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作品名:恋わずらい 作者:ひな

第1回   手と手

て、つなぐ?

その一瞬。
夜風の冷たさも、お酒でくらくらする視界のことも、すべて忘れた。

その一言がどんなにわたしを苦しくさせるのか、
あなたはきっと知らない。

そのときのあなたがどんなにきれいだったか、
あなたはしらない。

触れた手の熱が、どんなに甘いか、
あなたは知らない。

つないだ手から思いがあふれでて、
あなたに知られてしまうのではないかというほどに。

狂おしく、身が切れるような思い。

軽く手をひかれて歩き出した先に、あなたがいる。
それだけで心が震えて、手に力が入らない。

いつもは近づかせてくれないあなたに、触れていることが信じられなくて。
確かめるように、そっとまばたきをした。

目の前でゆらゆらと、あなたの髪がゆれていて。

みえない顔。
よめない心。

でも。
きっと考えていることは同じで。

ほんの少しだけ、寂しかったのだろう。

だから、紅く色付いた頬も、手にともった思いの熱も。
すべてをお酒のせいにして。

ほら、きょうは月がきれいだから。

いっしょにあるこう。


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