通行人女性 『課長』
恵太 ふりかえる
通行人女性 『待って下さい。早いですよ歩くの』
恵太 通行人の女性と課長と呼ばれる男性を見ている
恵太 失笑しながら「俺はもう課長じゃないんだな」と寂しそうに頭を触る そのままあてもなく歩き、公園のベンチに腰かける そしてしばらくぼーっと座っている
恵太 「・・・生きている意味がわからないな」そうつぶやきうなだれている 目の前を女性が通ったのにも気付かず、ただただうなだれる 通りすぎようとしたとき、顔をあげる
なつかしい匂いがした・・・ せつなくて、甘くて、何度も抱きしめた女性の匂い 恵太が昔愛した女性が通りすぎたのだった そして、この公園が彼女とよく来た公園だったこと 最後の瞬間もこの場所で迎えた事を思い出す 仕事一筋で、公園でたたずむこともなかった 別れてから、足をとめる事もなかった思い出の公園に 知らず知らずのうちに足を向けていた事に気付く
恵太 小さい声で『かおる!?』と呟く
薫 振り返り、耳をすますが、わからないのか首をかしげ、 気のせいねと少し微笑みながら去ろうとする
恵太 あまりに歳月がたち、今やリストラにあいおちぶれた自分に気付かない のかと落胆する・・・が、目を伏せたその先に薫の杖が見える 薫が杖をつきながら歩いているのに気付く その姿が気になり、様子を見ていると、薫の目が見えない事に気付く そして、薫の落とし物に気付き、思わず声をかける
恵太 『あのっ、楽譜・・・落としましたよ』なぜか敬語になりながら
薫 『あっ、すみません。』と微笑む
恵太 近づき、そっと渡す
薫 『ありがとうございます。これがないと困りました。助かりました』
恵太 『いえっ、』
薫 『じゃぁ、失礼します』
恵太 いきかける薫に恵太は思わず声をかける 恵太 『あのっ、』
薫 『?』首をかしげながら
恵太 『一緒に歩きましょうか?』
薫 『・・・あっ、ご親切に有難うございます。』丁寧にお辞儀をする
薫 『大丈夫ですので、お気になさらないで下さい。 では急ぎますので・・・』
恵太 声をかけれず、ただ見送る そして公園のベンチに座り、考える
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