誘うように艶やかに。
でもそれはうわべだけ。 こころはあげない。誰にもあげない。 まだ、あげたくない。
それでも誘うように紅をひくのは、なぜ? 綺麗に装うのは?
「・・・・・わたしの、ため。」
呟いて、蓋をする。
ルージュがゆっくり唇にとけて、紅く熟れる。 唇にふれた指にも、紅い花びらが落ちて。
綺麗。 濡れたようにきらめいて、こころを吸い込む、色。
でも、きっと似合わない。
・・・・・・・何に?
優しいあの人の隣に並ぶには。
・・・なんだ、やっぱり。 ・・・もう恋してるんじゃない?
ううん。 わたし自身に、似合わないから。
だから、赤を落として新しくのせる色は。 桜の花びらと、同じ。
・・・その理由は、まだ認めたくないけれど。きっと。
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