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作品名:潮風のセレナーデ・・・会いたい気持ち・・・ 作者:HAPPYソフィア

第10回   小刻みなフラッシュバック・・あなたは誰?
カノンの韓国語学研修は、いよいよスタートを切った。

    今日から、ホンデ語学堂での韓国語の勉強が始まる・・・

 カノンは目覚まし時計に起こされながら、目を開けた。


   初日にしろ、余りにも色々な事が有り過ぎて、

     いささか疲れていたのかもしれないが、寝ぼけながら、

  ベッドから起き上がり、着替えと身支度をしていると、

    ローミングしていた携帯がピロピロと鳴った。

 メールが2通来ていた。それは、一緒に留学に来た梨花大学の語学堂に

  なった久美子と高麗大学語学堂になったミドリの二人からだった。

    早速、今日の放課後、会わないか?と言う誘いだった。

   場所は、カノンが通うホンデの周辺が一番、

   お洒落なカフェやお店が集中しているし、楽しそうなので、

  ホンデの正門の所で、16時と書いてあった。

   カノンは「もちろんOK」と返信をした。

 久美子もミドリも初日はどうだったのか知りたいし、学校がそれぞれ近いので、

  待ち合わせをこうしてしあって、放課後を楽しむのも良いなっと思った。

   そして留め金が、あまくなっているペンダントを、

   アクセサリー屋に持って行って修理して貰おうと、カノンは思った。

 

    今朝は迷わずに、食堂に行け、テーブルの席についた。

   既に、スンミは食事をしていた。

     お互いに「おはようございます」と挨拶を交わし、

        カノンも「いただきます」をして食事を始めた。

 スンミは「今日は、どんなスケジュール?」と聞いて来たので、

   カノンは「えっと、韓国語の文法の授業と、韓国語会話の授業の2つが

    午前中にあって、午後は聴解の授業と、リ−ダ−と言って何か長文読解も

  あるみたい。授業が終わるのが15時半ってプリントに書いてあったっけ・・・」

     と言うと「・・・そうなんだ。じゃあ、私は授業が18時に終わるの。

       帰りの車はどうしようか?」と言ってスンミは考え込んだのを見て、


     カノンは咄嗟に

     「あっ、実は、私と同じ大学のお友達の子が梨花大学の語学堂と、

      高麗大学の語学堂に通っていて、帰りに会う事になっているので・・・

       今朝、携帯にメールが二人から来ていたの・・・待ち合わせはね、

        ホンデだから、その周辺でお茶飲んだり、お店を覗いたりして、

    スンミちゃんを待ってるのってダメかな?」っと顔色を伺いながら言った。

  スンミは、「・・・そうか・・・じゃあ、そうしようか」と言ってくれたので、

              カノンはホッとした。

スンミ:「・・・ところで、カノンちゃん、お部屋にPCや電話があった方が

     良いよね?」

カノン:「え?・・・うん、あれば便利だけれど?でも、日本から携帯電話を

     ロ−ミングして持って来ているし、メールもネットも全部できるから、

      大丈夫だと思うけれど???」と言ったが、スンミは

      料金が沢山かかるからとして、今日、学校から帰ったら、

      PCと電話を用意しておくからと言った。



  カノンはスンミの気持ちを無にしてはいけないと思うものの、

   何だか申し訳なく思い、言葉を探していた・・・・・

   沈黙が数秒続いたが、カノンは「ごめんね、スンミちゃん・・・

    そして有難う」と言った。

   スンミにとってカノンは、初めて出来た友達だったので、

      スンミはカノンに夢中になり始めていたのだった。

     自分とは正反対の可愛い容姿と何不自由なく育った生粋の日本人の

     お嬢様を、自分とダブらせてみたかったのだった。

     カノンの事をもっと知りたい・・・カノンと仲良くしたい・・・

     その気持ちが強くなり、カノンの物や、友達は、自分の物であり、

      自分の友達だと思いこみ始めていたのだった。

         なので、カノンが友人とどんな会話をしたり、

        どんなネットのやり取りをするのかとか、電話での会話

         や誰にいつ電話をするのかも知りたかった為に、

          PCと電話を用意し、チェック・・・と言うか盗聴

           出来るようにしたかったのだった。

        カノンに嫌われたくないので、理解を示し、

                    放課後、友人と会って

         も良いよとしたのだったが・・・・内心は、穏やかではなく、

          いつもカノンを独占したかったのだった。


 カノンはそんなことも知らずに、自分に良くしてくれるスンミを有難く思っていた。



     二人は車で、ホンデまで行き、

      「じゃあ、カノンちゃん、ちょっと余裕を持って、

          18時半に、ここの正門でね?」とスンミは言った。

カノン:「うん、分かった。じゃあ、スンミちゃん、夕方ね。」


スンミ:「何かあったら、電話をお互いしようね?

            カノンちゃん、語学研修、頑張ってね」

カノン:「有難う!スンミちゃんも、ファイティング!」と言って

            元気良く、語学堂へと走って行った。

 スンミはカノンの姿が校舎に入って行くまで見送った。

       「カノン、本当に可愛い・・・カノン、私の

         ・・・・私だけの友達・・・・

          カノンさえいれば、私は大丈夫・・・」

           ・・・スンミは自分の中で何かスイッチ

            がONしてしまったかのようだった・・・・

   

     後に恐ろしい事になって行くとは思いもよらなかった。  



   語学堂の初級教室のドアを勢いよく開けると、

      既にひろみや綾が登校しており、「カノン、こっちこっち」

      と手招きした。カノンは、満面の笑顔で、

       ピョンピョンと飛び跳ねながら、二人の元に行った。

           カノン:「おはようちゃん」

            ひろみ:「おはよう」

綾:「良く眠れた?私は今日から授業だと思うと、緊張しちゃってね・・・

     ドキドキだわ。」

ひろみ:「あたしも・・・宿題も一杯でるらしいよ。何か憂鬱・・・」

カノン:「えぇ・・・勉強嫌いだし、苦手だから嫌だな〜・・・

       あ!でも、スンミちゃんに手伝って貰っちゃおうかな・・・

      えへへ。スンミちゃんは凄く優しくて良い女の子で、

       私は大好き」と屈託なく二人に話すと、

        二人は顔を見合わせて、ビックリしていた。

         それは、スンミがとても醜いのもあったし、

自分たちのホストファミリーのクラスメイトたちからも馬鹿にされ、

苛められていたからだった。

自分たちも、「ホンデ1の醜いスンミとは、仲良くしない方が良い。

仲良くしたら、この日本語学科にいられないようになるし、

帰国して復学してからも単位は認められないように、酷い評価を報告する」

と言われていたので、スンミとは顔を合わせないように・・・・

接触は避けようと思った・・・

     しかし「カノンとは幼稚園以来からの仲良しだから、

        カノンとはどうすれば?」と聞くと、カノンに関しては別段、

害はないので、仲良しでも構わないと言われホッとしていたのだった。

ここの日本語学科やホンデ語学堂の韓国語学科の学生たちは、

とにかくスンミとは接触しない事が暗黙の了解だった。



    又、今日は誰がスンミを、からかい・苛めるかの当番が決められていて、

     もちろんホストファミリーの学生である金ウンミと朴ジュヒの

      当番の時は、一緒に野次を飛ばさないといけないらしかった・・・・

      そんな馬鹿げた中学生以下のレベルの遊び?を、

       ミスキャンパスの姜ユリが中心になってやっていると言うのだ。

         姜ユリを怒らせたりしたら、

      とんでもない事になると、皆から恐れられていた。

 ひろみも綾も今朝は早めに学校に来て、カノンを待ち、

           カノンに滞在家庭を替えて貰った方が良い

              と言うつもりだった。

 このままだと、きっと心優しいカノンは、スンミを庇って、

         一人で戦うだろう・・・・相手が姜ユリであっても、

    きっとカノンは泣きながらでも、負けないで戦うかもしれないと

         思ったのであった。

   カノン自身もスンミと居る事によって孤立していってしまうかも

            しれないし、、、、

 その時は、ひろみと綾は、カノンの味方になろうと思った。

       その位、二人もカノンが大好きだったのだ。

 

ひろみ:「カノン・・・本当にスンミって言う子の家の滞在で良いの?」

カノン:「え?うん、凄く楽しいし、スンミちゃんの家で良かったと思ってるけど??

       それが何か?昨日はスンミちゃんのお兄さんが、

      遊びに来て、ピアノを弾いてくれたの。お兄さんは音楽大学だから

     どんな曲でも弾いてくれたよ。

      凄く綺麗な演奏で、直ぐにでもプロになれる感じがしたしね・・・

     それに、SEへENに似ていて格好良かったよ。

       夜中までずっとスンミちゃんとクッキー食べながら

     話したりして、楽しかったよ。お家もお姫様になったみたいに

       豪華だし、御飯も美味しいし、、

     何か日本での自分の生活とは全然違うから新鮮だよ〜えへへ」

ひろみ;「本当に?本当にスンミさんの家で良かったの?」

カノン:「え?うん、良かったと思ってる。・・・

          ひろみちゃんも綾ちゃんも何か変だよ?何?」

綾:「・・・ううんとね、、、えっと・・・」

    言葉を濁しているとジリジリっとベルが鳴って、担当教官の先生が

    教室に入って来た。号令がかかった。授業の始まりだった。



      綾もひろみもホッとした。カノンは変なの?と思うものの、

      席についてテキストを出した。

 

     1時間目は韓国語の文法の授業で、カノンの所属する初級クラスは、

      簡単な単語と単語の組み合わせから始めて文章にしてゆくものだった。

       韓国人の先生だったが、日本語で説明されたので、学生たちは

       ホッとした。2時間目は、会話の授業だったので、

       丸っきりの韓国語で、それでも先生が陽気で、元気な男の先生

     だったので、分からなくても雰囲気やボディランゲージなどで、

     楽しく過ごせた。



  午前中の授業が終わって、ランチタイムとなった。

     カノン達は、ホンデの学食に行ってみようとなった。


   ホンデの周りにもお洒落なカフェや、食堂も屋台も沢山あって、

     食べる事には困らないみたいだったが、先ずは、ホンデの学食

      体験だと、ひろみが提案した。

ホンデキャンパスの見取り図を初日のオリエンテーションで貰っていたので、

それを頼りに行ってみることにした。

カノン:「ホンデって凄く広くて、綺麗で大きいね?迷子になっちゃいそうだね。」

綾:「本当だね。どんなメニューがあるんだろう?今日は暑いから冷麺とかあったら

    良いな・・・」

ひろみ:「私も冷麺食べたいな。・・・えっと、この校舎の右横の校舎の

       1階みたい。割と近いね。」

         ひろみは見取り図を見ながら、二人を誘導した。



         「え?・・・カ・ノ・ン?・・・・カノン?」

  

   ふわりとした柔らかな茶髪のスリムな青年がキャンパスの小陰で、

     友人を待っていた。 


    その時、見覚えのある姿の女の子(=カノン)を見た

      気がして振り返った・・・

       しかし、もう人影はなかった・・・

      午前中の授業が終わり、これからクラスメイトと、

      ホンデ周辺の食堂に昼食を

     とりに出ようとして、友人を待っていたのだった。



     ミング:「ごめん、待たせて!」

イルソン:「腹ペコペコだぜ。早く行こうぜ。テファ、おい、テファ、行くぞ!」



    テファ:「・・・ん?・・・あぁ、分かった。」


  イルソン:「どうしたんだよ、テファ、キョロキョロしてさ・・・」

テファ:「・・・いや、、、ちょっと知ってる子が居たと思って、、、」

ミング:「女か?」

イルソン:「いつものユリ姫じゃないのか?

    テファ、お前が羨ましいよ。ミスキャンパスの・・・いや将来の

      ミスコリアの姜ユリの愛を独り占めしてさ、、、男冥利につきるよな?」

テファ:「よせよ、、、ユリはただの幼馴染みなだけさ・・・

         関係ないよ。ユリも、兄さんだと思ってるんじゃ

    ないかな?良かったら、今度、ユリにイルソンの真面目な

                    気持ちを伝えてやるよ」

イルソン:「・・・いや結構!ユリ姫は、お前だけしか見てないから・・・

                      俺が振られるのは分かってる事さ」

ミング:「そうとも!・・・それより、今日はインド料理でも行こうか?

         暑い日は熱い物をたっぷり食べて、

                         汗を一杯かこうや」

    「賛成」とテファもイルソンも言ってインド料理店の

              マハラジャへと向かった。

  


   テファは、今一度、振り返ってみたが、

      やはり気のせいだと思った。

       そう言えば・・・カノン・・・あれから

    忙しさにかまけて、全然連絡していなかったが、

               元気でいるだろうか?

 じりじりとした日差しを見つめながら、季節は夏になっている事を感じ、

       テファはカノンに会いたくなった・・・

   今日、帰宅したら、メールを送ってみよう!

      カノン、きっと首を長くして待っていてくれている

        だろう・・・

   カノン、オッパは元気に過ごしているよ・・・カノン・・・・

        カノンの名前を心の中で呼びながら、

         テファは、ペンダントに手をあててみた。

        
       「オッパ・・・テファお兄ちゃん・・・」



      テファの心の中には、いつもカノンの可愛い笑顔と、

       自分の名前を呼ぶ可愛い声が聴こえるのだった。



 

         「カノン   ねぇ、カノン・・・」



      「え?誰?」っとカノンもキョロキョロしながら、

       食堂でコムタン定食を食べていた。


           ひろみ:「どうしたの?」

カノン:「え?何か、誰かが私の名前を呼んだみたいで・・・カノンって・・・」

綾:「誰も呼んでないよ・・・」

カノン:「・・だよね?えへへ」

カノンは笑ってごまかしたが、、、確かに誰かが呼んでいた感触があったのだ。

二人は「変なカノン」と言いながら、冷麺をすすった。



     すると3人組の韓国人の男の子が、カノン達の周りに来た。



   ゼミョン:「ホンデ語学堂の学生さんですか?」

 ひろみ:「・・・ハイ、そうですけど?」

       スンジュ:「僕たちは、ホンデ日本語学科3年です。」

  綾:「あぁ、そうなんですか?だから日本語が出来るのですね?」

       トンス:「僕達、君たちと仲良くなりたいんですけど?」



   3人の男たちは、そこそこのルックスでお洒落な男の子だったので、

   ひろみも綾も「喜んで!」と言ったが、次の瞬間、やっぱりな・・・

    と思った。

         3人の男たちは、

              全員、カノン目当てだった。

        小さくて可愛い、いつも笑っている上品なカノンは、

          どこに行っても人気があるからだった。

         それでも、韓国人との交流のきっかけになるので、

    ひろみも綾も、OKだったし、カノンも

            「宜しくお願いします」と言っていた。


   ゼミョンがカノン達三人にと、ソフトクリームを買ってきてくれた。



   カノンの好きな食べ物ベスト3の中にアイスクリームが入っていた。

 



        その時、カノンにまたフラッシュバックが起こった。

    


        聴き覚えのある音楽・・・・

           ディズニーランドの音楽だった・・・

                 靄がかかった男の人のセ―ターの端を

     しっかりと掴みながら、カノンらしき女の子が、

     嬉しそうにソフトクリームを食べている様だった。

       男の子は「カノン、ソフトクリーム好きなの?

    韓国のロッテワールドはね、逆さまにソフトクリームをしても

     落ちないんだよ。もし落ちたら、新しいソフトクリームを

      2倍にして返してくれるんだよ」と言っていて、

         カノンらしき女の子は

   「じゃあ、わざと落として2個貰おうとする人っているかもね?」

   と言ったら「大丈夫、落ちないから・・・ハハハ」と笑っていた。



    トンスに「カノンちゃん、ソフトクリーム、

          早く食べないと溶けちゃうよ」と言われてカノンは

            ハッとして我に返った・・・・



     ロッテワールド?

         ソフトクリーム?

                TDLと音楽・・・・

           私はそんな場面を、まだ分からない

           男の人と経験したのだろうか???

   カノンは、溶け始めたソフトクリームを慌てて食べ始めた。



      午後の授業が始まるので、スンジュたち3人と

        「またね」と言って別れた。


   スンジュ:「やっぱり、あのカノンちゃんが、最高に可愛いかったな」

ゼミョン:「あぁ、、、でもカノンちゃんは、あの怪物の家に滞在だろ?

       可哀想だよな。」

トンス:「俺・・・怪物の事で変な噂を聞いたことがあるんだよな・・・」

ゼミョン:「何だよ、、、それって、、、」

トンス:「あぁ、俺さ、あいつと同じ小学校・中学・高校だったから・・・・

      実はさ・・・」


      ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

                          ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ひろみ:「何か、学食行って良かったね?3人の割とイケメンのお兄さんたちとも

        友達になれたし・・・」

綾:「冷麺も美味しかったし・・・午後からも頑張れそうだよね」

カノン:「うん、午後はヒアリングだから、2階から5階に移動だね。」



    3人はバタバタと5階に行く吹き抜けのエレベータに乗った。

  下の景色が良く見えた。するとちょっとキラキラした美しい青年を綾が見つけた。


   「ねぇ、あの男の人・・・俳優さん?それとも歌手?」と言った。

          カノン:「え?どこ?」

ひろみ:「あ、あそこか?本当だね、凄く目立つし、綺麗な男の人だね。」


   カノンは、眼鏡をカバンから慌てて取り出してかけて見ようとしたが、

         既に、その男の人はいなかった。


  正にひろみも綾も見た男の人はテファだった。

   テファ達も、食事に行き、午後の授業の為に戻って来たのだった。

綾:「もう、いないよ、隣りの校舎に入って行っちゃったもの。

     凄く綺麗な男の人だったよね?・・・あぁ!!もしかして・・・・」

      カノンはキョトンとして、「もしかして何?」



     ひろみもピンと来て「生姜の好きな王子様って奴かも?」

     綾:「・・・・鄭・・・テファ・・・鄭テファだよ、きっと!!」



    カノンは、「え?鄭テファさん?」

     

    と繰り返して言った。昨夜、スンミの告白でもテファの名前が出て来た

      ので、見る事が出来なかったカノンは、

                 少し・・・いやかなり残念に思った。



     隣りの校舎と聞いたので、同じホンデなので、

        きっとまた直ぐに会う事が出来るだろうと思いなおして、

               LL教室に入った。




       午後の授業が終わったのが15時40分を回っていた。

       カノンは慌てて、テキストなどをカバンに押しこんで、

        待ち合わせの正門に行こうとした。


   ひろみ;「ミドリと久美に宜しく言っておいてね。」

綾:「多分、ミドリたちは、もっとミッチリ、勉強させられているよ。

      私たちは、ホンデで本当に良かったと思わなくっちゃ・・・」

カノン:「え?そうなの?」

ひろみ:「芸術大学だから、キャンパスは綺麗だし、何か穏やかで、

     お洒落で、、、勉強もきめ細やかで、優しい雰囲気が、

      何か日本の私たちの大学に似ていない?競争もないし、皆が楽しく

        学生生活を送ってない?」

     ・・・・・そう言われれば・・・・そんな気がして来たカノンだったが、

      今日は待ち合わせも有り、時間も詰まっていたので、

        早々にカノンは教室を飛び出した。



      正門に行くと、ミドリが先に来て待っていた。


  カノンの小さな姿が駆け寄って来るのを見つけて、

                   ミドリは元気よく手を振った。

 


           「カノン!」

  汗びっしょりになりながら、カノンは「お待たせしました。」と

    ハァハァとさせながら言った。

ミドリ:「私も今、来たところだから・・・まだ久美子は来てないけど、、、

      あっ、来た来た、、、久美子、久美子、こっちこっち!」


 久美子はタクシーに乗ってやって来た様子だった。何やら、少し怒っていた。

カノンは心配そうに「どうしたの?」と聞くと

    久美子は「今のタクシーのおじさん!!こっちが、日本人と

        分かると、遠回りしてメーター出さないでここまで来たんだよ。

        しかも梨花大学からここまでは結構、近いのに3万ウオンとかって言う

       んだよ。日本のタクシーだってそんなに取らないって言ったんだけど、

       かなり怒ってたから、しょうがないと思って、10000ウオン

        置いて逃げて来たわ。ハハハ」

        と勝ち誇って言っていたが、

        ミドリは「10000ウオンでも多いんじゃない?」と

                カノンにヒソヒソと言った。

         カノンは、そうかもと思いケタケタと笑った。

 早速、どこでお茶する?となり、雰囲気がよさそうな韓国的な建物の

      喫茶店を探した。

久美子:「あっ、あそこは?韓国伝統茶って書いてあるもん」

ミドリ:「あぁ、いいかも!そうしようよ」

カノン:「うん、そうしよう。あっ、その前に、そこのアクセサリーのお店に寄っても良い?」

ミドリ:「いいよ」

 
  アクセサリーのお店に先ず三人は入った。

     そこは所狭しと言った感じで、沢山のアクセサリーが展示され、

     売られていた。キラキラしていて綺麗で、女の子が好きな物が

      沢山あるそんなお店だった。

カノンは、ダメで元々だったが、日本語が出来ますと言うスタッフの人を

探したら、案外、直ぐに見つかった。

 クモク:「ハイ、お待たせしました。私、少し日本語できますよ。

           何をお探しですか?」


   カノンは、ペンダントを差し出して

     「ここの留め金が、緩んで・・・壊れてしまって、、、直せますか?」

         と言った。


  クモクは、「父さん、父さん」と言って、父親を呼んだ。

             そして修理できるかと話をしていた。

どうやら、ここのお店はクモクの家で、修理はお父さんがやっているみたいだった。

クモクの父:「いらっしゃい。私も少し日本語出来ますよ。おっ、これは・・・」

ペンダントを手にして、何かを感じたみたいだった。

  カノンはそれよりも直せるかが心配だったので、「直せますか?」と聞いた。

クモクの父:「あぁ、直せますよ。18時頃、出来あがるから

       、ここにまた来て下さい。正し、結構、お金がかかるよ、

    150000ウオン・・・いや200000ウオンはかかるかもしれないが?」

 と、言った。カノンは、大切なペンダントだったので

   「・・・・何とか払います。大丈夫です。お願い致します。」

        と言って一礼した。

       クモクの父は、その礼儀正しさに好感をもった。

クモクの父:「じゃあ、お嬢さんの可愛らしさで、

         130000ウオンでいいよ。これがギリギリの値下げだ。



            この世に2つとない物だから・・・


     結構、良い素材の物を使っているんで、直すのにお金がかかりま

      すよ。」



カノン:「この世に2つとない物?・・・???」


クモクの父:「今、店が忙しんで、とにかく、18時に来て下さいよ。

           そしたら、話しますよ」と言って予約番号をサラサラと

        書いて、カノンに渡した。


カノンは、髪飾りを夢中で選んで買いあさっている久美子とミドリのもとに行き

「お待たせ」と言ってさっき探した喫茶店で、お茶をしに行く事にした。


 店の看板が「牙山」となっていて、何だか可笑しくて3人は笑いながら、

喫茶店のドアを開けた。

韓国伝統茶を、三人はバラバラで頼んで、飲み回しをする事にした。

五味茶・柚子茶・梅茶そして韓国の伝統菓子も頼んだ。

店の中を見回すと、日本人や外国人の観光客が何組か居て、韓国人のお客さんは

いなかった。

 あちらこちらから、英語と日本語が聴こえて来る程度で、

三人は自分たちも観光客に思いっきり見られてるよね?と言ってクスクスと笑った。


  ミドリ:「ところで、どう?私は最悪!先ずは、家は母子家庭で、
  
          女弁護士の家なんだけど、しょっ中、部屋のエアコンの

        調子が悪くなって、暑くていられないの・・しかもキムチの匂い

    が充満していて、何だか気持ちが悪くなってきちゃってね・・・

        学校も男子校みたいな感じで、、勉強も大変だし、

      宿題を沢山出されたわよ。同い年のホストファミリーは、自分の

    勉強で忙しいから、自分の事は自分でやってね?みたいな感じだしね。

    何だか凄く不安だよ。あぁ、キムチのない場所に行きたいわ。」

久美子:「うちは、女子大だから、大学は綺麗だし、通ってる生徒が美人で、

     頭も良いんだけど・・皆、同じ顔をしているみたいな感じ・・・

      それに性格もきついし、プライドも高くて・・・・

     ホストファミリーも美人な子なんだけど・・・

       整形による美しさみたいよ。勉強も競争大好き学校だから、

    直ぐにテスト・テストで、順位をつけて紙に張り出されるのよ。食事なんて、

     美しさを保つために、ダイエットと言って、リンゴ1個とか、

      食べない時も多いんだって。そして私にも、久美子ももっと痩せて、

       勉強もして、頭も良くしろとか、顔を整形して美しく

               なりなさいとかって強制してくるのよ。最悪よ。」

   カノンは二人が、盛り上がって滞在の愚痴や文句を言っているのを、

    傍観者のように聞いていた。

        そしていきなり二人から「カノン、カノンは?」と聞かれた。

   カノンはビックリして、何をどう話して良いか?分からなかった。

    自分は楽しいし、快適だと言えば、自慢しているみたいに聞こえるし・・・

    グルグルと言葉が翔け回ったが、嘘を言うのも好きではなかっ

      たので正直に言おうとした・・・

カノン:「あのォ・・・・二人には御免なさいなんだけど、、、凄く楽しいで

     す。。。。」カノンはありのまま正直な気持ちを二人に話した。

久美子もミドリも、実は一番大変そうなのはカノンだと思っていたので、

       よもやま「楽しい」と言う言葉が返って来るとは思わなかった

        からだった。

  それは、韓国に到着した日、ロッテホテルでの御対面の食事の席にも、

     カノンのホストファミリーはなかなか現れず、

        来たのは兄と妹の二人だけだったし、帰りも車がなく、

        電車かバスで帰ろうとしていたからだった・・・・

       妹の方は、物凄く醜い容姿だったし・・・

       周囲の受け入れ家族は、カノンの事を一番の貧乏くじで

       可哀想だと憐れんでいたのだった。

久美子:「ねぇ、カノン、無理してない?」

カノン:「え?全然、無理してないよ。

       本当に、お兄さんも、妹のスンミちゃんも凄く優しいモン。

     家族は仕事で忙しいからバラバラだけど、

       自由にさせてくれてるみたいだし、、、お家とかお城にいるみたい

     だし・・・お部屋も超豪華だよ。

      建設会社の社長さんのお家だと言うのが分かるよ。

    ご飯もお手伝いさんが作ってくれて・・・美味しいしね。でも・・・・」


      否定的な「でも」と言う言葉が出た瞬間、ミドリも久美子も目が輝いた。

         待ってましたと言うばかりに・・・

カノン:「出来たら、車での送迎じゃなくて、地下鉄とかで学校に通ってみたいし、、、

     時間を気にせず遊んだり、観光したいし、

      食べたいものを自分で作って食べたいんだけど??」

     と言った・・・


   二人はガックリして「カノン、それは贅沢だっちゅーに!」と言って

     額を小突いた。

   三人は、それから話題を替えて、たわいもない話をして楽しく歓談した。



      あっと言う間に時計は18時になろうとしていた。

     カノンは慌てて、「じゃあ、私、先に行くね?」として、

      先に出る事にした。

  二人は、まだ残って、一緒に食事をして帰ると言ったのだった。

  カノンは、車で迎えに来て帰る関係もあったし、スンミが一人ぼっちで

   あの大きな食堂で食事をするのが可哀想だと思ったからだ。



   先ずはアクセサリーのお店に行って「あの〜、出来あがってますか?」

    とクモクの父親に紙を渡しながら聞いた。

クモクの父:「あぁ、出来てるよ。完璧に直しましたよ。ハイ・・」と、

ペンダントをカノンに渡しながら、話を続けた。

クモクの父:「お嬢ちゃん、このペンダントはどううしたんだい?」

カノン:「え?気が付いたらずっとしていました・・・

      多分、、誰かからのプレゼントだと思うのですが?

    どこで、いつ貰ったのかも忘れてしまいました。」

クモクの父;「ふむ、、、日本で手に入れたもの?」

カノン:「えぇ、そうです」

クモクの父:「1984年とあるから、今、24歳だな・・・」

カノン:「???1984年?・・・・24歳???」

クモクの父:「このペンダントは、世界に2つとない物と言った意味さ・・・

        つまりこのペンダントは、韓国人の男の物なんだ・・・

        韓国には軍隊制度があることは知っているかい?」

カノン:「ハイ、知っています」

クモクの父:「最初は、こう長方形をしてたんだよ。

         軍隊を終えた韓国人の男が、兵役を無事、遂行したと言う証しで

        貰える物なんだ。そのペンダントには、自分の名前・

          生年月日などが書かれているんだよ。このペンダントは半分に

       なっているから、良くは分からないけれど・・・

      お嬢ちゃん、24歳くらいの韓国の若者と付き合っていたんじゃない

      のか?その記念か何かで半分にして分けたんじゃないか?」と言った。

カノンは、ペンダントを見つめたが、心当たりがなく、きょとんとした。

クモクの父:「おじさんの考え過ぎかもしれないが、、、、

         あとの半分は多分、本人が持っていると思うよ。

       ハハハ。」と言った時、カノンにまたフラッシュバックが起こった。




          
        「カノン、、、カノン、、、僕だよ、、、

                   僕の事、忘れちゃったの?」



     カノンは、きょろきょろとお店を見回した・・・

             しかし、お店のおじさんしかいなかった。

クモクの父:「・・・きっと、誰かがお嬢ちゃんを呼ぶ声がしたんだろう?」

カノンはビックリして「え?何で分かるのですか?」と言ってクモクの父親を

  見つめた。

クモクの父親:「きっと、そのペンダントが、お嬢ちゃんを呼んでいるんだよ。

       そして元の場所に帰りたがっているんだと思うよ。

      おじさんが分かる範囲だが、24歳で軍隊生活を終えて、日本に留

      学か何かしていたんじゃないかな?出身はソウルのチャムシルと

       なっているよ。名前は・・・チョン・・・チョン

       しか分からないな・・・チョンと言っても韓国には何千人もいるから     
         な・・・」

カノン:「十分です。ずっと気になっていた声だったから・・・

        少し謎が分かって良かったです。13万ウオンでしたね?

      有難うございます。出来る限り、このペンダントの持ち主を

      探してみます。私は、ここの近くのホンデの語学堂に3ヶ月半、

      お世話になる事になっているんで、その間に探せたら良いので

      すが??頑張ってみます。おじさん、また相談にのって貰っても

      良いですか?」

クモクの父:「もちろんだよ。おじさんも、三角形のペンダントをしているチョンと

        言う24歳の男はいないかを、聞いてみてみるよ。

       お嬢ちゃん、いつでもいらっしゃい。・・・確かに13万ウオン・・・

       まいどあり」

     と、言った。カノンはクモクの父に何度もお礼の言葉を述べ、

          お辞儀しながら、ホンデの正門へと向かった。

    迎えの車は来ていたので先に乗ってスンミを待っていた。


   すると、車の前を、美しい青年と姜ユミが、腕を組みながら歩いて

    通り過ぎた。



        「あ!」っとカノンは声を上げた・・・

  あの美しい青年が噂の「鄭テファ」だろうと、鈍感でのんびり屋のカノンで

  さえも分かった。

     本当に美しい青年だったし、おとぎ話の王子様みたいだった。

   

     すると車のドアをコンコンとノックする音がした。スンミだった。


           スンミ:「おまたせ〜」

      カノン:「スンミちゃん、お疲れ様〜、

              今ね、姜ユリさんと、多分・・・」

スンミ:「テファでしょう?テファが一緒に帰って行ったんでしょう?」

カノン:「あっ、、、うん・・・二人で帰って行ったのを見たけど。。。

        テファさんて、本当に綺麗な人ですね?」

スンミ:「でしょう?誰もが憧れるよね・・・

         カノンちゃんも、テファのファンになった?」

カノン:「・・・綺麗だと思うけど・・・・でも・・・・」

スンミ:「でも?」

カノン:「別に、良く知らないから・・・

     それに心が1番大切だから・・・心を見てないから、、、

      ファンには直ぐにはならないです。

      私は断然、ソンジェお兄さんの方が良いと思うな。

      優しいし、、、SEへENに似てるもん。

      えへへへ。それにテファさんはスンミちゃんの王子様でしょう?

      可愛いくて心優しいスンミちゃんのライバルになりたくないもん。」

スンミ:「カノンちゃん・・・・そんな事、言ってくれるの、

       カノンちゃんしかいないけど・・・でも嬉しい・・・」



  実は、スンミは、自分が夢中になるものや人に対して異様な迄の執着心や、

独占意欲があり、ストーカー事件を何度か、これまで起こしていたのだった。

幼いころから、苛められてきたので、妄想癖もあり、今は、自分がカノンと

同一化しているかの錯覚を起こしているのだった。

カノン位の可愛い女の子だったら、きっとテファは振り向いてくれるだろう・・・

自分がカノンだったら、誰からも好かれ、友達も沢山出来、

楽しい毎日が過ごせるだろうとか・・・・

今日も、テファの帰る姿を見たいが為に、後ろからずっとつけていたのだった・・・

ユリの動きを見ていれば、大概、テファに会えるからだった。

 カノンはそんなことも知らず、警戒心の欠片もなく、スンミを慕い、

正直な気持ちを話したりして、お喋りに夢中だった。


   スンミ:「ところで、お友達には会えたの?」

カノン:「ハイ、お陰さまで・・・凄く楽しかったです。

       皆、頑張っていて・・・私も頑張ろうって思いました。」

        カノンは、たどたどしい韓国語で話した。

      スンミは、頑張っているカノンを益々、可愛いと思った。

スンミ:「宿題は出たの?」

カノン:「少しだけ・・・本当に簡単な宿題だったから、

       私のおバカな頭でも出来るものだったから、学校でやって

         きちゃいました。えへへ」と言った。



   帰宅して部屋に戻ると、ビックリしたのは、

            沢山のプレゼントの山だった。

洋服は30着ほど用意され、それに合わせて靴やカバン、

             宝飾類もベッドの上に置かれていた。

PCもセットされ、メルアドも決められていたみたいで、

      テーブルの上に、使い方などが、日本語で書かれていた。

      電話も、家用のものと、韓国での携帯も用意されていた。

カノンは、それを見て、少しだが、自分の幼い頃を思いだし、悲しくなった。

  両親は、子供である自分たちが、望む事を、全て、先回りして

    用意してしまうからだった。

       望んでない物までも、用意されている事もあり、

        その度に、心が痛かったのだった。

   大人になるにつれ、欲しい物は、自分の努力や頑張りで、、、

      更に買いたいものは、自分で得たお金で買う事を覚えて行った・・・

    だが、両親がしてくれた事柄は、有難いことだったし、、

    自分たちを大切に・愛情一杯に育ててくれた証しだと思ったのだった。

 案の定、プレゼントは全てスンミからだった・・・

 スンミは、カノンの喜ぶ顔を見に、カノンの部屋を訪れたが・・・

カノンが困惑し、悲しそうな顔をしているのを見て、反対に驚いた・・・・


     スンミ:「カノンちゃん、、、嬉しくないの?」

         後ろから、震える声でスンミが声をかけた。



     ハッとしてカノンは

    「ううん、ビックリしちゃって・・・

       全部、高価で、私には分不相応だから・・・、

         何だか勿体ないって思っちゃって・・・

 そうだ、スンミちゃんが、使えば良いんじゃないかな?」と言ったが、

スンミはゲラゲラ笑って「私がカノンちゃんのサイズの服は着る事が

         出来ないわ。カノンちゃんは、SSサイズでしょう?

    私は、頑張ってもLLだもの。靴だって、サイズが合わないわ。

    カノンちゃんに似合いそうな洋服を選ぶの、私は結構、楽しかったの・・・

     自分に出来ない事がカノンちゃんなら出来るから・・・・

      だから、羨ましいというのでは全くなくて、嬉しかったの。」

       と言った。


   カノンは、スンミの気持ちを察して「どうも有難う・・・

       じゃあ、遠慮なく使わせて頂くね?でも、カバンとかは、

    スンミちゃんも使えるでしょう?だから、一緒に使わせてね?」と言った。

 
             「一緒」

       と言う言葉を聞いて、益々、スンミは嬉しくなり、

       どんどんカノンと同化してゆく妄想が広がっていったのだった・・・・

       

   ------------------------------------------------------




   カノンは、食事を終えてから部屋のPCを接続して、メールを打ってみた。

   キーボードも全部、日本語で出来るようになっていたので助かった。

    先ずは、ちゃんと送れるか分からなかったので、

    今日、会ったミドリと久美子に送った。

      すると直ぐに返信が来たので、送信ができた事を確認し、

      カナダにいるサヤカ。釜山で語学研修している栄子と典子、両親、           
     等々、、、沢山の人達にメールしてみた。

 

      次々と、返信が来たので、また更にカノンは返信をした・・・

         PCがあると本当に便利だと思った。




             -----------------------------------------




    スンミは、自分の部屋で、カノンが、沢山の人達とメールの

   やり取りを始めているのを知った。

 そう、スンミの携帯電話・家庭用電話機・PCは全て、カノンのものと

   連動していて、カノンの情報が全て分かるようになっていた。

 また、マイクロカメラも見つかり難い所につけられていて、

  カノンの様子も全て分かるようにしたのだった。

スンミ:「カノンちゃんは、やっぱり、沢山の友達がいるのね?

      久美子に典子に栄子・・綾・サヤカ・・・」

スンミは、うきうきとした楽しい気分になって来た・・・

      そして、カノンである私は、テファがお似合いだし・・・

      テファと付き合わないとね・・・ソンジェお兄ちゃんは

              お兄ちゃんだもの。

        ソンジェお兄ちゃんよりも、テファが最高だわ。



    明日は、可愛いピンクのキャミソールで、登校しようかしら?

      きっとテファは私を見て可愛いと思うわ。

         フフフ。。。。

   スンミは、妄想の中で、自分がカノンであると思いこんでいたのだった。

 

          姜ユリなんかに、カノンは負ける筈はないし・・・

         テファはユリよりもカノンを。。。私を選ぶだろう。



          テファ・・・あぁ、テファ・・・愛しているわ・・・・

          貴方だけよ・・・・貴方を手に入れられるなら、

                私は・・・・

                鬼にも蛇にもなるわ。

      貴方は、どんなに醜い子でも、優しく頬笑み、

        親しみを込めて話してくれる・・・・

              どんなに貧しい人にも、

          どんなに悪い人にも、、、平等だし・・・

        涙を流している人には、明るい未来を話して勇気

       づけてくれる・・・・歌も上手だし、

         顔立ちも私にふさわしいし・・・

            頭も良いし・・・日本語も上手・・・

         テファ・・・テファ・・・・

            心が狂いそうな位、愛おしいわ・・・・



       スンミは、机の引き出しから、テファを隠し撮りした写真を

       取りだして、写真に何度もキスをした。 

  
   そう、自分が、スンミではなく、カノンになりきって、、、

          キスをしていたのだった・・・・




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





   「うん?おかしいな・・・」

   帰宅し、テファは、カノンにメールをして見たが、

     エラーメッセージが出て、上手く届かないのだった。

    カノンの携帯にも、カノンのPCにもメールを送ってみたが、

      どちらもエラーだった・・・

 テファは、今度はカノンの携帯電話に電話したが、

     「現在使われてません」のアナウンスが流れた。

    

           ここで初めて、、、テファは月日の経過を感じ・・・

         何故、もっと早くにカノンに連絡してやらなかったのかを

          反省した・・・・

    カノン、引っ越ししたのだろうか?

         携帯をなくしてしまったのだろうか?

          PCのISPを変えてしまったのだろうか?・・・・

         色々な考えが頭の中を、翔け回った。

 カノン・・・・カノン・・・連絡が取れない状態になってしまった・・・

           どうしたらいいのだろうか?

  PCを見つめながら、テファは考えあぐねていた。

      しかし、テファはPCを開いて、メールを再度、送信してみた。


       「送信成功しました」


                と、画面に表示された。


    テファは、ホッとし、どうか、カノンのもとに届くようにと

            祈りながら、床につこうとした。


   テファは、「フレンドネットランド」のカノンのハンドルネーム

          「カノカマ」に送信したのだった。

   帰国する際に、二人だけのハンドルネームを作って、

      二人しかメールのやり取りが出来ない設定にしていたのだった。



    テファは、「大好き日本」の他に「ナルカマ」と言う

       ハンドルネームを作っていて、PCに連携させていたのだった。

          「大好き日本」は携帯に連携だったので、

       帰国の際に、解約してしまったため、もうハンドルネームが

        使えなかった為だった。

       今はこの「カノカマ」と「ナルカマ」に頼るしかなかったのだった。

    昼間、カノンに似ている女の子を見たけど・・・

      ホンデの生徒だろうか?

      小さくて、可愛いかったな・・・

        カノン、会いたいな・・・カノンは元気だろうか?

      カノンは、頑張って韓国語を上達させているだろうか?

       カノン・・・カノン・・・カノンの名前を呼び続けている内に、

          眠りについてしまったテファだった。



     ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


      この春、横浜のカノンの家にホームステイをしていた

       ソウル大学の李ビョンチョルからメールが来た。



      ※※  可愛いトンセン カノンちゃんへ ※※


        連絡、待っていたよ。ようこそ韓国へ!


       変わりなく元気に留学生活を送っているのかな?

    僕は、今日、ソウル大学と高麗大学の交流会があって

      高麗大学に行きました。

       そうそう、ミドリさんらしき学生を高麗大学で見かけたよ。

     今日は、日本の事が強く思いだされる日だったよ。

     しかも、カノンちゃんからメールを貰うし・・・

     良かったら、近い内に、会って美味い物でも食べないかい?

            ここ1週間は高麗に行くから・・・・

      高麗からホンデなら近いし・・・

      私が、カノンちゃんの大学まで迎えに行くよ。

      それとも、家に迎えに行っても良いよ。滞在している家は、

      有名な家だから、直ぐに分かるよ。

      同じ「李」でも、うちとは全然、違う大金持ちの家に滞在している

      んだね?韓国語で分からない事や、韓国の生活で困った事があれば、

      何でも相談してくれよ。じゃあ、近いうちに、必ず会おう。

                李 ビョンチョル


      ※※※                   ※※※


    カノンは、そのメールを読んで、嬉しくなった。

    そして韓国と言う国で、自分の事を知っている韓国人の人が居る事を

     嬉しくも思った。それで、早速明日会えたら良いな・・・

     相談したい事もあると書いて送った。

     相談したい事は、勿論、日本に居た時からの、ペンダントの事だった。

     夜も遅かったので、詳しくはメールにはしなかった事が、幸いだった。

   (もし書いてしまえば、スンミに知られてしまっていたに違いないからだった)

   ビョンチョルも「OK、じゃあ、明日、僕が、カノンを迎えに家まで行くよ」

       とし、カノンは、家で待つ事にした。
 
 


      カノンは、ペンダントを握りしめ、そして、心の中で、

     ペンダントさん、今日もお疲れ様・・・

       きっと半分の片割れに会わせて上げるからね?

         と言って、床についた。





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