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作品名:その手のぬくもりを 作者:御影 玉

第1回   再会
通行人女性 『課長』

恵太     ふりかえる

通行人女性 『待って下さい。早いですよ歩くの』

恵太     通行人の女性と課長と呼ばれる男性を見ている

恵太     失笑しながら「俺はもう課長じゃないんだな」と寂しそうに頭を触る
       そのままあてもなく歩き、公園のベンチに腰かける
       そしてしばらくぼーっと座っている

恵太    「・・・生きている意味がわからないな」そうつぶやきうなだれている
       目の前を女性が通ったのにも気付かず、ただただうなだれる
       通りすぎようとしたとき、顔をあげる

       なつかしい匂いがした・・・
       せつなくて、甘くて、何度も抱きしめた女性の匂い
       恵太が昔愛した女性が通りすぎたのだった
       そして、この公園が彼女とよく来た公園だったこと
       最後の瞬間もこの場所で迎えた事を思い出す
       仕事一筋で、公園でたたずむこともなかった
       別れてから、足をとめる事もなかった思い出の公園に
       知らず知らずのうちに足を向けていた事に気付く

恵太     小さい声で『かおる!?』と呟く

薫      振り返り、耳をすますが、わからないのか首をかしげ、
       気のせいねと少し微笑みながら去ろうとする

恵太     あまりに歳月がたち、今やリストラにあいおちぶれた自分に気付かない
       のかと落胆する・・・が、目を伏せたその先に薫の杖が見える
       薫が杖をつきながら歩いているのに気付く
       その姿が気になり、様子を見ていると、薫の目が見えない事に気付く
       そして、薫の落とし物に気付き、思わず声をかける

恵太    『あのっ、楽譜・・・落としましたよ』なぜか敬語になりながら

薫     『あっ、すみません。』と微笑む

恵太     近づき、そっと渡す

薫     『ありがとうございます。これがないと困りました。助かりました』

恵太    『いえっ、』

薫     『じゃぁ、失礼します』

恵太     いきかける薫に恵太は思わず声をかける
   
恵太    『あのっ、』

薫     『?』首をかしげながら

恵太    『一緒に歩きましょうか?』

薫     『・・・あっ、ご親切に有難うございます。』丁寧にお辞儀をする

薫     『大丈夫ですので、お気になさらないで下さい。
       では急ぎますので・・・』

恵太     声をかけれず、ただ見送る
       そして公園のベンチに座り、考える


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