよ。

        結構、日本語が上手くてさ、、、話が合うんじゃないか?」

カノン:「東京?東京のどこですか?私は、世田谷って言う所に

      住んでいます。大学が、世田谷にあるから・・・」

イルソン:「ふうん、、テファは、多分、新大久保・・・

       新宿だと思うけど?でも何で、テファの事、知ってるの?

        もしかしてテファの知り合い?」

カノン:「いいえ、ただ、興味がありました。

    だって、日本語学科の女王様の姜ユリさんの彼氏だって聞かされたから

   ・・・どんな人なんだろうって・・・えへへ。」と言って笑った。

      通訳は、スンミが鮮やかにしたので、会話もスムーズに済んだ。

   バンドの連中も、サークルの人達も、意地悪な人はいないようだったし、

    スンミが居てくれたお陰で、楽しい時間が持てた。

       ジリジリジリっとチャイムが鳴る音が聞こえた。

  カノン:「いけない!教室に戻らないと!!」

ジョンア:「あ!でも、もう少し待っていたら、テファに会えるよ。

      お昼だし・・一緒にお昼にも行けるんじゃない?」

カノン:「いいえ、今日のお昼は、学校が用意してくれているから・・・

     戻ります。あっ、スンミちゃんは残って一緒にご飯食べたら?」と言った。

  スンミは嬉しい気持ちになったが、周囲は、カノンの事を期待していた

   みたいだし、スンミが一人残っても、また後でユリや周囲のクラスの

   生徒達から何を言われイジメられるか分からないから、

  「私も戻ります」と言った・・・だが、カノンのお陰で、

   また一歩、テファに近づけた・・・そんな気分になった・・・・

  ほんの数分の入れ違いで、テファは、部室に顔を出した。

  「昼飯に行こう」とバンドのメンバーであるミングとイルソンを誘いに来た。

    ジョンアが、さっきテファのファンだと称して、

    部室に来た女の子が二人来たと言ったが、そんな事は日常茶飯事

    だったので、テファは特に驚きもせず「あっ、そうなんだ」で会話は

    終わってしまった。


    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

   今日も学校の生活が無事終わり、スンミとカノンは車で、自宅に戻った。

    今夜は、カノンの横浜の実家にホームステイをしていた、ソウル大学生の

    李ビョンチョルお兄さんが、家に会いに来てくれる事になっていた。

     前もって、李ビョンチョルの携帯電話に連絡をしていた。

 カノン:「もう、家にいるから、いつでも来て大丈夫です」

  ビョンチョル:「了解!今日も、高麗大学との交流会だったから、、

           そっちにも近いから直ぐに行けると思うよ。

           じゃあ、19時に、行くからね。」


カノンは、韓国で、自分の事を知っていて、再会が又出来る人がいる事を

幸せに思った・・・そしてフト、その他にも、そんな人がいるのでは?と思った・・・


暫く考えた後、答えがみつかった・・・・

          やっぱり居た!  いるのだった。


            記憶が甦って来たのだった。



  
















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