恵太 『どうしてですか?』
薫が意を決意して話し出すまで静かな時が流れる
薫 『・・・私、以前は目が見えていました。 どこにでもいる普通の女の子で普通に暮らしていました。 恋人もいたりなんかして・・・。 でも、私・・・決して自慢できるようないい彼女じゃ なかったんです。 彼を心配させるような行動や言動ばかり・・・ 彼はいつもそんな私を見守ってくれて、 いつも惜しみない愛を注いでくれました だから、私・・・彼が、私の手を離す事なんかないって たかをくくっていたんです いつものように、わがままな私は決まり文句のように 彼を挑発して、別れを告げたんです 最低でしょ・・(哀しく微笑みながら) 本当にささえなことで、いつものように・・・ (昔を思い出しかみ締めながら・・・) 彼が絶対別れを受け入れることなんかないって 信じきっていたんですね 勝手ですよね。本当に勝手・・・ 彼は・・・・・・・疲れたと別れを受け入れました 私は信じれなくて、すぐごめんねと言ってくるだろうと思って、 簡単にさよならを告げました 家に帰って、電話を待ちました 次の日も待ちました 1週間待ちました 1ヶ月・・・ そして、ある日、朝目覚めていつものように目をあけたのですが、 二度と明りを見ることはできなくなっていました いつも真っ暗で・・・ 最初訳がわからなくて、夢なのかなって 彼が連絡をよこさないのも夢なのかなって そして、もうすぐ彼が連絡をよこしたら、きっと朝になるんだって 毎日夜だけれど、その時きっと目覚めるんだって 悪い夢を見てるだけだって ・・・自分が視力を失ってること、いえ、彼を失った事実を 受け入れられなかったんです 初めて、彼を失った大きさ・・・に気付きました・・・ もう、待っても彼は迎えにはきてくれないんだって 真っ暗な毎日なのに、涙はでるんですね 枯れるくらい泣いて 目が見えないのよりも、彼がいない事に そんな現実が受け入れられなかった 何度も何度も生きている意味を問いました 何度も何度も なぜ存在しているのだろう どうして、私は今ここにいるの 真っ暗な世界でいつもいつも何かに追われいました 逃げ惑いもがく自分が彼を呼び、彼の手を求め、そして、 暗い世界に吸いこまれていく 彼は彼は、もう私の傍にいません でも、私はその現実を受け止めて生きていくことを決めました 彼にした、彼にしてきた、彼の苦しみに比べたら今の私なんかって 私が背負って生きる為に彼がプレゼントしくれたんだって 誰かを愛していた。私も誰かを本気で愛していたという感情に 気付かせてくれた 彼が気付かせてくれたから あのままの昔の傲慢な私なら一生気付く事なんてなかったでしょう だから、自分の十字架を背負って生きようって ・・・それにね、あつかましいし、 こんな私なんか重荷になるだけなのに・・ まだ、私彼を・・・愛してるんです まだ、彼を何処かで待ってるんです 彼が、手を差しのべてくれた時に、私、真っ暗い世界から 卒業できるんじゃないかなんて 夢見たいな事、思ってたりして おかしいですよね。こんなおばさんが 夢見たいな事思って生きてる でもね、夢を見なきゃ生きれなくて・・・・ 夢ぐらい見てもいいかなって それぐらい許してもらえるかなって』
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